職業安定法案
参議院 労働委員会
昭和22年法律第141号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院労働委員会
- S22.8.15趣旨説明・逐条説明労働委員会 86
- S22.8.19質疑労働委員会 946
- S22.8.22質疑労働委員会 1031
- S22.8.26質疑労働委員会 1141
- S22.9.19附帯決議・修正案趣旨説明・採決(修正)労働委員会 1456
- S22.10.7質疑労働委員会 1839
- S22.10.30附帯決議・修正案趣旨説明・採決(修正)労働委員会 2211
- S22.10.30委員長報告・採決(修正)本会議 5229
- S22.11.20参議院回付案・参議院回付案同意本会議 6187
提案理由
米窪滿亮 国務大臣 昭和22年8月15日職業安定法案を審議せられるにあたりまして、本法案の提案理由を御説明申し上げます。本法案は六十六條にわたる相當長いものでございまするが、これの趣旨はきわめて簡單でございます。終戰以來職業行政においても大きな轉換をいたしてまいりました。終戰まで職業行政は、一言にして申しますれば、勞務の動員配置を目的として行われたのでございまして、現行の職業紹介法もまたこの精神によつて一貫されておるのでございます。職業行政本來の目的は、國民に對しまして奉仕することでございまして、憲法の改正をみた今日、その憲法で定められました基本的人權の尊重が、今日實現されなければならないのでございまして、從來の勞務の統制配置を目的といたしました現在行つている職業紹介法をやめまして、新たに憲法の精神に則るところの法律を制定する必要が生じたのであります。これが本法律案制定の趣旨でございます。
本法案の目的とするところは、その第一條に明記してあります通り、公共職業安定所その他の職業安定機關、これは各縣廳にあるところのものでございますが、それらが憲法第二十二條の職業を選擇する自由の趣旨を尊重して、各人がもつている能力に適當な職業につく機會を與えることによつて産業な必要な勞働力を充足して、もつて職業の安定をはかるとともに、經濟の興隆に寄與するということにあるのでございます。最建途上、にあるわが國において、われわれのまず努むべきところは、國民のもつその豐富な勞働力を有效に發揮することでございまして、國家再建に必要な産業勞働力を充足し、各人についてその職業の安定を得させると同時に、國家の經濟を興隆せしめることが現下最も必要であるのでございまして、本法案制定の趣旨とするところもまた、右の目的を實現することにあるのであります。本來職業行政は、全國にわたる勞働力の需要供給による人の流れを基調として行わるベき性質でございまするから、ここに他の一般行政とは違うところの行政組織及び人事の取扱いが必要となつてくるのでございます。
まずその組織の方面について申し上げまするが、職業行政の組織は全國にわたる勞働力の需要供給の適正な調整をはかるために、中央から第一線機關に至るまで、全國を一貫した系統で運營することを理想とするものでございますが、一方地方自治の本旨を尊重し、都道府縣知事に對しまして公共職業安定所の業務の指揮監督を司らしめたことでございます。しかしこれに伴つて都道府縣知事が、この法律の規定によつてその行うべき職務に違反した場合におきましては、勞働大臣はその都道府縣知事に是正する命令を發し、またその都道府縣知事がこの命令に從わないときは、勞働大臣はさらに高等裁判所に向つて同様の是正命令を請求しまして、そうして代執行を行い得ることと定めたのでございます。そのような規定を設けたゆえんのものは、裁判所がこれに介在することによつて本法案の目的を確實かつ迅速に遂行しようとするものにほかならないのでございます。
次に職業行政に從事する職員の人事につきましては、職業行政の特異性に鑑みまして、全國の職業安定機關を通じて、安んじてこの道に精進し得るような措置を譲じたのでございます。先ほども申し上げましたように、職業行政は全國的の人の流れを基調として行わるべきものでありますから、勞働大臣が勞働力の需要供給の状況に應じ、二つ以上の都道府縣にわたる事務の連絡にあたらせるため、または都道府縣の職員に對する技術指導を行うために必要があると認めたときは、重要産業地區に本省の出張所として職業安定事務所を設置することができることといたしました。また職業行政の民主的運營をはかるために、公共職業安定所の業務の補助機關として、市町村との連絡にあたるべき連絡員を設けると同時に、中央、都道府縣及び特別地區に勞働者、雇傭主、及び公益を代表するもので組織する職業安定委員會を設置いたしまして、必要があるときは地區にもこれを設置することができることとして、もつて公共職業安定所の業務、その他この法律の施行に關する重要事項を審議させることといたしました。
公共職業安定所の行う職業紹介に關しましては、求人、求職の申込みの取扱い紹介の原則、爭議行為に對する不介入等について規定をいたしました。職業指導については、その原則及び職業の適性檢査の實施に關しまして規定を設け、また職業補導については都道府縣知事が主體になりまして、これを行うことを原則と定めたほかに、都道府縣知事に對する勞働大臣の援助の義務について規定を設けたのであります。
次に政府以外のものの行う職業紹介事業、勞働者の募集等につきましては、現行法ではこの規定は多く命令に委任してありますが、從來の國家総制の建前から、あるいはこれを禁止、あるいは嚴重な制限を加えておるのでございまするが、本法案におきましては、新憲法の趣旨に基きまして、個人活動の自由を尊重し、弊害のない限り廣く職業紹介事業、勞働者の募集活動を認めると同時に、弊害あるものに對しては從來よりも罰則を強化したのでございます。これは勞働者の保護をはかろうとする趣旨にほかならないのでございますが、同様の趣旨によつて本法案は、他人の勤勞の上に存立する勞働者供給事業を禁止しようとするものでございます。すなわち本法案の規定によつて認められる勞働組合法による勞働組合が勞働大臣の許可を受けて行うもののほか、從來多く行われてきた勞働者供給事業ほ、中間搾取行を行い、勞働者に不當な壓迫を加える例が少くないのに鑑みまして、勞働の民主化の精神から、全面的にこれを禁止しようとするものであります。
本法案の規定に違反した者に對する罰則につきましては、勞働者に對する保護の見地から檢討を加えて必要なものについては體刑を科するとともに、違反行為をした者が法人または人にために行つた代理人、被用人等である場合におきましても、その輕過失及び重過失の場合について罰則を設けてあるのでございます。
最後に、本法案の規定によつて禁止される有料營利の職業紹介事業及び勞働者供給事業につきましては、附則において三箇月の猶豫期間をおくことといたしました。
右の説明でおわかりであるだろうと思いますが、職業安定法案の全體を通じてその骨子をなす精神は、憲法の二十二條の趣旨に基きまして個人の基本權を尊重し、勞働者の保護をはかることによつて、現在の状勢に即應した勞働の民主化を促進しようとすることにあるのであります。
以上職業安定法案制定の趣旨及びその内容の大綱について御説明申し上げたのでございまするが、何とぞ御審議の上、時局に鑑みまして、速やかに可決あらんことをお願い申し上げる次第でございます。なお本法案の詳しいことについては政府委員から説明させることにいたしたいと思います。
第1回国会衆議院労働委員会議録第8号5頁(昭和22年8月15日)〔米窪滿亮国務大臣発言・発言番号2〕 会議録 国会会議録検索システム
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=100101042)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。