損害保険料率算出団体に関する法律案
参議院 財政及び金融委員会
昭和23年法律第193号
審議経過
右の数字は会議の発言数提案理由
森下政一 政府委員(大蔵政務次官) 昭和23年6月30日最初に損害保險料率算出團体に関する法律案の提案理由を御説明申上げます。
損害保險事業の保險料率は、過去の損害率、將來の損害発生の予想及び経費率によつて定められますが、損害発生の予想の中には、周期的に大火などの異常災害が起ることも考慮に入れる必要があります。而して損害保險の対象は、建物、家財、機械、設備、原材料、商品、船舶、運送品、積荷、人体に対する傷害その他多岐に亘り、損害高の程度は建物の構造、その用途、水利、消防施設、地勢、氣象、商品の性質、船舶の構造、航路の状況、施設管理の良否、人心の動向等極めて複雜な要素によつて左右されるのであります。この故に損害保險については、廣汎な資料と、専門的知識と、多年の経驗とを、集積して初めて合理的であり、妥当であり、且つ公平な保險料率を求めることができるのであります。前に申述べましたような複雜多岐な要素により保險料率が算出されるということは、その原價計算がむずかしく主観的な測定が行われる余地があるこりを意味するものであります。從つて保險料率の算出を各個の保險会社の自由に委せるときは、保險料率は保險会社間の過度の競爭により知らない間に不当に切下げられる傾向を有するものであります。かくて一たび異常災害が起りますときに、損害額が保險会社の担保力を超過し、保險契約者及び被保險者に迷惑を及ぼし、延いては損害保險事業の信用を傷つけるに至るのでありまして、このことは過去の経驗に徴しても明らかであります。現在の保險業法では、保險料率を大藏大臣の認可に係わ、せらる外、その第十一條において保險料率の統制協定を認め、又大藏大臣は保險会社に対し統制協定を命ずることもできることになつておるのであります。独占禁止法の制定後においても、「独占禁止法の適用除外に関する法律」により昨年十月三十一日まではこの保險料率の統制協定に関する保險業法第十一條は独占禁止法の適用から除外されておりました。併しながらこの規定は同業者間の自治協定を公認し、促進するものであり、明らかに独占禁止濃の精神に反するので、昨年十一月後の事態については適切な対策を講ずる必要があつたわけであり、保險業法の全面的改正の際これを解決する予定となつていたのでありますが、保險業法の改正が急速に進まない関係上、本件を切離して至急処理することが必要となつて参りました。これが対策といたしましては、公正な科学的保險料率を算出する損害保險料率算出團体の設立を認め、損害保險会社が任意その会員となることにより、合理的保險料率を利用し得る途を開くと共に、他面において料率團体の構成、業務の運営についても適切な規則を加え、業者間の自由競爭を不当に抑制せんようにすることが適当であると考えられるのであります。かくして損害保險事業の健全な発達及び保險契約者等の保護を図り、併せてこの法律に基く正当な行爲については、独占禁止法の適用を排除しようとするのがこの法律案を提出する理由であります。法案の大要は次の通りであります。
第一に、損害保險料率算出團体は、公正且つ合理的な保險料率を算出し、保險料率に関する諸般の資料を会員たる損害保險会社の利用に供することをその目的とするものであつて、この法律に基く特殊法人とし、その設立については大藏大臣の認可を受けなければならない。損害保險会社は、任意に会員となつて保險料率又はその施設を利用することができるものといたしたのであります。脱退は勿論自由であります。
第二に、会員が料率團体の算出した保險料率を利用する場合は、会員たる保險会社が個々に保險業法に基き保險料率変更の認可を受けなければならないものとし、且つ料率團体が会員に代つて認可を受けることを禁止いたします。
第三に、料率国体をして保險料率算呂の資料の閲覧、料率の周知等の公開的措置を取らしめることといたしました。
第四に、料率團体に対する大藏大臣の検査の権限、その他必要な監督の権限を規定しましした。
第五に、保險業法第十一條の統制協定に関する規定を削除すると共に、本法による行爲については独占禁止法の適用を除外することといたしたのであります。大要以上のごとくであります。どうぞ速かに御審議をお願いいたします。
次に、「簡易生命保險事業における戰爭危険に因る死亡に基く保險金の支拂による損失の補てんに関する法律」案提出の理由を御説明申上げます。
政府において管掌いたしております簡易生命保險の事業につきましては、御承知のごとく、郵便年金事業と併せて簡易生命保險及郵便年金特別会計という一つの特別会計を設けまして、これを保險勘定及び年金勘定に区分して経理しているのでありますか、保險勘定におきましては、今次の戰爭に因る死亡事故に対する保險金の支拂が、これらの被保險者のために積立てた積立金を超過いたしましたことによりまして、昭和二十二年度末までに、四億七千三百二十余万円の損失を生じたのであります。この損失の生じました理由は、主として保險料の料率の引上を行わなかつたことに原因するものであります。即ち保險数理上から申しますれば、御承知のごとく、今次の職歴のごとき保險上の危險率の極めて大きい危險が新たに生じて参りました場合におきましては、その危險の率に相應する保險料を増加徴収する必要があるのでありますが、当時の諸般の事情からいたしまして、戰爭危險率を加味した保險料に改正することなく、戰前の保險料を以て、引続き契約を締結して参りましたことに基因するのでもあります。向、民間経営の生命保險及び損害保險につきましても、簡易生命保險におけると同様の事態が生じたのでありますが、これらに対しましては、生命保險中央会法、損害保險中央会法等に基きまして、その損失は國庫においてこれを補償することとなつておりますことは、御承知の通りであります。簡易生命保險事業における昭和二十二年度末までに生じました戰爭危険に基く損失の額は先に申上げました通りでありますが、海外からの同胞の引揚げが促進いたしまして、保險事故発生の事実が逐次判明して参りますので、昭和二十三年度におきましては、約一億二千万円の損失が生ずると見込まれますが、昭和二十四年度以後におきましても引続き相当額の損失が生ずると予想せられますが、かくては簡易生命保險事業の運営に多大の支障を來すこととなりますので、民間保險事業における損失の補償とも睨み合せまして、今回本法律によりまして簡易生命保險事業における戰爭危険に基く損失は、一般会計の負担において、これを補てんすることと致し、これに必要な措置を講じようと存ずるのであります、即ち保險勘定における今次の戰爭に基く損失は、本事業運営の実情に顧みまして、昭和二十二年度末までに生じました損失額四億七千二百二十余万円につきましては、一般会計の負担においてする保險勘定に対する交付公債を以てこれを補てんすることとし、昭和二十三年度において生ずると推定されます損失額一億二千万円につきましては、今後戰爭危険に基く事故に対する保險金の支拂を現金を以てしなければなりません関係上、一般会計から特別会計の保險勘定に対する現金による繰入を以てこれを補てんいたす所存の下に、過般提出いたしました昭和二十三年度一般会計予算及び昭和二十三年度特別会計予算に必要な額を計上いたしたのであります。尚昭和二十四年度以後におきまして生ずると予想されます損失額の補てんにつきましても、逐次、昭和二十三年度までの分に対すると同様な措置を取る所存であります。尚先に申上げました交付公債につきましては、政府において、これを交付するに必要な額に相当する公債の発行権限を得る必要がありますので、これに関する規定を本法律案中に設けておりますが、更に戰事危険に基く損失の範囲、損失額の決定方法及び損失の補いてんの時期に関する規定も本法律案の中に設けた次第であります。以上の理由によりましてこの法律案を提出した次第であります。
最後に、物資の割当に関する手数料等の徴収に関する法律案提案の理由を御説明申上げます。臨時物資需給調整法に基く命令の規定による生産用資材の割当事務に要する経費につきましては、現在全額國費を以て賄つておるのでありますが、この経費は相当の額に上り、これを本年度の予算について見ますると、凡そ十九億円と相成つておるのであります。この割当事務は、直接には当該資材の割当の申請をする者又は割当を受けた者の利益のために行われるのでありますから、一種のサービス料としてこれらの受益者から一定の申請手数料及び割当料を徴収して歳入の増加を図り、これを以てこの事務の取扱に要する経費の財源に充てることが、現在の財政状況から考えて、適当であると認められますので、本法に基いて申請手数料及び割当料を徴収することにいたそうとするのであります。尚申請手数料等の徴収を確実にするため、申請手数料に相当する金額の収入印紙を貼らない割当申請書は、これを行政機関において受理しないこととし、又割当公文書に割当料に相当する金額の収入印紙を貼らないで、割当資材の取引を行なつたとき、及び当該収入印紙に消印を押さないで取引を行なつたときは、当該割当公文書を無効とすることとし、併せ規定いたしたのであります。以上の理由によりましてこの法律案を提出した次第であります。どうぞ御賛成あらんことを希望いたします。
第2回国会参議院財政及び金融委員会会議録第46号1頁(昭和23年6月30日)〔森下政一政府委員発言・発言番号2〕 会議録 国会会議録検索システム
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=100201201)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。