検察庁法の一部を改正する法律案
衆議院 法務委員会
昭和24年法律第138号
審議経過
右の数字は会議の発言数提案理由
山口好一 政府委員(法務政務次官) 昭和24年4月27日ただいま上程に相成りました檢察廳法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明します。
本案は大別して三つの事項をその内容といたしているのでありまして、その第一は、檢察廳法と國家公務員法との調整、第二は、國家行政組織法及び法務廳設置法の一部を改正する法律の施行に伴う必要な整理、第三は、その他の改正であります。
まづ第一の点から御説明いたします。從來檢察官の任免につきましては、檢察廳法第十五條第三項によりまして、一般の檢察官は内閣が、二級の檢察官は、内閣総理大臣がこれを任免することとなつておりましたが、本年一月八日施行の人事院規則一ないし三によりまして、國家公務員法中第五十五條を初め、國家公務員の任免に関する規定の大部分が適用されることになりました結果、檢察官の任免につきましても、法務総裁がこれを行うことと相なつたのであります。しかしながら檢事総長、次長檢事及び檢事長につきましては、いずれも認証官であります関係上、これが任免は内閣がこれを行うことを適当と認めまして、第十五條第一項を改正することにより、その旨を規定し、その他の檢察官につきましては、國家公務員法の規定により、法務総裁がこれを任免するものとし、同條第三項はこれを削除し、かつこれに伴つて、第二十三條の罷免の手続についても必要な改正を加えたのであります。次に三級官吏の進退に関する権限の委任並びに檢察事務官、檢察技官の支部勤務命令に関する第三十條の規定は、國家公務員法第五十五條第二項の規定が優先する結果、すでにいずれも不要となりましたので、これを削除いたしました。しかして檢察官はその職責上、その任免につきましては、一般の國家公務員とはおのずからその取扱いを異にすべきものでありますので、檢察官の任免手続、任用資格等に関する規定を、國家公務員法附則第十三條の規定による同法の特例といたしたのであります。
次は第二の点でありますが、これは本年六月一日から國家行政組織法及び法務廳設置法の一部を改正する法律が施行される関係上、これに伴つて、從來政令で定めることになつていた檢察廳の職員の定員を法律で定めるものとしたほか「法務廳」とあるのを「法務府」に、「副檢事選考審査会」に、「檢察官適審査委員会」とあるのを「檢察官適格審査会」に改める等の必要な整理を行つたのであります。
第三はその他の改正でありますが、その一は、副檢事の任用資格に関する点であります。檢察廳法第十八條第二項第一号によれば、副檢事は高等試驗に合格した者で、副檢事選考委員会の選考を経たものの中からも、これを任命することができることになつているのでありますが、政府におきましては、ただいま高等試驗にかわるべき試驗について法律案を立案準備中でありまして、その法律が制定施行せられるに伴つて、この点を改正する必要があるわけでありますが、本案におきましては、本号の試驗は、司法修習生となる資格を得る試驗と同一の試驗であることを明らかにするために、これを「裁判所法第六十六條第一項の試驗」と改めたのであります。
その二は、檢察官適格審査会に予備委員を置く旨の規定であります。檢察官適格審査会の予備委員につきましては、さきに檢察廳法第二十三條第五項に基き、檢察官適格審査委員会令(昭和二十三年政令第二百九十二号)等にこれを規定いたしたのでありますが、これは委員会に関する重要な事項であり、かつ國会議員については、國会法第三十九條により、内閣総理大臣その他の國務大臣、内閣官房長官、各省次官をかねる場合及び國会の議決に基いて内閣行政各部における各種の委員、顧問、参與その他これに準ずる職務につく場合のほかは、法律で定めた場合でなければ、國または地方公共團体の公務員をかねることができないことになつておりますので、これを法律により規定することを適当と認めたのであります。しかして本案におきましては、予備委員は各委員に対應して置かれ、その資格は対應する委員と同一資格を要するものとし、國会議員たる予備委員は、委員の場合と同樣にそれぞれ衆議院または参議院において、これを選出するものといたしたのであります。
その三は、檢察廳法施行の際、現に弁護士試補たる者で一年六箇月以上の実務修習を終えまして考試を経た者を、その考試を経たときに司法修習生の修習を終えた者とみなす旨の規定であります。これは檢察廳法施行の際弁護士試補であつた者百四十九名中、現在までに修習を終えた者が百二十八名あり、その中には檢事を志望している者もありますので、裁判所法施行令第十條第二項の規定にならつて、規定いたしたものであります。
その四は、外地弁護士に檢事たる資格を附與する規定であります。御承知の通り裁判所構成法により、三年以上弁護士たる者は檢事たる資格を有することになつており、その結果これらの者については、檢察廳法第三十七條第一項の規定によりまして、檢事たる資格を得たときに司法修習生の修習を終えたものとみなされるのでありますが、弁護士たる資格を有する者が、三年以上外地弁護士をしていた場合または内地、外地の弁護士在職を通じて三年以上になる場合にも、右と同一の取扱いをし、また弁護士たる資格を有する者が、朝鮮弁護士令による弁護士試補として一年六箇月以上の実務修習を終えた場合には、内地の弁護士試補として一年六箇月の修習を終えた者と同一の取扱いをするのを相当と認めまして、判事補の職権の特例に関する法律第三條の規定にならいまして、これを規定したものであります。
以上御説明いたしました通り、本案は國家公務員法及び國家行政組織法の施行並びに法務廳設置法の一部を改正する法律の施行に伴い、必要な整理を施しますとともに、檢察官適格審査会に予備委員を置き、かつ檢察官の任用資格に関する規定を整備するためのものでありまして、いずれも檢察機構を整備充実せしめるため重要な規定でありますから、何とぞ愼重御審議の上、すみやかに可決せられんことを希望する次第であります。
次に民法等の一部を改正する法律案の提案理由を簡單に御説明申し上げます。
まず第一條は民法を改正する規定でありますが、その第一は、第三百六條中第二号と第三号とを入れかえることであります。現行民法では第二号に「葬式ノ費用」第三号に「雇人ノ給料」と定めてありますので、この両者が競合する場合には、民法第三百二十九條の規定に從い、債務者のために葬式の費用を拂つた者が雇人の給料に先んじて弁済を受けられるわけであります。しかしながら葬式の費用はあくまでも個人的なものであり、もともと本人の家族または縁者が負担すべきものであつて、かつ商法第二百九十五條によりますと、会社の使用人の給料の先取特権については、葬式の費用に優先せしめているのでありまして、この商法の規定とのつり合いから申しましても、会社の使用人以外の雇人の給料の先取特権の順位は、当然勤労者の生活確保の見地から、会社の使用人の給料と同一の順位といたし、その債権を保護すべきものと考えますので、順位の変更を規定した次第であります。
第二は、第三百八條を第三百九條とし、第三百九條を第三百八條とする件でありますが、第三百七條ないし第三百十條は、第三百六條の第一号ないし第四号の順を追つて規定してあり、第二号と第三号を入れかえました関係上、法文の体裁を整える意味において、第三百八條と第三百九條とを入れかえた次第であります。次に入れかえた後の第三百八條の改正でありますが、本條は雇人給料の先取特権は、最後の六箇月間の給料につき存することを規定し、但書において、その金額は五十円を限度としたのであります。雇人給料の先取特権を認めて勤労者の生活を保障しようとする趣旨は明らかなのでありますが、この條項は明治二十九年民法制定以來一度も改正されていませんので、時代の変轉に伴い、この規定の意義は無用と申すより、むしろ立法の趣旨に沿わないのでありまして、勤労者保護の目的は全然達せられていないのであります。このゆえに但書を削り、金額の制限を設けないことにいたしたのであります。さきに申しました商法第二百九十五條の規定には、会社に対する使用人の給料の先取特権につきましては、金額に制限をいたしておらないのでありまして、この均衡から申しましても、但書を削るのが相当と考えたのであります。
次に第二條は民事訴訟法を改正する規定でありますが、現行民事訴訟法第五百七十條第一項第六号は、有体財産に対する強制執行につきまして、官吏、神職、僧侶、公立私立の教育場教師の職務上の收入または恩給についてのみ差押禁止物として保護しておりますが、工員その他の雇人等の労務者が受ける報酬その他の收入を除外する理由はありません。当然保護されてしかるべきものと考えますので、第六号を改め官吏、神職等の職務上の收入のほか工員、労務者、雇人等の給料等をも差押禁止物に指定して、これを保護しようとする趣旨であります。
終りに附則について御説明いたします。この改正條項は、前に述べました勤労者の生活擁護の目的を持つものでありますから、その実施は急を要するものと認めまして、公布の日からこれを実施することといたした次第であります。これまた何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御可決を賜わらんことを御願い申しあげます。
第5回国会衆議院法務委員会議録第12号13頁(昭和24年4月27日)〔山口好一政府委員発言・発言番号144〕 会議録 国会会議録検索システム
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=100501107)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。