死体解剖保存法案
参議院 厚生委員会
昭和24年法律第204号
審議経過
右の数字は会議の発言数提案理由
亘四郎 政府委員(厚生政務次官) 昭和24年5月6日議題となりました死体解剖保存法案の提案の理由を説明いたします。
傳染病、中毒等により死亡した疑いのある死体その他死因の明かでない死体につきましては、連合軍総司令部の覚書に基きまして、昭和二十二年厚生省令第一号死因不明死体の死因調査に関する件が施行せられておりますが、これはいわゆるポツダム省令として制定せられましたるものでありまして、新憲法の趣旨からいたしましても、なるべくすみやかにこれを法律に改めることが必要なのであります。しかしてこの省令を法律に改めるにあたりましては、これと密接な関連を有する大学等へ死体交付に関する法律の内容をもこれに統合することが適当であると考えられるのであります。
さらにまた從來死体の解剖または保存に関しましては、刑法中に死体の損壞または遺棄を処罰する規定がありますほかは法令の規定がないのでありまして、そのためにたとえば医学の教育または研究のために死体の解剖または保存をなす等の場合には、それが適法であるか否かにつきまして多少の疑義があるのであります。かような現状は医学の教育または研究のためにも望ましくないのでありまして、この際死体の解剖及び保存に関しまして、包括的な統一的法制を整備する必要が各方面から要望せられておりますことにもかんがみまして、ここにこの法律を提案いたした次第であります。
次にその内容を簡單に申しますと、まず最初にこの法律の目的は死体の解剖及び保存の適正を期することによりまして、医学の教育または研究に資するとともに、公衆衞生の向上をはかることにあることを明らかにし、次にこの目的を達しますために、死体の解剖をしようとする者は原則として行政廳の許可を受けなければならぬことといたしました反面、死体の解剖を特に必要とする場合、たとえば医学に関する大学の教授または厚生大臣が特に認定した者が解剖する場合、その他刑事訴訟法等他の法律の規定に基いて解剖する場合等には、あらかじめの許可を要せず事後の届出をもつて足ることといたしておるのであります。
また死体の解剖は尊嚴な人体の取扱いに関することでありますので、原則として遺族の承諾がなければこれをなすべきでないことは、むしろ刑法の解釈上当然でありますが、この法律におきましては、さらに進んで遺族の承諾を要せず解剖し得る場合を列挙いたしまして、刑法との関係におきまして違法性の阻却される場合の基準を明らかにいたしたのであります。
さらに解剖は解剖室において行うべきことを規定したほか、死体の保存につきましても、医学に関する大学または総合病院において保存する場合等を除き、原則として都道府縣知事の許可を要することとしその適正化をはかつているのであります。
以上がこの法案のおもな内容でありますが、一方において医学の教育または研究等のために欠くべからざる死体の解剖はできるだけこれを容易ならしめるとともに、他方死体の尊嚴に関する國民の宗教的感情の尊重にも十二分の意を用いているのであります。
何とぞ御審議の上すみやかに可決せられるよう御願い申し上げます。
第5回国会衆議院厚生委員会議録第15号6頁(昭和24年5月6日)〔亘四郎政府委員発言・発言番号4〕 会議録 国会会議録検索システム
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=100501165)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。