日本勧業銀行法等を廃止する法律案
衆議院 大蔵委員会
昭和25年法律第41号
審議経過
右の数字は会議の発言数提案理由
舟山正吉 政府委員(大蔵事務官(日本銀行政策委員代表兼銀行局長)) 昭和25年3月11日次に日本勧業銀行法等を廃止する法律案につきまして、その提案の理由並びに内容の概要を御説明申上げます。
従来我が国においていわゆる特別銀行と称せられたものには、日本銀行の外、日本勧業銀行、北海道拓殖銀行、日本興業銀行及び終戰後閉鎖機関として指定されたものとして横浜正金銀行他三銀行があつたのでありますが、これらのうち日本勧業銀行、北海道拓殖銀行及び日本興業銀行については、その基礎法規である三つの特別銀行法の改廃がかねてから問題となつておつたのであります。
特に、一昨年の金融機関の再建整備において、これら三銀行は、債券発行機関か預金銀行かの岐路に立つこととなつて、日本興業銀行は前者の、日本勧業銀行及び北海道拓殖銀行は後者の途を撰んだ結果、これらの三銀行は、その業務内容において必ずしもその基礎法規と一致しなくなつて、適当な時期における法的措置が当然に必要とされておつたのでありますし、他方、役員の政府任命、監理官制度等政府との特別の関係もかねてからこれを廃止することが、適当であると考えられておつたのであります。ただこの問題は金融制度全般とも関連がありますので、愼重に考究していたのでありますが、今般「銀行等の債券発行等に関する法律案」によつて銀行一般に金融債の発行が認められることとなりますので、この際本廃止法案を提案することとした次第であります。
以下、この法律案につきまして、内常の主な点を御説明申上げます。
本法案は、本年四月一日を以て、日本勧業銀行法、北海道拓殖銀行法及び日本興業銀行法を廃止することを主たる目的としておるのでありますが、これに関連いたしまして、旧農工銀行関係の四法律及び興業債券の発行限度の特例の関する法律をも併せて廃止するものといたしております。その他の規定は、これらの法律の廃止に伴い必要な経過措置を定めることが主眼となつているのでありまして、これを要するに三特別銀行の普通銀行化に伴う処置であります。
その内容といたしましては、先ず第一に従来各特別銀行法に基いて設立された日本勧業銀行、北海道拓殖銀行及び日本興業銀行は、この法律施行後においては銀行法に基いて営業の免許を受けたいわゆる普通銀行とみなすものとしているのでありまして、更にこれらの三銀行は、この法律施行後遅滯なく株主総会を招集し必要な定款の変更を行うべきのちとされております。又従来政府任命であつた日本勧業銀行及び日本興業銀行の正副総裁及び理事等は、この株主総会終結の時にその任期を終了することとなつております。
第二に、従来これら三銀行が発行した債券及び日本勧業銀行又は北海道拓殖銀行がなした特殊の貸付に関しては、尚旧法によるものとしております。
第三に、私的独占の禁止及び公正取引の担保に関する法律の規定によりますれば、銀行は競争関係にある同種の金融業を営む他の会社の株式を所有することが禁止されているのでありますが、この法律が施行されますと、現在他の銀行がこれら三特別銀行の株式を所有していること及びこれら三特別銀行が他の銀行の株式を所有していることがこの規定に違反する結果となりますので、一年間を限りこれら株式の所有を認めることによりまして、制度の円滑な切替を期しているのであります。
その他別途御審議を願つております「銀行等の債券発行等に関する法律案」が本法案に先き立つて施行される予定でありますが、右法案は三特別銀行及びその基礎法を前提としておりますので、これに必要な字句の修正を加える等の若干の規定を設けることといたしております。
次に「銀行等の債券発行等に関する法律案」につきまして、その提案の理由並びに内容の該略を御説明申上げます。
終戦以来、金融の面におきまして経済の安定、復興のため幾多の施策が実施に移されて来たのでありますが、特に復興のため不可欠な長期資金の供給につきましては、その円滑化に格段の努力が拂われたのであります。復興金融金庫の設立による設備資金等の融資もその一つでありますが、昨年初頭における実質的均衡財政の樹立に伴う同金庫の積極的な機能の停止後におきましても、政府と致しましては、長期資金の供給のため、引続き、米国対日援助見返資金の活用、株式社債による直接投資の活発化、証券市場の育成、国債及び復金債の償還により銀行に生ずる資金の長期設備資金への転用、興業債券の発行限度の拡張による日本興業銀行の活用等種々の方策を実行して参つたのでありまして、他方我が国経済の実情に即し、住宅金融その他の不動産金融、中小企業金融、農林水産金融の面におきましても、できる限りの努力を傾注しておる次第であります。
ただ、以上の諸方策のみを以てしては、莫大なる長期資金の需要を賄なうのに必ずしも十分であるとは認め難いのでありまして、夙に銀行等による長期資金調達の手段としての債券の発行について、検討を進めつつあつたのでありますが、今般ここに成案を得、法律案として御審議を願う運びと相成つたのであります。即ち、この法律案は、銀行並びに農林及び商工組合の両中央金庫に対し債券の発行についての特例を定め、以て刻下喫緊の急務である長期金融難の打開に積極的根本的な施策を採ろうとするものであります。
以下、この法律案につきまして内容の基本となる点を申上げます。
本法案において対象としている金融機関は、日本勧業銀行、北海道拓殖銀行、日本興業銀行、農林中央金庫及び商工組合中央金庫並びに銀行法に基いて営業の免許を受けている銀行でありまして、これらの金融機関に対して本法律案が規定しております主なる点は大体三つとなつております。その第一は、銀行等による金融債の発行、第二は、この債券の発行に資するための米国対日援助見返資金による銀行等の優先株式の引受、第三は、銀行等の自己資本の充実でありまして、そのいずれもが金融政策上或いは金融制度上正に画期的な内容を持つものと考えられるのであります。
先づ金融債の発行につきましては、銀行等は、自己資本の金額の二十倍相当額から預金と債券との合計額を控除した残額の債券を発行することができるものとし、これに関連して商法の特例その他金融債の発行につき必要な規定を設けることといたしたのであります。御承知のように、現に積極的に債券を発行している金融機関は日本興業銀行一行であり、他に従来債券発行の権能を認められていたものとしては日本勧業銀行、北海道拓殖銀行、農林中央金庫及び商工組合中央金庫があるのでありますが、本案におきましては、ひとりこれらの銀行等についてのみならず、銀行一般に対しても同一の基準を以て債券発行の権能を與えることとしているのであります。これにより債券発行量の飛躍的増大を期し得る外、すべての銀行が預金業務と債券業務とを併営することができるという銀行業務の建前における質的変化を見ることとなつたのであります。従つて、今後におきましては、金融機関による長期資金の供給が格段に円滑となることが期待されるのみならず、銀行又は金庫は、それぞれの特色に応じ、それぞれの分野において活発なる融資活動を期待し得ることとなる次第でありまして、産業界の要請に応え、金融の順便、積極化に寄與するところ多大なるものがあると存ぜられるのであります。
第二に、この金融債の発行に資するため、銀行等は、米国対日援助資金を以て引受けられる場合に限りこの法律による特殊の優先株式又は優先出資を発行することもできるものといたしておるのであります。即ち、銀行等が株式市場の状況等によつて自力で資本を十分に調達できない現状にあるのに鑑み、援助資金を活用し、これに銀行等の優先株式又は優先出資を引受けさせるという新たな運用の形態を認めることによりまして、銀行等の資本調達を可能ならしめ、以てその債券発行余力の増加と、経営の健全化を図つているのであります。この優先株式は、利益の配当又は残余財産の分配について普通株式に対し優先的内容を有する外、利益又は一般の増資によつて得た資金を以て消却することのできる所謂償還株式である点において現行商法の特例をなすものでありまして、現在審議の進められております商法改正案の施行に先立ち、新たな制度としてこれを銀行制度のうちに取入れようとするものであります。
最後に、以上申上げましたところにも関連して、銀行等の自己資本の充実のため必要な規定を設けることといたしたのであります。銀行が預金者その他の債権者保護のために適当額の自己資本を有すべきであることはいうまでもないことでありますが、本法案におきましては、銀行等は、自己資本の金額が預金と債券との合計額の百分の五相当額に達していないときには、銀行法等による通常の積立よりも多くの法定準備金の積立をなすことによつて自己資本の充実を図るべきものとしたのであります。同時に、普通株式に対する配当については、別段の法律的制約を加えないこととし、多年の懸案であつた銀行の配当復活の実現、延いては増資による銀行等の資本の充実を容易ならしめることが期せられることとなつたのであります。
以上、「銀行等の債券発行等に関する法律案」につきまして、その提案の理由及び内容の概略を申上げたのでありますが、本法律案の施行による金融債の発行可能額は、昭和二十五年度中におきまして、概ね五百二十億円に上るものと予想されるのでありまして、これが長期資金の供給を飛躍的に増加させ、又、企業の設備資金の融通、不動産金融、中小企業金融、農林水産金融等それぞれの面において必要な長期金融に大きな寄與をなすことによつて、経済復興のため多大の貢献をすることになろうと存ずるのであります。
更に、これに関連し、多年の懸案でありました預金部資金による金融債の引受も考えられるに至つたのでありまして、金融政策の面における最近の最も大きな効果的施策の一となると考えられるのであります。
尚本法案に基く援助資金の優先株式の引受、これによる金融債の現状にも鑑み、早急にこれを取進めることを適当と認められますので、本案が法律として施行されます日の一日も早からんことを切に希望いたす次第であります。幸いにして国会通過の暁は、本年度内可及的速かに公布の上即日にも施行いたしたい所存であります。
以上が保険業法等の一部を改正する法律案他二法律案の提案の理由であります。
何とぞ御審議の上速かに御賛成あらんことをお願い申上げます。
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第7回国会参議院大蔵委員会会議録第22号1頁(昭和25年3月11日)〔舟山正吉政府委員発言・発言番号2〕 会議録 国会会議録検索システム
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=100701096)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。