有畜農家創設特別措置法案
衆議院 農林委員会
昭和28年法律第260号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院農林委員会
- S28.7.8趣旨説明農林委員会 15119
- S28.7.23採決農林委員会 2351
- S28.7.24質疑・採決・附帯決議農林委員会 24131
- S28.7.25委員長報告・採決本会議 2845
- S28.8.10附帯決議本会議 391
参議院農林委員会
- S28.7.13趣旨説明農林委員会 13111
- S28.7.29質疑農林委員会 25187
- S28.7.30質疑・附帯決議・討論・採決農林委員会 26123
- S28.8.3委員長報告・採決本会議 32115
提案理由
保利茂 農林大臣 昭和28年7月8日有畜農家創設特別措置法案の提案の理由を御説明申し上げたいと存じます。
農業経営の合理化をはかり、農業生産力を高めるためには、農家に家畜を導入し、有畜営農を普及徹底させることが最も有効適切な措置でありますことは、いまさら申し上げるまでもないことでありまして、このために政府におきましては、すでに御承知の通り、昭和二十七年度から有畜農家創設要綱を定め、農業協同組合等に対する家畜導入資金の融通のあつせんと、これに対する利子補給を行うことによりまして、有畜農家の創設を計画的かつ効率的に推進して参つたのであります。しかしながら、過去一年における経験に徴してみまするに、右の措置のみでは、信用力の低い組合につきましては、思うように融資が受けられない事態も出て参つているのでありまして、これらの障害を除去して、有畜農家創設事業の所期の目的を達成いたしますためには、家畜導入資金を融資する金融機関に損失補償を行うことにより、金融機関が安んじて融資することができるような制度を確立する必要があると思うのであります。しかしながら、実際問題といたしましては、このような損失補償制度が設けられましても、なおかつ融資を受けることが困難な組合もあろうかと考えられるのでありまして、このような場合には、すでに多くの都道府県において実施いたしておりますような、都道府県がみずから家畜を購入しこれを貸し付ける制度を奨励いたしますことが必要な措置であると考えるのであります。また新品種の家畜を集団的に導入しようとするような場合には、相当の危険なり負担が伴いますので、以上の諸措置のみでは十分にその成果を期待し得ないと考えられるのでありまして特に国で種畜以外の家畜についても、これを購入して貸し付けることができるような制度を設ける必要があると思うのであります。かくて有畜農家創設事業も制度的に一応整備いたし、所期の目的も十二分に達成できるものと確信いたすものであります。
本法案は、以上の考え方を骨子といたしているのでありますが、以下本法案の内容を簡単に申し上げますと、第一、国が有畜農家創設事業に必要な資金の融通のあつせんに努めること、第二、国が家畜導入資金についての利子補給を助成すること、第三、国が家畜導入資金についての損失補償を助成すること、第四、都道府県有家畜の貸付を奨励すること、第五、国有家畜の貸付の道を開くこと、の五点であります。
以上のような理由によりまして、この法案を提出いたしまして次第でありますが、本法案につきましては、前国会におきまして各派共同提案により御審議中のところ、会期の関係上審議未了に終つたことはすでに御承知のところであります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださるよう切にお願い申し上げる次第であります。
次に土地改良法の一部を改正する法律案の提案の理由を申し上げたいと存じます。
土地改良法は、昭和二十四年八月施行以来すでに三年有余の年月を経過いたしまして、その間に旧来の普通水利組合、耕地整理組合及び北海道土功組合は、それぞれ土地改良法に基く土地改良区に組織がえをいたし、新しい組織の下に灌漑排水施設、農業用道路の整備、農地の区画整理、農地の集団化、農地の造成及び保全並びにその災害復旧等の土地改良事業を実施して参つたのであります。しかるにその後の土地改良法の運営実施の状況を見てみまするのに、あるいは土地改良事業の実施手続の面でやや形式的煩瑣にすぎ、あるいは法律実施上不備であると考えられる点が出て参つて来たのでありまして、土地改良事業の円滑な実施をはかるため、この際土地改良事業の実施手続の簡素化をはかり、また土地改良法上の不備を是正いたしまして、土地改良事業を一層円滑に推進することの必要が痛感されるに至つたのであります。このことがこの改正法律案を提出いたしました根本的な理由であります。
次に改正法律案の主要な内容について御説明申し上げます。第一は、土地改良区の設立手続を簡素化したことであります。すなわち従来土地改良区を設立するには、土地改良事業計画の概要、定款の基本事項等につきまして、都道府県知事が本審査と予備審査との二段階の審査をするという手続をとつて来たのでありますが、本改正法律案では、農業水利施設等の維持管理のみを行う土地改良区の設立につきましては、予備審査の手続を廃止し、本審査のみで土地改良事業計画及び定款の審査をいたすこととし、灌漑排水施設等の工事を行う土地改良区の設立については、予備審査にかえて、土地改良事業計画のみを純粋に技術的な見地から審査して、事業の適否の認定をいたすこととし、都道府県知事の行う縦覧公告、利害関係人の意見の申立て等の諸手続を省略して、手続を簡略化したことであります。
第二に、役員につきましては、新たに組合員以外からも練達の人を役員として置くことができることとするとともに、従来の都道府県知事の任命による監事を廃止して役員の選任はすべて選挙によることとしたことであります。
第三に、農地法の規定に基き買収した土地等につき国または都道府県が開田をしまたは干拓をいたす場合に、その事業とあわせてその近傍の民有地について灌漑排水事業または開田事業を行うことが事業の効率を高め、農業経営の合理化に寄与すると認められるときは、申請がなくても国または都道府県が積極的に農民の同意を求め、その民有地について土地改良事業をなし得る道を開いたことであります。
第四に、国営土地改良事業計画及び都道府県営土地改良事業計画につきまして、新たに計画を変更し得る道を開いて、事業の一層合理的な実施を期した次第であります。第五に、従来の国、都道府県、土地改良区、農業協同組合の行う土地改良事業のほか、新たに市町村も一定の手続を経て土地改良事業を行い得ることとし、土地改良事業の一層の進捗を期したことであります。
なお、以上のほか、総代の定数、役員の監督等につきましても、それぞれ所要の改正を加えました。
以上が本法律案提案の理由とその内容の概要であります。何とぞ御審議の上、御賛成を賜わらんことを切望する次第でございます。
第16回国会衆議院農林委員会議録第15号19頁(昭和28年7月8日)〔保利茂農林大臣発言・発言番号9〕 会議録 国会会議録検索システム
附帯決議
政府はかねてより畜産振興の一環として、酪農事業に重点をおいた有畜農家の創設事業を実施し来り、今回これ声法制化するため、有畜農家創設特別措置法案を提出したが、酪農業の現状をみるに、依然原料乳価は割安であるに拘らず、酪農食品の市価は一般に割高であつて、乳牛の導入はそのまま必ずしも農家経済と国民食生活の改善向上のため十二分なる機能を果すに至つていない。政府は、かかる事情を率直に認識し、一面において自給飼料の増産確保、無家畜農家の解消に一段の努力を傾倒すると共に、他面において牛乳生産経済の集約化、酪農に関する農民組織の育成強化、牛乳取引の改善、酪農食品の集団的消費の促進等一連の酪農振興施策確立のための諸般の措置をすみやかに講ずべきである。右決議する。
本法案の施行に当り特に留意すべき点は家畜増殖の前提として、家畜及び畜産物の価格の維持安定が第一要件である。これなくして相場が常に変動し時に欠損を招来するがごとき事態の消滅せざる限り本法も効果を失いこれが目的の徹底も期しがたい。政府はこの点に鑑み速かに家畜及び畜産物の流通機構の整備並びに価格維持に対し十分な措置を講ずべきである。右決議する。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=101601151)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。