執行猶予者保護観察法案
参議院 法務委員会
昭和29年法律第58号
審議経過
右の数字は会議の発言数提案理由
三浦寅之助 政府委員(法務政務次官) 昭和29年2月24日次にただいま上程に相なりました執行猶予者保護観察法案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
この法律案は、その第一条が明記するように、「刑法第二十五条ノ二第一項の規定により保護観察に付された者がその期間中遵守しなければならない事項を定めるとともに、保護観察の方法及びその運用の基準等を定めることによつて、保護観察の適正な実施を図り、もつて、保護観察に付された者のすみやかな更生に資することを目的とする」ものでありまして、別に提出する刑法の一部を改正する法律案と関連し一体をなすものであります。
保護観察を規定する法律といたしましては、すでに犯罪者予防更生法が施行されており、現在執行猶予とともに保護観察に付する旨の裁判を受けている者は、同法により保護観察を受けているのでありますが、執行猶予者に対し保護観察を付することを創始した第十六国会において、この旨を規定する政府提出の刑法等の一部を改正する法律案を審議した際に、犯罪者予防更生法には、執行猶予者の保護観察については適当でないものがあるから、適切な法案を準備し、すみやかに国会に提案すべきであるとの附帯決議をせられたのであります。
そのため政府は、右の国会の審議の状況にかんがみ、さらに種々検討を加えた結果、別に提出する刑法の一部を改正する法律案を立案するとともに、執行猶予者の取扱いは、犯罪者予防更生法による少年あるいは仮出獄者等の取扱いとは区別する必要があると認め、独立の単行法としてこの法律案を提出いたした次第であります。
この法律案におきましては、まず第三条に、保護観察は保護観察所をしてつかさどらしめるものとし、第五条に、保護観察の中核をなす遵守事項を規定し、「保護観察に付された者は、すみやかに、一定の住居を定め、その地を管轄する保護観察所の長にこれを届け出る」ほか、保護観察に付されている期間中、善行を保持し、住居を移転しまたは一箇月以上の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察所の長に届け出ることとし、第二条において、「保護観察は、本人に本来自助の責任があることを認めてこれを補導援護するとともに、第五条に規定する事項を遵守するように指導監督することによつて行うものとし、その実施にあたつては、画一的に行うことを避け、本人の年齢、経歴、職業、心身の状況、家庭、交友その他の環境等を充分に考慮して、その者にもつともふさわしい方法を採らなければならない。」とし、第四条において、裁判の確定前であつても、本人から申出があつたときは、確定後における保護観察の開始を円滑ならしめるため、環境の状態の調整をはかることができることとし、執行猶予者の保護観察に適切な規定を設けたのであります。このほか、刑法の一部を改正する法律案の成立を前提として、保護観察の仮解除並びに仮解除の取消しを、地方更生保護委員会をしてつかさどらしめることとし、かつ、仮解除の取消をする処分についての不服申立を、中央更生保護審査会に審査せしるめことを規定し、さらに、遵守事項違反を理由とする執行猶予の取消につき必要な呼出、引致、留置及び検察官への申出等の手続を規定し、これらの機関のその他の権限については、犯罪者予防更生法に準じて行使できるようにしたのであります。
なお、附則においては、この法律を施行する日を規定するほか、この法律の施行前に犯罪者予防更生法に基きなされた手続及び処分をこの法律施行後も有効ならしめる経過規定を設け、また犯罪者予防更生法、更生緊急保護法及び刑事補償法の一部を、本法の制定により必要な限度において改正する規定を設けております。
以上述べましたように、刑の執行猶予者に対する保護観察の実効を収め、刑政の目的を達成し犯罪対策に寄与するため、この法律案を提出いたした次第であります。何とぞ慎重御審議の上、御可決あらんことを切望する次第であります。
第19回国会衆議院法務委員会議録第10号3頁(昭和29年2月24日)〔三浦寅之助政府委員発言・発言番号2〕 会議録 国会会議録検索システム
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=101901052)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。