雇用促進事業団法案
参議院 社会労働委員会
昭和36年法律第116号
審議経過
右の数字は会議の発言数提案理由
石田博英 労働大臣 昭和36年2月28日次に雇用促進事業団法案につきまして、その提案理由及び内容の概要を説明申し上げます。
最近の雇用、失業情勢は、雇用者の増加、労働市場における需給状況の改善、失業保険受給者の減少等、全般的には改善を見ておりますが、その反面において、労働力需給のアンバランスが顕著になりつつあることもまた否定し得ないところであります。すなわち、まず経済の発展と技術革新の進行に伴い技能労働力が各種産業部門において著しく不足し、今後もこのような傾向がさらに増大すると見込まれるとともに、新規労働力に対する需要がますます高まり、求人難の事態が一部に顕著になってきているのであります。
また、工業地帯においては、労働力の需給関係が逼迫し、未充足求人が漸増を見ております反面において、低開発地域においては依然として労働力過剰の状態にあり、さらに石炭鉱業等の例に見られますように、産業構造の変化等により、特定の地域においては離職者が集中的に発生しているのであります。
この結果、全国的には雇用情勢の改善を見ております現在におきましても、なお高率の失業の存する地域が依然として見られるのでありますが、労働者が移転する際の住宅難、労働者の移転のための費用負担、求職者の技能の不足等により労働力の移動が円滑に行なわれがたく、これが労働力需給のアンバランスをさらに大きくしているのであります。
このような事態に対処し、離職者の就職を促進してその生活の安定をはかるとともに労働力の有効適切な利用をはかるためには、一面において労働力過剰地域における産業基盤を育成強化し、新たな雇用機会の造出をはかる等の施策を実施するとともに、他面必要な部門に必要な量及び質の労働力を充足して、労働者の福祉の増進と国民経済の発展をはかり、ひいてはさらに一そうの労働力需要の喚起を期するという発展的積極的な施策の推進を必要としているのであります。
従って、今後の雇用政策は、労働力に関する基本的な計画のもとに、訓練の積極的拡充強化等の労働者の能力の開発向上のための施策と、全国的視野に立つ職業紹介体制の確立、転職訓練の強化拡充及び訓練期間中の生活の支援、宿舎の整備等労働力の流動性促進のための施策を軸として強力に進められるべきであると信ずるものであります。
かかる見地から、今回、職業訓練行政機構の強化、公共職業安定所等の職業安定機能の整備拡充をはかるとともに、これらの行政機関の活動と呼応して、きめのこまかい施策を一元的、計画的に実施するため雇用促進事業団を設立することといたしたのであります。
次に法案の内容について、その概要を説明申し上げます。
この法案は、労働者の技能の習得及び向上、地域間及び産業間の移動の円滑化、その他就職の援助に関し必要な業務を行なうことにより、労働者の能力に適応する雇用を促進し、もって労働者の福祉の増進と、経済の発展に寄与することを目的として雇用促進事業団を設立することとして、その組織、業務、財務会計等に関し、必要な事項を定めるとともに、これに伴い労働福祉事業団の業務の範囲を改正し、炭鉱離職者援護会を解散する等の規定を設けたものであります。
すなわち、第一に雇用促進事業団は法人といたしますとともに、その資本金は、従来政府の失業保険特別会計及び地方公共団体から労働福祉事業団に対して出資のあった額をもって設立当初の資本額といたしております。役員につきましては、理事長、副理事長のほか、理事、監事等所要の役員を置くものとし、理事長、副理事長、監事は労働大臣が、理事は労働大臣の認可を受けて理事長がそれぞれ任命することとしております。
第二に事業団の行なう業務といたしましては、総合職業訓練所及び中央職業訓練所の設置及び運営並びに事業内職業訓練の援助、職業訓練を受ける者に対する手当の支給、公共職業訓練を受ける者のための宿泊施設の設置及び運営、移転就職者のための宿舎の設置及び運営、簡易宿泊施設その他の福祉施設の設置及び通常、移転就職君に対する移転に要する費用の支給、職業講習の開催、就職資金の貸付、身元保証、必要な調査研究並びにこれらに附帯する業務を行なうこととし、あわせて、これらの業務の遂行に支障のない範囲内で、国または地方公共体の委託を受けて、これらの施設を利用して、労働者の福祉の増進をはかるため必要な業務を行なうことができることといたしました。
第三に、事業団の財務会計及びその監督につきましては、事業団の予算、事業計画、資金計画、財務諸表、借入金等について労働大臣の認可または承認を受けることを要することとするとともに、事業団は労働大臣の監督に服し、労働大臣は事業団に対して監督上必要な命令をすることができることとしております。
第四に、雇用促進事業団は、従前労働福祉事業団が行なっていた総合職業訓練所、中央職業訓練所等の失業保険福祉施設の設置及び運営に関する業務を引き継ぐとともに、これらの業務に要する資産及び権利義務を承継することといたしております。
第五に、炭鉱離職者臨時措置法に基づいて、従前炭鉱離職者援護会が行なっていた業務につきましては、促進事業団が炭鉱離職者援護会から引き継ぐとともに、炭鉱離職者援護会の有する一切の資産及び権利義務を承継することとして、炭鉱離職者援護会は事業団成立とともに解散することといたしました。
なお、炭鉱離職者臨時措置法に基づいて行なう特別の対策としての業務につきましては、その業務の範囲、費用の負担等は従前通りとし、この業務にかかる経理については、他の業務にかかる経理と区分するため、特別の会計を設けて行なうこととし、またその監督については労働大臣と通商産業大臣の共管といたしております。
以上がこの法案提案の理由並びにその概要でありますが、御審議の上、何とぞすみやかに可決あらんことをお願い申し上げます。
第38回国会衆議院社会労働委員会議録第9号10頁(昭和36年2月28日)〔石田博英労働大臣発言・発言番号5〕 会議録 国会会議録検索システム
附帯決議
一経済の成長発展に伴う産業構造、就業構造の急激な変化に対処し、完全雇用に関する総合的、基本的政策を樹立するため、政府はすみやかに雇用基本法の制定に努めること。
二雇用促進事業団に、その業務運営の円滑適正を期する目的をもつて、主要事項につき協議するため、労使を含む関係者等をもつて構成する通常協議会を設置すること。
三政府は、雇用促進事業団に対し、第十九条第一項の業務に相当な金額を一般会計より支出することを目途としてその交付金を増額することに努めること。
四政府は、産炭地その他失業者多発地域においては、離職者等の営業の自立をはかるため、生業資金の貸付その他金融措置の万全を期すること。
一政府は、すみやかに雇用基本法を制定し、適正な労働条件のもとの完全雇用に関する総合的、基本的政策を樹立するよう努めること。
二業務運営の円滑適正を期するため雇用促進事業団に、労使を含む関係者を構成員とする運営協議会を設けること。
三政府は、法第十九条第一項の事業団の行う業務に対し、一般会計より支出する等の方法によりその出資金及び交付金を増額するよう努めること。
四政府は、生業資金の貸付等の方法により離職者自立のため万全を期すべきであり特に炭鉱及び駐留軍離職者に対し特別の配慮をなすべきである。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=103801080)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。