農業災害補償法及び農業共済基金法の一部を改正する法律案
衆議院 農林水産委員会
昭和46年法律第79号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院農林水産委員会
- S46.5.7趣旨説明・補足説明農林水産委員会 23115
- S46.5.12質疑農林水産委員会 25272
- S46.5.13質疑・修正案・修正案趣旨説明・附帯決議・採決(修正)農林水産委員会 26167
- S46.5.14委員長報告・修正案・採決(修正)・附帯決議本会議 3029
参議院農林水産委員会
- S46.5.18衆議院修正部分趣旨説明・趣旨説明・補足説明・質疑・議案(衆議院修正部分)農林水産委員会 16101
- S46.5.21討論・採決・附帯決議農林水産委員会 17123
- S46.5.24附帯決議本会議 1
- S46.5.24委員長報告・採決本会議 1582
提案理由
小暮光美 政府委員(農林省農林経済局長) 昭和46年5月7日農業災害補償法及び農業共済基金法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。
まず第一に、需要に即応した農業生産の推進に資するための措置について御説明申し上げます。
その一は、農作物共済の合理化でございます。
現行の農作物共済の共済掛け金の国庫負担は、最低五〇%から出発して、共済掛け金率が高くなるほどこれが高くなる超過累進方式になっております。しかしながら、このため、必ずしも生産適地とはいいがたい高被害地域に対し、他の地域と比較して著しく高率の国庫負担をする結果となっておりますので、最近における農業事情を考慮して、その是正をはかることとした次第であります。
すなわち、その共済掛け金率が全国平均の共済掛け金率にその標準偏差を加えたものをこえる地域につきましては、そのこえる部分の共済掛け金率に対応する共済掛け金に対する国庫負担率を、全国平均の共済掛け金率にその標準偏差を加えたものに適用される国庫負担率と同率とすることを旨とするよう改めることといたしました。この結果、たとえば、水稲の場合では、共済掛け金率が七%をこえる部分の国庫負担率は百分の七十となり、国庫負担率の累進の程度は、現行のそれと比較してゆるやかなものとなるのであります。
次に、米につきましては、最近、生産が需要を大幅に上回る状態となっており、需給調整の推進が急務となっておりますが、農業災害補償制度につきましても、新規開田の抑制に資するため、当分の間、この改正法案の施行後にその造成が完了した耕地等において耕作される水稲の引き受け除外措置を講ずることといたしております。なお、これらの耕地において耕作される水稲であっても、一定の事由があるときには、例外的に引き受けることができることといたしております。
その二は、蚕繭共済の充実でございます。
まず、最近における養蚕経営、被害の発生態様の変化等にかんがみまして、掛け金負担の適正化及び共済金の早期支払いに資するため、共済目的の種類を、現行の春蚕繭及び夏秋蚕繭の二種類から春蚕繭、初秋蚕繭及び晩秋蚕繭の三種類にすることとし、また、これらの変化をより一そう早期に料率に反映させるため、従来五年ごとに行なっていた共済掛け金率の改訂を三年ごとに行なうことといたしております。
次に、現在の蚕繭共済の最高の補てん割合は、繭の価格の五〇%となっておりますが、他の農業共済事業との均衡を考慮して、これを繭の価格の六〇%まで引き上げて、補償の充実をはかることといたしております。
また、そのほか、蚕繭共済につきましては、最近における蚕の飼養形態の変化等に即応するため、蚕児の共済事故に火災及び獣害を加える等の改善を行なうことといたしております。
その三は、家畜共済の掛け金国庫負担の強化でございます。
現行の家畜共済の共済掛け金国庫負担は、農家ごとに全頭一括して加入する包括共済につきましては、牛及び馬は、最低三分の一とし、特に、乳牛の雌に関しては、多頭飼養の促進の観点から、飼養頭数規模が三頭以上五頭以下の者は五分の二、六頭以上二十九頭以下の者は二分の一とし、肉用牛に関しては、肉資源の確保の観点から、当分の間一律五分の二としてそれぞれ優遇措置を講じております。また、一頭ごとに加入する個別共済につきましても、牛及び馬に関し、死亡及び廃用に対応する共済掛け金の二分の一を国庫が負担しておりますが、種豚については、包括共済、個別共済ともに、共済掛け金の国庫負担はいたしておりません。
以上述べました現行の共済掛け金の国庫負担方式は、昭和四十一年における制度改正により定められたものでありますが、畜産振興の重要性、その後における多頭飼養化の一層の進展等にかんがみ、今回、さらに、国庫負担を引き上げて、農家負担の軽減による加入の促進をはかり、畜産経営の安定に寄与することとした次第であります。
すなわち、包括共済にかかる共済掛け金の国庫負担につきましては、牛及び馬は最低五分の二に引き上げ、特に、飼養頭数規模が、乳牛の雌に関しては三頭以上四十九頭以下の者、肉用牛に関しては三十九頭以下の者に対しては二分の一と優遇することとしております。また、個別共済につきましても、牛及び馬は、死亡及び廃用部分だけでなく、疾病及び傷害部分も含めた共済掛け金の五分の二を国庫負担するよう改善することとし、さらに、種豚については、新たに、包括共済、個別共済ともに、三分の一の国庫負担をすることといたしております。
第二に、農作物共済における農家単位引き受け方式の選択的導入について御説明申し上げます。
現行の方式は、一筆単位引き受け方式でありますが、災害を受けた農家の所得の合理的補てんという観点から、農家単位引き受け方式の採用の道を開くこととした次第であります。すなわち、現行の一筆単位引き受け方式においては、各耕地ごとに三割以上の減収があれば共済金を支払うこととなっておりますが、改正法案の農家単位引き受け方式では、被害のあった耕地ごとの減収量を農家ごとにまとめてみて、その減収量の合計がその農家全体の基準収穫量の二割をこえることとなった場合に共済金を支払うことといたしております。損失の補てんの内容につきましては、現行の一筆単位引受け方式では、全損の場合の共済金は期待し得る収入の六三%が上限となっておりますが、農家単位引き受け方式の場合には、これを七二%まで引き上げることといたしております。
この農家単位引き受け方式につきましては、全部の組合等がこの方式に移行することは困難であると思われますので、その採用は、組合等の自主性にゆだねることといたしております。また、この方式の対象となる共済目的の種類も、政令で指定することとしておりますが、一農家当たりの耕作筆数、損害評価体制等を考慮し、当面は水稲に限ることとする予定であります。
なお、この農家単位引き受け方式につきましては、できるだけ多くの組合等がこの方式を採用するとともに、この方式による共済事業が円滑に実施できるよう、当分の間、この方式を実施する組合等に対し国庫より一定額の補助金を交付することができることといたしております。
第三に、農業共済団体の組織の整備について御説明申し上げます。
その一は、農業共済組合の区域の広域化であります。現行の農業共済組合の区域は、原則として一つの市町村の区域によることとされておりますが、最近における労働不足及びこれに伴う人件費の上昇等により農業共済組合の事業運営費の増大傾向には顕著なものがありますので、近年における交通手段の発達、事務機械の普及等を考慮しつつ、農業共済組合の区域を原則として一または二以上の市町村の区域によることに改めてその広域化をはかることといたしました。これにより、事業運営基盤が強化され、共済事業が円滑に実施できることとなるものと期待いたしております。
その二は、農業共済組合の総代会の権限の拡大であります。農業共済組合がその区域を広域化して大型化しますと、総会の開催ないし運営が困難となる場合も考えられますので、組合活動の円滑化をはかるため、総代会の権限を拡大し、総代の選挙及び解散の議決の場合を除いてすべて総会にかわることができるようにいたしております。
その三は、農業共済組合連合会の組合員について一組合員一票制の特例を設けることであります。農業共済組合がその区域を広域化しますと、連合会の組合員である組合等の規模に相当の格差が生じ、従来の一組合員一票制では実質的平等が確保されがたいことも考えられますので、連合会の組合員たる組合等に対し、その組合員等の数に基づいて二個以上の議決権及び選挙権を与えることができるようにいたしております。
また、このほか、事務執行体制の整備強化をはかるため、農業共済団体の参事にかかわる規定を新設してその選任方法、職務権限等を明確にするとともに、農業共済団体の役員及び総代の選挙の円滑な実施をはかるため、これらの選挙において無投票当選制を導入することができることといたしております。
第四に、農業共済基金の業務範囲の拡充について御説明申し上げます。
現行の農業共済基金の業務は、その会員たる農業共済組合連合会が必須共済事業である農作物共済、蚕繭共済及び家畜共済に関して支払う保険金の支払いに不足を生じたときに資金を貸し付け、または当該保険金の支払いに関して連合会が負担する債務の保証を行なうことに限られておりますが、農業共済基金に対する農業共済組合連合会の出資金の大半が組合等の拠出金によっていること、昭和三十八年の制度改正により組合等の手持ち共済責任が拡大したこと、農業共済基金の資金事情が最近好転していること等にかんがみ、今回新たに組合等段階における共済金支払いの円滑化に資するため、組合等に対しても必須共済事業にかかわる共済金の支払いに関して資金の貸し付け及び債務の保証の業務等ができるようにいたしております。なお、この結果、農業共済基金の業務は相当増大することが考えられますので、組合等に対する資金の貸し付け及び債務の保証の業務につきましては、その一部を当該組合等を組合員とする農業共済組合連合会に委託することができるようにいたしております。
以上のほか、無事故農家対策の強化をはかるため現行の無事戻し制度を無事故調整金制度に改めて財源及び交付内容の充実をはかるとともに、家畜共済について診療給付の適正化をはかるための措置を講ずる等所要の改善整備を行なうことといたしております。
なお、最後に、この制度改正の実施時期でありますが、改正内容が制度全般にわたりますので、準備期間等も考慮して、昭和四十七年度からといたしております。
以上をもちまして提案理由の補足説明を終わります。
第65回国会衆議院農林水産委員会議録第23号11頁(昭和46年5月7日)〔小暮光美政府委員発言・発言番号6〕 会議録 国会会議録検索システム
附帯決議
まず、案文を朗読いたします。農業災害補償法及び農業共済基金法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)政府は、本法の運用にあたり、本制度が農業経営の安定的発展に一層寄与するよう左記各項の実現に遺憾なきを期するべきである。記
一家畜共済における共済掛金の国庫負担割合をさらに改善するとともに、損害防止事業の強化、獣医師の待遇改善について特段の考慮を払うこと。
二農業共済基金は、会員等に対する業務資金について融資が行なえるよう所要の措置を講ずること。
三果樹保険の本格実施にあたつては、農家の意向を十分に反映するよう努めるとともに、掛金に対する国庫負担の増額等所要の措置を講ずること。
四畑作、肉豚、鶏及び施設園芸等の新種共済について早急にその制度化を図ること。
五米の生産調整による賦課金の減収等の実情にかんがみ、農業共済団体等の事務費国庫負担金の増額等所要の措置を講ずること。
政府は、現下の困難な農業情勢に対処し、一層本制度の整備拡充を図り、農業経営の安定と健全な発展に寄与するよう、左記事項を検討し、すみやかにその達成に努めるべきである。記
一農業共済組合の広域合併の推進にあたっては、農民の意向が十分に反映されるよう、組合の民主的運営にづき特段の指導をすること。
二蚕繭共済については、共済事故の範囲の拡大を考慮するとともに、料率の算定にあたっては最近の被害率の低下傾向が反映されるよう措置すること。
三家畜共済については、さらに共済掛金国庫負担割合の改善を図り、実情に即した診療点数の改定、獣医師の待遇改善、損害防止事業の強化等を一層促進し、家畜診療体制の整備拡充を期すること。
四果樹保険の本格実施にあたっては、補償内容の充実、対象品目と対象事故の拡大、樹体保険の制度化等に努め、掛金国庫負担の増額措置を講ずること。また、施設園芸・肉豚、鶏、畑作物等の新種共済については、早急にその制度化を図ること。
五農業共済団体の事務費に関しては、米の生産調整による賦課金の減収、事務執行体制の整備、職員・共済連絡員等の待遇改善を配慮して、国庫負担の充実を図ること。
六農業共済基金は、会員等に対する業務資金について融資が行なえるよう所要の措置を講ずること。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=106501088)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。