公害健康被害補償法案
参議院 公害対策及び環境保全特別委員会
衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会公聴会
昭和48年法律第111号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院公害対策並びに環境保全特別委員会・公害対策並びに環境保全特別委員会公聴会
- S48.7.6趣旨説明公害対策並びに環境保全特別委員会 35230
- S48.7.10質疑公害対策並びに環境保全特別委員会 36217
- S48.7.12参考人招致公害対策並びに環境保全特別委員会 37184
- S48.7.13質疑公害対策並びに環境保全特別委員会 3899
- S48.7.16公聴会公害対策並びに環境保全特別委員会公聴会 1163
- S48.7.17質疑公害対策並びに環境保全特別委員会 39254
- S48.7.18質疑公害対策並びに環境保全特別委員会 40239
- S48.7.19質疑公害対策並びに環境保全特別委員会 41223
- S48.7.20質疑公害対策並びに環境保全特別委員会 42106
- S48.8.31質疑公害対策並びに環境保全特別委員会 45242
- S48.9.13修正案・修正案趣旨説明・討論・採決(修正)・附帯決議公害対策並びに環境保全特別委員会 4828
- S48.9.18委員長報告・修正案・採決(修正)・附帯決議本会議 5931
参議院公害対策及び環境保全特別委員会
- S48.8.31趣旨説明公害対策及び環境保全特別委員会 1491
- S48.9.12参考人招致公害対策及び環境保全特別委員会 1539
- S48.9.19衆議院修正部分趣旨説明・補足説明・質疑・議案(衆議院修正部分)公害対策及び環境保全特別委員会 17224
- S48.9.20質疑・修正案趣旨説明・討論・採決・附帯決議・修正案公害対策及び環境保全特別委員会 18212
- S48.9.26附帯決議・採決・委員長報告本会議 4049
提案理由
三木武夫 環境庁長官・内閣総理大臣臨時代理 昭和48年7月6日ただいま議題となりました公害健康被害補償法案について、その提案の理由及び内容を御説明申し上げます。
経済の急速な拡大と都市化の進行の過程におきまして、環境汚染の進行には著しいものがあり、大気の汚染や水質の汚濁による健康被害の発生は重大な社会問題となってきております。昨今相次いで終結を見るに至りました四大公害裁判は、これら公害による健康被害の深刻さと問題解決の困難さを如実に物語るものであります。
このような深刻な公害による健康被害者を救済するため、政府におきましては、昭和四十四年には、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法を制定し、当面の緊急措置として医療費等の給付を行なうという行政上の救済措置を講ずるとともに、昭和四十七年には、事業者の公害にかかる無過失責任を明らかにする法律を制定し、民事上の見地からも、被害者を救済する措置を講じてまいったところであります。
しかしながら、健康被害救済特別措置法におきましては、逸失利益に対する補償がないなど給付の内容が限定されており、また、いわゆる無過失責任法におきましては、民事訴訟の手段により損害賠償を求めるものであるためにその解決にはかなりの労力と時日を要するという問題があり、被害者の救済に万全を期するとはいいがたい現状にあります。特に、原因者が不特定多数で、民事的解決にゆだねることがきわめて困難と見られる都市や工業地域における大気の汚染による健康被害者の救済の問題は、当面すみやかな解決を必要とする課題となっております。
このような事態に対処して、今回、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる著しい大気の汚染または水質の汚濁の影響による健康被害に対して補償等を行なうことにより、健康被害を受けた被害者の迅速かつ公正な保護をはかるため、公害健康被害補償法案を提案した次第であります。
以下、この法律案の内容を御説明申し上げます。
第一に、救済の対象となる者の範囲でありますが、政令で定める地域において政令で定める疾病にかかっている等一定の要件を満たすものとして都道府県知事等の認定を受けた者及びその遺族等としております。
第二に、給付の種類でありますが、療養の給付、障害補償費、遺族補償費、遺族補償一時金、児童補償手当、療養手当及び葬祭料の七種類の補償給付を行なうこととしております。
まず、療養の給付は、公害医療機関において現物給付として行なうことを原則としており、療養の給付を行なうことが困難であると認める場合には、療養の給付にかえて、療養費を支給することができるものとしております。
なお、療養の給付及び療養費については、従来健康保険等が負担していた分も含めて負担することとしております。
次に、障害補償費は、指定疾病による障害を受けている者に対して、その障害の程度に応じて労働者の賃金水準その他の事情を考慮して定める額を支給することとしております。
次に、遺族補償費は、指定疾病に起因して死亡した者の遺族に対して、労働者の賃金水準、死亡した者が死亡しなかったとすれば通常支出すると見込まれる経費その他の事情を考慮して定める額を支給することとしております。
なお、遺族補償費を受けることができる遺族がない場合には、一定の者に遺族補償一時金を支給することとしております。
次に、児童補償手当は、指定疾病による障害が一定の程度にある児童を対象として、療養手当は、被害者が指定疾病にかかっているために医療を受けており、かつ、その病状が一定の程度にある者に対して、また、葬祭料は、被害者が指定疾病に起因して死亡したときにその葬祭を行なう者に対して支給することとし、これらの補償給付の額は政令で定めることとしております。
第三に、補償給付の支給の実施機関でありますが、救済の対象となる地域として政令で定める地域の全部または一部を管轄する都道府県知事等が認定及び補償給付の支給の事務を行なうこととしております。
第四に、都道府県知事等は、被害者の健康を回復させる等被害者の福祉を増進し、及び指定疾病による被害を予防するために必要な公害保健福祉事業を行なうこととしております。
第五に、本制度に必要な費用についてでありますが、まず、ぜんそく等の非特異的疾患に係る被害者に対する補償給付の支給に要する費用につきましては、大気汚染防止法に規定するばい煙発生施設等を設置する事業者から、その汚染負荷量に大気の汚染の状況に応じた地域の別に定める料率を乗じて得た金額として徴収した汚染負荷量賦課金を充てるほか、別に法律で定めるところにより徴収される金員をもって充てることとしております。
次に、特異的疾患に係る被害者に対する補償給付の支給に要する費用につきましては、大気汚染防止法に規定するばい煙発生施設もしくは特定施設または水質汚濁防止法に規定する特定施設を設置する事業者から徴収する特定賦課金を充てることとしております。
また、公害保健福祉事業に要する費用につきましては、その二分の一を事業者から徴収する賦課金等をもって充てることとし、残余の二分の一につきましては、国と都道府県等とが折半して負担することとしております。
さらに、認定及び補償給付の支給に関する事務の処理に要する費用につきましては、国と都道府県等が折半して負担することとしております。
第六に、賦課金の徴収及び納付に関する機構でありますが、汚染負荷量賦課金及び特定賦課金の徴収を行なうとともに、都道府県等に対する納付金の納付等を行なう組織として、特殊法人である公害健康被害補償協会を設置することとしております。
第七に、不服申し立てについてでありますが、被害者である旨の認定または補償給付の支給に関する処分に対する審査請求事件を取り扱わせるために、委員六人をもって組織する公害健康被害補償不服審査会を設置することとしております。
第八に、この法律は、公布の日から起算して一年をこえない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
第九に、この法律の制定に伴い公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法は廃止することとし、これに伴う経過措置を講ずるほか、所要の経過措置を定めることとしております。
以上がこの法律案の提案の理由及びその内容であります。
何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
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第71回国会衆議院公害対策並びに環境保全特別委員会議録第35号14頁(昭和48年7月6日)〔三木武夫環境庁長官発言・発言番号2〕 会議録 国会会議録検索システム
附帯決議
まず、案文を朗読いたします。公害健康被害補償法案に対する附帯決議(案)政府は、本法の施行にあたり、本法がもつ精神を尊重し、誠実に効果的に実施するとともに次の諸点につき適切な措置を講ずべきである。
一現在の公害関係諸法令による規制では、環境汚染を完全に防止することが困難であるのみでなく、公害病患者が増加しつつある現状にかんがみ、汚染原因者の汚染防止努力が最大限になされるよう規制を大幅に強化して公害の発生源対策に万全を期すること。
二指定地域の指定にあたっては、すべての公害病患者が本制度の対象から除外されることのないよう合理的な指定基準を定め、これに基づいて適正な指定を行なうこと。
三指定疾病については、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法で指定されていないものについても被害の実態を調査し、専門技術的な検討を加え、逐次対象に加えること。
四公害健康被害認定審査会が、認定審査について意見をきめるにあたっては、特に健康被害者の治療を担当している主治医の診断が尊重されるよう配慮すること。
五認定の更新については、申請もれ等により当然認定の更新を受けるべき者が資格を失うことのないよう、被認定者に対し、認定の更新時期について周知徹底をはかるなど万全の措置を講ずるとともに、障害の程度に変更がない者については、申請手続を簡素化するよう配慮すること。
六慰謝料については、公害裁判判例にみられるように、これが公害病患者に対する補償の重要な要素であることにかんがみ、本制度においても補償給付の内容の充実を図るよう積極的に検討すること。
七公害による健康被害者の保護の一層の充実を図るため、補償給付の種類についても今後検討を加えること。
八療養の給付にあたっては、費用の実態に即した給付を行ない、被害者の超過負担が行なわれることのないよう配慮すること。
九障害補償費及び遺族補償費の給付水準は、すでに公害裁判判例によって示された水準を参酌すること。
十障害補償費の基礎となる労働者の賃金水準については、公害による健康被害者の保護の一層の充実を図るため、全指定地域の賃金水準をも考慮するよう検討すること。
十一介護加算額は、介護の実態把握に努め、被害者の超過負担とならぬようにするため、実際に即応した額になるよう配慮すること。
十二児童補償手当、療養手当及び葬祭料については、実情に即した適正な額となるようにするとともに、物価水準の変動等に応じてすみやかに改訂を行なうこと。
十三定期的補償給付の支払いは、被害者の生活に支障をおよぼさないため、可能な限り毎月行なえるよう支払事務の省力化、必要な人員の確保等について検討すること。
十四被認定者等が正当な理由がなく療養に関する指示に従わなかった場合及び指定疾病による障害等に関し他の原因がある場合における補償給付の制限等に関する規定は、その運用にあたり公害事象の特殊性にかんがみ、いやしくも公害による健康被害者保護の本旨にもとることのないよう特に慎重を期すること。
十五公害による被害者に対する救済は、何よりもまず、そこなわれた健康を回復することが重要であるので、健康被害者の実態等を十分把握し、調査研究を進め、実情に応じた効果のある公害保健福祉事業の実施を推進すること。
十六本制度の給付の実施主体である都道府県知事等の事務費については、超過負担がないよう十分な措置をとること。
十七費用負担については、汚染原因者の責任が不明確にならないよう汚染原因者負担の原則の徹底をはかるため、十分に配慮すること。
十八本法に基づく政令の制定にあたっては、国会における論議をふまえ、被害者保護の趣旨がそこなわれないよう十分に留意すること。
十九環境汚染による農業、漁業及び関連事業等の生業被害についても健康被害におとらない深刻さを有している実情にかんがみ、被害の態様や因果関係の解明等の総合的な調査研究を行ない、早急に補償制度の確立を図ること。
二十騒音等の影響による健康被害についても、その実態の把握に努め、被害者の迅速な保護を図るための補償制度を検討すること。
二十一汚染源対策が基本的な問題であることにかんがみ、あらたに総量規制方式を導入するよう大気汚染防止法の改正を行なうこと。
公害健康被害補償法案附帯決議案公害対策の要諦は発生の予防にあることにかんがみ、政府は、今後の産業立地政策を公害病の絶滅、生活環境保全を優先する思想に立脚し、この際抜本的に転換すべきである。いやしくも、公害を発生する企業に対しては、各般にわたるきびしい規制・制裁の措置をとるとともに、産業の立地については、住民の意思を十分尊重すべきである。また、公害発生の原因となる資源多消費型産業、公害発生型産業については、立地の規制、誘導の施策をさらに強め、産業構造を長期展望に立って改めることが緊要の課題であって、これを果断に実施すべきである。とくに、産業立地の指導監督の衝にあたる行政当局が、その責任を深く認識し、環境保全に関する企業論理の確立について、強力な指導を行なうべきである。なお、これらの施策にあたって、環境庁長官に与えられている勧告権の有効な権限行使が公害防止の実をあげることを強く期待する。政府は、以上のような基本姿勢に立って、本法の施行にあたっては、次の諸点につき、適切な措置を構ずることによって、公害による被害者保護の一層の充実を図るべきである。
一第一種指定地域における企業の立地及び操業の規制強化並びに総量規制方式の導入を含めて、発生源対策の強化に万全を期すること。
二地域の指定にあたっては、すべての公害病患者が救済されるよう適正な指定を行ない、疾病の指定については、続発症をも含めて、広く対象に加えるよう検討するとともに、窒素酸化物等疾病原因となる有害物質についての検討をすすめること。
三公害健康被害認定審査会の認定審査にあたっては、主治医の診断が尊重されるよう配慮すること。
四患者の認定審査を円滑にすすめる前提として、健康調査・診断の体制を早急に整備すること。そのために、公害病専門医師の養成、確保の措置を講ずるよう努力すること。
五認定の更新については更新時期の周知徹底をはかるとともに、障害程度の変更のない者については、申請手続きを簡素化するなど、被認定者の利便に万全を期すること。
六慰謝料については、公害裁判判例にみられるように、これが公害病患者に対する補償の重要な要素であることにかんがみ、本制度においても補償給付の内容の充実を図るよう積極的に検討すること。
七補償給付の種類について今後検討を加えるほか、その給付水準については、裁判判例で示された水準を参酌するとともに、補償費算定の基礎となる労働者の賃金水準を全指定地域の賃金水準を考慮して定めるよう検討すること。
八療養の給付及び介護加算については、費用の実態に即した給付ならびに額の設定を行なうことによって、被害者に超過負担させないよう配慮するとともに、夜間往診及び附添看護について医学的・社会的に妥当と認められるものをとり入れるよう配慮すること。
九児童補償手当、療養手当及び葬祭料については、実情に即した適正な額となるようにするとともに、物価水準の変動等に応じてすみやかに改定すること。
十定期的補償給付については、可能な限り毎月支払えるよう事務体制を整備し、必要な人員確保等について検討すること。
十一被認定者等に対する補償給付の制限等に関する規定は、その運用にあたっては、公害事象の特殊性にかんがみ、いやしくも被害者保護の本旨にもとることのないよう、とくに慎重を期すること。
十二公害保健福祉事業については、被害者の健康回復、公害病の発生予防を効果的に行なえるよう、地域の実情に即した事業の実施を推進すること。
十三給付の実施主である都道府県知事等の事務費については、超過負担がないよう十分な措置をとること。
十四賦課金徴収については、汚染原因者の責任が不明確にならないよう原因者負担の原則の徹底をはかること。
十五騒音、振動等による健康被害の実態を把握し、被害補償制度の樹立を検討するとともに、農・漁業及び関連事業の生業被害についても早急に補償制度の確立をはかること。
十六本法による補償給付と生活保護における収入認定との関係については、公害被害者の実態と特殊性を十分に配慮して、その調整を検討すること。
十七本法にもとずく政令の制定にあたっては、国会における論議をふまえ、被害者保護の趣旨がそこなわれることのないよう十分に留意すること。
十八本法の施行は、できるだけ早い時期とするよう努力すること。
十九この法律は、公害患者に対する最低限の補償措置である点にかんがみ、いやしくも、被害者の発生源者に対する損害賠償の自主交渉及び訴訟について、抑制となることのないよう、特段の配慮をすること。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=107101123)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。