刑事訴訟法の一部を改正する法律案
参議院 法務委員会
昭和51年法律第23号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院法務委員会
- S51.3.2趣旨説明法務委員会 281
- S51.5.7質疑法務委員会 736
- S51.5.11質疑・修正案趣旨説明・採決・修正案法務委員会 868
- S51.5.11採決・委員長報告本会議 1760
参議院法務委員会
- S51.5.13趣旨説明・質疑・修正案趣旨説明・修正案・採決法務委員会 5167
- S51.5.14採決・委員長報告本会議 1167
提案理由
稲葉誠一 国務大臣 昭和51年3月2日次に、刑事訴訟法の一部を改正する法律案について、提案の理由を御説明いたします。
刑事事件において無罪の判決を受けた者は、現在でも、刑事補償法により、未決の拘禁または刑の執行による損害について補償を受けることができますし、さらに、検察官の故意または過失により不法に公訴を提起された場合には、国家賠償法に基づき、これによって生じた損害の賠償を国に請求することができることとなっておりますが、これらの制度だけでは無罪の判決を受けた者の救済方法として必ずしも十分ではないと考えられるのであります。
すなわち、罪を犯したとして公訴を提起された者は、公判廷への出頭を義務づけられるだけでなく、効果的な防御活動を行うためには弁護人を選任してその補佐を受ける必要が生じますが、そのためには相当多額の費用を要するのでありまして、被告人に対し無罪の判決が言い渡され、結果的には不当な公訴の提起を受けたことが確定した場合には、その者が応訴を余儀なくされたことによって生じた財産上の損害を国で補償することとするのが、公平の精神に合致するものと思量されるのであります。
なお、現行刑事訴訟法におきましても、検察官のみが上訴した事件において、上訴が棄却され、または取り下げられた場合には、その事件の被告人であった者に対し、上訴審において生じた費用の補償をすることとされておりますが、検察官による上訴が結果的に不当であった場合と、公訴の提起そのものが結果的に不当であった場合とを区別する十分な根拠がないだけでなく、公訴の提起が不当であった場合に被告人のこうむる財産上の損害は、検察官の上訴が不当であった場合よりも大きいのが通常でありまして、上訴費用の補償を認めながら無罪の場合に費用の補償を認めないのは、法制度としての均衡を欠くものとも言えるのであります。
以上のような事情を考慮いたしまして、無罪の確定判決を受けた者に対し、公訴の提起から裁判の確定に至るまでに要した防御のための費用を補償することとする趣旨で、この法律案を提出することとした次第であります。
この法律案の骨子は、次のとおりであります。
第一点は、国が費用を補償する場合の要件についてであります。無罪の判決が確定したときは、国は、当該事件の被告人であった者に対し、その裁判に要した費用を補償するものとし、例外として、被告人であった者の責めに帰すべき事由によって生じた費用あるいは被告人であった者が、捜査または審判を誤らせる目的で虚偽の自白等をしたため公訴を提起された場合の費用については、補償をしないことができることとしたのであります。
第二点は、補償すべき費用の範囲についてであります。被告人であった者またはその弁護人であった者が公判期日等に出頭するに要した旅費、日当及び宿泊料並びに弁護人であった者に対する報酬に限って補償することとし、その額については刑事訴訟費用に関する法律の規定を準用するが、公判期日等に出頭した弁護人が二人以上あった場合には、裁判所は、事件の性質、審理の状況等を考慮して、弁護人であった者の旅費、日当及び宿泊料を一部の弁護人に係るものに限ることができることとしております。
第三点は、補償の手続等についてであります。補償は、被告人であった者の請求により、無罪の判決をした裁判所が決定で行い、その請求は、無罪の判決が確定した後六カ月以内にこれをしなければならないこととし、さらに、補償に関する手続、他の法律による損害賠償との関係、補償を受ける権利の譲渡または差し押さえ及び相続人に対する補償については、この法律に特別の定めがある場合のほか、刑事補償法の例によることとしております。
第四点は、以上の費用補償の制度の新設に伴う関連改正であります。現行の上訴費用の補償及び上訴に関する訴訟費用の負担について所要の改正をすることとしております。
以上が刑事訴訟法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
第77回国会衆議院法務委員会議録第2号2頁(昭和51年3月2日)〔稲葉誠一国務大臣発言・発言番号6〕 会議録 国会会議録検索システム
立法資料のある条文
この法律案の審議で取り上げられた条(政府答弁の件数順)出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=107701029)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。