雇用保険法等の一部を改正する法律案
参議院 社会労働委員会
昭和59年法律第54号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院社会労働委員会
- S59.3.9趣旨説明・質疑本会議 923
- S59.3.27趣旨説明社会労働委員会 3203
- S59.4.17質疑社会労働委員会 8266
- S59.4.24質疑社会労働委員会 10235
- S59.5.8質疑社会労働委員会 11194
- S59.5.15質疑・修正案趣旨説明・附帯決議・採決(修正)・修正案社会労働委員会 1494
- S59.5.17採決(修正)・委員長報告・附帯決議本会議 2623
- S59.7.6参議院回付案同意・参議院回付案本会議 3319
参議院社会労働委員会
- S59.5.18趣旨説明・質疑本会議 1653
- S59.6.21趣旨説明・衆議院修正部分趣旨説明・質疑社会労働委員会 10272
- S59.6.28質疑社会労働委員会 12218
- S59.7.5質疑・修正案趣旨説明・討論・附帯決議・採決(修正)・修正案社会労働委員会 1348
- S59.7.6附帯決議・委員長報告・採決(修正)本会議 2031
提案理由
坂本三十次 労働大臣 昭和59年3月9日ただいま議題となりました雇用保険法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
ここ数年、雇用問題をめぐる環境は大きく変わりつつあります。すなわち、高齢化社会の進展に伴い、労働力人口の高齢化が急速に進んでおり、また、婦人の職場進出も着実に増加しております。また、雇用の場が第二次産業よりもサービス業において拡大するなどのいわゆるサービス経済化が進んできております。さらに、マイクロエレクトロニクスを中心とする技術革新、素材産業などに見られるような産業構造の転換等が進みつつあります。しかも、このような構造的な変化は、今後とも一層進展することが見込まれる情勢となってきております。
政府といたしましては、このような変化に的確に対応し、雇用の安定が図られるよう各般の施策を積極的に推進していくことを基本方針としており、特に雇用保険制度において、その効率的な運営を確保して、失業の未然防止と離職者の再就職の促進を図ることが極めて重要であると考えております。
ところで、このような情勢の変化を背景として、最近における雇用保険の受給者数は年ごとに大幅な増加傾向を示すとともに、高年齢者を中心として再就職をする受給者の割合も著しく減少しており、これに伴い、雇用保険財政も急速に悪化しつつあります。このような情勢にかんがみ、雇用保険制度が創設されて十年を経た今日において、これらの構造的な変化に的確に対応し得るものとするよう、その見直しが必要となってまいりました。
このため、中央職業安定審議会の雇用保険部会に検討をお願いしておりましたところ、昨年末に、今後における産業構造や雇用構造の変化に対応しながら、失業者の生活の安定を図り、再就職を促進すると同時に、労使の負担をできる限りふやさないことにも配慮した、現行制度の改善の方向が示されたところであります。
政府といたしましては、この報告書において示された方向及び中央職業安定審議会における論議を踏まえつつ、この法律案を作成し、関係審議会にお諮りした上、提出した次第であります。
次に、その内容の概要を御説明申し上げます。
第一は、雇用保険法の一部改正であります。
その一は、失業給付の額の算定の基礎を変更することであります。現行の失業給付の額は、受給者が失業する前の毎月の賃金に加えて、いわゆる賞与等をも含んだ総賃金を基礎として算定されております。そのため、給付の額が毎月の手取り賃金や再就職時の賃金に比べて割高になっていること、さらに、賞与等の額は、業種、規模による格差が大きく、また、企業の業績によっても変動があることなどの問題があります。これらの点を総合的に考慮して、賞与等を除いて、毎月の賃金を基礎として失業給付の額を算定するよう改めることといたしております。ただし、賃金の低い受給者層を中心に給付額の最低保障額と給付率の引き上げを図ることにより、この改正による影響を少なくするよう配慮しているところであります。
その二は、給付日数を変更することであります。現行の失業給付の給付日数は、主として受給者の年齢に応じて定められており、比較的短期間で離職する高年齢者を中心として、給付と負担の不均衡が拡大しております。この点を考慮して、給付日数を年齢に応じて定めるという現行の原則は維持しつつも、離職前の勤続期間にも応じて定めることといたしております。
その三は、給付制限期間を変更することであります。現在、雇用保険の受給者のうち自分の都合によって離職した人たちがかなりの割合に上っております。これらの人たちに離職を決意する際の慎重な判断を期待し、また、離職後の再就職意欲を高めることにも配慮して、給付制限期間を延長することといたしております。
その四は、高年齢の被保険者の取り扱いを変更することであります。六十五歳以上の高年齢者は一般に労働市場からの引退過程にあり、その就業希望も多様化しているほか、これらの人たちが通常雇用につく機会も極端に少なくなっております。このような事情にかんがみ、六十五歳以上で離職した人たちに対しては、基本手当を支給するかわりに一時金を支給する制度を創設するとともに、六十五歳以降に新たに就職した人たちは、被保険者としないことといたしております。
その五は、受給者ができる限り早く就職することを積極的に奨励しようとすることであります。このため、早期に再就職した受給者には、一定の手当を支給する制度を創設することといたしております。
その六は、日雇い労働者に対する給付の改善を図ることであります。一般被保険者についての失業給付の額を引き上げることに伴い、日雇い労働者の給付金を現行の三段階の上にさらに一段階を設け、四段階制とすることといたしております。
第二は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正であります。
日雇い労働者の給付金を四段階制にすることに伴い、印紙保険料の額を現行の三段階制から四段階制とすることといたしております。
第三は、船員保険法の一部改正であります。
その一は、船員保険についても、雇用保険と同様の趣旨から、給付日数を離職前の勤続期間にも応じて定めること、六十歳以上で離職した人たちに対して一時金を支給する制度を創設すること、早期に再就職した受給者に一定の手当を支給する制度を創設することなどであります。
その二は、最近における船員保険財政の状況等にかんがみ、失業部門の保険料率を千分の五引き上げるとともに、千分の二を増減した率の範囲内において、厚生大臣がこれを変更することができることとすることなどであります。
以上が雇用保険法等の一部を改正する法律案の趣旨であります。(拍手)
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雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
第101回国会衆議院会議録第9号2頁(昭和59年3月9日)〔坂本三十次労働大臣発言・発言番号8〕 会議録 国会会議録検索システム
附帯決議
政府は、雇用保険制度の維持及び適正な運用を図るため、次の事項について努力をすべきである。
一定年延長二雇用延長の促進等高年齢者を中心とした失業の防止並びに早期再就職の促進及び雇用就業機会の増大等雇用就業対策の充実、強化に努めること。
二給付制限制度については、職業選択の自由に十分配慮しつつ、雇用保険法の趣旨を踏まえ、運用基準の見直しを行うこと。特に、離職理由に基づく給付制限制度の運用基準については、労働者の生活の実態、経済社会の変化を考慮して見直しを行うこと。
三不正受給の防止対策の強化拡充を図るとともに、納付命令制度について、その趣旨、目的に沿った運用が図られるよう運用基準の見直しを行うこと。
四雇用保険制度の適切な運営に努めることにより財政の確立を図り、今後、安易に保険料率の引上げを行わないよう努めること。また、必要な国庫負担額を確保するよう努めること。
五雇用保険制度の運営状況及びその問題点を中央職業安定審議会に適宜報告すること。
六婦人労働者の就労機会を確保し、併せてその失業を防止するため、パートタイム労働者対策の充実、育児休業制度の充実等に努めること。
七五人未満事業所等の未適用労働者及び一般労働者と同様の状態にあるパートタイム労働者の加入促進に努めること。
八マイクロエレクトロニクスを中心とする技術革新の進展に対応して、雇用の安定、職業能力の開発向上、労働安全衛生の確保、労働時間の短縮等が図られるよう対策の充実強化に努めること。
九公共職業安定所における職業紹介機能及び体制の充実強化を図るとともに、就職情報誌紙等の増加に伴う諸問題に対応するため必要な指導を強めること。
十失業者の再就職の促進のために、最近の経済社会の変化に応じた職業能力の再開発について検討を行い、職業訓練等その整備充実を図ること。
十一船員保険失業部門についても、前記の事項の趣旨に沿って、雇用対策の充実等制度の維持及び適切な運用を図るよう努めること。
十二船員の置かれている深刻な雇用情勢にかんがみ、失業予防等雇用安定対策の一層の充実強化を図ること。
十三国際的な漁業規制による船員の雇用失業情勢の悪化に伴い、船員保険非適用の漁船船員について、その実態を考慮し、適用拡大の検討も含め特段の配慮を払うこと。
政府は、次の事項について、適切な措置を講ずべきである。
一高年齢者を中心とした失業の防止、早期再就職の促進、雇用就業機会の増大等のための雇用就業対策の充実、強化に努めるとともに、最近の経済社会の変化に応じた職業能力の再開発について検討を行い、失業者の再就職の促進のために、職業訓練等その整備充実を図り、このために雇用保険法に基づく四事業の一層効果的な運営に努めること。
二給付制限制度については、労働者の生活の実態、経済社会の変化及び職業選択の自由に十分配慮しつつ、雇用保険法の趣旨を踏まえ、運用基準の見直しを行うこと。
三不正受給の防止対策の強化拡充を図るとともに、納付命令制度について、その趣旨、目的に沿った運用が図られるよう運用基準の見直しを行うこと。
四雇用保険制度の適切な運営に努めることにより財政の確立を図り、今後、安易な保険料率の引上げを避けるとともに、必要な国庫負担額を確保するよう努めること。
五五人未満事業所等の未適用労働者及び一般労働者と同様の状態にあるパートタイム労働者の加入促進に努めること。
六婦人労働者の就労機会を確保し、併せてその失業を防止するため、パートタイム労働者対策の充実、育児休業制度の充実等に努めること。
七マイクロエレクトロニクスを中心とする技術革新の進展に対応して、雇用の安定、職業能力の開発向上、労働安全衛生の確保、労働時間の短縮等が図られるよう対策の充実強化に努めること。
八公共職業安定所における職業紹介機能及び体制の充実強化を図るとともに、就職情報誌紙等の増加に伴う諸問題に対応するため必要な指導を強めること。
九船員をとりまく深刻な雇用情勢にかんがみ、失業予防等雇用安定対策の一層の充実強化を図るとともに、船員保険失業部門についても、制度の適切かつ安定した運営を図るよう努めること。また、船員保険における失業保険非適用の漁船船員について、その実態を考慮し、適用拡大の検討を含め特段の配慮を払うこと。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=110101023)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。