ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案
参議院 文教・科学委員会
平成12年法律第146号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院科学技術委員会
- H12.11.7趣旨説明科学技術委員会 113
- H12.11.7趣旨説明・質疑本会議 1020
- H12.11.8質疑科学技術委員会 2257
- H12.11.10質疑科学技術委員会 3136
- H12.11.14参考人招致科学技術委員会 4100
- H12.11.15質疑・修正案趣旨説明・討論・修正案・附帯決議・採決(修正)科学技術委員会 5186
- H12.11.16採決(修正)・委員長報告・附帯決議本会議 1419
参議院文教・科学委員会
- H12.11.17趣旨説明文教・科学委員会 49
- H12.11.17趣旨説明・質疑本会議 1136
- H12.11.24参考人招致文教・科学委員会 580
- H12.11.28質疑文教・科学委員会 6218
- H12.11.30質疑・附帯決議・採決文教・科学委員会 7105
- H12.11.30委員長報告・採決・附帯決議本会議 1552
提案理由
大島理森 文部大臣・科学技術庁長官 平成12年11月7日ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
近年の生命に関する科学技術の著しい発展に伴い、生命科学をどこまで人間に適用することが許されるのかという新たな問題が生じております。平成九年二月、英国において、哺乳類で初めての羊の成体の体細胞の核移植により、クローン羊が誕生したとの発表がありました。これにより、人についても、成体の体細胞の核移植によるクローン個体を誕生させること、すなわち人に対するクローン技術の適用が現実の問題として懸念されることとなり、同年六月のデンバー・サミットにおいて、これを禁止するとの首脳宣言が採択されました。
このような動きを受けて、我が国においては、同年九月、総理の指示により科学技術会議に生命倫理委員会が設置され、自然科学系の研究者だけではなく法学者、宗教学者、言論人等国民各般の多様な意見を代表する委員により、この問題について精力的に議論が行われてまいりました。この間、委員会の取りまとめに対し、広く国民からの意見公募なども行われました。その結果、昨年十二月に、人クローン個体の産生は、人の尊厳等を侵害するものとして、罰則を伴う法律により禁止するべきとの最終的な結論を取りまとめ、公表いたしました。
また、クローン技術と同等もしくはそれ以上の重大な影響を人の尊厳に与える可能性があるものとして、ヒトの細胞と動物の細胞を融合または集合させる技術、これを特定融合・集合技術と呼びますが、この技術により生じた胚から、人と動物のいずれであるかが明らかでない個体がつくり出される可能性があることなども、生命倫理委員会において指摘されています。
本法律案は、このような生命倫理委員会での検討の結果を踏まえ、また、この研究分野における国際的動向をも勘案し、人クローン個体等の産生を禁止するとともに、クローン技術等により作成される、特定胚と呼ぶさまざまの胚の適正な取り扱いを確保するための措置等を講ずるものであります。
なお、本法律案はさきの通常国会に提出いたしましたが、残念ながら十分な審議時間が確保できず審議未了、廃案となりました。しかしながら、その後のクローン技術の一層の進展等により、人クローン個体等の産生の危険性がますます高まっており、本法案を早期に成立させる必要があることから、本臨時国会に再度提出したものであります。
次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。
第一に、本法案を制定する目的であります。
本法案は、クローン技術等が、その用いられ方いかんによっては人の尊厳の保持、人の生命及び身体の安全の確保並びに社会秩序の維持に重大な影響を与える可能性があることにかんがみ、クローン技術等を規制し、社会及び国民生活との調和のとれた科学技術の発展を期することを目的としています。
第二に、人クローン個体等の産生を禁止することであります。
具体的には、クローン技術または特定融合・集合技術により作成される胚を人または動物の胎内へ移植した場合、特定の人と同一の遺伝子構造を有する人、もしくは、人と動物のいずれであるかが明らかでない個体をつくり出すおそれがあり、そのような胚を人または動物の胎内へ移植することを禁止することとしております。
第三に、クローン技術等により作成される特定胚の適正な取り扱いの確保のための措置であります。
文部科学大臣は、特定胚の作成、譲り受けまたは輸入及びこれらの行為後の取り扱いの適正を確保するため、総合科学技術会議の意見を聞いて、その取り扱いに関する指針を作成、公表しなければならないものとし、特定胚を取り扱おうとする者は、この指針に従って行うとともに、一定の事項を文部科学大臣に届け出なければならないものとしております。
また、この届け出をした者は、文部科学大臣がその届け出を受理した日から六十日を経過した後でなければ、その届け出に係る特定胚の取り扱いをしてはならないものとし、文部科学大臣は、届け出をした者の特定胚の取り扱いが指針に適合しないと認めるときは、届け出をした者に対し、当該特定胚の取扱計画の変更、取り扱いの中止その他必要な措置をとるべきことを命ずることができるものとしております。
さらに、文部科学大臣は、届け出をした者に対し、必要な事項について報告を求め、または、その職員に、事務所等に立ち入り、必要な物件を検査させ、もしくは関係者に質問させることができることとしております。
第四に、届け出をした者は、特定胚の取り扱いについての一定の事項に関する記録を作成し、保存するとともに、特定胚に係る個人情報の漏えいの防止等必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとしております。
第五に、禁止行為に違反してクローン技術または特定融合・集合技術により作成された胚を人または動物の胎内に移植した者等に対し、懲役等の罰則を設けることとしております。
第六に、この法律の施行後五年以内に、クローン技術等を取り巻く状況の変化等を勘案して、特定胚に係る制度について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとしております。
以上が、この法案の提案理由及び要旨であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
第150回国会衆議院科学技術委員会議録第1号2頁(平成12年11月7日)〔大島理森文部大臣発言・発言番号7〕 会議録 国会会議録検索システム
附帯決議
政府は、本法の施行に際し、次の事項に関して特に配慮すべきである。
一法第四条第一項の規定に基づき、本法施行後早急に指針を策定することとし、その指針には以下の要件が盛り込まれることア 法第三条に掲げる胚以外の特定胚についても、人又は動物の胎内に移植された場合に人の尊厳の保持等に与える影響が人クローン個体若しくは交雑個体に準ずるものとなるおそれがあるかぎり、人又は動物の胎内への移植を行わないことイ 特定胚を取り扱うことができる場合としては、事前に十分な動物実験その他の実験手段を用いた研究が実施されており、かつ、特定胚を用いる必要性・妥当性が認められる研究に限ることウ 特定胚の材料となるヒト受精胚、ヒトの生殖細胞の提供者の同意は、研究目的と利用方法等についての十分な説明を受けた上での理解に基づく自由な意思決定によるものでなければならないこと。特に卵子提供については、女性の身体的・心理的負担に配慮し、提供者に不安を生じさせないよう十分に措置を講ずることエ 特定胚及びその材料となるヒト受精胚、ヒトの生殖細胞の授受は無償で行うこと
一指針の策定、変更に当たっては、国民の意見を十分聴取すること
一ヒト受精胚は人の生命の萌芽であって、その取扱いについては、人の尊厳を冒すことのないよう特に誠実かつ慎重に行わなければならないこと
一ヒト胚性幹細胞については、ヒト受精胚から樹立されるものであることにかんがみ、その樹立に用いるヒト受精胚は余剰胚に限定するとともに、その樹立及び使用も必要性・妥当性が認められるものに限ること
政府は、本法の施行に際し、次の事項に関して特に配慮すべきである。
一法第四条第一項の規定に基づき、本法施行後早急に指針を策定することとし、その指針には以下の要件が盛り込まれること。ア 法第三条に掲げる胚以外の特定胚についても、人又は動物の胎内に移植された場合に人の尊厳の保持等に与える影響が人クローン個体若しくは交雑個体に準ずるものとなるおそれがあるかぎり、人又は動物の胎内への移植を行わないこと。イ 特定胚を取り扱うことができる場合としては、事前に十分な動物実験その他の実験手段を用いた研究が実施されており、かつ、特定胚を用いる必要性・妥当性が認められる研究に限ること。ウ 特定胚の材料となるヒト受精胚、ヒトの生殖細胞の提供者の同意は、研究目的と利用方法等についての十分な説明を受けた上での理解に基づく自由な意思決定によるものでなければならないこと。特に卵子提供については、女性の身体的・心理的負担に配慮し、提供者に不安を生じさせないよう十分に措置を講ずること。エ 特定胚及びその材料となるヒト受精胚、ヒトの生殖細胞の授受は無償で行うこと。
二指針の策定、変更に当たっては、国民の意見を十分聴取すること。
三ヒト受精胚は人の生命の萌芽であって、その取扱いについては、人の尊厳を冒すことのないよう特に誠実かつ慎重に行わなければならないこと。
四ヒト胚性幹細胞については、ヒト受精胚から樹立されるものであることにかんがみ、その樹立に用いるヒト受精胚は余剰胚に限定するとともに、その樹立及び使用も必要性・妥当性が認められるものに限ること。
五クローン技術が、比較的容易に実施し得る可能性があり、かつ、今後、急速な進展が予測されることから、本法施行後も、より実効性のある規制の在り方について引き続き検討を行うこと。
六生命科学分野における研究は、医療等においては高い有用性が認められるものの、人間の尊厳の保持及び社会秩序の維持等に重大な影響を与える危険性も併せ持つことにかんがみ、その研究が、倫理的に、また、慎重に行われるよう十分な措置を講ずること。
七本法及び指針で規制される内容、並びにクローン技術等の周辺技術である生殖医療、ヒト胚性幹細胞等による再生医療にかかるガイドライン等で規制される内容が、全体的に十分理解されるよう努めること。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=115001007)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。