偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律案
参議院 財政金融委員会
平成17年法律第94号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院財務金融委員会
- H17.7.19趣旨説明・質疑財務金融委員会 24114
- H17.7.22討論・採決・附帯決議財務金融委員会 2515
- H17.7.26委員長報告・採決・附帯決議本会議 3633
参議院財政金融委員会
- H17.8.2趣旨説明・質疑・討論・採決・附帯決議財政金融委員会 1770
- H17.8.3委員長報告・採決・附帯決議本会議 3327
提案理由
江崎洋一郎 議員(発議者) 平成17年7月19日ただいま議題となりました偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律案について、提出者を代表して、その趣旨及び概要を説明いたします。
なお、趣旨説明の中で、預貯金は、以下、略称として預金と呼ばせていただきますので、御了承願います。
近年、偽造または盗難されたキャッシュカード等を用いてATM等において預金が不正に引き出されるという事件が多数発生し、その被害者が多大な経済的負担を強いられており、一方、一般の国民も、いつ自分自身も被害者になるかもしれないという大きな不安を抱いている状況にあり、その対策が急務となっております。
この背景には、金融機関が長年にわたって安全なシステム構築への投資を怠ってきたことがあると考えております。
本法律案は、このような状況にかんがみ、預金者の保護を図り、あわせて預金に対する信頼を確保するため、偽造・盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払い戻し等により預金者に生じた損害を原則として金融機関が補償することとするとともに、これらの犯罪が発生しないよう、安全性の高い、世界に冠たるATMシステムの構築を金融機関に求めるものであります。
以下、法律案の概要を申し上げます。
第一に、本法律案は、偽造・盗難カード等を用いて行われる不正な払い戻し等により預金者に生じた損害について、原則として金融機関に補償を義務づけることとするものであります。
まず、偽造カード等を用いて行われた払い戻し等による損害については、簡単に偽造されてしまうような脆弱なシステムを使っている金融機関の責任が重いことから、預金者に重大な過失がない限り、金融機関がその損害の全額を負担することとしております。
次に、盗難カード等を用いて行われた払い戻し等による預金者の損害につきましては、預金者に重大な過失がある場合を除き、原則として金融機関がその損害の全額を補てんするものとしておりますが、脆弱なシステムを提供している金融機関の責任と、不正な払い戻しが行われるに至った預金者側の事情を考慮して、続いて御説明するように、預金者に重大な過失以外の過失があることが金融機関により証明された場合には、損害の四分の三を補てんすることとしております。
この預金者の過失につきましては、いわゆる立証責任の転換を図り、預金者に過失があることの立証責任は金融機関にあることとしたところであり、あわせて、過失そのものにつきましても、後ほど詳しく述べさせていただくように、これが認定されるのは実際上かなり限られた場合になるものと考えております。したがって、ほとんどの場合において、全額の補てんが行われることとなると考えております。
第二に、偽造・盗難カード等を用いた不正な払い戻し等が行われないようにして、預金者がその預金を安心して預けられるよう、金融機関に対し、預金者の利便性を損なうことなく、現在の我が国の脆弱なATMシステムを改め、安全性の高い、世界に冠たるATMシステムの再構築を行うために必要な措置について規定しております。
第三に、この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行することとしておりますが、この法律の施行前に発生した被害についての補償に関しても、この法律の趣旨に照らし最大限の配慮が行われるものとしております。
第四に、この法律は、預金の払い戻し等の金融サービスをめぐる状況の変化やこの法律の実施状況等を勘案し、預金者の一層の保護を図る観点から、この法律の施行後二年を目途として検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて所要の措置が講ぜられるものとすることとしております。
以上が、本法律案の概要でありますが、ここで、先ほど言及いたしました、本法律案の中で規定しております過失という概念について、提出者の考えを述べさせていただきます。
まず、過失とは、一般的には、損害の発生を予見し防止する注意義務を怠ることと説明されており、本来的には個々の事例に即し、終局的には裁判所において判断されるべきものであると考えております。
とはいえ、本法律案により、裁判所を経ず、預金者への補てんが円滑、迅速に行われるためには、この過失の内容を明確にしておく必要があると考え、提出者の考えを明らかにするものであります。
わかりやすく、できるだけ具体的な例で申し上げますと、盗難カード等による被害の場合、暗証番号を生年月日等の類推されやすいものとしていたことが原因の一つであることが多いようでございますが、この点について、それだけで直ちに預金者の過失を問うことはできないものと考えております。
と申しますのは、これまで、金融機関が生年月日等の類推されやすい番号の使用を容認し、その使用の危険性について預金者への説明が十分でなかったという経緯に照らして、まず、金融機関から預金者に対し、生年月日等の類推されやすい暗証番号から別の番号に変更するよう、複数回にわたる働きかけが行われることが前提となると考えているからでございます。
そして、この働きかけは、類推されやすい暗証番号を使用している預金者に対して、電話やダイレクトメール等により個別的、具体的に行う必要があり、ポスター等による預金者一般に向けた広報では、ここに言う働きかけには該当しないものと考えております。
そのような金融機関による働きかけが行われたことを前提とした上で、預金者が、なお生年月日等の類推されやすい番号を事情なく暗証番号として使用し、かつ、そのカードが当該暗証番号を推測させる書類等と一緒に盗取されてしまった場合には、その他の諸事情も勘案して過失が認定されてもやむを得ないこととなる場合が多いものと考えております。
また、暗証番号を書き記したメモ等をカードと一緒に保管または携帯し、それらをカードと一緒に盗取された場合なども同様と考えております。
また、重大な過失については、典型的には、故意と同視し得る程度に注意義務に著しく違反する場合と考えており、提出者としては、具体的には、預金者が暗証番号の管理に関して1他人に暗証番号を知らせた場合、2暗証番号をカード上に書き記した場合や、カードの管理に関して3預金者がみずからカードを安易に第三者に渡した場合、そして、これらと同等程度以上に注意義務違反が著しい場合に限られると考えております。
なお、この過失の前提となる暗証番号の管理等につきましては、高齢者等に若年者等と同様の対応を求めることは無理なため、金融機関が預金者の年齢や心身の状況に応じた助言や説明を行うなど、きめ細かな対応を行うことが必要と考えております。
そして、この法律の成立に合わせて、全銀協その他関係金融機関が、本委員会の審議等を通じ明らかとなった過失の概念について十分御理解いただき、その趣旨に沿った基準を作成するように求めていきたいと考えております。
以上が、本法律案の趣旨及び概要でございます。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。(拍手)
第162回国会衆議院財務金融委員会議録第24号3頁(平成17年7月19日)〔江崎洋一郎議員発言・発言番号4〕 会議録 国会会議録検索システム
附帯決議
政府、金融機関その他の関係者は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。
一金融機関の窓口における不正な預貯金の払戻しについて、速やかに、その防止策及び預貯金者の保護の在り方を検討し必要な措置を講ずること。
一インターネットバンキングに係る犯罪等については、速やかに、その実態の把握に努めその防止策及び預貯金者等の保護の在り方を検討し必要な措置を講ずること。
一金融機関は、盗難カード等を用いて行われた不正な機械式預貯金払戻し等に係る損害の補てん請求の要件とされる「十分な説明」とは、盗取に関する状況について一般的かつ客観的に十分な説明が行われることであり、また、その預金者が置かれた状況にかんがみて十分な対応、情報提供を行っているかどうかで判断されるものであることに留意して対応すべきものであること。
一金融機関は、預貯金者の過失の有無については、暗証番号を生年月日等の類推されやすいものとしていただけで直ちに過失があるものと判断してはならないこと、また、預貯金者の重大な過失の有無については、他人に暗証番号を知らせた場合、暗証番号をカード等の上に書き記した場合、カード等を安易に第三者に渡した場合その他これらと同等程度以上に注意義務違反が著しい場合に限られることに留意して対応すべきものであること。
一金融機関は、偽造カード等又は盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等の防止のための措置等を適切に講じ、この法律の施行後二年を目途として、強固なATMシステムを構築するよう努めること。また、これに要する費用について、安易に預貯金者への転嫁を行わないよう努めること。
一金融機関は、偽造カード等又は盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等の防止のために導入を進めているICカード化、生体認証等について、できるだけ早期に規格の統一又は互換性の確保を図り、預貯金者の利便に支障を生じないよう努めること。
一金融機関は、この法律に基づく預貯金者に対する補てん等に伴い生じる負担を回避するため、一方的な利用限度額の著しい引下げその他の利用の制限を行うことにより預貯金者へのサービスの低下を招くことがないよう努めること。
一金融機関及び捜査機関は、偽造カード等又は盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等の被害を擬装した犯罪を防止するための対策に関し連携を図ること。
政府、金融機関その他の関係者は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。
一金融機関の窓口における不正な預貯金の払戻しについて、速やかに、その防止策及び預貯金者の保護の在り方を検討し必要な措置を講ずること。
一インターネットバンキングに係る犯罪等については、速やかに、その実態の把握に努めその防止策及び預貯金者等の保護の在り方を検討し必要な措置を講ずること。
一金融機関は、盗難カード等を用いて行われた不正な機械式預貯金払戻し等に係る損害の補てん請求の要件とされる「十分な説明」とは、盗取に関する状況について一般的かつ客観的に十分な説明が行われることであり、また、その預金者が置かれた状況にかんがみて十分な対応、情報提供を行っているかどうかで判断されるものであることに留意して対応すべきものであること。
一金融機関は、預貯金者の過失の有無については、暗証番号を生年月日等の類推されやすいものとしていただけで直ちに過失があるものと判断してはならないこと、また、預貯金者の重大な過失の有無については、他人に暗証番号を知らせた場合、暗証番号をカード等の上に書き記した場合、カード等を安易に第三者に渡した場合その他これらと同等程度以上に注意義務違反が著しい場合に限られることに留意して対応すべきものであること。
一金融機関は、偽造カード等又は盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等の防止のための措置等を適切に講じ、この法律の施行後二年を目途として、強固なATMシステムを構築するよう努めること。また、これに要する費用について、安易に預貯金者への転嫁を行わないよう努めること。
一金融機関は、偽造カード等又は盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等の防止のために導入を進めているICカード化、生体認証等について、できるだけ早期に規格の統一又は互換性の確保を図り、預貯金者の利便に支障を生じないよう努めること。
一金融機関は、この法律に基づく預貯金者に対する補てん等に伴い生じる負担を回避するため、一方的な利用限度額の著しい引下げその他の利用の制限を行うことにより預貯金者へのサービスの低下を招くことがないよう努めること。
一金融機関及び捜査機関は、偽造カード等又は盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等の被害を擬装した犯罪を防止するための対策に関し連携を図ること。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=116202023)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。