薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律案
衆議院 法務委員会
平成25年法律第50号
審議経過
右の数字は会議の発言数参議院法務委員会
- H25.5.28趣旨説明法務委員会 65
- H25.5.30質疑・採決・附帯決議法務委員会 790
- H25.6.5委員長報告・採決本会議 2569
衆議院法務委員会
- H25.6.7趣旨説明・質疑法務委員会 1640
- H25.6.11質疑・採決・附帯決議法務委員会 17188
- H25.6.13委員長報告・採決本会議 3227
提案理由
谷垣禎一 法務大臣 平成25年5月28日刑法等の一部を改正する法律案及び薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律案について、その趣旨を便宜一括して御説明いたします。
近年、我が国においては、犯罪をした者のうち再犯者が占める割合が少なくない状況にあることから、再犯防止のための取組が政府全体の喫緊の課題となっており、効果的かつ具体的な施策を講ずることが求められています。この両法律案は、犯罪者の再犯防止及び改善更生を図るため、刑の一部の執行猶予制度を導入するとともに、保護観察の特別遵守事項の類型に社会貢献活動を行うことを加えるなどの法整備を行おうとするものです。
この両法律案の要点を申し上げます。
第一は、刑の一部の執行猶予制度の導入であります。
現行の刑法の下では、懲役刑又は禁錮刑に処する場合、刑期全部の実刑を科すか、刑期全部の執行を猶予するかの選択肢しかありません。しかし、まず刑のうち一定期間を執行して施設内処遇を行った上、残りの期間については執行を猶予し、相応の期間、執行猶予の取消しによる心理的強制の下で社会内において更生を促す社会内処遇を実施することが、その者の再犯防止、改善更生のためにより有用である場合があると考えられます。他方、施設内処遇と社会内処遇とを連携させる現行の制度としては、仮釈放の制度がありますが、その社会内処遇の期間は服役した残りの期間に限られ、全体の刑期が短い場合には保護観察に付することのできる期間が限定されることから、社会内処遇の実を十分に上げることができない場合があるのではないかという指摘がなされているところです。
そこで、刑法を改正して、いわゆる初入者、すなわち、刑務所に服役したことがない者、あるいは刑務所に服役したことがあっても出所後五年以上経過した者が三年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受ける場合、判決において、その刑の一部の執行を猶予することができることとし、その猶予の期間中、必要に応じて保護観察に付することを可能とすることにより、その者の再犯防止及び改善更生を図ろうとするものです。
また、薬物使用等の罪を犯す者には、一般に、薬物への親和性が高く、薬物事犯の常習性を有する者が多いと考えられるところ、これらの者の再犯を防ぐためには、刑事施設内において処遇を行うだけでなく、これに引き続き、薬物の誘惑のあり得る社会内においても十分な期間その処遇の効果を維持、強化する処遇を実施することがとりわけ有用であると考えられます。
そこで、薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律を制定し、薬物使用等の罪を犯した者については、刑法上の刑の一部執行猶予の要件である初入者に当たらない者であっても、刑の一部の執行猶予を言い渡すことができることとするとともに、その猶予の期間中必要的に保護観察に付することとし、施設内処遇と社会内処遇との連携によって、再犯防止及び改善更生を促そうとするものです。
この刑の一部の執行猶予制度は、刑の言渡しについて新たな選択肢を設けるものであって、犯罪をした者の刑事責任に見合った量刑を行うことには変わりがなく、従来より刑を重くし、あるいは軽くするものではありません。
第二は、保護観察の特別遵守事項の類型に「善良な社会の一員としての意識の涵養及び規範意識の向上に資する地域社会の利益の増進に寄与する社会的活動を一定の時間行うこと。」、いわゆる社会貢献活動を行うことを加えるなどの保護観察の充実強化のための法整備であります。
保護観察対象者に社会貢献活動を行わせることにより、善良な社会の一員としての意識の涵養及び規範意識の向上を図ることは、その再犯防止及び改善更生のために有益であると考えられることから、更生保護法を改正して、社会貢献活動を義務付けることを可能とするほか、規制薬物等に対する依存がある者に対する保護観察の特則を定めるものです。
このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
以上が、刑法等の一部を改正する法律案及び薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律案の趣旨であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決くださいますようお願いいたします。
第183回国会参議院法務委員会会議録第6号1頁(平成25年5月28日)〔谷垣禎一法務大臣発言・発言番号3〕 会議録 国会会議録検索システム
附帯決議
政府は、両法の施行に当たっては、次の事項について格段の配慮をすべきである。
一更生保護の責務は国が負うべきものであることを踏まえ、両法の施行までに、施設内処遇と社会内処遇の有機的な連携を図るために必要な体制整備を計画的に進めるとともに、保護観察官の専門性の一層の強化及び増員など、国の更生保護体制に関する一層の充実強化を図ること。
二刑の一部の執行猶予の適用に当たっては、厳罰化又は寛刑化に偏ることがないよう、関係刑事司法機関とその趣旨について情報の共有化に努めるとともに、両法の適正な運用を図るため、その施行状況を把握する体制を整備すること。
三薬物事犯者の処遇に当たっては、民間の医療・社会福祉関係機関及び地方公共団体との更なる連携を強化し、その治療体制の拡充及び地域での効果的なフォローアップなど、改善更生及び再犯防止の実効性を高めるための施策の充実を図ること。
四再犯防止及び社会復帰を図る上で、保護司や民間の自立更生支援団体等の担う役割は大きく、その機能の拡充が緊要となっていることに鑑み、その支援体制の確立及び十分な財政措置を講ずるとともに、保護観察等における緊密な連携強化を図っていくこと。
五社会貢献活動については、どのような活動・期間が再犯防止等に有効か十分検証を行い、民間の自立更生支援団体等とも緊密な連携を図るとともに、地域住民等関係者の不安を払拭するため、効果的な体制を設けること。
六再犯を防止するためには、刑務所出所者等の就労の促進安定が効果的であることに鑑み、昨今の厳しい雇用・経済情勢に対応したよりきめ細やかな就労支援・雇用確保を一層推進していくこと。
七政府のこれまでの再犯防止施策について適正な評価を行うとともに、両法の対象とならなかった事犯者の再犯防止等を図るため、諸外国で導入されている保護観察の充実強化策の例も踏まえながら、引き続き有効な施策を研究調査し実施できるよう努めること。
八薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部執行猶予が、刑事施設における処遇に引き続き保護観察処遇を実施することによりその再犯を防ぐためのものであることを踏まえ、本制度の施行後、薬物使用等の罪を犯した者の再犯状況について当委員会に報告するとともに、より充実した制度にするための検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。
九東日本大震災の被災地においては、今も多数の保護司等が活動困難な状態に陥っていることに鑑み、その更生保護体制について、保護司の充足に加え、地方公共団体及び医療・社会福祉関係機関等との連携体制の整備に万全を期するとともに、両法の施行に当たっては、被災地の状況に十分配慮すること。
政府及び最高裁判所は、両法の施行に当たり、特に次の事項について格段の配慮をすべきである。
一施設内処遇と社会内処遇の連携を図るために必要な体制整備を計画的に進めるとともに、保護観察官の専門性の一層の強化及び増員など、国の更生保護体制に関する一層の充実強化を図ること。加えて、再犯防止及び社会復帰を図る上で、保護司や民間の自立更生支援団体等の担う役割の重要性に鑑み、その支援体制の確立及び十分な財政措置を講ずるとともに、緊密な連携強化を図っていくこと。
二裁判員裁判においても刑の一部の執行猶予の適用がなされ得ることを踏まえ、裁判員に対して制度の趣旨及び内容についての情報提供が十分に行われるよう努めるとともに、厳罰化又は寛刑化に偏ることがないよう、その趣旨の徹底に努めること。
三社会貢献活動の実施後、事例の収集を行うとともに、一定期間経過後にその効果の検証及びより改善更生に資する運営を行うために外部の有識者も入れた会議を設置して調査・検討を行うとともに、薬物事犯者の処遇に当たっては、関係機関との更なる連携を強化し、本制度の施行後、両法の対象となった者の再犯状況を検証し、より充実した制度にするための検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=118301038)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。