著作権法の一部を改正する法律案
参議院 文教科学委員会
平成30年法律第30号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院文部科学委員会
- H30.4.4趣旨説明文部科学委員会 4232
- H30.4.6質疑文部科学委員会 5146
- H30.4.11参考人招致・参考人質疑・質疑文部科学委員会 6274
- H30.4.13討論・採決・附帯決議文部科学委員会 7300
- H30.4.17委員長報告・採決本会議 1952
参議院文教科学委員会
- H30.5.10趣旨説明文教科学委員会 77
- H30.5.15参考人招致・参考人質疑文教科学委員会 880
- H30.5.17質疑・討論・採決・附帯決議文教科学委員会 9149
- H30.5.18委員長報告・採決本会議 2059
提案理由
林芳正 文部科学大臣 平成30年4月4日このたび政府から提出いたしました著作権法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
我が国の著作権制度については、これまでも逐次整備を進めてまいりましたが、文化芸術立国、知的財産立国の実現に向け、その一層の充実が必要となっているとともに、著作権法制における国際的な協調の必要性が高まっているところであります。
この法律案は、近年の情報通信技術の一層の進展に伴う著作物等の利用をめぐる環境の変化を踏まえ、情報通信関連事業、教育、障害者福祉又は美術館等にかかわる著作物等の利用に係る社会の要請に対応し、著作物等の利用の円滑化を図るとともに著作権等の適切な保護に資するため、必要な改正を行うものであります。
また、この法律案は、印刷物の判読に障害のある者の著作物等の利用機会を促進するため、世界知的所有権機関において、平成二十五年六月に採択された、盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約の締結のため必要な措置を講ずるものであります。
次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。
第一に、情報通信技術の進展等の時代の変化に柔軟に対応できるようにするため、著作物等の市場に悪影響を及ぼさない一定の著作物等の利用について、適切な柔軟性を備えた権利制限規定の整備を行うものであります。
昨今の情報通信技術の急速な進展を背景に、ビッグデータや人工知能等をめぐる技術革新により、これらの技術を活用したさまざまな著作物等の利用方法が新たに可能になるとともに、将来においてもさらなる変化が予想されます。これらの技術を活用した著作物等の利用方法には、権利者の利益を通常害さないと評価できる利用形態や、社会にとって有意義であり、かつ、権利者に及び得る不利益が軽微な利用形態も多く含まれます。
このため、このような著作物等の利用について、法の明確性及び予測可能性を適切に確保しつつ、将来の変化にも柔軟に対応することができるよう、著作物等に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用、電子計算機における著作物等の利用に付随する利用、電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微な利用等について、権利者の許諾なく行えるようにする措置を講じるものであります。
第二に、教育の情報化に対応した規定の整備を行うものであります。
学校等の情報通信技術を活用した教育における著作物等の利用の円滑化を図るため、学校等の授業の過程において利用できるよう、教師等が著作物等を公衆送信する行為等について、相当な額の補償金の支払いを条件に権利者の許諾なく行えるようにする等の措置を講じるものであります。
第三に、障害者の情報アクセス機会の充実に係る規定の整備を行うものであります。
障害者の書籍等へのアクセス機会の充実を図るとともに、盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約の締結に対応するため、肢体不自由等により書籍を持てない者のために録音図書を作成する行為等について、権利者の許諾なく行えるようにする措置を講じるものであります。
第四に、アーカイブの利活用促進に係る規定の整備等を行うものであります。
美術館等におけるタブレット端末等を用いた作品の解説や紹介のための著作物等の利用、展示する作品の所在に関する情報を一般に提供するための公衆送信、国立国会図書館による外国の図書館への絶版等資料の送付等について、権利者の許諾なく行えるようにするとともに、権利者不明等の場合の裁定制度の見直しを行うものであります。
このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
何とぞ、十分御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いをいたします。
第196回国会衆議院文部科学委員会議録第4号20頁(平成30年4月4日)〔林芳正文部科学大臣発言・発言番号228〕 会議録 国会会議録検索システム
立法資料のある条文
この法律案の審議で取り上げられた条(政府答弁の件数順)附帯決議
政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。
一著作権制度は我が国の文化創造の基盤となる仕組みであり、デジタル化・ネットワーク化が進展する新しい時代においても、権利の保護を図りつつ、多様な著作物を多様な形態でより多くの国内外の利用者に届けていくことは極めて重要である。著作権制度の意義に鑑み、今後も権利の保護と著作物の円滑な利用の促進とのバランスを考慮し、本法により整備される権利制限規定等の適切な運用に十分配慮すること。
二柔軟な権利制限規定の導入に当たっては、現行法において権利制限の対象として想定されていた行為については引き続き権利制限の対象とする立法趣旨を積極的に広報・周知するとともに、著作物の利用行為の適法性が不透明になり、かえって利用を萎縮する効果が生じることのないよう、ガイドラインの策定など、必要な対策を講ずること。
三環境変化に対応した著作物利用の円滑化を図るという立法趣旨を踏まえ、現在想定し得ない新たな技術等で、著作物の軽微利用を行う必要があるものが開発等されたときは、第四十七条の五第一項第三号に掲げる政令について、幅広い学識経験者、権利者、インターネット事業者、開発者等の意見のバランスも考慮しつつ速やかに定めるよう努めること。また、当該政令により、かえって新たな技術の開発及び提供等が制限されることがないように留意すること。
四本法により創設される「授業目的公衆送信補償金」について、教育現場での著作物の円滑かつ適法な利活用を促進する観点から、補償金額が妥当な水準に設定されることに加え、その確実な徴収と適正な配分の確保が担保されるよう必要な措置を講ずること。また、教育機関設置者が支払う補償金の負担が生徒等に転嫁される場合に、生徒等の負担が過度にならないよう、適切な運用に努めること。
五プログラミング教育をはじめとする教育のデジタル化が積極的に進められている中で、デジタル教材の増加や授業目的公衆送信補償金の徴収事務により、教職員の負担が増加し、政府が目指す働き方改革に逆行することとならないよう、安価かつ操作しやすいデジタル教材の普及や授業目的公衆送信補償金の徴収事務の簡素化について、速やかに必要な措置を講ずること。また、同措置を講ずるに当たっては、教育の質の向上及び地域格差の解消といった点にも十分留意すること。
六本法による改正後の著作権法第三十七条第三項に規定する視覚障害者等の読書の機会の充実を図るためには、本法と併せて、当該視覚障害者等のためのインターネット上も含めた図書館サービス等の提供体制の強化、アクセシブルな電子書籍の販売等の促進その他の環境整備も重要であることに鑑み、その推進の在り方について検討を加え、法制上の措置その他の必要な措置を講ずること。
七本法により、美術品等の紹介・解説のために電子機器やインターネット上において権利者の許諾なく当該著作物の複製物を利用できることとなるが、電子機器等の特性を踏まえ、著作物の画像等が不適切に拡散されることがないよう、必要な対策を講ずること。
八近年のデジタル化・ネットワーク化の進展に伴う著作物等の利用形態の多様化及び著作権制度に係る動向等に鑑み、著作物等の利用の一層の円滑化に向けて、著作権法の適切な見直しを進めること。特に、著作権制度の在り方をめぐり意見の相違が大きい重要課題については、国際的動向や関係団体・利用者等の意見を十分考慮するとともに、今後の急速な技術革新、著作物等の利用実態や社会の変化等への対応を踏まえた議論を進めること。
政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。
一著作権制度は我が国の文化創造の基盤となる仕組みであり、デジタル化・ネットワーク化が進展する新しい時代においても、権利の保護を図りつつ、多様な著作物を多様な形態でより多くの国内外の利用者に届けていくことは極めて重要である。著作権制度の意義に鑑み、今後も権利の保護と文化の継承のバランスにおいて著作物の公正利用を図ることとし、本法により整備される権利制限規定等の運用に十分配慮すること。
二柔軟な権利制限規定の導入に当たっては、現行法において権利制限の対象として想定されていた行為については引き続き権利制限の対象とする立法趣旨を積極的に広報・周知すること。また、著作物の利用行為の適法性が不透明になり、かえって利用を萎縮する効果が生じたり、法の理解が十分浸透しないために誤解による著作権侵害が助長されたりすることによって、表現の自由の侵害がおき、著作物の創造サイクルが壊されることのないよう、権利者や関係団体の意見も十分踏まえたガイドラインの策定など、必要な対策を講ずること。
三環境変化に対応した著作物利用の円滑化を図るという立法趣旨を踏まえ、現在想定し得ない新たな技術等で、著作物の軽微利用を行う必要があるものが開発等されたときは、第四十七条の五第一項第三号に掲げる政令について、幅広い学識経験者、権利者、インターネット事業者、開発者等の意見を考慮しつつ速やかに定めるよう努めること。また、当該政令により、かえって新たな技術の開発及び提供等が制限されることがないように留意すること。
四近年のデジタル化・ネットワーク化の進展に伴う著作物等の利用形態の多様化及び著作権制度に係る動向等に鑑み、著作物等の利用の一層の円滑化に向けて、著作権制度の適切な見直しを進めること。特に、著作権制度の在り方をめぐり意見の相違が大きい重要課題については、我が国を取り巻く制度や社会状況、国際的動向や権利者・関係団体・利用者等の意見を十分考慮するとともに、今後の急速な技術革新、著作物等の利用の実態やニーズ、社会の変化等に対応した著作物等の利用及び活用が適切に行われるように議論を進めること。
五本法により創設される「授業目的公衆送信補償金」について、教育現場での著作物の円滑かつ適法な利活用を促進する観点から、補償金額が妥当な水準に設定されることに加え、その確実な徴収と適正な配分の確保が担保されるよう必要な措置を講ずること。また、教育機関設置者が支払う補償金の負担が生徒等に転嫁される場合に、生徒等の負担が過度にならないよう、適切な運用に努めること。
六プログラミング教育を始めとする教育のデジタル化が積極的に進められている中で、デジタル教材の増加や授業目的公衆送信補償金の徴収事務により、教職員の負担が増加し、政府が目指す働き方改革に逆行することとならないよう、安価かつ操作しやすいデジタル教材の普及や授業目的公衆送信補償金の徴収事務の簡素化について、速やかに必要な措置を講ずること。また、同措置を講ずるに当たっては、教育の質の向上及び地域格差の解消といった点にも十分留意すること。
七本法による改正後の著作権法第三十七条第三項に規定する視覚障害者等の読書の機会の充実を図るためには、本法と併せて、同項により拡大図書やDAISY等の作成を行うことが認められる主体の拡大を行うとともに、当該視覚障害者等のためのインターネット上も含めた図書館サービス等の提供体制の強化、アクセシブルな電子書籍の販売等の促進その他の環境整備も重要であることに鑑み、その推進の在り方について検討を加え、法制上の措置その他の必要な措置を講ずること。
八本法により、美術品等の紹介・解説のために電子機器やインターネット上において権利者の許諾なく当該著作物の複製物を利用できることとなるが、電子機器等の特性を踏まえ、著作物の画像等が不適切に拡散されることがないよう、必要な対策を講ずること。
九我が国の有する文化資料を適切に収集・保存し、効果的に活用していくことは、我が国の文化創造の基盤となる知的インフラの強化に貢献するものであることに鑑み、デジタルアーカイブの構築に向けて、国立国会図書館を始めとする関係機関が相互に連携・協力しつつ、必要な措置について引き続き検討を進めること。
十デジタル化・ネットワーク化が進む現状において、全ての国民が著作物の創作者及び利用者となり得る一方で、我が国における著作権法に対する理解は十分でないとの指摘があること等を踏まえ、著作権を含む知的財産に関する学習及び教育機会の更なる充実を図ること。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=119601028)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。