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地裁判決請求棄却

大阪地判 平成17年8月18日

平成16年(行ウ)第42号 特別土地保有税徴収猶予取消処分取消請求事件

裁判所
大阪地方裁判所
裁判年月日
平成17年8月18日 (2005-08-18)
事件番号
平成16年(行ウ)第42号
事件名
特別土地保有税徴収猶予取消処分取消請求事件
裁判の種類・結果
判決 請求棄却
判例集等
—
分野
行政

判示事項

1地方税法(平成15年法律第9号による改正前)附則31条の3の2にいう「譲受者」の意義 2 市区長が,地方税法(平成15年法律第9号による改正前)附則31条の3の2第1項に基づく他人譲渡制度により特別土地保有税の徴収猶予決定を受けていた土地の譲渡会社に対してした,同土地を譲り受けた会社の会社分割によりその事業の一部を承継して同土地を承継した会社が,同土地を分筆後,分筆後の土地の共有持分を,前記会社分割後の譲受会社を吸収合併した会社に対して再譲渡したことによる,前記徴収猶予決定のうち前記共有持分の割合により按分した額の特別土地保有税についての徴収猶予取消処分が,適法とされた事例

裁判要旨

1地方税法(平成15年法律第9号による改正前)附則31条の3の2にいう「譲受者」とは,同条が規定する他人譲渡制度が,バブル崩壊後において土地の流動化,有効活用の促進を図るため,例外的に徴収猶予の継続を認める制度であること,同条1項が,「譲受者」が,当初から第三者への再譲渡を予定した特例譲渡による徴収猶予及び納税義務の免除の取扱いも規定していること,同条2項が,土地の所有者等が同条1項の適用を受けようとする場合には,「譲受者」に対する土地の譲渡の日までに市町村長に対し,その旨の申出をしなければならないと規定していることなどからすれば,土地の所有者等からの直接の譲受者に限られる。 2 市区長が,地方税法(平成15年法律第9号による改正前)附則31条の3の2第1項に基づく他人譲渡制度により特別土地保有税の徴収猶予決定を受けていた土地の譲渡会社に対してした,同土地を譲り受けた会社の会社分割によりその事業の一部を承継して同土地を承継した会社が,同土地を分筆後,分筆後の土地の共有持分を,前記会社分割後の譲受会社を吸収合併した会社に対して再譲渡したことによる,前記徴収猶予決定のうち前記共有持分の割合により按分した額の特別土地保有税についての徴収猶予取消処分につき,同条の「譲受者」とは直接の譲受者に限られるところ,前記一部承継会社と前記吸収合併会社とは別個の法人格を有する株式会社であること,前記一部承継会社は,前記吸収合併会社に対して前記共有持分を売り,即日代金全額を受領したこと,前記吸収合併会社は,同日前記共有持分を取得するとともに土地の引渡及び所有権移転登記に必要な一切の書類の引渡しを受けたことからすると,前記再譲渡により,前記共有持分は前記吸収合併会社に移転したことは明らかであり,前記再譲渡は実質的にも存在するものであるから,同条の要件に欠けることになったとして,前記取消処分を適法とした事例

主文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

被告が,原告に対し,平成15年4月21日付けでした特別土地保有税徴収猶予取消処分を取り消す。

第2 事案の概要

本件は,地方税法(平成15年法律第9号による改正前のもの。以下「法」という。)附則31条の3の2の規定により特別土地保有税の徴収猶予を受けていた株式会社マイカル総合開発が,被告から徴収猶予の取消処分を受けたため,同社を承継した原告が,被告に対し,同処分の取消しを求める事案である。

1 法令の定め

(1) 特別土地保有税

特別土地保有税は,昭和48年に,土地保有に伴う管理費用の増大を通じて土地投機を抑制し,地価の安定を図るとともに土地の供給促進に資することを目的として創設された税制である。当初は,住宅用地等の非課税土地(法586条)を除き土地の利用度を問わず一律に課税する仕組みを採っていたが,昭和53年に,事務所,店舗,工場施設等で恒久的な利用に供される土地(以下「免除土地」という。)について免除制度が創設された(法603条の2第1項)。非課税土地については,非課税土地として利用することが確実な計画がある場合に徴収を猶予する制度を規定されていたところ(法601条),平成10年には,免除土地として利用することが確実な計画がある場合の徴収猶予制度が規定された(法603条の2の2)。さらに,資金繰りの悪化等により徴収猶予を続けている土地が相当数存在することから,未利用地の有効利用を促進するため,平成11年に住宅・宅地供給事業に資する土地の譲渡に係る徴収猶予・納税義務の免除制度(以下「他人譲渡制度」という。)が創設され,平成13年及び平成14年度改正により拡充された(法附則31条の3の2)。なお,平成15年度改正により,平成15年1月1日以降,所有・取得された土地については,当分の間特別土地保有税の課税が停止されている(同改正後の地方税法附則31条)。

(2) 他人譲渡制度

法附則31条の3の2第1項は,次のとおり規定している。

市町村は,第601条第1項に規定する納税義務の免除に係る期間(省略),第602条第1項に規定する納税義務の免除に係る期間(省略)又は第603条の2の2第1項に規定する納税義務の免除に係る期間(省略)(以下本項において「免除期間」という。)が定められている土地の所有者等(省略)が,平成13年4月1日から平成15年3月31日までの期間(当該期間内に免除期間の末日がある場合には,平成13年4月1日から当該免除期間の末日までの期間)内に当該土地を譲渡した場合において,当該譲渡が非課税土地等予定地(当該譲渡の日から2年を経過する日までの期間(工場,事務所その他の建物若しくは構築物の建設又は大規模な宅地の造成に要する期間が通常2年を超えることその他の政令で定める理由がある場合には,政令で定める期間とする。以下本項及び第4項において「予定期間」という。)内に,当該譲渡を受けた者(以下本項及び次項において「譲受者」という。)が,当該土地を第586条第2項各号に掲げる土地(省略。以下本項において「非課税土地」という。)として使用し,若しくは使用させる予定であること,当該土地について第602条第1項各号に掲げる者の区分に応じ当該各号に定める土地の譲渡(以下本項において「特例譲渡」という。)をする予定であること又は当該土地を第603条の2第1項の規定に該当する土地(以下本項において「免除土地」という。)として使用し,若しくは使用させる予定であることにつき市町村長の認定を受けた土地をいう。)のための譲渡に該当し,かつ,譲受者が,予定期間内に,当該土地を非課税土地として使用し,若しくは使用させたこと,当該土地について特例譲渡をしたこと又は当該土地を免除土地として使用し,若しくは使用させたことにつき市町村長の確認を受けたときは,当該土地の所有者等の当該土地に係る特別土地保有税に係る地方団体の徴収金(省略)に係る納税義務を免除するものとする。

2 前提事実(争いのない事実及び証拠(書証番号は枝番を含む。)により容易に認められる事実)

(1) 株式会社マイカル(以下「マイカル」という。)は,全国に「サティ」,「ビブレ」,「マイカルタウン」を展開するスーパーであるが,平成13年12月31日,東京地方裁判所で会社更生手続開始決定(同裁判所平成13年(ミ)第4号)を受け,管財人A及び原告が選任され,平成15年9月30日,同裁判所で更生計画案認可決定を受けた。

株式会社マイカル総合開発は,マイカルの関係会社で,マイカルが出店する店舗の開発行為や不動産事業を展開している会社であり,マイカル同様,平成13年12月31日,東京地方裁判所で会社更生手続開始決定(同裁判所平成13年(ミ)第5号)を受け(以下,同決定後の更生管財人を含めて「総合開発」という。),平成15年9月30日,同裁判所で更生計画案認可決定を受けたが,更生計画によりマイカルに吸収合併された。

(2) 総合開発は,平成11年9月30日,別紙物件目録1記載の土地(以下「本件1土地」という。)を取得した。総合開発は,被告に対し,本件1土地の取得及び保有に関し次のとおり合計5億7360万3100円の特別土地保有税を申告し課税を受けている(甲5から10まで)。

ア 平成11年度の土地取得に係る特別土地保有税

2億3858万9800円

イ 平成12年度の土地保有に係る特別土地保有税

1億1325万0800円

ウ 平成13年度の土地保有に係る特別土地保有税

1億1203万2000円

エ 平成14年度の土地保有に係る特別土地保有税

1億0973万0500円

(3) 総合開発は,本件1土地について,鉄骨造13階建ての複合商業施設及び駐車場を建設する事業計画により法603条の2の2の規定による免除土地として被告に申請し,被告から,平成11年度から平成13年度の上記特別土地保有税について,平成14年2月22日までの期間徴収猶予の決定を得ていた(甲5から9まで)。しかし,総合開発は,本件1土地で予定した開発行為を実現することができず,平成14年2月20日,本件1土地を,本件1土地上に分譲マンションを建築する目的を表示して近鉄不動産株式会社(以下「近鉄不動産」という。)に譲渡し(甲11),同日,被告に対し,他人譲渡制度の適用を求めて特別土地保有税非課税土地等予定地のための譲渡申出書を提出した(乙4)。被告は,同月27日,法603条の2の2の規定による前記徴収猶予を取り消し,法附則31条の3の2の規定に基づく他人譲渡制度の適用のため,同年8月19日までに特別土地保有税非課税土地等予定地認定申請がされた場合には,同認定の日まで徴収を猶予することとした(乙5)。総合開発は,同年5月31日,被告に対し,平成14年度分の特別土地保有税の申告をして徴収猶予を受け(甲10),同年8月6日,被告に対し,近鉄不動産が本件1土地に分譲マンション,オフィス,ホテル等複合ビルの建設を計画していることを理由に特別土地保有税非課税土地等予定地認定申請を行った(甲12)。被告は,同年12月3日,総合開発に対し,法附則31条の3の2第1項の規定に基づき同年2月20日から平成18年9月2日までの期間特別土地保有税の徴収を猶予する決定(以下「本件猶予決定」という。)をした(甲13)。

(4) 近鉄不動産は,平成14年4月1日,会社分割をし,近鉄不動産販売株式会社がその事業の一部を承継した。近鉄不動産は,同日,近畿日本鉄道株式会社(以下「近畿日本鉄道」という。)に吸収合併されて解散した。近鉄不動産販売株式会社は,同日,近鉄不動産株式会社(以下「新近鉄不動産」という。)に商号変更し,本件1土地は新近鉄不動産に承継された(甲22から26まで)。新近鉄不動産は,平成14年11月5日,本件1土地を別紙物件目録2記載の土地(以下「本件2土地」という。)と同所5番33の土地に分筆し(甲3),平成15年3月25日,本件2土地の2分の1の共有持分を近畿日本鉄道に譲渡(以下「本件譲渡」という。)し(乙6,調査嘱託),同月26日,被告に対し,本件譲渡に係る本件2土地の共有持分について法附則31条の3の2の規定の適用を受けるため特別土地保有税の非課税土地等予定地のための譲渡申出書を提出した(乙7)。

(5) 被告は,総合開発に対し,本件譲渡により法附則31条の3の2の規定する要件に該当しなくなったとして,平成15年3月26日付けで本件猶予決定のうち本件2土地の共有持分割合により按分した次の合計1億6765万1600円の特別土地保有税について徴収猶予を取り消し(以下「本件取消処分」という。),平成15年4月21日付け通知書により通知した(甲14)。

ア 平成11年度の土地取得に係る特別土地保有税

6973万4600円

イ 平成12年度の土地保有に係る特別土地保有税

3310万0700円

ウ 平成13年度の土地保有に係る特別土地保有税

3274万4500円

エ 平成14年度の土地保有に係る特別土地保有税

3207万1800円

(6) 総合開発は,本件取消処分を不服として,同年6月18日,大阪市長に対し審査請求をしたが(甲15),大阪市長は,同年12月24日,上記審査請求を棄却する裁決をした(甲17)。これに対し総合開発を承継した更生会社株式会社マイカル管財人Aは,平成16年3月24日,本件取消処分の取消しを求めて本訴を提起した。同管財人は,同月31日をもって退任し,原告が本訴を承継した。

3 争点

(1) 他人譲渡制度における「譲受者」は,直接の譲受者に限られるか否か。(原告)

法附則31条の3の2の譲受者を直接の譲受者に限定する規定や,譲渡を1回に限る規定はない。

他人譲渡制度の規定は,バブル崩壊後資金繰りの悪化により相当数の土地がいわゆる塩漬け状態になっている状況を打破するため,土地の流動化,有効活用の促進を図る必要があることから規定,改正されたものである。同制度は,数度の改正を経て,「最終的に利用されていない土地についてのみ税負担が生じる仕組み」となった。他人譲渡制度の「譲受者」を直接の譲受者に限定する解釈は,①直接の譲受者において資金繰りが悪化した場合に新しい事業参画者を募ることが困難になる,②再譲渡という土地保有者が関与できない偶発的な事情によって猶予を取り消されることになり土地の処分を差し控えることになる,③譲渡契約において再譲渡による徴収猶予取消しによる損失補償を定めると土地の売却が困難になることから,土地の有効利用を阻害することになる。

投機目的の不動産取引の抑制には,徴収猶予の予定期間内に予定された事業計画の完成を要求すれば足りる。

以上によれば,他人譲渡制度の譲受者を直接の譲受者に限定せず,再譲受者により土地の利用が図られた場合も徴収義務の免除を認めるのが土地の有効利用を図る他人譲渡制度の趣旨に適うものである。

(被告)

他人譲渡制度は,徴収猶予期間内の土地の譲渡については当該徴収猶予を取り消すという原則に対して,譲渡者と譲受者との間で土地の有効利用を条件とした譲渡が期待できることから認められたものであり,当該土地が譲受者から更に第三者に譲渡される等土地の転々譲渡が行われた場合においては,譲渡者と転々譲渡を受けた所有者との間では土地の有効利用を図る趣旨が承継されない不都合が生じるおそれがあることから,譲渡者と直接の譲受者との間における土地の譲渡に限り,政策的に徴収猶予の延長を認める制度を創設したものである。本件猶予決定では,総合開発から譲渡を受けた近鉄不動産が特別土地保有税非課税土地等予定地認定申請書に記載された用途を完成させることが徴収猶予の条件となっているのであり,再譲渡により譲受者となった近畿日本鉄道による完成が条件となっているのではない。

また,他人譲渡制度が適用される土地の所有者等は,法601条,602条及び603条の2の2の規定に基づく徴収猶予を現に受けている者であり,他人譲渡制度の適用を受けると当初の徴収猶予が取り消され,法附則31条の3の2を根拠とする新たな徴収猶予が適用されることになる。これは,他人譲渡制度の規定により救済されるのは1回のみとし,いたずらな徴収猶予期間の延長は認めないとする基本的考え方によるものである。本件譲渡により近畿日本鉄道が譲受者となったことによって,総合開発が再度他人譲渡制度の適用を受けることができないことは明らかである。

(2) 本件譲渡は実質的に存在しないといえるか否か。

(原告)

本件譲渡は,近鉄グループの不動産事業の再編に伴い,近鉄不動産の吸収分割により,その事業の一部を承継した新近鉄不動産から親会社である近畿日本鉄道に対してされたもので,その後,新近鉄不動産と近畿日本鉄道が本件2土地上に共同事業として高層ビル・マンション(以下「本件マンション」という。)を建設し,同土地の恒久的な利用を図ったものである。そして,近鉄不動産は,平成14年1月31日当時,近畿日本鉄道の100パーセント子会社であること,本件2土地の登記名義は近鉄不動産のままで,近畿日本鉄道に移転していないこと,本件マンションの建築確認申請は,新近鉄不動産を建築主としてされていること,本件譲渡の対象は,本件マンション敷地の共有持分であり,非譲渡土地との区別は不可能であることに,上記の取引経緯や,新近鉄不動産及び近畿日本鉄道の関係を考慮すれば,本件譲渡は実質的に存在しないというべきであって,本件譲渡を理由に法附則31条の3の2第1項の適用を失わせることは不当である。

(被告)

新近鉄不動産と近畿日本鉄道とは独立した法人格を有する以上,本件2土地の共有持分について転売がされた事実は明らかであり,その持分に相当する部分について徴収猶予が取り消される要件を具備している。

特別土地保有税は,土地の移転ないし移転後当該土地を保有すること自体に着目して課せられるものである以上,土地の所有者等について登記名義人を基準に判断すべきものではない。

建築基準法上,建築主は建築物の敷地の所有者や地上権者である必要はなく,本件マンションの建築主でないからその敷地の権利者でないとはいえない。本件マンションの販売に係る広告には,近畿日本鉄道が事業主,売主として明記されており,近畿日本鉄道が同マンション事業に参画していることは明らかである。

第3 争点に対する判断

1 争点(1)(他人譲渡制度における譲受者の意義)について

他人譲渡制度は,土地の所有者等が,自ら土地の有効利用を図ることを予定した徴収猶予期間内に予定した利用ができず当該土地を譲渡した場合,当該徴収猶予は取り消される原則の下,バブル崩壊後資金繰りの悪化により相当数の土地がいわゆる塩漬け状態になっている状況から,土地の流動化,有効活用の促進を図るため,譲渡者と譲受者との間で土地の有効利用を条件とした譲渡が期待できる場合に,例外的に徴収猶予の継続を認める制度である。そして,法附則31条の3の2第1項は,特別土地保有税の免除期間が定められている土地の所有者等が,当該土地を譲渡した場合,その譲渡を受けた者を「譲受者」とし,「譲受者」が予定期間内に当該土地を非課税土地等として使用したことなどについて市町村長の確認を受けたときは,納税義務を免除すると規定していること,同条項は,「譲受者」が,当初から第三者への再譲渡を予定した特例譲渡による徴収猶予及び納税義務の免除の取扱いも規定していること,同条2項は,土地の所有者等が,前記の規定の適用を受けようとする場合には,「譲受者」に対する土地の譲渡の日までに市町村長に対し,その旨の申出をしなければならないと規定していることからすれば,同条にいう「譲受者」は,土地所有者等からの直接の譲受者であることは明らかである。そして,法が同条の「譲受者」を土地の所有者等からの直接の譲受者に限定したのは,当該土地が転々譲渡された場合に,限りなくこの特例が適用されるとしたのでは不都合であることから,土地の所有者等にとってこの特例が適用されるのは1回限りとすべきあるという考え方によるものであり(乙2,11),この考え方に特段不合理な点はない。

原告は,他人譲渡制度の譲受者を直接の譲受者に限定する解釈は土地の有効利用を阻害することになることを根拠に,法附則31条の3の2の「譲受者」を直接の譲受者に限定して解釈すべきではないと主張する。しかし,譲受者を直接の譲受者に限定しないことが土地の有効利用を一層促進することになるとしても,土地の有効利用を促進するために,いかなる要件の下で他人譲渡制度による特別土地保有税の徴収猶予及び納税義務の免除を認めるかは,土地政策税制としての立法論の問題である。そして,上記のとおり,法附則31条の3の2の解釈として,同条の「譲受者」が直接の譲受者を指すことが明確である以上,原告の上記主張を採用することはできない。

2 争点(2)(本件譲渡の実質的不存在)について

原告は,本件2土地の登記名義や本件マンションの建築確認申請における建築主が新近鉄不動産のままであること,近鉄グループの不動産事業の再編に伴う本件譲渡の経緯,新近鉄不動産と近畿日本鉄道との関係,マンション建設が両社の共同事業として行われていることなどを理由に,本件譲渡は実質的には不存在であるから,他人譲渡制度の適用を失わせるものではないと主張する。

しかし,証拠(乙6から8まで,調査嘱託)によれば,新近鉄不動産と近畿日本鉄道は別個の法人格を有する株式会社であること,新近鉄不動産は,平成15年3月25日,本件2土地の共有持分2分の1を近畿日本鉄道に対し代金11億0300万円で売り,同日代金全額を受領したこと,近畿日本鉄道は,前同日,上記共有持分を取得するとともに同土地の引渡し及び所有権移転登記に必要な一切の書類の引渡しを受けたことが認められる。そして,これらの事実によれば,本件譲渡により,本件2土地の2分の1の共有持分は,近畿日本鉄道に帰属したことは明らかであり,原告が主張する登記名義が変更されていないなどの各事実は,いずれもこの認定を左右するものではない。このように,本件譲渡は実質的にも存在するものであり,本件譲渡により,本件2土地の2分の1の共有持分について,総合開発が本件猶予決定時に予定した近鉄不動産による土地の有効利用方法が達成できなくなった以上,この限度で,他人譲渡制度の適用の要件に欠けることになったといわざるを得ず,原告の上記主張を採用することはできない。

3 結論

以上によれば,本件譲渡により近畿日本鉄道に移転した本件2土地の共有持分割合に応じて本件猶予決定を取り消した本件取消処分は適法であって,原告の本訴請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第7民事部

裁判長裁判官 廣谷章雄

裁判官 山田明

裁判官 芥川朋子

出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/14799/detail5/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。