TaiLexi AI日本の判例・法令
← ホーム
最高裁第二小法廷決定棄却刑集62巻7号2702頁

最二小決 平成20年8月27日

平成19年(あ)第2207号 非現住建造物等放火,詐欺未遂被告事件

裁判所
最高裁判所第二小法廷
裁判年月日
平成20年8月27日 (2008-08-27)
事件番号
平成19年(あ)第2207号
事件名
非現住建造物等放火,詐欺未遂被告事件
裁判の種類・結果
決定 棄却
判例集等
刑集62巻7号2702頁
原審
福岡高等裁判所 平成19年(う)第248号 平成19年10月31日
分野
刑事
意見
裁判官全員一致個別意見なし

判示事項

火災原因の調査,判定に関し特別の学識経験を有する私人が燃焼実験を行ってその考察結果を報告した書面について,刑訴法321条3項は準用できないが,同条4項の書面に準じて同項により証拠能力が認められるとされた事例

裁判要旨

火災原因の調査,判定に関し特別の学識経験を有する私人が燃焼実験を行ってその考察結果を報告した本件書面(判文参照)については,刑訴法321条3項所定の書面の作成主体が「検察官,検察事務官又は司法警察職員」と規定されていること及びその趣旨に照らし同項の準用はできないが,同条4項の書面に準ずるものとして同項により証拠能力を有する。

参照法条

主文

本件上告を棄却する。

当審における未決勾留日数中180日を本刑に算入す

る。

理由

弁護人富永孝太朗,同池田耕一郎の上告趣意のうち,憲法38条違反をいう点は,記録を調べても被告人の捜査段階における供述調書の任意性を疑わしめる証跡は認められないから,所論は前提を欠き,その余は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。

なお,所論にかんがみ,職権で判断する。

記録によれば,本件の第1審公判において,本件非現住建造物等放火罪に係る火災の原因に関する「燃焼実験報告書」と題する書面の抄本(第1審甲100号証。以下「本件報告書抄本」という。)が,その作成者の証人尋問の後に,同法321条3項により採用されたところ,上記作成者は,私人であることが明らかである。原判決は,本件報告書抄本が,火災原因の調査を多数行ってきた会社において,福岡県消防学校の依頼を受けて燃焼実験を行い,これに基づく考察の結果を報告したものであり,実際に実験を担当した上記作成者は,消防士として15年間の勤務経験があり,通算約20年にわたって火災原因の調査,判定に携わってきた者であることから,本件報告書抄本は,捜査機関の実況見分に準ずるだけの客観性,業務性が認められ,同項を準用して証拠能力を認めるのが相当である旨判示した。しかしながら,同項所定の書面の作成主体は「検察官,検察事務官又は司法警察職員」とされているのであり,かかる規定の文言及びその趣旨に照らすならば,本件報告書抄本のような私人作成の書面に同項を準用することはできないと解するのが相当である。原判断には,この点において法令の解釈適用に誤りがあるといわざるを得ないが,上記証人尋問の結果によれば,上記作成者は,火災原因の調査,判定に関して特別の学識経験を有するものであり,本件報告書抄本は,同人が,かかる学識経験に基づいて燃焼実験を行い,その考察結果を報告したものであって,かつ,その作成の真正についても立証されていると認められるから,結局,本件報告書抄本は,同法321条4項の書面に準ずるものとして同項により証拠能力を有するというべきであり,前記法令違反は,判決に影響を及ぼすものではない。よって,同法414条,386条1項3号,刑法21条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 中川了滋裁判官 津野修裁判官 今井功裁判官 古田佑紀)

出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/36742/detail2/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。