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簡裁判決

東京簡判 平成20年10月20日

平成20年(少コ)第1541号 解雇予告手当等請求事件

裁判所
東京簡易裁判所民事第9室
裁判年月日
平成20年10月20日 (2008-10-20)
事件番号
平成20年(少コ)第1541号
事件名
解雇予告手当等請求事件
裁判の種類・結果
判決 その他
判例集等
—
分野
民事

平成20年10月20日判決言渡

東京簡易裁判所

平成20年(少コ)第1541号

解雇予告手当等請求事件(通常手続移行)

判決

主文

被告は,原告に対し,3万4931円及びこれに対する平成20年5月26日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。被告は,原告に対し,36万9861円及びこれに対する平成20年5月7日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。

被告は,原告に対し,36万9861円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。事

実及び理由

第1

請求

被告は,原告に対し,3万7500円及びこれに対する平成20年5月26日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。被告は,原告に対し,74万8290円及び内金37万4145円に対する平成20年5月7日から支払済みまで年5パーセントの,内金37万4145円に対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。

第2

事案の概要

請求原因の要旨

(1)

原告の被告に対する,平成20年4月18日締結の雇用契約に基づく未払賃金3万7500円及びこれに対する平成20年5月26日から支払い済みまで年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払請求

(2) 原告の被告に対する,平成20年4月18日締結の雇用契約について,平成20年5月6日の解雇に基づく解雇予告手当請求権としての37万4145円及びこれに対する平成20年5月7日から支払い済みまで年5パーセントの割合による遅延損害金並びに付加金37万4145円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払い済みまで年5パーセントの割合による遅延損害金の支払請求

争点

(1) 原告が雇用された日はいつか。

(2) 原告が解雇された日は雇用の日から14日を経過していたかどうか。

(3) 付加金を認めるべきか。

(4) 未払賃金の額はいくらか。

第3 争点に対する判断

原告が雇用された日について

被告は,当初,原告が雇用された日を4月18日とし,4月18日から4月20日までの3日分の給与3万6987円を5月1日に支払っている。しかし,被告は,その後,本件第3回口頭弁論に至り,原告Aの入社日は4月21日であるとし,原告が雇用された日を4月21日に変更すると主張した。確かに,被告会社の代表者代表取締役であるBは,原告が4月21日に入社することを知らせるメールを従業員に送付しているが(乙8),原告は被告会社に出社する以前から,Bから,会社の機密事項を含む内部資料を渡され,会社再建のための提言をまとめる作業に取りかかり,実質的に従業員として活動しており,給与も4月18日から支払われていたことからすると,原告が被告会社に雇用されたのは4月18日とするのが相当である。

原告が解雇された日について

(1) 本件雇用契約には試用期間の定めがあり,試用期間中に解雇された場合には解雇予告手当を払う必要はないが,雇用の日から2週間経過して解雇すると試用期間中であっても解雇予告手当を支払わなければならない(労働基準法21条)。よって,本件では,解雇の日が雇用された日から14日を経過していたかどうかが問題になる。

原告は,解雇の日について,「5月2日,被告会社の従業員Cから『Aは信用できないので今日で上がってほしい。』という話があったが,Cには人事権がなく解雇を通告できないので5月2日の解雇は無効である。5月6日,Bから『残念ながら社員としての継続はない。』というメールがあり,このメールにより解雇の通知を受けた。よって,解雇の日は5月6日である。」と主張する。これに対して,被告は,「Bは,中国出張中の4月24日,Cから『Aの動きがおかしい,このままだと会社に動揺が広がる恐れがある。』というメールを受けて,Cに原告を解雇するように電話で指示した。CはBの指示により,4月25日,原告に解雇を通知した。」と主張する。

(2) そこで,以下,原告がいつ解雇されたかについて検討する。原告及びBの尋問の結果,証人Cの証言,甲1ないし25,乙1ないし26からすると,次のような経緯と事実を認めることができる。

原告が採用された平成20年4月ころ,被告会社は本業以外に投資した案件で失敗し苦境に陥り再建を模索していた。Bは,求人広告に応募してきた原告を有能と認め,被告会社の再建に必要不可欠な人材と見込んで採用した。原告の待遇は被告会社の規模からして,26歳の新人としては破格のものであった。Bは原告を採用すると直ちに原告に会社の機密事項を含む内部資料を渡し,会社再建のための提言をまとめる作業に取りかからせ,その仕事ぶりに満足していた。このような中,Bは4月21日,中国に出張することになるが,会社を抜本的に改革するために,Bの留守中,原告にほぼ従業員全員に対する面談を命じた。ところが,Bは原告から会社やBに対する不満から要望書をまとめる動きがあるとの報告を受け驚き,自分が信頼しているCに連絡を取ったところ,Cから原告が不審な行動をし,会社に動揺が広がっているという報告を受けた。そこで,Bはこのまま原告に従業員の面談をしたり不用意な発言をすると,ますます会社に動揺が広がると考え,原告に面談を中止し,行動に注意するようにというメールを送付した。そして,BはCに原告の処遇をどのようにしたらよいか相談し,Cに原告の処遇を一任した。

(3) 以上の事実からすると,Bは,Cに4月25日,電話にて原告を解雇するように伝え,Cは,Bの命により,4月25日,口頭にて原告に解雇を伝えたとみることができ,Bは4月25日,Cを通して原告に解雇を通知したとも解される。

しかし,原告はCから5月2日「Aは信用できないないから今日で上がって欲しいと言われたが,現状ではCさんの独断なので社長と話をしてほしいとも言われています。」と言われていること(甲5,原告の供述),Cもいつ原告に解雇のことを話したか記憶は曖昧だと証言していることからすると,Cが原告に雇用の継続のことで話をしたことは間違いないが,それがいつだったか明らかでない。また,Cには役職がなく,人事についての権限を持っておらず,被告提出の答弁書と題する書面(平成20年9月29日付)の3頁8行には,解雇の通知について,「処置についてはCに完全に一任していた」とあり,BやCの証言にもこれに沿う部分があることからすると,Bは人事権のない者に解雇するかどうかの判断を委ねたことになるが,解雇は労働者にとって最も不利益な処分であり,解雇の意思表示は解雇権限のある者が,明確にその理由を告げてなされるべきであるから,CがBから一任を受けて解雇の通知をしたとしても,その通知は効力がないものと解される。そして,原告が被告が主張するように被告会社に動揺を与える危険な人物であるとするなら,原告が会社に近寄ることを排除するものと思われるが,原告は4月25日以降も出社し,4月30日の全体会議にも出席し,原告は,5月2日,従業員のDに返還すべき書類を渡し,最後に施錠して会社を退社していること,この間,原告が会社に出入りしていることについてBもCも被告会社の誰も異議を唱えていないこと,さらに,原告はBに対し,5月8日付けのメールで,解雇の日が5月6日であることを前提に未払給与及び解雇予告手当の請求をしたのに対し,Bは,異議を述べることなく,原告に対する5月26日付けのメールで「連絡遅くなりました。資金繰りの都合により,申し訳ないのですが明日振り込みます。」と返答していることからすると,原告が5月6日以前に解雇されているとみることはできない。被告も当初は,解雇の日を5月6日と考えていたが,解雇予告手当をいくら支払ったらよいか解らず,労働基準監督署に問い合わせたところ,試用期間中の者については雇用の日から2週間以内の解雇なら解雇予告手当を支払わなくてもよいと教えられ(Bの供述),被告は原告の解雇の日を雇用された日から2週間以内の4月25日と主張したものと考えられる。被告は,原告の入社日についても,口頭弁論の中で4月18日を4月21日と訂正している。そうすると,被告の原告の解雇日の主張は,解雇予告手当の支払を免れるために,原告が解雇された日を雇用された日から2週間後になるように組み立てられたものとみることができる。そして,原告が解雇された日を証明する客観的証拠は,Bが原告に5月6日,「残念ながら社員としての継続はない」というメールしかなく,これを覆すに足りる証拠はない。

(4) 以上の事情を総合して判断すると,原告が解雇された日は5月6日と解するのが相当である。

以上のとおり,原告の雇用期間は4月18日から5月5日までの18日間であり,原告は即時解雇されているから,本件解雇予告手当である30日分の平均賃金は,年俸額を365日で除した1日あたりの賃金に30日を乗じた金額とするのが相当である。

そうすると,原告の1日あたりの賃金は,年俸450万÷365日=1万2328.7円であるから,本件解雇予告手当の額は,1万2328.7円×30=36万9861円となる。

付加金について

付加金については,被告は,原告は解雇の日が雇用の日から14日後に来るように意図的にメールで証拠を残しており,原告の本件解雇予告手当の請求は信義に反すると非難するが,①原告は,Bも認めるとおり有能であり,被告会社の再建のための資料作成に尽力しており,原告が最初から解雇予告手当目当てで被告会社に入社したとは思えないこと,②労働者がその基本的権利である解雇予告手当の請求をするために自己に有利な証拠を残すことが信義に反するするとはいえないこと,③原告は被告会社に入社する以前,Bと面談した直後からBから会社の財務や給与に関する情報を与えられ,被告会社再建のための提言をまとめる作業に着手し,5月8日,その一応の成果をBにメールで報告しており,原告は被告会社で実質1か月以上勤労しているといえるが,被告が原告に支払った給与は,4月18日から同20日までの3日分と,それ以降の(

,

。)

15万円

1日あたりの給与を1万2329円とすると

約12日分となる

であること等からすると,原告の本件解雇予告手当の請求が信義に反するということはできない。

かえって,①前述したように,被告の原告の解雇日の主張は,解雇予告手当の支払を免れるために,原告が解雇された日を雇用された日から2週間後にするために組み立てたものとみることができること,②原告がBの中国出張中に従業員に面談した際,不用意な発言をし被告会社に動揺を与えたとしたら,原告にも責任の一端があると思われるが,それ以上に,当時,被告会社は投資に失敗し,かなり不安定な状態にあり,社内では会社に批判的な要望書も出されていたのであるから,このような時期に入社まもない若年の原告が,社長が不在中にほぼ全員の従業員面談することは通常は考えられないことであること,③もし,このような面談がなされるのなら,相当な配慮が必要とされると思われるが,Bがそのような配慮を行った形跡はなく,原告の行動で会社内で動揺が広がったとしたら,それはBの責任が大きいと言わざるを得ないこと,④その当時被告会社の従業員の中には,入社間もない若年の原告に対する特別扱いについて不満を持つ者がいたことから,Bは,自分に対する批判をかわすために原告を解雇したとみることができることから等すると,被告が原告を解雇したことは不当であるということができる。

以上の事情を考慮すると,付加金の請求は解雇予告手当と同額の範囲で認めるのが相当であると解する。

未払賃金について

原告が雇用された日を4月18日,解雇された日を5月6日とすると,4月18日から4月20日までの3日分の給与3万6987円は5月1日に支払われているので,4月21日から5月5日までの15日間の賃金は,1万2328.7円×15=18万4930.5円になり,四捨五入による端数処理で18万4931円となるが,15万円が既に支払われているので,結局,未払賃金は3万4931円ということになる。

結論

以上のとおり,原告の請求は,解雇予告手当については,36万9861円の範囲で,未払賃金については,3万4931円の範囲で認められ,また付加金の請求については,解雇予告手当と同額の範囲で認められるので,主文のとおり判決する。

東京簡易裁判所民事第9室

裁判官 丸尾敏也

出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/37372/detail4/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。