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高裁判決棄却

仙台高判 平成15年6月5日

平成14年(う)第216号 強盗殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件

裁判所
仙台高等裁判所第1刑事部
裁判年月日
平成15年6月5日 (2003-06-05)
事件番号
平成14年(う)第216号
事件名
強盗殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
裁判の種類・結果
判決 棄却
判例集等
—
原審
福島地方裁判所  会津若松支部 平成14年(わ)第79号
分野
刑事

AI 要約AI

要旨

  • 金銭強取の目的で所携の包丁で被害者の腰背部を突き刺した行為につき、未必の殺意を認め強盗殺人未遂罪の成立を肯定し、事実誤認の主張を排斥した事例
  • 強盗殺人未遂等につき懲役10年に処した原判決の量刑が、確定的殺意が認められず金銭強取も未遂に終わったこと等の酌むべき事情を考慮しても重すぎないとした事例
事案の概要・争点・判断などを表示

事案の概要

  • 被告人は、所持金がごくわずかとなったことから金銭強取を企て、銀行のキャッシュコーナーに現金を引き出しに来る女性客を待ち受け、包丁を隠し持って近づき、その腰背部を突き刺し、全治未定の下大静脈損傷等の傷害を負わせたが殺害するには至らず、同包丁を不法に携帯した。
  • 被告人は、強盗殺人未遂罪及び銃砲刀剣類所持等取締法違反の罪で懲役10年(原判決)に処せられ、被告人側が、殺意はなく事実誤認がある、量刑も重すぎるとして控訴した。

争点

  • 被告人に未必の殺意があったか否か
  • 懲役10年に処した原判決の量刑が重すぎるか否か

判断

  • 被告人は、先端の尖った刃体の長さ約16.5センチメートルの鋭利な包丁で、被害者の右腰背部の臓器の存する部位を相当の力を込めてほぼ垂直に突き刺し、刃体全部が体内に没入して下大静脈等を損傷しており、死亡の可能性が極めて高かった。また、金銭を奪うため長時間待ち続け、当初から腹を刺そうと考えていたことから、少なくとも死亡するかもしれないことを認識しながらそれでも構わないとの思いで突き刺したと認定でき、未必の殺意が認められる。事実誤認の論旨は理由がない。
  • 本件は、金銭強取の目的で殺意をもって包丁で腰背部を突き刺し重傷を負わせた強盗殺人未遂等の事案であり、動機・経緯は身勝手で短絡的、女性を狙った冷酷非情で凶悪な犯行で、被害者の傷害は死亡の可能性が極めて高い重傷であり、慰謝の措置も講じられていない。確定的殺意が認められず金銭強取も未遂に終わったこと等の酌むべき事情を考慮しても、懲役10年の量刑が重すぎることはない。論旨は理由がない。

判旨(本文から引用)

  • 被告人は,少なくとも被害者が死亡するかもしれないことを認識しながら,それでも構わないとの思いで,金銭奪取のため包丁でその腰背部を突き刺したものと十分に認定することができる。

結論

  • 本件控訴を棄却する。
  • 当審における未決勾留日数中120日を原判決の刑に算入する。
  • 当審における訴訟費用は被告人に負担させない。

AI が本文から作成した要約です。引用の際は本文をご確認ください。

主文

本件控訴を棄却する。

当審における未決勾留日数中120日を原判決の刑に算入する。

理由

第1 本件控訴の趣意は,弁護人角山正作成の控訴趣意書に記載のとおりであるから,これを引用する。

控訴趣意の第1は,事実誤認の主張であり,被告人には殺意はなかったのに,強盗殺人未遂罪の成立を認めた原判決には事実誤認がある,というのであり,控訴趣意の第2は,量刑不当の主張であり,懲役10年に処した原判決の量刑は重すぎる,というのである。

第2 そこで,記録を調査し,当審における事実取調べの結果を併せて検討する。

1 控訴趣意第1の事実誤認の主張について

所論は,被告人は,体重を乗せ手加減せずに勢いよく刺したりはしておらず,何度も強盗を実行しようとしながら度胸がなく実行できなかったのであるから,人の命を奪ってまで金銭を取ろうとする決意はなかったものであり,未必の殺意を認める趣旨の被告人の供述調書も,取調官の理詰めの誘導によるもので信用性はなく,被告人に未必の殺意があったことを認定することは困難である,と主張する。

しかしながら,被告人が被害者を包丁で突き刺した状況は,原判決が(事実認定の補足説明)の2で認定するとおりであり,先端の尖った刃体の長さ約16.5センチメートルの鋭利な包丁でもって,被害者の後ろから,背部正中線の右4センチメートル,右骨盤の上4センチメートルの臓器の存する右腰背部を突き刺しており,そのため,包丁の約16.5センチメートルの刃体全部が被害者の体内に没入し,体内の下大静脈を損傷し,腹膜を傷つけており,包丁が抜かれた場合には下大静脈の損傷個所から多量に出血し,あるいは集中している腎臓,腸管,下大動脈等の重要な臓器が損傷されていれば,死亡する可能性が極めて高かったことが認められ,被告人は,長い刃体を有する鋭利な上記包丁で,被害者の枢要部である右腰背部を相当の力を込めてほぼ垂直に突き刺したといえるのである。しかも,被告人は,金銭を奪うのによい相手が現れる機会を長時間にわたって待ち続け,是非とも金銭を奪わなければとの強い意図を有し,そのため相手が声を出したり騒いだりしないよう当初から腹を刺そうと考えていたことも認められるのである。したがって,被告人は,少なくとも被害者が死亡するかもしれないことを認識しながら,それでも構わないとの思いで,金銭奪取のため包丁でその腰背部を突き刺したものと十分に認定することができる。事実誤認をいう論旨は理由がない。

2 控訴趣意第2の量刑不当の主張について

本件は,金銭強取の目的で,殺意をもって所携の包丁で被害者の腰背部を突き刺し,全治未定の下大静脈損傷等の傷害を負わせたものの,殺害するに至らなかったという強盗殺人未遂と,同包丁の不法携帯の事案である。被告人は,自ら暴力団員として暴力団に関係する仕事をしたものの失敗して,地元の福井におれなくなり,逃げ出して方々を転々とし,妻や知人から金銭の援助を受けたり,仕事先で不正に金員を得るなどして,それらを生活費や遊興費に当てていたが,それにも行き詰まって所持金がごくわずかとなったことから,本件強盗を企てたものであり,その動機や経緯は誠に身勝手で短絡的なものといわなければならない。被告人は,銀行のキャッシュコーナーに現金を引き出しに来る女性客を待ち受けて数時間にわたり機会をうかがい,適当な女性客と見定めると包丁を隠し持って近づき,その背後からいきなり腰背部を突き刺したものであり,目的のためには生命を奪うことも構わず,抵抗の少ないと思われる女性を狙って襲いかかるという,冷酷非情で凶悪な犯行である。被害者の負った傷害は,包丁の刃体全部が没入して奥深くまで突き刺さり,下大静脈を損傷し,腹膜まで達するという重傷であり,適切な医療措置により一命をとりとめたものの,死亡する可能性が極めて高かったものであり,被害者は,生命の切迫した危険にさらされたばかりでなく,長期間の治療を余儀なくされ,元の健康体に戻ることは望み得ず,その被った肉体的,精神的苦痛は非常に大きく,被告人に対する厳重な処罰を望んでいるのも当然である。被告人側から被害者に対して慰謝の措置は何ら講じられていない。

そうすると,被告人の刑事責任は非常に重いというべきであり,確定的殺意があったとまでは認められず,金銭強取も未遂に終わっていること,被告人なりの反省の言葉を述べていることなどの酌むべき事情を考慮しても,被告人を懲役10年に処した原判決の量刑が重すぎることはない。論旨は理由がない。

第3 よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却し,当審における未決勾留の算入につき刑法21条を,当審における訴訟費用を被告人に負担させないことにつき刑訴法181条1項ただし書をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。

仙台高等裁判所第1刑事部

裁判長裁判官 松浦繁

裁判官 根本渉

裁判官 ・木順子

出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/4635/detail4/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。