主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人海野普吉、同竹下甫、同小田成光の上告趣意第一点について。
所論は判例違反をいう点もあるが、所論引用の判例は事案を異にし本件に適切でなく、その余の所論は単なる法令違反の主張であつて、すべて適法な上告理由に当らない。
職権をもつて按ずるに、第一審判決は判示第一の一の(四)の(1)、(2)、(3)、同第一の二の(二)において、農業協同組合の組合長である被告人が組合の当座預金より金員を擅に払出して横領した旨判示するが、右預金の払出は、被告人が先に任務に背いて組合名義をもつて振出した所論各約束手形の支払のためであつたことは第一審判示及び挙示の証拠によつて明らかである。右のごとき事実関係のもとにおいては、先に被告人が約束手形を振出したこと自体が背任罪を構成するものであり、その手形を組合の当座預金から払出して支払つた行為もまた右背任罪の一部であつて、別に横領罪を構成するものではない。しかるに、被告人の右手形支払の行為のみをとらえ、これを業務上横領罪をもつて処断した原判決には、判決に影響を及ぼすべき法令の違反が存するというべきである。しかし原判決の認定する被告人の犯行は合計二四回総額一、三四一万円に達する業務上横領並びに合計六回総額二、二三〇万円に達する背任の所為であるが、原判決が法令の適用を誤り背任罪とすべきものを業務上横領罪として処断したのは、そのうち合計四回総額一六五万円にすぎないから、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
同第二点について。
所論は判例違反をいう点もあるが、所論引用の判例は事案を異にし本件に適切でなく、その余の所論は単なる法令違反の主張であつて、すべて適法な上告理由に当らない。
同第三点について。
所論は事実誤認、単なる訴訟法違反の主張であつて、適法な上告理由に当らない。同第四点について。
所論は量刑不当の主張であつて、適法な上告理由に当らない。
よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
昭和四〇年五月二七日
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 松田二郎
裁判官 入江俊郎
裁判官 長部謹吾
裁判官 岩田誠
出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/50737/detail2/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。
出典:国立国会図書館「次世代デジタルライブラリー」(https://lab.ndl.go.jp/dl/)のOCRテキストデータ(原資料:国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1349114)。TaiLexi AIが編集・加工(OCRの誤りを含む場合があります)。原データ(OCRテキスト)はパブリック・ドメイン・マーク(PDM)付きで、自由に二次利用できます。個人の氏名・住所等はTaiLexi AIがアルファベット等に置き換えています。