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最高裁第一小法廷決定棄却刑集33巻7号966頁収録判例内の被引用 2

最一小決 昭和54年12月19日

昭和52年(あ)第2090号 住居侵入

裁判所
最高裁判所第一小法廷
裁判年月日
昭和54年12月19日 (1979-12-19)
事件番号
昭和52年(あ)第2090号
事件名
住居侵入
裁判の種類・結果
決定 棄却
判例集等
刑集33巻7号966頁
原審
広島高等裁判所  岡山支部  昭和52年10月13日
分野
刑事
意見
裁判官全員一致個別意見なし

判示事項

一失業対策事業等に就労する日雇労働者と団体交渉権

二団体交渉ないし団体行動権の正当な行使にあたらないとされた事例

裁判要旨

一失業対策事業等に就労する日雇労働者は、その使用者である事業主体に対する関係で団体交渉権を有する。

二多数の勢威を背景に実力を行使して団体交渉を迫り、要求を受けながら県庁庁舎から退去しなかつた被告人らの本件所為(原判文参照)は、その手段・方法において社会通念の許容する団体交渉ないし団体行動権の正当な行使にあたらない。

参照法条

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人両名の弁護人豊田秀男ほか三名連名の上告趣意第一、同浦部信児の上告趣意第一点、同渡邊良夫ほか一一名連名の上告趣意第一点は、いずれも憲法二八条違反をいうが、A労働組合岡山県支部(以下、A労岡山県支部という。)と緊急失業対策法一六条の三第二項の規定による指導調整権者としての岡山県知事との間における所論第二次正常化通達についての交渉が使用者対被使用者という関係を前提とする団体交渉権の行使に該当しないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和二二年(れ)第三一九号同二四年五月一八日大法廷判決・刑集三巻六号七七二頁参照)の趣旨とするところであるから、所論はその前提を欠き、同浦部信児の上告趣意第二点、同渡邊良夫ほか一一名連名の上告趣意第三点は、憲法二八条違反をいうが、その実質はいずれも事実誤認、単なる法令違反の主張であり、同内藤信義の上告趣意は、判例違反をいうが、原判決の認定しない事実関係を前提とする判例違反の主張であつて、不適法であり、その余の点は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、すべて刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。

なお、所論に鑑み職権で判断するに、前記判例の趣旨によれば、失業対策事業等に就労する日雇労働者はその使用者である事業主体に関する関係で団体交渉権を有すると解すべきところ、本件第二次正常化通達は、記録によれば、岡山県知事が右指導調整権者たる地位に基づき管下の公共職業安定所長及び市町営失業対策事業の実施主体の長に対し日雇労働者につきいわゆる短時間就労の是正及び厚生要員制度の廃止を指示する一方、県営失業対策事業の事業主体の長たる地位に基づき右県営事業の施行主体の長に対し県営事業についても右同様の措置をとる旨通知したものであることが明らかである。しかるに、原判決が、右短時間就労の是正及び厚生要員制度廃止の問題が日雇労働者の労働条件に関する事項であつて右是正等の時期・方法などについて一定の限度で知事に裁量権がありその意味で団体交渉事項となりうるとしながら、A労岡山県支部のした本件交渉の申入れが指導調整権者たる知事との交渉を求める以外に県営失業対策事業における労働条件の問題に限つての交渉を求めるものであることが表面上あらわれていなかつたことを理由に、単なる陳情にすぎず団体交渉の申入れにあたらないと判断したのは、前記のような本件通達の特質ならびに知事の地位の二面性に鑑みると、右通達についての交渉を求めることは、県営失業対策事業の就労者に関する関係では、同時に使用者としての県に対する労働条件についての団体交渉の申入れであると解する余地があることを看過したものというべきである。

しかしながら、憲法二八条にいう団体交渉ないし団体行動権であつても、それが社会通念の許容する正当な権利行使の範囲を逸脱する場合には法律上又は憲法上の権利として保護されないのは言うまでもないところ(前掲最高裁昭和二四年五月一八日大法廷判決参照)、原判決が確定した事実関係によれば、被告人らは多数の勢威を背景に実力を行使して団体交渉を迫つたものであつて、その手段・方法が正当な権利行使の範囲内にあるといえないことは明らかである。したがつて、本件退去要求は正当であるとした原判決は、結論において正当である。

よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

昭和五四年一二月一九日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 藤崎萬里

裁判官 団藤重光

裁判官 本山亨

裁判官 戸田弘

裁判官 中村治朗

出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/51135/detail2/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。