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高裁判決控訴棄却

東京高判 平成15年1月16日

平成14年(ネ)第3634号 葬祭場営業禁止請求控訴

AI 要約AI

宗教法人が所有する建物を葬祭場として使用することにつき、近隣の借地人らが不法行為又は債務不履行に基づく差止めを求めた事案において、葬儀の回数・時間、騒音の程度、通行妨害の有無等を総合的に勘案し、受忍限度を超える生活利益上の侵害はないとして請求を棄却した事例。

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裁判所
東京高等裁判所
裁判年月日
平成15年1月16日 (2003-01-16)
事件番号
平成14年(ネ)第3634号
事件名
葬祭場営業禁止請求控訴
裁判の種類・結果
判決 控訴棄却
判例集等
—
分野
民事

AI 要約AI

要旨

  • 宗教法人が所有する建物を葬祭場として使用することにつき、近隣の借地人らが不法行為又は債務不履行に基づく差止めを求めた事案において、葬儀の回数・時間、騒音の程度、通行妨害の有無等を総合的に勘案し、受忍限度を超える生活利益上の侵害はないとして請求を棄却した事例。
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事案の概要

  • 宗教法人である被控訴人から土地を賃借し、その上の建物を所有する控訴人らが、隣接する被控訴人所有の建物Dで行われる葬祭により、借地権価格の下落や音楽教室・健康への悪影響、通行妨害、覗き見、騒音が生じているとして、賃貸借契約の債務不履行又は不法行為に基づき、主位的に建物Dを使用しての葬祭場経営の禁止を、予備的に使用方法の制限を求めた。
  • 原判決は控訴人らの請求を棄却したため、控訴人らが控訴した。
  • 建物Dでの葬儀は平成11年8月から平成14年6月までの35か月間で76回(月平均2回程度)、1回につき連続2日間利用され、通夜は午後5時ないし6時ころから約2時間、告別式は昼間約2時間行われていた。

争点

  • 本件葬儀場の運営が不法行為として受忍限度を超えるか否か。
  • 賃貸人に借地権の財産的価値を維持する義務があるか否か。
  • 賃貸借契約上の債務不履行が認められるか否か。

判断

  • 不法行為に基づく差止めの可否は、侵害行為の程度・態様、被侵害利益の性質・内容等を総合的に勘案して受忍限度を超えるか否かで判断すべきところ、葬儀回数は月平均2回程度で、騒音は読経・木魚・拡声器による挨拶等が各1時間以下であり、車両駐車による通行妨害や覗き見による生活上の具体的な不利益も認め難く、受忍限度を超えるとは認められないとした。
  • 賃貸人は借地借家法で定められた範囲内で賃貸借契約を継続させる義務を負うが、それ以上に借地権の財産的価値を維持する義務はないと解され、被控訴人がいやがらせ等の不当な目的で本件葬儀場を運営しているとは認め難いとした。
  • 本件葬儀場は公益性を有し、被控訴人は焼香台の設置や鉄製扉による目隠し等の配慮をしており、債務不履行も認められないとした。

判旨(本文から引用)

  • 不法行為を理由とする本件葬儀場(建物D)の運営の全部あるいは一部の差止めが認められるか否かは,侵害行為の程度及び態様,被侵害利益の性質及び内容等を総合的に勘案して受忍限度を超えているかどうかによって判断されるべきである。
  • 賃貸人は,賃借人に対し,借地借家法で定められた範囲内で賃貸借契約を継続させる義務を負い,それは,賃借人が建物に投下した費用の回収を図る機会を与えるものである。しかし,それ以上に賃貸人は,控訴人ら主張のような意味での借地権の財産的価値を維持する義務はないと解される。

結論

  • 本件控訴を棄却する。
  • 控訴費用は,控訴人らの負担とする。

AI が本文から作成した要約です。引用の際は本文をご確認ください。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は,控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第1 当事者の求めた裁判

1 控訴人ら

(1) 原判決を取り消す。

(2)(主位的請求)

被控訴人は,原判決別紙物件目録(1)記載の建物を使用して葬祭場を経営してはならない。

(予備的請求)

原判決別紙予備的請求の趣旨記載のとおり

2 被控訴人

控訴棄却

第2 事案の概要

1 本件は,宗教法人である被控訴人から原判決別紙物件目録(2)記載の土地(本件借地)を賃借し,その上の同目録(3)記載の建物(控訴人建物)を所有している控訴人Aらが被控訴人に対し,その南側に隣接する被控訴人所有の建物D(葬儀場)で行われる葬祭により,本件借地の借地権価格が下落し,また,控訴人Bの営む音楽教室やAの健康に悪影響を及ぼし,さらにその葬儀の挙行によって控訴人ら前の通路の通行を妨害されたり,控訴人建物を覗き見られたり,受忍限度を超える騒音が発生しているなどとして,賃貸借契約の債務不履行あるいは不法行為による差止め請求として,主位的に建物Dを使用しての葬祭場を営むことの禁止を求めるとともに,予備的にその使用方法について一定の制限を設けることを求めた事案である。

原判決は,控訴人らの請求を棄却したため,これに対し,控訴人らが不服を申し立てたものである。

2 以上のほかの事案の概要は,次のとおり付加するほか,原判決の該当欄記載のとおりであるから,これを引用する。

(控訴人らの当審における主張)

(1) 建物所有を目的とする借地権は財産としての価値があり,賃貸人はその財産的価値を維持する義務があるのであるから,この価値を下げるような行動は許されない。なお,受忍限度は,生活に対する侵害を問題とするものであり,財産的価値の減少については,受忍限度を根拠とすることはできない。

したがって,建物所有目的の土地賃貸人の義務として,葬祭場の営業は認められるべきではない。

(2) 葬儀は予定できるものではないから,その回数が原判決認定のとおり,月2回,4日間程度であったとしても,それがいつあるか分からない以上,控訴人らは常に緊張を強いられる。本件葬儀場に公益性がないにもかかわらず,控訴人らが被害がいつあるかと緊張して生活を送らなければならない状況は受忍限度を超えている。葬儀の時間や騒音の程度その他葬儀の行われている状況だけを根拠に受忍限度内であるとすることはできない。

(上記主張に対する被控訴人の反論)

(1) 賃貸人は賃借人に対し,法律で定められた範囲内で賃貸借契約を継続させる義務を負うものの,賃借人が建物に投下した費用の回収を図る機会を与える以外に,借地権の財産的価値を維持する義務はない。被控訴人は寺院であり,控訴人建物より以前から存在していたものであって,その近隣で葬儀が行われることも予定されていたのであるから,本件建物を葬儀に利用したからといって,控訴人らの借地権価格が極端に減額するとはいえない。

(2) 本件葬儀場は,檀家以外にも開放されており,自宅で葬儀を行うことができない近隣の住民が安価に葬儀を行える場所であって,高度に公共性を有している。また,仮に本件葬儀場が公共性を有していないとしても,本件葬儀場の利用は,隣地使用としての受忍限度の範囲内である。なお,葬儀は突然起こるものではなく,その準備が始まり,その後ある程度の時間が経過してから会葬者等が来所するのであるから,突然大量の会葬者が来ることに備えて常に緊張していなければならないことはない。

第3 当裁判所の判断

1 当裁判所も,控訴人らの請求は理由がないものと判断する。その理由は,次に記載するとおりである。

(1) 本件の事実経過

原判決第2の1の前提となる事実(1頁以下)及び証拠(甲5ないし196号証,198ないし214号証,217ないし250号証,265ないし286号証,乙1ないし8号証,原審でのB,被控訴人代表者,なお,書証については枝番を含む。)並びに弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。

ア Aは,昭和29年ころ,本件借地上の建物を買い受け,被控訴人から本件借地を賃借するようになった。その賃借に際し,権利金等は授受されなかった。当時,建物Dのあった場所には,一般の住宅が建っており,昭和54年ころ,それが取り壊されて現在の建物が建てられ,平成11年ころからそれが建物Dと呼ばれるようになった。建物Dは,その1階を壇信徒会館として法事等に開放するため,台所と便所以外は広間となっており,2階は現在の被控訴人代表者夫婦の住居として利用するため,通常の間取りになっていた。被控訴人代表者らは,平成7年ころまで先代の住職とは別に建物Dで生活していたが,その間,その1階で壇信徒等の法事や葬儀が行われたことがある。

イ 本件借地の賃貸借契約は,昭和59年に更新の時期を迎えたが,更新の手続はされずに推移していた。その後,平成7年ころ,Aから,娘夫婦を同居させるため,自宅に2階を増築したいとの相談があった。そこで,被控訴人代表者がこの機会に更新の手続もしたいと話したところ,Aから,坪100万円すなわち約3800万円で借地権を買い取ってほしいとの要求が出され,被控訴人が買い取るつもりがないと話したところ,結局,更新の件もそのままになった。

ウ 平成7年に被控訴人代表者夫婦が,建物Dから本堂の新しい庫裏に移転したのち,控訴人らは,建物Dが葬祭場として利用されるようになるという話を聞いて,その利用の差止めを求める調停を申し立てた。同調停が始まった当初,被控訴人は,建物Dの葬祭場としての使用を自粛していたが,平成8年ころから,その利用を再開するようになった。その調停の席でも,本件借地権の買取りの話が出されたが,同年11月の期日に,被控訴人は,本件借地権を買い取る意思はなく,買い取るとしても1000万円以下の金額しか出せない旨回答した(甲266号証)。同調停は,平成9年7月に不成立となった。

エ 建物Dでは,被控訴人の本堂で行われる通夜や告別式(葬儀)などに比べ,小規模な葬儀が行われており,その費用も比較的安価である。被控訴人は,平成11年5月,町内会の回覧で,被控訴人の壇信徒以外の一般人にも建物Dの葬儀場としての利用を呼びかけており,他の寺の住職が葬儀を勤める形でも建物Dを利用することは可能である(乙5号証)。

オ 平成11年8月から平成14年6月までの間,建物Dで執り行われた葬儀の回数は概ね以下のとおりである(甲230号証)。なお,建物Dでは連続した2日間で通夜及び告別式が執り行われるので,建物Dが利用される日時は,1回の葬儀につき2日となる。平成11年8月から12月まで合計6回

平成12年1月から12月まで合計24回

平成13年1月から12月まで合計31回

平成14年1月から6月まで合計15回

カ 建物Dで行われる通夜は,午後5時ないし6時ころから約2時間程度で,遅くとも午後8時ころには終了し,告別式も昼間約2時間程度行われる。もっとも,その前後の準備や後片づけの時間を含めれば,その所要時間はより長くなる。なお,読経の時間は長くても50分程度,木魚を使用する時間は概ね5,6分程度であり,拡声器を用いて挨拶をする時間は5分以内であって,会葬者が焼香をする時間は,約40分程度である。建物Dで通夜を行った際,会葬者が建物Dの2階に宿泊する頻度は,通夜が行われる回数の約7ないし8割程度である。

キ 控訴人建物と建物Dとの位置関係は,原判決別紙図面(2)記載のとおりであり,その間には約1メートルの幅の通路状の土地がある。建物Dで葬儀が行われる際,仕出し,花,仏具などの搬入をする業者が,その車両を,葬儀が行われる時間帯やその前後の数時間程度,建物Dの西側の道路状の土地(被控訴人道路状土地)やその北側の公道に通じる私道部分(本件私道部分)付近に駐車することがあるほか,会葬者が,葬儀が行われる時間の前後に被控訴人道路状土地に立ち止まっていることがある。なお,被控訴人道路状土地や本件私道部分の幅員は約3.5メートル(両端の草の生えている部分を除いた有効幅員は3メートル未満)である。控訴人らは,本件私道部分を通行して控訴人建物北側に位置する公道に出るか,本件私道部分及び被控訴人道路状土地を通行して建物Dの南側に位置するバス通りに至っている。

ク 被控訴人は,控訴人らに配慮して,平成11年9月ころ,焼香の臭いが建物Dの北側に位置する控訴人建物になるべく流れず,また,焼香する会葬者が控訴人建物側に滞留しないよう,建物Dの南側にベランダを設置して,そこに焼香台を設けた。そして,会葬者が被控訴人道路状土地などから控訴人建物を覗き見るとの控訴人らからの異議申立てに対し,平成13年12月,建物Dと控訴人建物との間に鉄製の扉を設置して目隠しとし,被控訴人通路状土地などから控訴人建物は概ね見えない状態となっている。ただ,建物Dは2階建てであり,2階の窓からは控訴人建物が見通せる状態である。また,被控訴人は,葬儀関係者に対し,その車両を本件私道部分や被控訴人道路状土地ではなく,被控訴人の駐車場及び境内地部分に駐車するよう呼びかけている。もっとも,それが常に守られているわけではない。

(2) 上記認定事実に基づき,控訴人らの請求の当否について判断する。

ア 本件で,不法行為を理由とする本件葬儀場(建物D)の運営の全部あるいは一部の差止めが認められるか否かは,侵害行為の程度及び態様,被侵害利益の性質及び内容等を総合的に勘案して受忍限度を超えているかどうかによって判断されるべきである。

イ これを本件についてみるに,被控訴人が建物Dで葬儀を行う回数は,次第に増加傾向にあるとはいえ,平成11年8月から平成14年6月までの35か月間で76回であって,月平均2回程度である。もっとも,葬儀に際しては連続して2日間建物Dが利用されるので,その日数は約4日間となるが,葬儀が実際に挙行される時間は,計4時間程度である。

それに伴う騒音は,主として読経や木魚,拡声器による挨拶等であるが,これらは葬儀の時間中続いているわけではなく,上記(1)オ認定のようにその時間は各1時間以下であると考えられる。もっとも,葬儀については,その準備や後片づけも必要であるし,騒音が厳密にこれらに限られるものではないが,それを考慮しても,このような騒音が社会共同生活を営む上で,相互に受忍しなければならないような範囲を超えているとは認め難い。また,葬儀の際,関係の業者がその車両を建物Dの西側の被控訴人道路状土地やその北側の公道に通じる本件私道部分付近に駐車することにしても,それが控訴人らのその部分の歩行による通行を妨げるようなものとは認め難い。控訴人らは,建物Dの反対側の方の通路から公道に出ることも可能なのであるから,それによって,控訴人らが家への出入りができなくなるとか,公道に行けなくなるなどの生活上の具体的な不利益が生じているとは認め難い。なお,控訴人らは,葬儀参列者が控訴人建物を覗き見るため,生活に支障を生じているとも主張するが,葬儀参列者がことさら控訴人建物を覗き見るとは考えられず,手持ちぶさたなどの折りに視線がその方に向くということであると考えられる。控訴人らの主観的な迷惑感はさておき,客観的にみればそれが受忍限度を越える生活上の利益の侵害とはいえないと考えられる。

ウ 控訴人らは,建物Dが葬儀場として使用されることで,Bが運営している音楽教室の生徒に心理的な悪影響を及ぼし,生徒数の減少を招いている可能性が強いと主張する。しかし,それを客観的に裏付ける証拠はない。

また,控訴人らは,Aは,建物Dで葬儀が行われることで,自己の葬式を見るような苦痛を感じるとも主張する。たしかに,Aの年齢(大正11年生)に鑑みれば,同控訴人が建物Dでの葬儀の挙行により,心理的な不安感あるいは不快感を覚えていることは推察される。しかし,そのようないわば心理的,情緒的な被害をもって,人格権としての保護を受けるべき生命,身体及び健康についての利益の侵害とはいえない。また,その限度を越えて,Aが建物Dでの葬祭場の運営に起因し,疾患等が生じていることを認めるに足りる証拠もない。

エ また,控訴人らは,建物所有を目的とする借地権は財産としての価値があり,賃貸人はその財産的価値を維持する義務があるのであるから,この価値を下げるような行動は許されないと主張する。

しかし,賃貸人は賃借人に対し,借地借家法で定められた範囲内で賃貸借契約を継続させる義務を負い,それは,賃借人が建物に投下した費用の回収を図る機会を与えるものである。しかし,それ以上に賃貸人は,控訴人ら主張のような意味での借地権の財産的価値を維持する義務はないと解される。

借地権の財産的価値は,一般に借地権価格として評価されている。この借地権価格は,適正な地代額と現に支払っている地代の間に格差があり,借地人に借り得があるとき,それを資本還元することにより算定されるものである(東京高裁平成12年7月18日判決金融商事判例1097号3頁,同平成13年12月20日判決金融商事判例1134号13頁)。借地人に現在この借り得があるとしても,賃貸人には適正な地代に増額するよう求める権利がある(借地借家法11条)。賃貸人は,借地人に借り得を得させるよう努める義務はなく,借地権の財産的価値を維持する義務も存在しないものである。

もっとも,このようにいうことは,賃貸借契約に基づく借地人の使用収益権及びこれに対応する賃貸人の使用収益させる義務を否定するものではない。賃貸人がことさらに借地人に対し,いやがらせあるいは追出し等の不当な目的で行動をした場合には,それが不法行為あるいは債務不履行になる場合もあると考えられる。しかし,本件で被控訴人がそのような意図,目的で本件葬儀場を運営しているとは認め難い。

オ もっとも,上記のような騒音や通行の支障等が控訴人らに及ぼす影響を考えるに当たっては,単に物理的・数量的な被害のみに着目するのではなく,葬儀という一般的に人が嫌忌する事柄に伴う騒音や通行の支障であることを考慮する必要があると思われる。また,それをもたらしているのが,全くの第3者ではなく,本件借地の賃貸人である被控訴人であるという面も考慮する必要がある。

しかし,他方,本件のような葬祭場は,自宅では葬儀を行うことのできない地域住民にとって,身近で比較的安価に葬儀が挙行できる場所として公益性を有していることは明らかである。そうすると,それに伴う騒音等の被害は,近隣に住む者にとって不快に感じられることはあろうけれども,一定限度を超えない限りは受忍すべきものと考えられる。また,上記(1)クからすれば,被控訴人は,焼香の臭いが控訴人建物になるべく流れないよう,さらに,焼香する会葬者が控訴人建物側に滞留しないように配慮し,建物Dの南側にベランダを設置して,そこに焼香台を設けたほか,会葬者が被控訴人道路状土地などから控訴人建物を覗き見ることのないよう,建物Dと控訴人建物との間に鉄製の扉を設置して目隠しとしたり,葬儀関係者に対し,その車両を本件私道部分や被控訴人道路状土地ではなく,被控訴人の駐車場及び境内地部分に駐車するよう呼びかけるなど,建物Dでの葬儀場運営に際し,控訴人らに相当程度配慮した対策をとっているものと認められる。むろん,これらの対策が直ちに効を奏し,控訴人らの被る迷惑が完全に解消されるわけではないと思われるが,このような被害に関する一定の対策がとられていることは,上記受忍限度に関する判断に際して考慮されるべき1つの事情である。

カ 以上のような事情を総合して考えると,本件葬儀場の運営は,控訴人らに対して,受忍限度を超える生活利益上の侵害を及ぼしているとは認め難いから,それが控訴人らに対する不法行為となるものではない。

なお,控訴人らは,賃貸借契約上の債務不履行をも請求の根拠としているところ,債務不履行に基づく差止め請求が認められるか否かはともかく,前述のところからすれば,本件で,被控訴人にその債務不履行があるとも認め難い。

2 したがって,控訴人らの請求を棄却した原判決は相当で,本件控訴は理由がない。よって,主文のとおり判決する。

(口頭弁論終結の日平成14年10月17日)

東京高等裁判所第19民事部

裁判長裁判官 淺生重機

裁判官 及川憲夫

裁判官 原敏雄

出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/53/detail4/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。