主文
原判決を破棄する。
本件を仙台高等裁判所に差し戻す。
理由
上告代理人葛西千代治の上告理由について。
原判決の認定したところによれば、被上告委員会は、昭和二二年一二月八日頃上告人所有の本件土地を買収計画に組み入れるべきものであるとし、計画の原案を作成した上、同月一〇日これを公告し、次いで同月一九日右原案どおり買収計画を樹立すべきことを決議したというのである。そして、右公告は同月一一日から同月二〇日までなされてその間縦覧に供されていたこと、および上告人は本件買収計画の樹立を知り、所定の期間内である同月二七日に被上告委員会に異議を申し立て、却下の決定に対し更に同二三年一月二七日D農地委員会に対し訴願を提起し、同委員会は同年六月三〇日訴願の申立は相立たない旨の裁決をし、これを不服として本訴の提起がなされたものであることは、被上告人の自認するところであるかまたは当事者間に争のない事実であることは、記録上明らかである。
以上の事実関係の下においては、昭和二二年一二月一〇日になされた本件公告は、同月一九日に決定のあつた本件の買収計画の公告としては、右決定後改めて公告のなされなかつたこと、縦覧期間の日数の足りないこと等の点において、不完全かつ瑕疵ある違法のものたることを免れないが、その一事をもつて右買収計画に関する自作農創設特別措置法六条五項の公告が不存在であつたとなすべきものではなく、従つてまた、本件買収計画が行政処分として有効に存在しなかつたというべきものでもない。しかも上告人は、前記のごとく本件買収計画については、その樹立を知り所定の期間内に異議を申し立て、更に訴願を経て本訴を提起しているのであるから、上告人としては、既に不服申立の手段をつくし得たものであり、権利救済の面において特段の不利益を蒙つた点はない。それ故、右違法は、上告人に関する限りは、既に治ゆされたものというべく、本訴において右違法を争うことは、もはや許されないと解するを相当とする。
然るに、原審は、「本件買収計画についてはその決定後において何等これを公告しなかつたことを認め得る」と判示し、これを前提として昭和二二年一二月一〇日付の公告は自作農創設特別措置法六条五項の公告とは認め難いものであるとした上、「本件買収計画について、公告のなされていないことは前記のとおりであるから、本件買収計画はいまだ行政処分として有効に存在していないものというべく、したがつて、これが取消を求める被控訴人(上告人)の本訴請求はその目的を欠き……失当として棄却すべきものとす。」と判示しているのであるが、右判示は、前記当裁判所の判断に反する点において判決に影響及ぼすことの明らか違法あるを免れず、論旨は結局理由あに帰し、原判決は全部破棄を免れない。そして本訴においては、本件買収計画における買収の対象たる土地の特定性の有無、宅地を農地と誤認したか否か、上告人の保有面積を侵害しているか否か等が争われており、これらの点について原審は何らの判断を与えていない。それ故、本件は、更に審理を尽すため、原裁判所に差し戻すべきものである。
よつて、その余の論旨に対する判断を省略し、民訴四〇七条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 入江俊郎
裁判官 斎藤悠輔
裁判官 下飯坂潤夫
裁判官 高木常七
出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/57701/detail2/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。
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