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最高裁第三小法廷判決棄却集刑156号615頁

最三小判 昭和40年9月21日

昭和37年(あ)第1250号 外国為替及び外国貿易管理法違反

裁判所
最高裁判所第三小法廷
裁判年月日
昭和40年9月21日 (1965-09-21)
事件番号
昭和37年(あ)第1250号
事件名
外国為替及び外国貿易管理法違反
裁判の種類・結果
判決 棄却
判例集等
集刑156号615頁
集刑156号539頁
原審
東京高等裁判所  昭和37年2月22日
分野
刑事
意見
裁判官全員一致個別意見なし

判示事項

一一の犯罪事実の自白の補強証拠として他の併合罪関係にある犯罪事実の存在それ自体を援用することの適否。

二刑訴法第四一一条第一号にあたらない事例。

裁判要旨

一本件犯罪のように併合罪関係にある数罪は、立証手続のうえにおいても別個独立の犯罪として取り扱われるべきもので、この数毎に補強証拠を必要とし、しかも、その補強証拠たるや、その犯罪の各構成要件事実それ自体に関連するものであることを要するものと解するのが相当であり、所論原判示のように、適法な証拠により認め得られるものであるにせよ、その犯罪以外の他の併合罪関係にある犯罪事実の存在それ自体が情況証拠としてその犯罪に関する自白を補強するに十分なものであるとすることは、採証法則の違反、ないし訴訟法の解釈を誤つた違法があるものといわなければならない。

二前示A株式会社関係の犯罪事実は、被告人にかかる本件犯罪一〇個のうちの一個であり、その犯行にかかる金額も、全額四五八四万七〇四九円のうちの一〇〇万円、約四五分の一にすぎないこと、従つて、併合罪による刑の加重も右犯罪事実以外のものを最も重しとしてなされていること等にかんがみれば、刑訴法第四一一条第一号により原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとまでは認められない。

参照法条

日本国憲法38条刑事訴訟法317条刑事訴訟法319条刑法45条

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人阪本岩太郎、同宮原守男の上告趣意第一点について。

所論は、原判決が本件事実認定につき援用する第一審判決は、本件被告人に対して一〇個の犯罪事実を認定し、これを併合罪として処断しているものであるところ、同判決は、以上の犯罪事実のうち、A株式会社を相手方とするものについては、捜査官に対する被告人の自白以外、これを補強すべき証拠を掲げていないから、違憲、違法であるとする控訴趣意に対し、原判決が「第一審判決挙示の証拠によれば、同判示のように、被告人は、所論のA株式会社関係以外にも、同じころ九回にわたり同種の犯行を重ねていることが認められているのであつて、この事実は、前記A株式会社関係の犯行に対する被告人の自白の真実性を保障し又はそれが架空でないことの担保とするに足る情況証拠となると解することができるから、第一審判決に所論のようにいわゆる自白の補強証拠を挙示しなかつた違法があるとはいえない。」旨判示したことをもつて、憲法三八条三項に違反する、と主張するものである。そこで検討するに、所論原判示は、その判文上明らかなように、被告人の自白、とくに本件におけるような捜査官に対するものに補強証拠を要するとの前提に立つたうえで、上記情況証拠をもつて自白の補強証拠として十分であるとし、第一審判決は、補強証拠の摘示の点においても欠けるところはないとしているものであつて、第一審判決が被告人の当該自白以外の証拠を掲げていないと認めながら、あえてこれをその儘是認したというものではないし、まして犯罪事実の認定につき本件におけるような捜査官に対する被告人の自白のみをもつて足りるとの判断を示しているものでもない。してみれば、所論原判示に、憲法三八条三項の規定に違反する判断が示されているものとみることはできないのであつて、所論違憲の主張は、すでにこの点においてその前提を欠き、上告適法の理由とならないものというべきである。しかしながら、さらに、職権により検討してみるに、本件犯罪のように併合罪関係にある数罪は、立証手続のうえにおいても別個独立の犯罪として取り扱われるべきもので、その数毎に補強証拠を必要とし、しかも、その補強証拠たるや、その犯罪の各構成要件事実それ自体に関連するものであることを要するものと解するのが相当であり、所論原判示のように、適法な証拠により認め得られるものであるにせよ、その犯罪以外の他の併合罪関係にある犯罪事実の存在それ自体が情況証拠としてその犯罪に関する自白を補強するに十分なものであるとすることは、採証法則の違反、ないし訴訟法の解釈を誤つた違法があるものといわなければならない。されば、所論原判断並びに第一審判決を破棄自判しながら、前示A株式会社関係の犯罪事実につき、第一審判決同様、被告人の捜査官に対する自白を補強すべき特段の証拠を挙示、援用するところのなかつた原判決は、訴訟法の解釈を誤り、ひいて適法な証拠に基づかないで犯罪事実を認定した違法があることに帰着し、右違法は判決に影響を及ぼすものというべきである。しかしながら、ひるがえつて考えるに、前示A株式会社関係の犯罪事実は、被告人にかかる本件犯罪一〇個のうちの一個であり、その犯行にかかる金額も、全額四五八四万七〇四九円のうちの一〇〇万円、約四五分の一にすぎないこと、従つて、併合罪による刑の加重も右犯罪事実以外のものを最も重しとしてなされていること等にかんがみれば、刑訴法四一一条一号により原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとまでは認められない。

同第二点は、事実誤認、単なる法令違反、同第三点は、単なる法令違反、同第四点は、事実誤認及びこれを前提とする単なる法令違反、同第五点は、量刑不当の各主張であつて、以上すべて適法な上告理由に当らない。

また記録を調べても上告趣意第二点ないし第五点についても刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同法四一四条、三九六条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

検祭官玉沢光三郎公判出席

昭和四〇年九月一三日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 横田正俊

裁判官 石坂修一

裁判官 柏原語六

裁判官 田中二郎

出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/61348/detail2/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。
出典:国立国会図書館「次世代デジタルライブラリー」(https://lab.ndl.go.jp/dl/)のOCRテキストデータ(原資料:国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1349103)。TaiLexi AIが編集・加工(OCRの誤りを含む場合があります)。原データ(OCRテキスト)はパブリック・ドメイン・マーク(PDM)付きで、自由に二次利用できます。個人の氏名・住所等はTaiLexi AIがアルファベット等に置き換えています。