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最高裁第三小法廷判決棄却集民64号63頁

最三小判 昭和38年1月22日

昭和34年(オ)第464号 代金返還等請求

裁判所
最高裁判所第三小法廷
裁判年月日
昭和38年1月22日 (1963-01-22)
事件番号
昭和34年(オ)第464号
事件名
代金返還等請求
裁判の種類・結果
判決 棄却
判例集等
集民64号63頁
原審
福岡高等裁判所  昭和33年12月25日
分野
民事

判示事項

一解除による填補賠償の額算定の標準時

二契約時と解除時の騰貴差額は通常生ずべき損害か

裁判要旨

一売主が目的物を引き渡さないため売買契約が解除された場合において買主の受くべき填補賠償の額は、解除当時における目的物の時価を標準として定められる。

二右の場合騰貴価格と契約時の価格の差額は通常生ずべき損害である。

参照法条

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人中川利吉の上告理由(昭和三四年四月一八日付)第一点について。原審が、本件山林内の杉檜立木約七千肩全部が建具材であると認定しているものでないこと及び右山林内の立木中建具用材に適するもの全部が本件売買の目的物となつたものと認定しているものでないことは、原判決理由に徴し明白である。従つて所論は、原判決を正解しないことに基づき、或いは原審の認定しない事実を前提として、原判決の違法をいうものであり、採用できない。

同第二点について。

昭和二七年末頃までに筑後川の水路が不通となることが一般に予想されていたとの原審認定事実は、原審が、本件売買契約につき期限の猶予を受けたとの上告人主張事実を排斥するに当つて認定した間接事実の一つであるにすぎず、右の間接事実を除外しても、挙示の証拠に照らせば、判示一〇日間の延期承諾を加えても遅くも昭和二七年一一月末日までには必らず引渡す約旨であつて、それ以上の延期に関する合意はなかつたとの趣旨の原審認定は、これを首肯し得ないではないから、所論の点は判決に影響を与えるものではない。従つて論旨は採用できない。同第三点について。

上告人が本件山林内にある契約外の松材をもあわせて伐採搬出することとしたため、本件契約の目的物件についてもその搬出引渡を遅延し、判示の履行期たる一一月末迄にその引渡をなすことができなかつた旨の原審認定は、挙示の証拠に照らして、これを首肯し得られる。所論指摘の一二月中旬後直ちに搬出すれば搬出可能であつたとの点の判断の是非は、上告人の履行遅滞の責の有無を決定するについて影響を来すものでなく、かえつて原判決は、上告人がその責に帰すべからざる何らかの事由によつて木材の引渡を遅延した事実を認めるに足る確証はないとしているのである、されば論旨は採用の限りではない。

同第四点について。

所論は、本件において被上告人の側に受領遅滞があるとか、種類物の特定があつたとかの、原審の認定に副わない事実を主張するか、乃至は原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するかのものをいでず、採用できない。同代理人の上告理由(昭和三四年四月一六日付)について。

所論は縷述するも、要するに、原審の認定しない乃至は認定に副わない事実を主張して、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難し、これを前提として原判決の違法をいうか、前記上告理由第二点に対する判断で示したように判決に影響を来さない点につき原判決の違法をいうかのものに帰するのであつて、すべて採用できない。

上告代理人磯村義利の上告理由第一点について。

所論が判決に影響を与える法令違反の主張に当らないことは、上告代理人中川利吉の前記上告理由第二点に対する判断で示したとおりである。論旨は採用できない。同第二点について。

原審確定事実のもとでは、本件限定種類債務について、契約の目的物は未だ特定されていないとした原審判断は、これを是認し得られる。原判決理由に徴すれば、所論引渡場所変更の合意及び残木材の集積、提供の事実は認容されていないのであるから、目的物の特定等をいう所論は理由がないことになるといわなければならないのである。所論は、原審の認定に副わない事実を前提として原判決を攻撃するものであり、採用できない。

同第三点について。

原判決挙示の証拠に照らせば、所論指摘の原判決判示部分は、所論にいう前者の趣旨によるものであると解し得られ、且つその認定に所論の実験則違反があるものとは認められない。論旨は採用できない。

同第四点について。

木材の価格が漸騰を続けていた旨の原審認定は、挙示の証拠に照らして首肯し得ないではない。所論は、原審がその専権に属する範囲でなした右の認定を非難するとともに、その非難の上に立つて原判決を攻撃するものであり、採用できない。同第五点について。

原判決は、本件売買契約は債務者たる上告人の責に帰すべき事由によつて履行遅滞の状況にあつたこと、債権者たる上告人は履行期到来後屡々目的物の引渡を督促(催告)していたこと、上告人はその督促にあつて漸く判示のように一部の引渡をなしたことを証拠によつて認定しているのであるから、右督促の日から相当期間を経てなされたこと明らかな被上告人の判示解除の意思表示を有効と認めた原判決は、正当として是認し得られる。論旨は採用できない。

同第六点について。

本件のように、売主が目的物を引き渡さないため売買契約が解除された場合において、買主の受くべき填補賠償の額は、解除当時における目的物の時価を標準として定むべきであることは、当裁判所の判例とするところである(昭和二五年(オ)第二七一号、同二八年一二月一八日第二小法廷判決、判例集七巻一二号一四四六頁)。そして原審は、杉檜混合の家具用材の価格が、昭和二七年六月の本件契約当時より同二八年一一月の判示契約解除当時にかけて騰貴した事実を判示のように確定した上、これに基づいて、解除当時の時価を契約当時の価格の一、八倍のものとし、その差額をもつて本件の填補賠償額と認定しているのであるが、このような差額は、解除当時にも本来の給付を請求し得た筈の買主にとつては、売主の不履行により通常生ずべき損害であると解するのが相当である。されば、原審の右認定判断は正当であり、所論にいう大洪水によつて突発した価格暴騰の事実に関し、その予見可能性の有無等を認定判示するところがなかつたからといつて、原判決に所論の違法があるとはいえない。論旨は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 五鬼上堅磐

裁判官 河村又介

裁判官 垂水克己

裁判官 石坂修一

裁判官 横田正俊

出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/65751/detail2/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。
出典:国立国会図書館「次世代デジタルライブラリー」(https://lab.ndl.go.jp/dl/)のOCRテキストデータ(原資料:国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1674007)。TaiLexi AIが編集・加工(OCRの誤りを含む場合があります)。原データ(OCRテキスト)はパブリック・ドメイン・マーク(PDM)付きで、自由に二次利用できます。個人の氏名・住所等はTaiLexi AIがアルファベット等に置き換えています。