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最高裁第一小法廷判決一部破棄自判集民25号693頁

最一小判 昭和32年2月28日

昭和29年(オ)第452号 貸金請求

裁判所
最高裁判所第一小法廷
裁判年月日
昭和32年2月28日 (1957-02-28)
事件番号
昭和29年(オ)第452号
事件名
貸金請求
裁判の種類・結果
判決 一部破棄自判
判例集等
集民25号693頁
原審
広島高等裁判所  昭和29年3月30日
分野
民事

主文

原判決中昭和二四年五月四日訴外Dが上告人に対し貸与した金一〇、〇〇〇円の貸金債権に関する部分を除き、その余の部分を破棄する。

上告人は被上告人に対し金三五二、三二五円を支払わねばならない。

原判決中主文第一項で特に除外した部分につき、本件上告を棄却する。訴訟費用(主文第一項掲記の貸金債権及び求償債権に基づく請求に関して生じたもの)中第二審の費用は上告人の、当審の費用は被上告人の各負担とする。

理由

上告理由第一点、第二点及び第四点について。

論旨は、単なる法令違反、事実誤認の主張を出でないものであつて、いずれも「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる法令の解釈に関する重要な主張を含むものとは認められない。(なお論旨第一点及び第二点所論の原判示は正当であつて、原判決には所論の訴訟法違反はない。)上告理由第三点について。

論旨は違憲をいう点もあるが、その実質は単なる訴訟法違反の主張に帰し前掲昭和二五年法律一三八号第一項所定の上告理由に当らない。

しかし記録によれば被上告人(原告、被控訴人)は第一審では国税徴収法二三条の一に基づき滞納処分として昭和二五年一二月一二日差押えた訴外Dの上告人(被告、控訴人)に対する貸金債権につき右Dに代位して金三六二、三二五円の支払を請求し、第一審裁判所もこの代金債権の存在を認め被上告人勝訴の判決を言渡したのである。上告人はこの判決に対し原審に控訴の申立をなしたが、被上告人は原審で訴の変更をなし、新たに滞納処分として昭和二八年一〇月二九日差押えた前示訴外Dが上告人に対して有する求償債権(上告人において訴外株式会社E銀行F支店に対し負担していた借受金債務につき、訴外Dがその保証人として上告人のため右訴外銀行に弁済したことにより取得した求償権で当時の残額三五二、三二五円の債権)につき債権者訴外Dに代位してその弁済を求める新訴を提起し、第一審において主張され第一審判決で認容された昭和二四年五月四日右Dと上告人との間に成立した金一〇、〇〇〇円の貸金債権の弁済と併せて金三六二、三二五円の支払を訴求し、しかも第一審判決で認容された貸金債権の主張は右金一〇、〇〇〇円の貸金を除きその余を撤回する旨陳述するに至つた。上告人は右訴の変更に対して異議を述べたのであるが、原審はこの訴の変更を許すべきものとし、新訴による求償債権と前示金一〇、〇〇〇円の貸金債権とに基づく被上告人の請求を認容すべき旨判示すると共に、本件控訴を理由なきものとして棄却する旨の判決をしたのである。原審が(一)前示一〇、〇〇〇円の貸金債権に関する部分につき被上告人の請求を認容すべきものとし、これと同旨に出ている第一審判決を維持するため、控訴を理由なきものとして棄却する旨の判決をした部分は正当であつて、この点に関する論旨は採ることをえない。

しかし(二)原審の認容した求償債権に関する部分は、控訴審ではじめて主張されたものであり、第一審判決が訴訟物として判断の対象とした貸金債権とは別個の権利であつて、たとえ原審が本件訴の変更を許すべきものとし、またその求償債権に基づく新訴請求を認容すべきものとの見解に到達したからといつて、それはどこまでも実質上初審としてなす裁判に外ならないのであるから、事柄の性質上第一審判決の当否、言いかえれば控訴の理由の有無とは全く没交渉で何等の係りもないのである。それ故、原審は右求償債権の本訴請求を認容したからといつて、そのことからこの部分に関しては本件控訴を理由なきものとして棄却すべきものではなく、ただ単に新請求たる求償債権の存在を確定すると共に、この部分に関しては主文においては「控訴人は被控訴人に対し金三五二、三二五円を支払わなければならない」旨の判決をなすべかりしものである。しかるに、原審は求償債権に基づく新訴請求を認容すべき旨を判示しながら、前示金員の支払を命ずることをなさず、これに替えて主文で控訴棄却の判示をしたのは結局民訴三六〇条、三八四条の解釈適用を誤りたる違法があるといわなければならぬ。それ故、原判決はこの点に関する限り破棄を免れず、論旨はその理由がある。そしてこの場合原審の確定したるところにより直ちに判決をなし得ること勿論であるから自判すべきものとする。(なお本件判決の理由については、本日言渡にかかる昭和二九年(オ)四四四号事件の判決理由中の詳細説示参照)

よつて、民訴四〇八条一号、三九六条、三八四条、九五条、九六条、八九条、九二条に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 斎藤悠輔

裁判官 真野毅

裁判官 入江俊郎

裁判官岩松三郎は退官につき署名押印することができない。

裁判長裁判官 斎藤悠輔

出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/76894/detail2/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。