主文
1 被告A8は,原告に対し,386万6905円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2 被告A16は,原告に対し,662万8010円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
3 被告A17は,原告に対し,1388万0028円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
4 被告A18は,原告に対し,923万0068円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
5 被告A19は,原告に対し,872万2199円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
6 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
7 訴訟費用は,これを20分し,その1を被告A8,同A16,同A17,同A18及び同A19の負担とし,その19を原告の負担とする。
8 この判決は,第1項ないし第5項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
1 被告A1は,原告に対し,5997万3913円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2 被告A2は,原告に対し,1億0669万0317円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
3 被告A3は,原告に対し,16万7077円及びこれに対する平成14年6月7日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
4 被告A4は,原告に対し,104万6602円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
5 被告A5は,原告に対し,5997万3913円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
6 被告A6は,原告に対し,1億0669万0317円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
7 被告A7は,原告に対し,1362万6982円及びこれに対する平成14年6月7日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
8 被告A8は,原告に対し,386万6905円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
9 被告A9は,原告に対し,7854万4314円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
10 被告A10は,原告に対し,6283万3715円及びこれに対する平成14年6月7日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
11 被告A11は,原告に対し,960万5666円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
12 被告A12は,原告に対し,6844万3380円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
13 被告A13は,原告に対し,5432万9536円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
14 被告A14は,原告に対し,1億1521万2653円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
15 被告A15は,原告に対し,720万4250円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
16 被告A16は,原告に対し,662万8010円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
17 被告A17は,原告に対し,1835万8262円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
18 被告A18は,原告に対し,5432万9536円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
19 被告A19は,原告に対し,8001万7738円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,原告青森県住宅供給公社(以下「原告公社」という。)の経理事務を担当していたBが平成5年2月23日から平成13年10月3日までの約8年半の間に合計約14億6000万円を原告公社の預金口座から着服横領し,原告公社に対して同額の損害を与えたことについて,原告公社が,上記期間内にそれぞれ原告公社の理事長,監事,副理事長,専務理事,常務理事,総務部長又は総務部課長(上司)の地位にあった被告らに対し,各被告との間の委任契約又は雇用契約に伴う職務遂行上の善管注意義務違反による債務不履行損害賠償請求権に基づき,別紙「請求額一覧表」記載のとおり,各被告の在任期間中に生じた損害金の一部(合計約9億円)とその遅延損害金の支払を求めたところ,被告らが,職務遂行上の善管注意義務違反等がないとして争っているという事案である。
その主たる争点は,被告らの委任契約又は雇用契約に伴う職務遂行上の善管注意義務違反の有無であり,具体的には,①被告らの委任契約上又は雇用契約上の善管注意義務の存否,②適正な人事管理(Bの解雇,配置換え)の懈怠の有無,③仕訳日計表,合計残高試算表等の作成遅滞の是正懈怠の有無と因果関係,④借入金台帳の不備の有無と因果関係,⑤公印管理の杜撰さの有無と因果関係,⑥1億円以上の財産の処分についての規程違反の専決の有無,⑦約定に反した銀行の口座振替手続の是正懈怠の有無,⑧証拠書類との照合義務の懈怠の有無,⑨振替事務後の振替先口座への入金確認義務の懈怠の有無等である。
1 前提事実
以下の各事実は,括弧書きで摘示した証拠により認めることができるか又は当事者間に争いがない。
(1) 原告公社は,地方住宅供給公社法(以下,単に「法」ということがある。)に基づき,昭和41年3月31日青森県により設立された公社としての法人である。
(2) Bによる横領と原告公社の損害
ア 原告公社は,青森県住宅供給公社理事長名義で銀行に12から15にも上る普通預金口座を開設しており,常時合計数億円の預金残高を有していたところ(甲B29の1から9まで),原告公社の経理担当者であったBは,出金予定のある銀行口座に残高不足が生じないようにするため,上司の決裁を得て,十分な残高のある口座から残高の不足する口座への資金移動を行う口座振替事務を担当していた。
口座振替手続は,原告公社と銀行との間の約定に基づき,所定様式の口座振替請求書により行うこととされていたが(乙1の1),実際にはその約定が履行されておらず,銀行備付の一般の普通預金払戻請求書用紙と入金伝票に所定事項を記載し,公印を押捺して同時に提出することにより,所定の振替先口座への預入手続が行われていた。Bは,このことなどを奇貨として,上司らに対しては口座振替手続を行うと虚偽の説明をし,又は上司には無断で,口座振替を装って,銀行備付の普通預金払戻請求書用紙を利用して現金の払戻しを受け,これを他の口座へ預け入れることなく,そのまま着服横領した。
イ Bは,いずれも上記の方法により,別紙「横領目録」記載のとおり,平成5年2月23日から平成13年10月3日までの約8年半の間,186回にわたり,原告公社の預金口座(平成4年度は株式会社C銀行のD支店,平成5年度以降は株式会社E銀行のF支店にそれぞれ開設されていた預金口座〔甲B16の1から186まで,甲B87,88〕)から合計14億5941万3985円を払い戻して着服横領し,原告公社に対し,同額の損害を与えた(以下「本件横領」という。)。
(3) 被告らが原告公社の役職員であったこと等
ア 被告らは,別紙「役職一覧表」記載のとおり,平成4年度から平成13年度までの間,それぞれ原告公社の理事長,監事,副理事長,専務理事,常務理事,総務部長又は総務部課長の地位にあり,Bのいわゆる上司であった。
イ なお,各被告の在任期間に対応したBの本件横領金額は,別紙「請求額一覧表」の「横領金額」欄記載のとおりであった。
2 原告公社の主張
(1) 理事長であった被告A1及び同A2の責任並びに副理事長であった被告A7,同A8,同A9,同A10及び同A11の責任
ア 理事長の職務遂行上の善管注意義務の存在
理事長であった被告らと原告公社との間には委任契約が成立しており,原告公社に対して職務遂行上の善管注意義務を負っているところ,理事長は,職員が違法な行為に及ぶことを未然に防止すべく,内部統制体制を機能させ,法令遵守体制を機能させる義務がある。
イ 副理事長の職務遂行上の善管注意義務の存在
原告公社の処務規程8条は,理事長不在のときの副理事長の代決権を定めているところ,理事長の代決権を有するということは,理事長不在のときに所定の案件につき処理をすることを指すものである。このような上記理事長の代決権の規程並びに定款7条2項の「補佐」の文言によれば,副理事長の職務は,理事長の職務全般にわたりその仕事を助ける職務であると解される。したがって,副理事長には,理事長を補佐したり,職員らに経理等に関する規程を遵守させるなどして適切に内部統制システムを機能させ,経理担当職員の不正行為を未然に防止すべき善管注意義務がある。
ウ そうであるのに,理事長又は副理事長である被告らは,以下のとおり,善管注意義務を怠った。(ア) 人事管理の懈怠
原告公社においては,主要な経理業務が,長年にわたり休暇や欠勤が多くて勤務態度の悪いB一人に任せきりにされていたのに,これを是正するような人事やBに代わる経理に精通した職員の育成を行わず,他の経理職員による二重の点検も実施せず,放置していた。理事長又は副理事長である被告らは,経理部門を支出の面でも決算の面でも事実上B一人に任せきりにしていたことを把握し,せめて専務理事らをして経理部門からBを配転させる人事を実現させるべきであった。
(イ) 金銭出納帳,仕訳日計表の作成遅滞の是正懈怠
a(a) Bは,自分一人で経理業務を事実上取り仕切るような状態にあることを利用して,支出振替伝票,仕訳日計表及び金銭出納帳の作成を故意に遅らせ,架空出金分が正常経理
分に紛れて発覚しにくいようにまとめて作成し,それ以後の経理上の訂正が不能に
なる経理用パソコンの「月締め処理日」についても,これを自分の都合の良い日に
選んで適宜実行するようになり,そのため原告公社においては本来は毎日作成す
べき仕訳日計表の作成が1か月から2か月も遅れることが珍しくなく,長いときには半年間も作成されないままで放置されていた(甲B98,甲D30の8頁,31の10頁)。
(b) 原告公社においては,金銭出納帳に関するデータがコンピュータに入力されているが,そのコンピュータには,パスワードを知らされている会計担当者のみがアクセスすることができるにすぎない。経理担当者以外の者は,常勤理事,総務部長及び総務部
課長も含めて,会計処理のデータを見ることができず,印刷された書類を見て初め
て金銭出納帳を見ることができたのであるから,単にデータが入力されているというだけでは金銭出納帳が原告公社に備え付けられていたと評価することはできない。
(c) にもかかわらず,原告公社においては,コンピュータに入力された金銭出納帳の経理情報を年に数回しか印刷処理(出力)せず,平成9年度には1回も印刷処理をしなかったのであるから,金銭出納長の作成・管理が杜撰であったというべきである。
b(a) 仮に常時直近の印刷した金銭出納帳を備えておけば,その金銭出納帳にはBが入力した架空の振替伝票の伝票番号・摘要・科目・出金額が記載されていたから(甲B25の
1),その支出の振替伝票や仕訳日計表(甲B79の1等)との確認・照合をすることにつながり,より容易に本件横領を発見することができたはずである。
(b) また,毎月金銭出納帳を直ちに印刷処理しておくように指導し,これを実行させることにより,照合する振替伝票と仕訳日計表等の量が少なくなるから,第三者による振替伝
(長文のため、ここでは本文の冒頭のみを掲載しています。全文はこのページの表示後に読み込まれます。原本は原本PDFをご覧ください。)
出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/8486/detail4/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。