令和4年1月19日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
令和2年(ワ)第22290号特許権侵害差止請求事件(第1事件),同第26770号特許権侵害差止請求事件(第2事件)
口頭弁論終結日令和3年10月18日
判決
第1事件・第2事件原告ワーナー-ランバートカンパニー
リミテッドライアビリティー
カンパニー
同訴訟代理人弁護士飯村敏明
同磯田直也
同森下梓
同訴訟復代理人弁護士永島太郎
同訴訟代理人弁理士泉谷玲子
同補佐人弁理士小野新次郎
第1事件被告武田テバファーマ株式会社
(以下「被告武田テバ」という。)
同訴訟代理人弁護士長沢幸男
同笹本摂
同向多美子
同補佐人弁理士実広信哉
第2事件被告武田薬品工業株式会社
(以下「被告武田薬品」という。)
同訴訟代理人弁護士重冨貴光
同長谷部陽平
同鷲見健人
主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
(目次)・・・省略
第1 請求
1 第1事件
(1) 被告武田テバは,別紙物件目録記載の医薬品を製造し,販売し,販売の申出をしてはならない。
(2) 被告武田テバは,別紙物件目録記載の医薬品を廃棄せよ。
2 第2事件
(1) 被告武田薬品は,別紙物件目録記載の医薬品を販売し,販売の申出をしてはならない。
(2) 被告武田薬品は,別紙物件目録記載の医薬品を廃棄せよ。
第2 事案の概要
1 事案の要旨
本件は,発明の名称を「イソブチルGABAまたはその誘導体を含有する鎮痛剤」とする特許第3693258号の特許(以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)の特許権者である原告が,別紙物件目録記載の医薬品(以下,用量にかかわらず「被告医薬品」という。)が本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし4記載の各発明の技術的範囲に属し,被告らによる被告医薬品の製造等が上記各発明の実施に当たると主張して,特許法(以下「法」という。)100条1項に基づき,被告武田テバに対し,被告医薬品の製造,販売及び販売の申出の差止めを,被告武田薬品に対し,被告医薬品の販売及び販売の申出の差止めを,それぞれ求めるとともに,同条2項に基づき,被告らに対し,被告医薬品の廃棄を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠(以下,書証番号は,特記しない限り枝番を含む。また,甲号証の書証番号は,特記しない限り,第1事件のものである。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1) 当事者
ア 原告は,米国の法人であり,本件特許権の特許権者である(甲1)。なお,原告は,ファイザー株式会社に対し,本件特許権に係る専用実施権を設定しており,同社は,神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛の治療薬である先発医薬品(商品名:リリカカプセル,リリカOD錠)を販売している(甲5,弁論の全趣旨)。
イ 被告武田テバは,医薬品の開発,製造,輸入及び販売等を業とする会社である(甲8)。
ウ 被告武田薬品は,医薬品等の生産及び売買等を業とする会社である(第2事件の甲8)。
(2) 本件特許の設定登録から一部無効審決までの経緯
ア 原告は,平成9年7月16日(優先日平成8年7月24日,優先権主張国米国),本件特許に係る特許出願(特願平10-507062号。以下「本件出願」という。)をし,平成17年7月1日,本件特許権の設定の登録(請求項の数4)を受けた(甲1,2。以下,本件出願の願書に添付した明細書及び図面を併せて「本件明細書」という。)。
イ 原告は,別紙延長登録目録記載のとおり,本件特許権について,存続期間の延長登録の出願をし,その登録を受けた(甲1)。
ウ 沢井製薬株式会社は,平成29年1月16日,本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明について,特許無効審判の請求(無効2017-800003号事件。以下「本件無効審判事件」という。)をした(甲9)。
原告は,本件無効審判事件において,平成31年2月28日付けの審決の予告(以下「本件審決予告」という。)を受けたため,令和元年7月1日付けで,本件特許の特許請求の範囲を,請求項1ないし4を一群の請求項として,後記(3)イのとおりに訂正する旨の訂正請求をした(以下「本件訂正」という。甲3,4,9。)。
特許庁は,令和2年7月14日,本件無効審判事件において,請求項1及び2に係る本件訂正を認めず,請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とし,他方,請求項3及び4に係る本件訂正を認め,請求項3及び4に係る発明についての審判の請求は成り立たないとする審決(以下「本件審決」という。)をした(甲9)。
エ 原告は,令和2年11月19日,本件審決のうち請求項1及び2に係る部分の取消しを求める審決取消訴訟(知財高裁令和2年(行ケ)第10135号)を提起した(弁論の全趣旨)。
本件審決のうち請求項3及び4に係る部分は確定したので,本件特許の請求項3及び4は後記(3)イ(ウ)及び(エ)のとおりに訂正された。
(3) 本件特許の特許請求の範囲
ア 本件出願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし4の各記載は,以下のとおりである(以下,請求項1及び2に係る発明をそれぞれ「本件発明1」及び「本件発明2」といい,請求項3及び4に係る発明をそれぞれ「本件訂正前発明3」及び「本件訂正前発明4」という。甲2。)。
(ア) 【請求項1】(本件発明1)
式I
(式中,R1は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルであり,R2は水素またはメチルであり,R3は水素,メチルまたはカルボキシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩,ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する痛みの処置における鎮痛剤。
(イ) 【請求項2】(本件発明2)
化合物が,式IにおいてR3およびR2はいずれも水素であり,R1は-(CH2)0-2-iC4H9である化合物の(R),(S),または(R,S)異性体である請求項1記載の鎮痛剤。
(ウ) 【請求項3】(本件訂正前発明3)
化合物が,(S)-3-(アミノメチル)-5-メチルヘキサン酸または3-アミノメチル-5-メチルヘキサン酸である請求項1記載の鎮痛剤。
(エ) 【請求項4】(本件訂正前発明4)
痛みが炎症性疼痛,神経障害による痛み,癌による痛み,術後疼痛,幻想肢痛,火傷痛,痛風の痛み,骨関節炎の痛み,三叉神経痛の痛み,急性ヘルペスおよびヘルペス後の痛み,カウザルギーの痛み,特発性の痛み,または線維筋痛症である請求項1記載の鎮痛剤。
イ 本件特許の本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし4の各記載は,以下のとおりである(下線部は本件訂正に係る部分である。以下,請求項1及び2に係る発明をそれぞれ「本件訂正発明1」及び「本件訂正発明2」といい,請求項3及び4に係る発明をそれぞれ「本件発明3」及び「本件発明4」という。甲3,4。)。
(ア) 【請求項1】(本件訂正発明1)
式I
(式中,R1は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルであり,R2は水素またはメチルであり,R3は水素,メチルまたはカルボキシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩,ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する,痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における鎮痛剤。
(イ) 【請求項2】(本件訂正発明2)
式I
(式中,R3およびR2はいずれも水素であり,R1は-(CH2)0-2-iC4H9である)の化合物の(R),(S),または(R,S)異性体を含有する,神経障害又は線維筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における鎮痛剤。
(ウ) 【請求項3】(本件発明3)
(S)-3-(アミノメチル)-5-メチルヘキサン酸または3-アミノメチル-5-メチルヘキサン酸を含有する,炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛みの処置における鎮痛剤。
(エ) 【請求項4】(本件発明4)
式I
(式中,R1は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルであり,R2は水素またはメチルであり,R3は水素,メチルまたはカルボキシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩,ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する,炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛みの処置における鎮痛剤。
(4) 本件特許に係る発明の構成要件の分説
ア 本件発明1及び2並びに本件訂正前発明3及び4は,以下の構成要件に分説することができる(以下,各構成要件につき,頭書の記号に従って「構成要件1A」などという。後記イにおいても同じ。)。
(ア) 本件発明1
1A式I
(式中,R1は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルであり,R2は水素またはメチルであり,R3は水素,メチルまたはカルボキシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩,ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する
1B痛みの処置における
1C鎮痛剤。
(イ) 本件発明2
2A化合物が,式IにおいてR3およびR2はいずれも水素であり,R1は-(CH2)0-2-iC4H9である化合物の(R),(S),または(R,S)異性体である請求項1記載の
2C鎮痛剤。
(ウ) 本件訂正前発明3
3A’化合物が,(S)-3-(アミノメチル)-5-メチルヘキサン酸または3-アミノメチル-5-メチルヘキサン酸である請求
項1記載の
3C鎮痛剤。
(エ) 本件訂正前発明4
4B’痛みが炎症性疼痛,神経障害による痛み,癌による痛み,術後疼痛,幻想肢痛,火傷痛,痛風の痛み,骨関節炎の痛み,三叉神
経痛の痛み,急性ヘルペスおよびヘルペス後の痛み,カウザルギ
ーの痛み,特発性の痛み,または線維筋痛症である請求項1記載
の
4C鎮痛剤。
イ 本件訂正発明1及び2並びに本件発明3及び4は,以下の構成要件に分説することができる(構成要件1A,1C,2C,3C及び4Cは,本件訂正の前後で変わらない。また,構成要件1A,2A,3A,4A,2A’及び3A’のいずれかの構造を有する化合物を総称して「本件化合物」という。)。
(ア) 本件訂正発明1
1A式I
(式中,R1は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルであり,R2は水素またはメチルであり,R3は水素,メチルまたはカルボキシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩,ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する,
1B’痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における
1C鎮痛剤。
(イ) 本件訂正発明2
2A’式I
(式中,R3およびR2はいずれも水素であり,R1は-(CH2)0-2-iC4H9である)の化合物の(R),(S),または(R,S)異性体を含有する,
2B’神経障害又は線維筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における
2C鎮痛剤。
(ウ) 本件発明3
3A(S)-3-(アミノメチル)-5-メチルヘキサン酸または3-アミノメチル-5-メチルヘキサン酸を含有する,
3B炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛みの処置における
3C鎮痛剤。
(エ) 本件発明4
4A式I
(式中,R1は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルであり,R2は水素またはメチルであり,R3は水素,メチルまたはカルボキシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩,ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する,
4B炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛みの処置における
4C鎮痛剤。
(5) 被告医薬品
ア 被告医薬品は,以下の構成を有する(以下,各構成につき,頭書の記号に従って「構成a」などという。甲13,弁論の全趣旨。)。
a (S)-3-(アミノメチル)-5-メチルヘキサン酸(一般名:プレガバリン)を有効成分とし,
b 効能・効果を神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛とする,
c 疼痛治療剤
イ 被告武田テバは,令和2年8月17日,被告医薬品の製造販売について,医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律14条1項に基づく厚生労働大臣の承認を受けた(甲12)。
(長文のため、ここでは本文の冒頭のみを掲載しています。全文はこのページの表示後に読み込まれます。原本は原本PDFをご覧ください。)
出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/90944/detail7/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。