平成14年(ワ)第8496号特許出願権譲渡対価請求事件
(口頭弁論終結の日平成18年1月24日)
判決
原告 A
同訴訟代理人弁護士新井裕幸
同新井正男
被告コニカミノルタホールディングス株式
会社
同訴訟代理人弁護士内田敏彦
主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 主位的請求
被告は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成5年4月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 予備的請求
被告は,原告に対し,別紙特許権目録記載の各特許権につき,同目録記載の各持分の各移転登録手続をせよ。
第2 事案の概要等
1 事案の概要
本件は,原告が,被告(当時の商号はコニカ株式会社)に在職中,写真用フィルム支持体及びその表面加工の研究等に従事し,別紙出願特許目録に記載の合計26件の発明(以下,まとめて「本件26件の発明」という。)を単独であるいは他の従業員と共同して発明したとして,原告が被告に対し,主位的請求として,平成16年法律第79号による改正前の特許法35条3項(以下,同条について「特許法」という場合,特に断らない限り,平成16年法律第79号による改正前の特許法をいう。)に基づき,本件26件の発明につき,特許を受ける権利の譲渡に対する相当の対価として算定した55億円のうち1億円の支払を求め,予備的請求として,本件26件の発明のうち,特許登録に至った別紙特許権目録記載の8件の特許権(以下,まとめて「本件各登録特許」という。)について,原告が被告に対して特許を受ける権利を譲渡していないとして,原告の本件各登録特許の各持分について,移転登録手続を求めている事案である。
これに対し,被告は,本件26件の発明の出願明細書の「発明者」欄には原告の名前は記載されておらず,形式的にも発明者とはいえないし,実質的にみても共同発明者ではないと主張し,また,仮に,原告が共同発明者と評価されるとしても,本件26件の発明により被告は独占の利益を得ていないから,特許を受ける権利の譲渡に対する相当の対価は存しない,などとして争っている。
2 前提となる事実(当事者間に争いのない事実,該当箇所末尾掲記の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実)
(1) 当事者
ア 被告(当事者間に争いがない。)
被告は,写真用フィルム等の感光材料等及びカメラ等の写真機材等その他の開発,製造及び販売等を目的とする株式会社である。
イ 原告の経歴
a) 被告に入社するまでの経歴(甲2,乙62の2のほか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨)
原告は,昭和45年3月,国立東京工業大学大学院高分子工学科博士
課程を修了して工学博士を取得した。博士論文のテーマは,「α-メチルスチレン・エチレンオキサイド・ブロックコポリマーの結晶化動力学」であった。原告は,同年4月に,帝人株式会社(以下「帝人」という。)に入社
し,同年6月から昭和58年8月まで,帝人プラスチック研究所にて,ポリエステルフィルムの開発研究に従事した。なお,このポリエステルフィルムは,主として磁気記録用(VHS,β-max等),電気用(コンデンサーや電気絶縁用等),農業用(耐候性ハウス用)等に使用するものであった。
原告は,昭和58年8月から平成2年3月まで,帝人フィルム販売
部・技術サービスグループなどに所属し,国内外の技術サービスを担当し,同年4月,帝人東京本社フィルム技術部から岐阜事業所に転勤となった。原告は,岐阜事業所において,技術部長を務め,工場で生産するポリエステルフィルムの技術問題を担当した。原告は,単身赴任で岐阜事業所に勤務していたこともあって,同年6月30日をもって,帝人を退職した。
原告は,この間,昭和46年から昭和57年にかけて,合計88件の
ポリエステルフィルムに関連する発明を,単独あるいは共同で発明し,これらは帝人から出願されている(甲15の1ないし34,38)。原告は,これらのうち,昭和48年から昭和50年にかけて,ポリエステルフィルムの中でも,積層ポリエステルフィルムに関連する発明を合計27件を発明している(甲39)。原告は,帝人から,昭和47年に製膜ポリマーハンドリング工程の改
善について,同48年にPETフィルムの色相改良について表彰を受けたほか(甲86の1,2),昭和53年から平成2年の間には,ポリエステルフィルム開発の功績により,合計11件の表彰を受けた(甲102ないし109。枝番号を含む。)。
そのほか,原告は,昭和57年には社団法人繊維学会から,農業用耐
光性ポリエステルフィルムの開発について繊維学会賞技術賞も受けている(甲101の1及び2)。
b) 被告における経歴等(甲2,甲51)
① 原告は,平成2年7月1日に被告に入社した後,自宅待機期間を経て,同年10月16日から,実際に被告における勤務を開始した。そして,同年7月から平成3年10月までは,被告感材生産本部長室部長を,平成3年11月から,CTA(=セルローストリアセテート,「TAC」ともいう。)代替フィルム新支持体開発研究のプロジェクトリーダーを,平成4年5月から平成6年3月までは,同プロジェクトリーダー兼感材生産本部第4開発センター第1研究室長を,平成6年4月から平成8年11月までは,感材生産本部技術研究所部長を,同年12月から平成13年11月までは,CI事業本部第1開発センター(平成11年6月CM開発センターと組織名称変更)部長を務め,同月末日をもって,被告を退職した。
② 原告は,被告に在籍していた平成6年10月以降,積層ポリエステルフィルム支持体に関係しない発明について,合計20件の特許を出願しているほか(甲51,52),被告を退職後も,積層ポリエステルフィルム支持体に関する発明を5件出願している。
(2) 原告が特許法35条に基づく相当の対価を請求している発明について
ア はじめに
原告が,被告に対し,特許を受ける権利を譲渡したとして,相当の対価を請求している本件26件の発明は,別紙出願特許目録記載の各公開公報に記載された発明である(甲71の1ないし25,乙4参照。以下,別紙出願特許目録に記載したとおり「第1発明」,「第2発明」などという。)。
本件26件の発明に係る上記各公開公報の発明者の欄には,原告の名前は記載されていない。
そして,本件26件の発明は,次に述べるとおり,①特許登録に至った発明(下記イ),②拒絶査定が確定した発明(下記ウ),③出願審査の請求期間徒過により,特許出願を取下げたものとみなされた発明(下記エ)に分類される。
イ 特許登録に至った発明について
本件26件の発明のうち,特許登録に至った発明は,次の八つであり,各特許権の内容及び特許登録後の各特許請求の範囲は,次のとおりである(以下,登録に至った発明をまとめて「本件各登録発明」という。)。
a) 第9発明(乙82の1)
特許番号特許第3297724号
登録日平成14年4月19日
発明の名称積層フィルム及び写真用支持体
出願番号特願平4-292162
出願日平成4年10月6日
公開番号特開平6-115033
公開日平成6年4月26日
発明者(特許公報に記載された者。以下同旨)
B,C,D,E,F,G,H
【特許請求の範囲】
【請求項1】ポリエステルからなる層が2層積層されている積層フィ
ルムであって,該ポリエステルの固有粘度差が0.02~0.5であり,該ポリエステルが共重合成分として金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を全エステル結合単位に対して2~7モル%,かつポリアルキレングリコールを3~10重量%含有することを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】前記ポリアルキレングリコールの数平均分子量が300
~20000であることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
【請求項3】前記積層フィルムが写真用支持体であることを特徴とす
る請求項1または2記載の積層フィルム。
b) 第11発明(乙82の2)
特許番号特許第3345623号
登録日平成14年9月6日
発明の名称写真用支持体
出願番号特願平4-292164
出願日平成4年10月6日
公開番号特開平6-118559
公開日平成6年4月28日
発明者B,C,D,E,F,G,H
【特許請求の範囲】
【請求項1】金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を含ま
ないポリエステル層の少なくとも片面に共重合ポリエステル層が少なくとも1層積層されている多層フィルムからなる写真用支持体において,該共重合ポリエステルが共重合成分として金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を含有し,該多層フィルムのハロゲン化銀乳剤層に隣接する層以外の少なくとも1層に該多層フィルムを回収して得られる回収ポリエステルを含有し,ハロゲン化銀乳剤層に隣接する層には該回収ポリエステルを含有しないことを特徴とする写真用支持体。【請求項2】金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を含ま
ないポリエステル層の少なくとも片面に共重合ポリエステル層が少なくとも1層積層されている多層フィルムからなる写真用支持体において,該共重合ポリエステルが共重合成分として金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を含有し,更に共重合成分としてポリアルキレングリコール又は飽和脂肪族ジカルボン酸の少なくとも1種を含有し,該多層フィルムのハロゲン化銀乳剤層に隣接する層以外の少なくとも1層に該多層フィルムを回収して得られる回収ポリエステルを含有し,ハロゲン化銀乳剤層に隣接する層には該回収ポリエステルを含有しないことを特徴とする写真用支持体。
【請求項3】金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を含ま
ないポリエステル層の少なくとも片面に共重合ポリエステル層が少なくとも1層積層されている多層フィルムからなる写真用支持体において,該共重合ポリエステルが共重合成分として金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を含有し,更に共重合成分としてポリアルキレングリコール及び飽和脂肪族ジカルボン酸の少なくとも1種をそれぞれ含有し,該多層フィルムのハロゲン化銀乳剤層に隣接する層以外の少なくとも1層に該多層フィルムを回収して得られる回収ポリエステルを含有し,ハロゲン化銀乳剤層に隣接する層には該回収ポリエステルを含有しないことを特徴とする写真用支持体。
【請求項4】該回収ポリエステルの含有量が,該回収ポリエステル含
有量の重量に対して50重量%以下であることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の写真用支持体。
c) 第14発明(乙82の3)
特許番号特許第3390795号
登録日平成15年1月24日
発明の名称写真用支持体
出願番号特願平5-123332
出願日平成5年4月27日
公開番号特開平6-175279
公開日平成6年6月24日
発明者C,D,E,B,F,G,H
【特許請求の範囲】
【請求項1】ポリエステルフィルムの少なくとも片面に共重合ポリエ
ステルフィルムが少なくとも一層積層された多層ポリエステルフィルムであって,該共重合ポリエステルフィルムに含有される共重合ポリエステルが,共重合成分として金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を含有し,かつジエチレングリコールを全エステル結合単位に対して5モル%以下の範囲で含有することを特徴とする写真用支持体。
【請求項2】請求項1記載の共重合ポリエステルが,共重合成分とし
て更にポリアルキレングリコール類を含むことを特徴とする請求項1記載の写真用支持体。
【請求項3】請求項1記載の共重合ポリエステルが,共重合成分とし
て更に炭素原子数4~20の脂肪族ジカルボン酸を含むことを特徴とする請求項1または2記載の写真用支持体。
【請求項4】請求項1記載の共重合ポリエステルが,エステル交換時
および/または重合時に,水酸化物の金属塩,脂肪族カルボン酸の金属塩および第四級アンモニウムから選ばれる少なくとも1種を添加して形成されることを特徴とする請求項1,2または3記載の写真用支持体。
d) 第15発明(乙82の4)
特許番号特許第3493207号
登録日平成15年11月14日
発明の名称写真用支持体
出願番号特願平5-99650
出願日平成5年4月26日
(長文のため、ここでは本文の冒頭のみを掲載しています。全文はこのページの表示後に読み込まれます。原本は原本PDFをご覧ください。)
出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/9178/detail7/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。