平成17年9月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官戸谷多恵
平成16年(ワ)第4697号出版差止等請求事件
口頭弁論終結日平成17年6月15日
判決
原告A
同訴訟代理人弁護士阿部能章
同西川一八
被告高島易断総本家株式会社
被告B
主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 被告らは,別紙書籍目録記載6の書籍を複製し,販売し,又は頒布してはならない。
2 被告らは,原告に対し,連帯して1518万7500円及び内金1125万円に対する平成16年3月11日から支払済みまで,内金393万7500円に対する平成17年4月23日から支払済みまで,それぞれ年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,原告が,被告らに対し,別紙書籍目録記載1ないし5の各書籍(以下「本件各書籍」という。)についての著作権及び編集著作権を原告が有するものであるところ,被告Bを著者,被告高島易断総本家株式会社(以下「被告会社」という。)を発行所とする別紙書籍目録記載6の書籍(以下「被告書籍」という。)の発行が,本件各書籍についての原告の著作権又は編集著作権を侵害するものであると主張して,著作権又は編集著作権(複製権・翻案権)に基づき,被告書籍の販売等の差止めを求め,不法行為に基づき,損害の賠償を求めた事案である。原告は,概要,①本件各書籍は原告が作成したものであり,原告が著作権者である,②仮に被告Bが作成した部分があったとしても,被告Bは,当初原告の従業員であり,原告が代表者を務める株式会社フォーチューン(以下「フォーチューン」という。)の設立後はフォーチューンの従業員であったから,著作権法15条に基づき,フォーチューンの設立前は原告が,フォーチューンの設立後はフォーチューンが,それぞれ著作者となり,原告は,フォーチューンから著作権を譲り受けたから,原告が著作権者である,③被告書籍の記載は本件各書籍の記載とほぼ同一であるか,類似しており,被告書籍は本件各書籍を複製ないし翻案したものである,と主張した。
これに対し,被告らは,概要,①本件各書籍は被告Bが作成したものである,②被告Bは,原告に雇用されたことはなく,著作権法15条に基づいて原告が著作者となることはない,③被告Bがフォーチューンの業務に従事する者としてその職務上作成したものについては,フォーチューンの名義で公表されていないから,著作権法15条に基づいてフォーチューンが著作者となることはない(被告Bは,フォーチューンに雇用されたこともない旨主張する。),④仮に原告の作成に係る部分があるとしても,著作物ないし編集著作物に該当しない箇所がある,と主張し,被告書籍が本件各書籍の複製物ないし翻案物である旨の原告の主張を争っている。
1 前提となる事実(括弧内に証拠を掲示したもの以外は,当事者間に争いがない。)
(1) 原告は,高島易断総本部神聖館株式会社(以下「神聖館」という。)の取締役であり,フォーチューンの代表取締役である(甲8,9)。
神聖館は,運命判断,姓名判断,易,人生相談等の説明会及び相談の実施等を目的とする株式会社である(甲8)。
フォーチューンは,暦,雑誌その他の出版物の企画,出版及び販売等を目的とする株式会社であり,平成11年5月14日に設立された(甲9)。
(2) 神聖館は,平成10年夏ころ,別紙書籍目録記載1の書籍(以下「本件書籍(1)」という。)を出版した(甲37)。
神聖館は,別紙書籍目録記載2の書籍(以下「本件書籍(2)」とい
う。)を出版した(甲38)。
フォーチューンの設立後は,暦の出版業務はフォーチューンが行うことになり,フォーチューンは,別紙書籍目録記載3ないし5の書籍(以下それぞれ「本件書籍(3)」ないし「本件書籍(5)」という。)をそれぞれ発行した(甲3,39,40)。
本件書籍(2)ないし本件書籍(5)は,いずれも本件書籍(1)を原型とし,これに加筆訂正を加えて作成されてきたものである。
本件各書籍の著者欄には,原告が著者として記載されている(甲3,37ないし40)。
(3) 被告会社は,運命判断,姓名判断,易,人生相談等の説明会及び相談所の企画,実施等を目的とする株式会社である(甲10)。
被告Bは,本件書籍(1)の作成業務に従事していた。被告Bは,本件書籍(1)が発行された後も,平成14年9月ころまで,神聖館又はフォーチューンが発行する神聖館開運暦又は神聖館運勢暦(以下「神聖館暦」という。)の作成業務に従事していた。
(4) 被告会社は,平成15年8月4日から,被告書籍を出版・発行し,かつ,販売している。
被告書籍の著者欄には,被告Bが著者として記載されている。
2 争点
(1) 本件各書籍の作成者
(2) 職務著作の成否
(3) 著作権の譲渡の有無
(4) 本件各書籍の著作物性ないし編集著作物該当性
(5) 被告らによる原告の著作権侵害行為の有無
(6) 損害の発生及び額
3 争点に関する当事者の主張
(1) 争点(1)(本件各書籍の作成者)について
(原告の主張)
ア 神聖館暦の作成は,原告の発案に基づくものであり,いかなる内容とすべきか,種々考慮・検討をしたのも原告である。従前,神聖館は,株式会社東京神宮館(以下「神宮館」という。)が編集・発行をしていた神宮館運勢暦を,記載内容はそのままとし,表紙のみを変えて神聖館暦を制作し,主に神聖館の顧客に対するプレゼントの用に供していたところ,平成9年になって,原告が,神聖館独自の暦を作成しようと企図したものである。
被告Bは,平成9年夏ころ,神聖館暦の作成業務に従事するために原告に雇用され,その後,フォーチューンが設立されたことに伴い,フォーチューンの従業員となったものであるが,被告Bは,独自に神聖館暦作成の意思決定過程に参画していない。被告Bは,同年夏ころから平成11年5月までは原告の従業員として,同年6月から平成14年9月まではフォーチューンの従業員として,それぞれその業務に従事していたものである。また,現実に発行された本件各書籍には,被告Bが著作者であることを示すような記載はない。
したがって,本件各書籍を作成したのは原告である。
イ なお,被告Bは,本件書籍(1)について28頁分,本件書籍(3)について19頁分の各原稿を保管していると主張するが,本件書籍(1)及び本件書籍(3)は総ページ数各224頁の書籍であるから,被告Bが保管する原稿の割合は,本件書籍(1)については全体の12.5パーセント,本件書籍(3)については全体の8.4パーセントにすぎない。
本件書籍(1)の中で,原告が作成した部分は,次のとおりである。
ページ項目ページ数
8 年盤座相1
9 方位盤1
24~49一月~十二月・毎日ごよみ26
48 男女の相性の見かた1
49 男性から見た相性の良い女性1
49 女性から見た相性の良い男性
50 十二支による男女の相性1
51 十干で見るあなたの運勢1
52 十二支で見るあなたの運勢1
53 九星による方位の吉凶1
54 九星による運命判断1
55~153一白水星から九紫火星まで99
154~156人相の見かた3
161~164手相の見かた4
165~172家相・地相の見かた8
合計149
原告が作成したこれらの原稿のすべては,本来フォーチューン内に残っていなければならないところ,現在,残っていないのは,被告Bがその原稿を持ち出したものとしか考えられない。
本件書籍(1)は,総ページ数224頁の書籍であるが,そのうち1ないし4頁及び220ないし224頁は,神聖館のPRであり,開運暦が本来保有すべき記載内容ではない。同様に,180ないし189頁の記載部分も,姓名学常用漢字の一覧であり,開運暦が本来保有すべき記載内容ではない。そこで,これら19頁を控除すると,開運暦が本来保有すべき記載内容の総ページ数は205頁となる。
したがって,本件書籍(1)のうち,原告が作成した部分の割合は,72.68パーセントである。
ウ 本件書籍(1)の末尾には,著者として原告の氏名のみが記載され,被告Bの氏名はどこにも記載されていない。そして,そのような記載になったことについて,被告Bがクレームを述べた事実はない。
(被告会社の主張)
本件各書籍は,いずれも被告Bが著作したものである。
また,「健康」(本件書籍(4)の202ないし205頁及び本件書籍(5)の268ないし273頁)は,被告Bが平成8年ころ著作し,平成12年に活字化した「五源養命の法で生命の改革」という著作物の一部を利用して被告Bが作成したものである。
(被告Bの主張)
本件各書籍は,いずれも被告Bが著作したものである。
原告は,暦の制作に関して何らの知識も有していなかったことから,被告Bが独自に調査・研究を行い,掲載すべき項目及びその形式を決定し,作成及び編集を行った。原告は,暦の制作に関し,被告Bに対して何ら指示をしなかった。
(2) 争点(2)(職務著作の成否)について
(原告の主張)
ア 仮に,被告Bが保有する原稿が,被告Bが作成したものであったとしても,被告Bは,平成9年7月から平成11年5月までの間は原告の従業員の立場にあり,同月から平成14年11月までの間はフォーチューンの従業員の立場にあった。
本件書籍(1)は,原告の発意により,原告に雇用されていた被告Bがその職務上の行為として作成したものであるから,著作権法15条に基づき,原告が本件書籍(1)の著作者となる。
また,本件書籍(2),本件書籍(4)及び本件書籍(5)の新規制作部分についても,被告Bは,フォーチューンの従業員として,その職務上の行為として作成したものであるから,著作権法15条に基づき,フォーチューンが著作者となる。
イ 被告Bは,神聖館暦の作成業務に従事するために,平成9年夏ころから,月額25万円の給料で原告に雇用されていたものであり,それ以後平成10年夏ころに本件書籍(1)を出版するまでの間,原告の従業員として,月額25万円の給料の支払を受けつつ,原告が行う暦の出版業務を手伝っていたのである。被告Bの給料は,原告から神聖館に預けられ,被告Bは,毎月1日,静岡市の神聖館において,神聖館の経理担当であるCから交付されていた。
そして,被告Bは,平成11年5月14日にフォーチューンが設立されてからは,フォーチューンの従業員として,フォーチューンから月額25万円の給料の支払を受けていた。また,暦の制作に必要な旅費,交通費等の経費は,被告Bの請求により,原告又はフォーチューンが支払ってきた。
なお,被告Bは,フォーチューンの取締役として登記されたことがあったが,被告Bがフォーチューンの取締役としての職務を遂行したことはなく,終始,暦の作成作業に従事していた。
ウ 著作権法15条が名義を公表することを要求した趣旨は,①対外的に誰が著作者であるかを明確にし,②法人内部にいる従業員に対し,自己に著作権が帰属するものではないことを明確にするためであると理解される。
本件のように,平成13年版以降の神聖館暦の奥書に原告が著者として公表され,フォーチューンの氏名が公表されていないとしても,①対外的にはフォーチューンの代表取締役である原告に著作権が帰属することが明確になっているし,②フォーチューン内部にいる被告Bに対し,被告Bには著作権が帰属しないことを明らかにする趣旨は全うされるから,職務著作の要件を充たすものというべきである。
また,原告は,フォーチューンの代表取締役であり,被告Bに対して雇用関係に基づいて指揮監督をするのは,フォーチューンの代表取締役である原告であるから,被告Bを雇用していたフォーチューンと原告とは実質的に同一の立場にある。原告の名義で公表されたから職務著作の要件を充たさないとの被告会社の主張は,条文上の形式的要件に合致しない軽微な齟齬を根拠とする主張であって,信義則に反し,許されない。
(被告会社の主張)
ア 原告は,フォーチューンの設立まで,原告が被告Bに対して給与を支払っていたと主張するが,被告Bは,原告から給与の支払を受けたことはない。
イ 職務著作が成立するためには,実際に著作に携わった者が法人等の業務に従事しているものであること,すなわち,雇用関係にあること,及び法人等が当該著作物を自己の著作の名義の下に公表するものであることが必要である。本件各書籍は,いずれも著者を原告として奥書に原告の紹介文を付して発行されており,原告名義で公表されているものである。
(長文のため、ここでは本文の冒頭のみを掲載しています。全文はこのページの表示後に読み込まれます。原本は原本PDFをご覧ください。)
出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/9366/detail7/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。