令和7 年10 月6 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
令和6 年(ワ)第70285 号損害賠償等請求事件
口頭弁論終結日令和7 年7 月17 日
判決
当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり
主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 被告は、武道の教授、普及、演武その他これらに関連する活動において、別紙被告標章兼被告商品等表示目録記載の標章及び表示を使用してはならない。
2 被告は、原告に対し、3024 万円及びこれに対する令和6 年9 月29 日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
3 被告は、原告に対し、別紙謝罪文目録記載の謝罪文を、同目録記載の条件にて掲載せよ。
第2 事案の概要
本件は、原告が、雑誌の記事及び広告において被告が別紙被告標章兼被告商品等表示目録記載の各標章(以下、同別紙第1 記載の標章を順に「被告標章1-1」などと、同第2記載の標章を順に「被告標章2-1」などという。また、同別紙第1 記載の標章を併せて「被告標章1」といい、同別紙記載の標章を併せて「被告各標章」という。)及び各商品等表示(以下、一括して「被告各表示」という。また、被告各標章と被告各表示を併せて「被告各標章等」という。)を使用する行為並びに被告が運営する道場において被告各標章等を使用して武術等の教授をする行為が、それぞれ、別紙商標権目録記載の各商標(以下、記載順に「原告商標1」などといい、これらを併せて「原告各商標」という。)に係る各商標権(以下、原告各商標に対応して「原告商標権1」などといい、これらを併せて「原告各商標権」という。また、原告各商標に対応する原告の営業表示を併せて「原告各表示」という。)を侵害する(商標法37 条1 項1 号)と共に、混同惹起行為(不正競争防止法(以下「不競法」という。)2 条1 項1 号)に当たると主張して、商標権(商標法36 条1 項)及び不競法3 条に基づく被告各標章等の使用の差止め、民法709 条及び不競法4 条に基づく3024 万円の損害賠償及びこれに対する令和6 年9 月29 日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払並びに商標法39 条(特許法106 条)及び不競法14 条に基づく謝罪文の掲載を請求する事案である。
1 前提事実(証拠等を掲記しない事実は、当事者間に争いがないか、弁論の全趣旨により容易に認められる。なお、書証の番号は特に断らない限り枝番号を含む(以下同じ。)。)
(1) 当事者
ア 原告は、X(X)なる呼称の下、原告各商標に係る古武術流派の格闘技、技芸、知識を教授することを業とする者である。
イ 被告は、武神館本部道場及び武神館Y道場において、古武術流派の格闘技等体術、技芸、知識を教授することを業とする者である。
(2) 原告各商標権
原告は、別紙商標権目録記載の各登録商標(原告各商標)に係る商標権(原告各商標権)を有する。なお、原告は、原告商標権1 につき、令和3 年6 月10日付け特定承継によりこれを取得した。また、原告商標6 に係る商標は標準文字による。
(3) 被告の各行為
ア 被告行為1
被告は、武道・武術に関する専門誌「月刊秘伝」(以下「本件雑誌」という。)の令和3 年4 月号~令和6 年3 月号の合計36 回にわたり、「双伝“A神流”武神館武道の極意」と題する連載記事(甲7。以下「本件記事」という。)を執筆した(以下「被告行為1」という。)。
被告各標章等は、いずれも、本件記事又は本件雑誌に掲載された広告に記載されたものである(ただし、後記のとおり、その記載の趣旨については当事者間に争いがある。)。
イ 被告行為2
被告は、令和元年12 月9 日以降、「本體高木揚心流柔體術十八代家元」、「義鑑流骨法術十六代家元」等の肩書で、武神館本部道場及び武神館Y道場において、格闘技、技芸、知識を門下生に指導している(以下「被告行為2」という。なお、後記のとおり、その肩書の趣旨については当事者間に争いがある。)。
2 争点
(1) 商標権侵害の成否(争点1)
ア 原告各商標と被告各標章の類否(争点1-1)
イ 被告各標章の商標的使用の有無(争点1-2)
(2) 混同惹起行為の成否(争点2)
ア 原告各表示の商品等表示としての周知性の有無(争点2-1)
イ 原告各表示と被告各表示との同一性又は類似性(争点2-2)
ウ 被告各表示の商品等表示としての使用の有無(争点2-3)
(3) 差止めの必要性(争点3)
(4) 故意又は過失の有無(不競法との関係。争点4)
(5) 損害の有無及びその額(争点5)
(6) 謝罪広告の必要性(争点6)
3 当事者の主張
(1) 争点1-1(原告各商標と被告各標章の類否)について
(原告の主張)
原告各商標と被告各標章との類否につき、両者を比較すると、別紙「侵害行為比較表」の各欄記載のとおりとなる。
以下のとおり、被告各標章のうち「本體高木揚心流柔體術」、「高木揚心流」及び「高木流」に係るものは、原告商標1~5 と、それぞれ、外観、称呼及び観念において同一ないし類似する。
また、被告各標章のうち「義鑑流骨法術」及び「義鑑流」に係るものは、原告商標6 と、外観、称呼及び観念において同一ないし類似する。
したがって、被告各標章は、それぞれ、原告各商標と同一又は類似するものといえる。
ア 原告商標1 及び2 と「本體高木揚心流柔體術」(被告標章1-1~1-4、1-6、1-7、1-10、1-11、1-14、1-15、1-17、1-18、1-20、1-21、1-24、1-25、1-27、1-28、1-30、1-31、1-33、1-34、1-36、1-37、1-39~1-41、1-44、1-45、1-47~1-49、1-51~1-53、1-55~1-57、1-59~1-61、1-63、1-64、1-66、1-67、1-69、1-70、1-72、1-73、1-75、1-76、1-78、1-79、1-81~1-83、1-85、1-86、1-88、1-89、1-91、1-92、1-94、1-95、1-97、1-98、1-102、1-103、1-105~1-107、1-111、1-114、1-115、1-117、1-118、1-120、1-121、1-123、1-124、1-126、1-127、1-129、1-130、1-132、1-133)の類似(ア) 原告商標1 及び2 に付記されたアルファベットは、単に漢字表記をアルファベットに引き直した読みが記載されているに過ぎない。また、
「高」
と「髙」、「楊」と「揚」、「柔術」と「柔體術」の各差異や、「石谷伝」の表記の有無の点でも原告商標1 及び2 と上記被告各標章は異なるものの、標章の要部及び大半の部分において同一の表記がされる以上、古武道に係る格闘技、技芸、知識の教授を受けようとする需要者の通常の認識に照らせば、両者が別個のものといえるほど異なる外観を呈するものではない。(イ) 称呼については、原告商標1 及び2 と上記被告各標章とは、標章の要部及び大半の部分において一致することに加え、表記上の上記各差異による違いも生じないため、類似性は顕著である。
(ウ) 格闘技、技芸、知識の教授という役務において、その属する流儀・流派の表示は、出所を表示しているものといえる。また、原告商標1 及び2 に付記されているアルファベットは、単に漢字表記をアルファベットに引き直した読みが記載されているに過ぎず、別個の観念を生じさせるものではない。加えて、「高」と「髙」の差異は観念における差異を生じるものでない。「楊」と「揚」の差異も、読みや偏以外の形状を同じくするものであり、その表記の違いにより別個の流派を指し、異なる観念を生じさせるものではない。「柔術」と「柔體術」の差異も、「體」は「体」と同義であり、「體術」は柔術を示すものであるから、これにより別の技術体系を観念させるものではない。「石谷伝」の表記は、伝統の流系や分派の観念を生じさせ得るものの、被告各標章にも「〇〇伝」等の表記がない本件においては、別の流派、分派に属するとの観念を生じさせるものではない。
(エ) したがって、「本體髙木楊心流柔術石谷伝」(原告商標1 及び2)と「本體高木揚心流柔體術」(上記被告各標章)は類似する。
イ 原告商標1 及び2 と「高木揚心流」(被告標章1-5、1-8、1-9、1-13、1-16、1-19、1-22、1-26、1-29、1-32、1-35、1-38、1-42、1-43、1-46、1-50、1-54、1-58、1-62、1-65、1-68、1-71、1-74、1-77、1-80、1-84、1-87、1-90、1-93、1-96、1-99、1-101、1-104、1-116、1-119、1-122、1-125、1-128、1-131、1-134)の類似
(ア) 前記アに加え、「本體」及び「柔術」の表記の有無も、「本體髙木楊心流柔術石谷伝」に係る格闘技、技芸、知識の教授を受けようとする需要者の通常の認識に照らせば、それにより原告商標1 及び2 と上記被告各標章が別個のものといえるほど異なる外観や称呼を呈するものではない。
(イ) 後記被告各標章の使用態様に加え、「本體」とは「本体」と同義であり、正当な武術流派であることを示す修飾語としての観念を生じさせるに過ぎないこと、「柔術」は流派名の要部にその根幹となる体術の一般的名称を付しているだけであり、その有無により別個の武術流派を示すものとの観念を生じさせるものではない。
(ウ) したがって、「本體髙木楊心流柔術石谷伝」(原告商標1 及び2)と「高木揚心流」(上記被告各標章)は類似する。
ウ 原告商標1 及び2 と「高木流」(被告標章第1-23、1-100、1-108、1-109、1-110、1-112、1-113)の類似
(ア) 前記ア、イに加え、「楊心」の表記の有無も、「本體髙木楊心流柔術石谷伝」に係る格闘技、技芸、知識の教授を受けようとする需要者の通常の認識に照らせば、それにより原告商標1 及び2 と上記被告各標章が別個のものといえるほど異なる外観や称呼を呈するものではない。
(イ) 後記被告各標章の使用態様に加え、「本體髙木楊心流柔術石谷伝」としての武術流派のほかに、「髙木〇〇流」と表記される武術流派がない本件では、「本體髙木楊心流柔術石谷伝」と「高木流」を比較した際に、需要者の一般的認識を考慮すれば、「楊心」という表記の有無により別個の流派を観念することはなく、後者が前者の略称であり、同一の流派を指すものと観念するのが通常である。すなわち、「楊心」の表記の有無をもって、原告商標1 及び2 と上記被告各標章が別個の武術流派を示すものとの観念は生じない。
(ウ) したがって、「本體髙木楊心流柔術石谷伝」(原告商標1 及び2)と「高木流」(上記被告各標章)は類似する。
エ 原告商標3 と「本體高木揚心流柔體術」に係る被告各標章(前記アのもの)の類似
(ア) 前記ア~ウに加え、「捕手」の表記の有無の別が存在するが、標章の要部及び大半の部分において同一の表記がされる以上、古武道に係る格闘技、技芸、知識の教授を受けようとする需要者の通常の認識によれば、両者が別個のものといえるほど異なる外観や称呼を呈するものではない。
(イ) 後記被告各標章の使用態様に加え、「捕手」の表記は、流派に係る技術体系を具体化した修飾的文言に過ぎない。このため、同表記の有無をもって別個の観念は生じない。
(ウ) したがって、「髙木流捕手柔術」(原告商標3)と「本體高木揚心流柔體術」(上記被告各標章)は類似する。
オ 原告商標3 と「高木揚心流」に係る被告各標章(前記イのもの)は類似する。前記ア~エのとおり、各表記の差異によって別個の外観、称呼及び観念を呈するものではない。
カ 原告商標3 と「高木流」(前記ウのもの)は類似する。前記ア~エのとおり、各表記の差異によって別個の外観や称呼を呈するものではない。
キ 原告商標4 と「本體高木揚心流柔體術」(前記アのもの)の類似(ア) 「楊心髙木」と「高木揚心」の文字順、「高」と「髙」、「楊」と「揚」、「柔術」と「柔體術」の各差異があるものの、標章の要部及び大半の部分において同一の表記がされる以上、古武道に係る格闘技、技芸、知識の教授を受けようとする需要者の通常の認識によれば、需要者において、原告商標4 と上記被告各標章が別個のものといえるほど異なる外観や称呼を呈するものではない。
(イ) 前記アのほか、「楊心髙木」と「高木揚心」の文字順の違いにより異なる流派を表示するものとしての観念も生じない。
(ウ) したがって、原告商標4 と「本體高木揚心流柔體術」(上記被告各標章)は類似する。
ク 原告商標4 と「高木揚心流」(前記イのもの)は類似する。上記キに加えて「本體」や「柔術」の表記の有無の別があるが、これにより、異なる外観、称呼及び観念を生ずるものではない。
ケ 原告商標4 と「高木流」(前記ウのもの)は類似する。上記キ、クに加えて「楊心」の表記の有無の別があるが、これにより、異なる外観、称呼及び観念を生ずるものではない。
コ 原告商標5 と「本體高木揚心流柔體術」(前記アのもの)は類似する。前記アのとおり、「高」と「髙」、「楊」と「揚」、「柔術」と「柔體術」の各差異によって、異なる外観、称呼及び観念を生ずるものではない。
サ 原告商標5 と「高木揚心流」(前記イのもの)は類似する。上記コに加え、「本體」や「柔術」の表記の有無の別があるが、これにより、異なる外観、称呼及び観念を生ずるものではない。
シ 原告商標5 と「高木流」(前記ウのもの)は類似する。上記コ、サに加え、「楊心」の表記の有無の別があるが、これにより、異なる外観、称呼及び観念を生ずるものではない。
ス 原告商標6 と「義鑑流骨法術」
(被告標章2-1~2-4、2-6、2-9~2-11、2-13、
2-14、2-16、2-17、2-19、2-20、2-22、2-23、2-25、2-26、2-28、2-29、2-31、2-32、2-34、2-35、2-37~2-39、2-41、2-42、2-44、2-45、2-46、2-48~2-50、2-52~2-54、2-56~2-58、2-60、2-61、2-63、2-64、2-66、2-67、2-69、2-70、2-72、2-73、2-75、2-76、2-78~2-80、2-82、2-83、2-85、2-86、2-88、2-89、2-91、2-92、2-94、2-95、2-97、2-98、2-100、2-101、2-103、2-104、2-106、2-107、2-109、2-110、2-114、2-116、2-117、2-125、2-126、2-128、2-129、2-131、2-132)の類似原告商標6 と上記被告各標章は同一であり、異なる外観、称呼及び観念を生ずるものではない。
セ 原告商標6 と「義鑑流」(被告標章2-5、2-7、2-8、2-12、2-15、2-18、2-21、2-24、2-27、2-30、2-33、2-36、2-40、2-43、2-47、2-51、2-55、2-59、2-62、2-65、2-68、2-71、2-74、2-77、2-81、2-84、2-87、2-90、2-93、2-96、2-99、2-102、2-105、2-108、2-111、2-112、2-113、2-115、2-118~2-124、2-127、2-130、2-133)の類似
(ア) 原告商標6 と上記被告各標章とは、「骨法術」の表記の有無の別があるものの、標章の要部及び大半の部分において同一の表記がされる以上、古武道に係る格闘技、技芸、知識の教授を受けようとする需要者の通常の認識によれば、需要者において、両者が別個のものといえるほど異なる外観や称呼を呈するものではない。
(イ) 被告各標章の使用態様に加え、「骨法術」の表記は、「義鑑流」という流派名の要部にその根幹となる骨法術という体術の一般的名称を付しているだけであるから、両者につき、別個の武術流派を示すものとの観念を生じさせるものではない。
(ウ) したがって、「義鑑流骨法術」(原告商標6)と「義鑑流」(上記被告各標章)は類似する。
(被告の主張)
以下のとおり、被告各標章は、それぞれ原告商標1~6 のいずれとも類似しないから、原告各商標権を侵害しない。
ア 原告商標1 及び2 と被告各標章のうち「本體高木揚心流柔體術」、「高木揚心流」、「高木流」との非類似
原告商標1 及び2 の外観は、黒色のゴシック体で横書き表示された「本體髙木楊心流柔術石谷伝」と欧文字「HONTAI TAKAGI YOSHINRYU JU-JUTSU ISHITANI-DEN」からなる二段表記であり、「ホンタイタカギヨーシンリュージュージュツイシタニデン」の称呼が生じる。一方、上記被告各標章は、いずれも「石谷伝」の語や下段の欧文字の表記がない上、
「柔術」
ではなく「柔體術」の文字を用いており、また、「柔術」や「本體」の表記がないものもある。このため、原告商標1 及び2 と上記被告各標章とは、外観及び称呼のいずれも大きく異なる。
また、上記被告各標章の使用態様をみると、古武道の2 つの流派の家元を相伝した被告の肩書として記載されたもの、又は本件記事で取り上げている者が属する武術の流派・流儀の名称として記載されたものや、術を演ずる者の写真に対してそれがどのような流派・術のものであるかを説明するものとして記載されたものとして需要者に認識される態様で用いられている。これらの具体的な状況に基づけば、上記被告各標章からは、「被告の肩書」又は「武術の流儀・流派の名称」との観念が生じるのみであって、特定の営業を表示するものとしての観念は生じない。加えて、本體楊心流髙木流柔術においては木偏の「楊」の字を用いるのが伝統かつ正式な記載であるとすれば、「楊」と意味を異にする「揚」の文字を用いている上記被告各標章は、その外観及び観念において原告商標1 及び2 と異なるといえる。
したがって、原告商標1 及び2 と上記被告各標章は、外観、称呼及び観念のいずれも大きく異なるから、類似しない。
イ 原告商標3 と被告各標章のうち「本體高木揚心流柔體術」、
「高木揚心流」、
「高木流」の非類似
原告商標3 の外観は、黒色のゴシック体で横書き表示された「髙木流捕手柔術」であり、「タカギリューホシュジュージュツ」との称呼が生じる。他方、上記被告各標章には、いずれも「捕手」の表記がない上、「柔術」ではなく「柔體術」の表記を用いるものもある。このため、原告商標3 と上記被告各標章とは、外観及び称呼のいずれも大きく異なる。また、上記アのとおり、具体的な状況に基づけば、上記被告各標章からは、特定の営業を表示するものとしての観念は生じない。
したがって、原告商標3 と上記被告各標章は、外観、称呼及び観念のいずれも大きく異なるから、類似しない。
ウ 原告商標4 と被告各標章のうち「本體高木揚心流柔體術」、
「高木揚心流」、
「高木流」の非類似
原告商標4 の外観は、黒色のゴシック体で横書き表示された「本體楊心髙木流柔術」、「ホンタイヨーシンタカギリュージュージュツ」との称呼が生じる。他方、上記被告各標章は、いずれも「髙」ではなく「高」を用いていること、「本體高木揚心流柔體術」と「高木揚心流」については「楊心髙木」ではなく「高木揚心」の文字順であり、「楊」ではなく「揚」を用いており、「柔術」ではなく「柔體術」を用いているものもある。これらのことから、原告商標4 と上記被告各標章とは、外観及び称呼のいずれも大きく異なる。また、前記アのとおり、上記被告各標章からは、特定の営業を表示するものとしての観念は生じない。
したがって、原告商標4 と上記被告各標章は、外観、称呼及び観念のいずれも大きく異なるから、類似しない。
エ 原告商標5 と被告各標章のうち「本體高木揚心流柔體術」、
「高木揚心流」、
「高木流」の非類似
原告商標5 の外観は、黒色のゴシック体で横書き表示された「本體髙木楊心流柔術」であり、「ホンタイタカギヨーシンリュージュージュツ」との称呼が生じる。他方、上記被告各標章は、いずれも「髙」ではなく「高」を用いている上、
「本體高木揚心流柔體術」と「高木揚心流」については「楊」
ではなく「揚」の文字を用いており、「柔術」ではなく「柔體術」を用いているものもある。これらのことから、原告商標5 と上記被告各標章とは、外観及び称呼のいずれも大きく異なる。また、前記アのとおり、上記被告各標章からは、特定の営業を表示するものとしての観念は生じない。
したがって、原告商標5 と上記被告各標章は、外観、称呼及び観念のいずれも大きく異なるから、類似しない。
オ 原告商標6 と被告各標章うち「義鑑流骨法術」、「義鑑流」の非類似原告商標6 の外観は、標準文字で横書き表示された「義鑑流骨法術」であり、「ギカンリューコッポージュツ」との称呼が生じる。他方、上記被告各標章のうち「義鑑流骨法術」に係るものは、同一の外観及び称呼が生じる。しかし、上記被告各標章は、その使用態様に鑑みると、前記アと同様に、被告の肩書又は武術の流儀・流派の名称としての観念が生じるのみであって、特定の営業を表示するものとしての観念は生じない。
したがって、原告商標6 と上記被告各標章は、観念が大きく異なることから、類似しない。
(2) 争点1-2(被告各標章の商標的使用の有無)について
(被告の主張)
ア 被告行為1 について
本件雑誌における被告各標章の記載は、①被告の氏名や生年月日、出身地等のプロフィールと共に被告各標章が使われているものと、②記事中の文章や写真と被告各標章とを組み合わせて使用されているものに区別できる。
(ア) ①について
①の表示態様の被告各標章は、その記載の近くに被告の氏名等が記載
され、中には被告の氏名よりも小さいサイズで表示されているものもあることや、被告が実際に本體高木揚心流柔體術及び義鑑流骨法術の2 つの流派の家元の地位にあることなどから、通常、古武道の2 つの流派の家元を相伝した被告の肩書の一部として認識される。肩書とは、氏名の上部や右肩に表示する官位や職名であって、ある人物を特徴づける社会的な地位や称号をいうところ、被告の氏名の近くに表示されている「本體高木揚心流柔體術義鑑流骨法術家元」の記載は、被告が「本體高
木揚心流柔體術」や「義鑑流骨法術」の家元の地位にあることを説明しているに過ぎず、技芸の教授等の役務の出所を示すものではないから、商標的使用に当たらない。
(イ) ②について
本件雑誌は、様々な武道を紹介する月刊の専門誌であって、技芸の教
授を目的とした教本ではない。また、②の表示態様の被告各標章の記載は、「本體高木揚心流柔體術」や「義鑑流骨法術」の修行の軌跡の紹介や技術の一端を写真や文章を組み合わせて紹介するにとどまり、技芸の教授を目的としたものではないから、商標的使用に当たらない。
(ウ) したがって、被告行為1 における①と②いずれの表示態様についても、「本體高木揚心流柔體術」や「義鑑流骨法術」等の流派・流儀の教授に係る営業を表示するものとして使用されているものではない。すなわち、被告行為1 における被告各標章の使用は、いずれも、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識し得るような態様による使用ではないから、このような被告各標章に原告各商標権の効力は及ばない(26 条1項6 号)。
イ 被告行為2 について
被告は、武神館本部道場や武神館Y道場で武術を指導する際に、「本體高木揚心流柔體術十八代家元」や「義鑑流骨法術十六代家元」などと名乗っていたが、これらは2 つの流派の家元を相伝した被告の肩書として用いたに過ぎず、古武道の流派・流儀の教授に係る営業を表示するものとして使用したものではない。したがって、被告行為2 における被告各標章の使用は、いずれも、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識し得る態様による使用ではないから、このような被告各標章に原告各商標権の効力は及ばない。
(原告の主張)
ア 被告行為1 について
(ア) 古武道流派の名称は、代表者の運営する道場や団体名等と共に記載されていれば、単に流派の名称を示すにとどまらず、これと一体となって、当該表示に接するものにおいて、当該古武道の流派・流儀の教授に係る営業を表示するものと理解するのが通常である。
本件では、本件記事において、「本體高木揚心流柔體術義鑑流骨法術
家元」等の記載と共に、被告が運営する「武神館」や「武神館Y道場」といった具体的な道場名や団体名の記載があるほか、構や体術、技術等を写真と文章で教授する中で、被告各標章が記載されている。このような態様に鑑みると、被告各標章の表示は、単に古武道の流派の名称やその特徴的な形を意味するものとして使用されているにとどまらず、
「武神
館」や「武神館Y道場」における「本體高木揚心流柔體術」や「義鑑流骨法術」の来歴、武術技芸、知識の教授という、被告が提供するサービスや営業の出所を表示するものとして記載されているものである。このような被告各標章の使用は商標的使用に当たる。
(イ) 肩書とは、氏名を表示する際等にこれに付随して表記される当該人物の社会的地位や称号等を指すものであるところ、被告が主張する表記中で肩書と評し得るのは「家元」の部分のみである。「本體高木揚心流柔體術・義鑑流骨法術家元」との表記を目にした需要者は、その者が「本體高木揚心流柔體術」や「義鑑流骨法術」という武術流派、団体において家元という肩書を有する人物であると認識するのが通常かつ自然である。また、本件における「家元」の表記は、技芸の道で、その流派の本家として正統を受け継ぎ、流派を統率する家系やその当主を指す。このような表記は、役務の出所を表示する機能を有する標章と合わせ使用する場合、むしろその表記により表示される者が当該役務提供の正当な提供者であることを示し、当該標章の出所識別機能を強調するものである。また、被告各標章は、特定の古武術流派の名称であると共に、当該流
派に係る古武術の格闘技、技術、知識の教授という特定の役務の提供等の一主体となるような当該流派を継承する特定の団体を指すものである。このような記載を人物名に肩書として付した場合、それは、人物名の部分が、当該流派に係る古武術の格闘技、技術、知識の教授という特定の役務の提供等の一主体となるような当該流派を継承する特定の団体に属する人物であることを示すに過ぎず、肩書とされる記載が持つ役務提供の出所表示機能が損なわれるわけではない。むしろ、当該表記が付されることで、「本體高木揚心流柔體術」や「義鑑流骨法術」の記載が有する出所表示機能を強める働きをするものである。
さらに、当該武術流派に係る格闘技の技術体系を写真付きで説明する
ものや、当該武術流派の来歴等の知識に言及するものに付随する「本體高木揚心流柔體術」や「高木揚心流」、「高木流」、「義鑑流骨法術」、「義鑑流」との記載は、その記載態様から、肩書と解する余地はない。(ウ) 本件記事において、「本體高木揚心流柔體術」や「高木揚心流」、「高木流」、「義鑑流骨法術」、「義鑑流」の記載と共に、同武術流派団体の有する格闘技、技芸について、技の名称、運指運足の詳細が写真と共に掲載され、当該武術流派・団体に係る知識が記載されているものについては、社会通念に照らせば、格闘技、技芸、知識を需要者に対して教授するものにほかならない。「流派」とは、芸術、芸能、武道等の分野において他との技術、技能、手法、心構え等の解釈の差異を理由として形成された集団を指す文言であること、本件で具体的に教授される格闘技、技芸、知識は、普遍的な体術様式ではなく独自の技術体系と長い歴史を有する武術であることに鑑みると、その教授行為に際して、教授する格闘技等が属する古武道、古武術流派を表示することは、提供される製品にブランド名を標章として付し、他の製品との区別を図るのと同様に、当該格闘技等の教授という役務がいかなる集団によって独自に提供されるものであるかを表示することにほかならない。加えて、流派の記載は、営業場所である道場名や家元という流派の代表者を示す記載と共に表示されている。このような使用態様から、需要者においては、被告各標章につき、本件記事や被告の各道場で営業として提供される役務に関し、被告を代表者とする武道体系ないし武道集団を示すものと認識する。
イ 被告行為2 について
被告は、武神館等の各道場において、「本體高木揚心流柔體術」や「義鑑流骨法術」に係る格闘技、技芸、知識を教授することにより対価を受領している。このため、その教授内容を他の格闘技や体術等と区別する流派の名称は、特定の営業の表示にほかならない。すなわち、被告による被告各標章の使用は、自他の役務の識別ないし出所表示機能を発揮する態様での使用であるから、商標的使用に当たる。
(3) 争点2-1(原告各表示の商品等表示としての周知性の有無)について(原告の主張)
原告は、原告各表示に係る武術流派について、原告の師より宗家相伝状を授与された平成元年より、その流派の名称を使用して、門弟の指導、免状発行等をして対価を得る活動等を行うほか、自ら演武を行い、また、取材に応じるなどしてその対価を受領する活動を行っていた。したがって、原告各表示は、原告の営業表示となっていた。
これらの営業表示に係る流派は、開祖から原告へと連綿と受け継がれてきた古流武術流派であり、全国に知れ渡っている。原告の師が著した書籍が出版され、古流武術に関する書籍としては多数である1500 部が販売されたところ、同書籍内において、「髙木楊心流」、「義鑑流骨法術」が師から原告に承継されたことが記載されていることから、これらの記載を含む原告各表示が原告の営業を示すことは周知されている。
また、原告は、師より宗家相伝状を授与されて以降、その流派を含む古武術普及活動の一環として雑誌社の取材に応じ、同社が発行する武道、武術に関する専門誌である本件雑誌平成6 年3 月号において、「義鑑流」、「髙木楊心流」を含む古武術流派の継承者として特集を組まれたこともある。その際には、原告が、玄武館という道場において「義鑑流」、「髙木楊心流」を含む古武術流派を教授していることが掲載されている。同誌は約5 万部が発行されたことから、同誌における記事内容を含む原告各表示は、原告の営業を表示するものとして広く周知されていたといえる。平成4 年には、アメリカの武道専門映像制作会社の映像作品において、原告は「義鑑流」、
「髙木楊心流」
の宗家として紹介され、同作品は、平成6 年に上記雑誌社が代理店契約を結んで日本国内でも製作・販売され、上記本件雑誌においても紹介された。さらに、原告は、平成13 年11 月に実施された日本古武道演武大会に演武出演したところ、その演武に係る流儀説明書には、原告が「本體髙木楊心流柔術」、「義鑑流骨法術」の宗家である旨記載され、同大会のパンフレットにも同趣旨の記載がされている。原告は、同大会を開催した日本古武道連盟の副会長を務めており、このような立場、演武の披露、流儀説明書等により、同大会に参加した多数の武術流派関係者によって、広く、原告各表示が原告の営業を示すことが周知された。
以上より、原告各表示は、遅くとも被告が被告各表示を使用し始めた令和元年12 月9 日までには、需要者にとって、原告の営業を表示するものとして著名又は周知となっていた。
(被告の主張)
原告各表示は、開祖から代々伝承・承継した古武道の流派・流儀の名称を示すにとどまり、原告の提供する役務(技芸・スポーツ又は知識の教授等)の出所を識別し得るものとして表示されていない。このため、原告各表示は、原告の営業を表示する「商品等表示」に当たらず、原告の営業を表示するものとして周知ではない。
また、本體高木揚心流柔體術、義鑑流骨法術については複数の分派が存在することからも、原告各表示が原告の営業を表示するものとして周知とはいえない。
(4) 争点2-2(原告各表示と被告各表示との同一性又は類似性)について(原告の主張)
前記(1)(原告の主張)と同様である。
(被告の主張)
前記(1)(被告の主張)と同様である。
(5) 争点2-3(被告各表示の商品等表示としての使用の有無)について(被告の主張)
前記(2)(被告の主張)と同様である。
(原告の主張)
前記(2)(原告の主張)と同様である。
(6) 争点3(差止めの必要性)について
(原告の主張)
被告が被告各標章等を使用したことにより、需要者において、原告と被告が同一の営業主体であるか、又は原告・被告の役務が同一の出所を有するものと誤信し、被告の営業が原告の営業と混同を生じる恐れがある。また、原告は、被告による被告各表示の使用又は被告の役務提供により、営業上の利益を侵害されており、今後も侵害される恐れが大きい。
(被告の主張)
否認ないし争う。
(7) 争点4(故意又は過失の有無)について(不競法との関係)
(原告の主張)
被告は、遅くとも令和元年12 月9 日以降、原告が、原告各表示を用いて武術流派に係る格闘技、技芸、知識を教授することを業として行っているものであると認識していたから、故意又は過失がある。
(被告の主張)
争う。
(8) 争点5(損害の有無及びその額)について
(原告の主張)
各武術流派の宗家は、階級昇格判断の権限及び免状発行権を有し、その費用を徴収する立場にあるところ、そのライセンス料は年間100 万円とすべきものである。被告は、少なくとも令和元年12 月9 日~令和6 年5 月の間、権限がないにもかかわらず、本件に係る武術流派の宗家として活動していたことから、6 年分のライセンス料600 万円が原告の損害に当たる。また、武術流派の宗家の立場を有する者は、定期的に門下生等の参加を募り、大会を開催する権限を有するところ、1 度の大会開催における純利益は、義鑑流世界大会では約960 万円、髙木楊心流大会では864 万円である。以上より、本件における武術流派家元、宗家を呼称するライセンス料としては、「義鑑流骨法術」、「義鑑流」については6 年分のライセンス料600 万円に大会開催1 回分の純利益を付加して1560 万円と算定すべきであり、「本體髙木楊心流柔體術」、「髙木楊心流」については、同様に1464 万円と算定すべきである。
したがって、本件における原告の損害額は3024 万円となる(商標法38 条
3 項、不競法5 条3 項1 号)。
(被告の主張)
否認ないし争う。
(9) 争点6(謝罪広告の必要性)について
(原告の主張)
被告行為1 及び2 により、本来原告が享受してきた武術体系と異なる格闘技、技芸、知識が不特定多数の人間に広まり、かつ、あたかも被告の教授する内容が正統の武術流派であるかのごとく誤信を生じ、誤った武術体系技術や知識に基づいて幅広く免状まで発行されていると思料される。
しかるに、雑誌への連載という形式や被告が自身の運営する道場で教授行為をしていたという点から、原告において被告行為1 及び2 により上記のような誤った認識を生じた範囲を把握することは不可能である。
このため、被告行為1 及び2 により損なわれた原告各商標及び原告各表示に対する社会的信用及び営業上の利益の回復には、少なくとも別紙謝罪文目録記載のWeb サイト上で、被告が本件の各武術流派における家元、宗家といった立場にないことについて発表し、謝罪を行うと共に、短期間の掲載では閲覧していない者が多数生じる可能性があることを考慮して、謝罪文を1 年間にわたって掲載する措置をとることが相当である。
(被告の主張)
否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点1-2(被告各標章の商標的使用の有無)
事案に鑑み、まず、被告各標章の商標的使用の有無(争点1-2)について検討する。
(1) 被告行為1 における被告各標章の使用状況
ア 甲7 によれば、被告各標章は、それぞれ、以下の態様及び趣旨により使用されていることが認められる。
(ア) 被告標章1-1、1-2、2-1 及び2-2
被告標章1-1 及び1-2 は、本件雑誌の連載記事「双伝“A神流”武神館武道の極意」(本件記事)の紹介部分において、被告の氏名の右横に、これより小さいフォントで「本體高木揚心流柔體術・義鑑流骨法術家
元」と縦書きされた記載から抽出されたものである。本件雑誌が武道・武術に関する専門誌であることを踏まえると、その表示態様から、当該記載は被告の修めた武術であり被告が「家元」としての地位を有する流派を記載したものと理解される。
他方、被告標章1-2 及び2-2 は、同一ページの下部にある説明文において、他の記載より小さいフォントで「武神館に継承されてきた古武道九流派の内、…宗家より二流派(本體高木揚心流柔體術・義鑑流骨法術)の家元を相伝した」との記載から抽出されたものである。当該記載は、その記載自体から、武神館に継承され被告が宗家から相伝したとされる流派の名称を記載したものと理解される。また、当該記載及び同一ページの他の記載からは、被告が提供する役務の提供主体は被告ないし「武神館」であることがうかがわれる。
(イ) 被告標章1-3~1-5 及び2-3~2-5
被告標章1-3 及び2-3 は、本件連載第1 回の最初のページにおいて、被告の氏名の上部に、これより小さいフォントで「本體高木揚心流柔體術/義鑑流骨法術家元」(「/」は改行部分を示す。以下同じ。)と
横書きで二段に記載された記載部分から抽出されたものである。その表示態様から、当該記載は被告の修めた武術であり被告が「家元」としての地位を有する流派を記載したものといえる。
他方、被告標章1-4、1-5、2-4 及び2-5 は、被告の氏名の下部に更に小さいフォントで、被告の生年月日及び出身地の記載に続き、「本體高木揚心流柔體術十八代家元。義鑑流骨法術十六代家元。」と記載され、それに続き、被告の略歴が記載される中で、「2019 年12 月9 日高木揚心流宗家・義鑑流宗家となり、現在に至る。」とある記載から抽出されたものである。当該記載は、その記載自体から、被告の修めた武術であり被告が「家元」としての地位を有する流派を記載したもの(被告標章1-4、1-5)並びにその地位を取得した時期を示す際に合わせて記載されたもの(被告標章1-5、2-5)と理解される。
(ウ) 被告標章1-6 及び2-6
被告標章1-6 及び2-6 は、本件連載第1 回の本文中の「かく言う私は渦中の人となり、本體高木揚心流柔體術と義鑑流骨法術の家元をお預かりする事となった。」という記載から抽出されたものである。
当該記載は、その記載自体から、被告が家元となった流派を記載した
ものと理解される。
(エ) 被告標章1-7~1-9
被告標章1-7~1-9 は、本件連載第1 回の本文中に掲載された技芸の紹介部分にある本文より大きなフォントによる「本體高木揚心流柔體術」との縦書きの記載及びその左側に配置された写真により示された技術解説部分2 項目にある「高木揚心流「拳流」」及び「高木揚心流「乱勝」」という記載から抽出されたものである。
当該記載は、その記載自体から、当該技芸紹介部分で紹介される技術
の属する流派(被告標章1-7)及びこれを短縮した名称(被告標章1-8、1-9)を記載したものと理解される。
(オ) 被告標章2-7~2-9
被告標章2-7~2-9 は、本件連載第1 回の本文中に掲載された技芸の紹介部分にある大きなフォントによる「義鑑流骨法術」との縦書きの記載、その上部に配置された写真により視覚的に示された2 つの技術解説部分のうち左側にある「義鑑流「差手」」という記載及び最下部にある写真の右側にある「義鑑流「鳳凰啓一文字之構」」という記載から抽出されたものである。
当該記載は、その記載自体から、当該技芸紹介部分で紹介される技術
の属する流派(被告標章2-9)及びこれを短縮した名称(被告標章2-7、2-8)を記載したものと理解される。
(カ) 被告標章1-10~1-12 及び2-10~2-12
被告標章1-10~1-12 及び2-10~2-12 は、本件連載第2 回の最初のページにおいて、被告標章1-3~1-5 及び2-3~2-5 と同様の態様により使用されたものであるから、その記載の趣旨も同様に理解される。
(キ) 被告標章1-13
被告標章1-13 は、本件連載第2 回の本文中に掲載された技芸の紹介部分にある写真による技術解説部分2 項目のうちの1 つである「高木揚心流「體之型・四ツ手」」という記載から抽出したものである。その記載の趣旨は、同趣旨の記事において使用されている被告標章1-8 及び1-
9 と同様に理解される。
(ク) 被告標章1-14~1-22 及び2-13~2-21
被告標章1-14~1-22 及び2-13~2-21 は、本件連載第3 回~第5 回の最初のページにおいて、被告標章1-3~1-5 及び2-3~2-5 と同様の態様により使用されたものであるから、その記載の趣旨も同様に理解される。(ケ) 被告標章1-23
被告標章1-23 は、本件連載第5 回の本文中に掲載された技芸の紹介部分にある写真による技術解説部分2 項目のうちの1 つである「高木流・鬼砕」という記載から抽出したものである。その記載の趣旨は、同趣旨の記事において使用されている被告標章1-8 及び1-9 と同様に理解される。
(コ) 被告標章1-24~1-38 及び2-22~2-36
被告標章1-24~1-38 及び2-22~2-36 は、本件連載第6 回~第10 回の最初のページにおいて、被告標章1-3~1-5 及び2-3~2-5 と同様の態様により使用されたものであるから、その記載の趣旨も同様に理解される。
(サ) 被告標章1-39 及び2-37
被告標章1-39 及び2-37 は、本件雑誌に掲載されたDVD「Aの秘技継承武神館の武術」の広告中の「指導監修◎Y」との記載の下部にある
「本體高木揚心流柔體術十八代家元、義鑑流骨法術十六代家元」という記載から抽出されたものである。
当該記載は、その記載自体及び当該広告全体の記載から、広告対象で
あるDVD の内容を指導監修した被告の修めた武術であり被告が「家元」としての地位を有する流派を記載したものと理解される。
(シ) 被告標章1-40~1-42 及び2-38~2-40
被告標章1-40~1-38 及び2-38~2-40 は、本件連載第11 回の最初のページにおいて、被告標章1-3~1-5 及び2-3~2-5 と同様の態様により使用されたものであるから、その記載の趣旨も同様に理解される。
(ス) 被告標章1-43
被告標章1-43 は、本件連載第11 回の本文中に掲載された技芸の紹介部分にある写真による技術解説部分2 項目のうちの1 つである「高木揚心流・当投変化」という記載から抽出したものである。その記載の趣旨は、同趣旨の記事において使用されている被告標章1-8 及び1-9 と同様に理解される。
(セ) 被告標章1-44~1-46 及び2-41~2-43
被告標章1-44~1-46 及び2-41~2-43 は、本件連載第12 回の最初のページにおいて、被告標章1-3~1-5 及び2-3~2-5 と同様の態様により使用されたものであるから、その記載の趣旨も同様に理解される。
(ソ) 被告標章1-47 及び2-44
被告標章1-47 及び2-44 は、本件雑誌に掲載されたDVD「Aの秘技継承武神館の武術」の広告中の「指導監修◎Y」との記載の左斜め下部
にある「Y/本體高木揚心流柔體術十八代家元、義鑑流骨法術十六代家元」という記載から抽出されたものである。
その記載自体から、当該記載の趣旨は、被告標章1-39 及び2-37 と同様に理解される。
(タ) 被告標章1-48~1-50 及び2-45~2-47
被告標章1-48~1-50 及び2-45~2-47 は、本件連載第13 回の最初のページにおいて、被告標章1-3~1-5 及び2-3~2-5 と同様の態様により使用されたものであるから、その記載の趣旨も同様に理解される。
(チ) 被告標章1-51 及び2-48
被告標章1-51 及び2-48 は、被告標章1-47 及び2-44 が使用されているDVD の広告と概ね同一内容の広告において、同様の態様により使用されているものであるから、その記載の趣旨も同様に理解される。
(ツ) 被告標章1-52~1-54 及び2-49~2-51
被告標章1-52~1-54 及び2-49~2-51 は、本件連載第14 回の最初のページにおいて、被告標章1-3~1-5 及び2-3~2-5 と同様の態様により使用されたものであるから、その記載の趣旨も同様に理解される。
(テ) 被告標章1-55 及び2-52
被告標章1-55 及び2-52 は、被告標章1-47 及び2-44 が使用されているDVD の広告と概ね同一内容の広告において、同様の態様により使用されているものであるから、その記載の趣旨も同様に理解される。
(ト) 被告標章1-56~1-58 及び2-53~2-55
被告標章1-56~1-58 及び2-53~2-55 は、本件連載第15 回の最初のページにおいて、被告標章1-3~1-5 及び2-3~2-5 と同様の態様により使用されたものであるから、その記載の趣旨も同様に理解される。
(ナ) 被告標章1-59 及び2-56
被告標章1-59 及び2-56 は、被告標章1-47 及び2-44 が使用されているDVD の広告と概ね同一内容の広告において、同様の態様により使用されているものであるから、その記載の趣旨も同様に理解される。
(ニ) 被告標章1-60~1-80 及び2-57~2-77
被告標章1-60~1-80 及び2-57~2-77 は、本件連載第16 回~第22 回の最初のページにおいて、被告標章1-3~1-5 及び2-3~2-5 と同様の態様により使用されたものであるから、その記載の趣旨も同様に理解される。
(ヌ) 被告標章1-81 及び2-78
被告標章1-81 及び2-78 は、被告標章1-47 及び2-44 が使用されているDVD の広告と概ね同一内容の広告において、同様の態様により使用されているものであるから、その記載の趣旨も同様に理解される。
(ネ) 被告標章1-82~1-99 及び2-79~2-96
被告標章1-82~1-99 及び2-79~2-96 は、本件連載第23 回~第28 回の最初のページにおいて、被告標章1-3~1-5 及び2-3~2-5 と同様の態様により使用されたものであるから、その記載の趣旨も同様に理解される。
(ノ) 被告標章1-100 及び1-101
被告標章1-100 は、本件連載第28 回の本文中に掲載された技芸の紹介部分にある写真による技術解説部分の「高木流・戒後砕」という記載から抽出されたものである。その記載の趣旨は、同趣旨の記事において使用されている被告標章1-8 及び1-9 と同様に理解される。
被告標章1-101 は、同連載記事の本文中にある「次に、高木揚心流の「戒後砕」。」との記載から抽出されたものと理解される。当該記載は、その記載自体から、紹介する技術である「戒後砕」の属する流派を示すものと理解される。
(ハ) 被告標章1-102~1-104 及び2-97~2-99
被告標章1-102~1-104 及び2-97~2-99 は、本件連載第29 回の最初のページにおいて、被告標章1-3~1-5 及び2-3~2-5 と同様の態様により使用されたものであるから、その記載の趣旨も同様に理解される。
(ヒ) 被告標章1-105~1-113
被告標章1-105~1-113 は、それぞれ、本件連載第29 回の本文中にある以下の記載から抽出したものと理解される。
・「私が受け継いだ「本體高木揚心流柔體術」を紹介させて頂く。」
(被告標章1-105)
・「本體高木揚心流柔體術」(見出し。被告標章1-106)
・「A先生が…受け継いだ高木揚心流柔體術は、…」(被告標章1-107)・「高木流の免許皆伝印可を受けておられる。」(被告標章1-108)・「…の後代から、高木流はいくつかの系統に分派したとの話である
が、…」(被告標章1-109)
・「これは、高木流に限った事ではなく、…」(被告標章1-110)・「本體高木揚心流柔體術・『虎擲龍挐十法折衝之術』」(被告標章
1-111)
・「高木流・表型二本目「洞返」」(被告標章1-112)
・「高木流・表型、二本目の「洞返」も、例外ではないであろう。」
(被告標章1-113)
これらの記載は、いずれもその記載自体から、被告が紹介する流派そ
のものないし紹介する技術が属する流派として示されたものと理解される。
(フ) 被告標章1-114~1-125 及び2-100~2-112被告標章1-114~1-125 及び2-100~2-111 は、本件連載第30 回~第
33 回の最初のページにおいて、被告標章1-3~1-5 及び2-3~2-5 と同様の態様により使用されたものであるから、その記載の趣旨も同様に理解される。
被告標章2-112 は、本件連載第33 回の最初のページにおいて、「第
33 回」との記載の下部にある「義鑑流と間合」との記載から抽出されたものと理解される。当該記載は、その記載自体から、当該連載回における中心テーマとされる流派を示すものと理解される。
(ヘ) 被告標章2-113~2-124
被告標章2-113~2-122 は、それぞれ、本件連載第33 回の本文中にある以下の記載から抽出されたものと理解される。
・「利かん坊な義鑑流」(見出し。被告標章2-113)
・「「義鑑流骨法術」を創始するに至る。」(被告標章2-114)
・「義鑑流の系譜を紐解くと、義鑑流骨法術は、天文年間に…」(被
告標章2-115、2-116)
・「…兄弟子には、義鑑流骨法術・第十四代家元の…」(被告標章2-117)
・「そんな実力者達が受け継いできた義鑑流。A先生に「義鑑流は足
を開く」と教えて頂いたが、…」(被告標章2-118、2-119)・「義鑑流は、A流」(見出し。被告標章2-120)
・「義鑑流は、A(A先生の本名)流と読むんだ。」、「私に義鑑流
の宗家を預けられた。/義鑑流は足を開くと言った。」(被告標章
2-121、2-122)
これらの記載は、いずれもその記載自体から、被告が紹介する流派そ
のものないし紹介する技術の属する流派として示されたものと理解される。
また、被告標章2-123 及び2-124 は、それぞれ、本件連載第33 回の本文中に掲載された技芸の紹介部分にある写真による技術解説部分の
「義鑑流「鶻返」」及び「義鑑流「伸暢捕」」という記載から抽出されたものである。その記載の趣旨は、同趣旨の記事において使用されている被告標章2-7 及び2-8 と同様に理解される。
(ホ) 被告標章1-126~1-134 及び2-125~2-133被告標章1-126~1-134 及び2-125~2-133 は、本件連載第34 回~第
36 回の最初のページにおいて、被告標章1-3~1-5 及び2-3~2-5 と同様の態様により使用されたものであるから、その記載の趣旨も同様に理解される。
イ 検討
上記各認定事実によれば、本件雑誌に記載された被告各標章は、需要者からみると、流派そのものの紹介の趣旨、被告が家元としての地位を有する流派を示す趣旨又は本件記事において被告が紹介する技術の属する流派を示す趣旨のいずれかの趣旨において使用されているものと理解される。また、本體高木揚心流柔體術(高木流)及び義鑑流骨法術は、いずれもいくつかの系統に分派していることがうかがわれる(前記ア(ヒ)、乙6)。加えて、本件雑誌の各記載(甲7)及び弁論の全趣旨に鑑みると、被告は、「武神館武道」として「武神館に継承されてきた古武道九流派」のうちの
2 流派である「本體高木揚心流柔體術」及び「義鑑流骨法術」の家元と称するところ、その修得した技術を武神館本部道場及び武神館Y道場において「武神館武道」の一環として指導・教授し、また、本件記事やDVD の指導監修等を通じて、「武神館武道」の指導・教授を行っていることを対外的に広告しているものと理解されるのであって、本件雑誌への被告各標章の記載も含め、その際における上記2 流派に対する言及は、指導・教授の内容となる技術を説明する趣旨で行われているものとみるのが相当である。これらの事情を総合的に考慮すると、被告行為1 における被告各標章は、それ自体としては自他商品等識別機能及び出所表示機能等商標としての機能を発揮する態様で使用されてはおらず、流派そのものないし技術に関する説明や被告の肩書の一部として使用されているにとどまるものとみるのが相当である。
そうすると、被告行為1 における被告各標章は、いずれも、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されてはいないものというべきであり、原告各商標権の効力は及ばないから(商標法26 条1 項6 号)、その使用をもって原告各商標権を侵害するものとはいえない。
これに対し、原告は、本件雑誌における被告各標章の使用態様等から、社会通念に照らせば、被告各標章は、被告が道場において提供する流派の来歴や武術技芸、知識の教授という、被告が提供するサービスや営業の出所を表示するものであり、商標的使用に当たる旨を主張する。しかし、本件雑誌における被告各標章の使用態様を踏まえると、上記のとおり、被告各標章は、流派そのもの、被告が家元としての地位を有する流派又は被告が紹介する技術の属する流派を示す趣旨で使用されていると理解されるのであって、このことは、本件雑誌の記載中に、被告の氏名と共に被告が運営する道場の名称が記載されていることなどを踏まえても異ならない。この点に関する原告の主張は採用できない。
(2) 被告行為2 について
令和元年12 月9 日以降、被告が「本體高木揚心流柔體術十八代家元」、「義鑑流骨法術十六代家元」等の肩書を用い、武神館本部道場及び武神館Y道場において武術を門下生に指導していることは、当事者間に争いがない。もっとも、上記各道場における被告各標章の具体的な使用態様を認めるに足りる証拠はない(なお、武神館の道場入口には「武神館道場」などと記載された看板が掲示されていることはうかがわれる。乙3 の2)。その点を措くとしても、本件雑誌における被告各標章の使用態様をも踏まえると、被告による道場での武術の指導・教授に際し、商標的使用と認め得る態様により被告各標章が使用されていることをうかがわせる具体的な事情は見当たらないというべきである。
したがって、被告行為2 における被告各標章の使用についても、原告各商標権の効力は及ばず、これを侵害するものとはいえない。これに反する原告の主張は採用できない。
(3) 小括
以上より、その余の点につき論ずるまでもなく、被告行為1 及び2 における被告各標章の使用については原告各商標権の効力は及ばず、これを侵害するものとはいえないから、原告は、被告に対し、原告各商標権に基づく差止請求権等及び信用回復措置請求権並びにその侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権を有しない。
2 争点2(混同惹起行為の成否)について
被告各標章の場合と同様に、被告各表示は、被告が提供する役務の出所識別標識としての機能を有しないことから、「商品等表示」(不競法2 条1 項1 号)に当たらない。したがって、その余の点につき論ずるまでもなく、被告行為1及び2 における被告各表示の使用は混同惹起の不正競争に該当しないから、原告は、被告に対し、不競法に基づく差止請求権、信用回復措置請求権及び損害賠償請求権を有しない。これに反する原告の主張は採用できない。
第4 結論
よって、原告の請求はいずれも理由がないから、これらをいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第47 部
裁判長裁判官
杉浦正樹
裁判官
池田幸子
裁判官
松尾恵梨佳
別紙
当事者目録
原告
X
同訴訟代理人弁護士
安井規雄
被告
Y
同訴訟代理人弁護士田仲剛
※別紙謝罪文目録及び侵害行為比較表は省略
出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/95656/detail7/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。