令和8年9月9日判決言渡
令和7年(行ケ)第10088号審決取消請求事件
口頭弁論終結日令和8年7月22日
判決
原告コンメッドコーポレイション
同訴訟代理人弁護士・弁理士浜
田治雄
被告特
許庁長官
同指定代理人栗
山卓也太田良隆天野貴子北村英隆石川薫
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理の申立ての
ための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
第1 請求
特許庁が不服2023-15352号事件について令和7年4月24日にした審決を取り消す。
第2 事案の概要
本件は、後記本願の出願人である原告が、被告に対し、拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決の取消しを求める事案である。
1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがないか、又は当裁判所に顕著な事実)
⑴原告は、平成29年4月6日、発明の名称を「正圧ガスを使用する外科吸引装置」とする発明について、特許出願(特願2018-545340号。以下、この出願を「本願」といい、出願日を「本願出願日」という。)をしたが、令和5年4月27日付けで拒絶査定を受けた。
⑵原告は、同年9月11日、上記拒絶査定に対して拒絶査定不服審判請求(不服2023-15352号)をしたところ、令和6年8月13日付けで拒絶理由が通知されたため、原告は、令和7年2月14日に手続補正書を提出した(以下、この補正を「本件補正」という。)。
⑶特許庁は、同年4月24日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同年5月9日、原告に送達された(出訴期間90日附加)。
⑷原告は、同年9月5日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。
2 特許請求の範囲
本件補正後の本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである(以下、これを「本願発明」という。甲19)。
「吸引システムであって、
外科手術用ツール、キャニスタ(860、1660、2560)、フィルタ(1030、1630、1730、1930、2430)、および受動吸引装置(300、500、700、800、1300、1500、1600、2100)からなり、
受動吸引装置(300、500、700、800、1300、1500、1600、2100)は(i)第1の中空区間、第2の中空区間、またはそれらの組み合わせの内径の狭窄部、(ii)第2の中空区間の端部の第2の対向面に隣接して配置されるか、または少なくとも部分的に重なる前記第1の中空区間の端部の第1の対向面によって形成される導管、または(iii)それらの組み合わせを備え、受動吸引装置(300、500、700、800、1300、1500、1600、2100)への加圧流体の流入は、受動吸引装置(300、500、700、800、1300、1500、1600、2100)内に低圧領域を形成し、受動吸引装置(300、500、700、800、1300、1500、1600、2100)は吸引システムの受動吸引源を備え、外科手術用ツールの出力ポートは、キャニスタ(860、1660、2560)の入力ポートと流体連通し、キャニスタ(860、1660、2560)の出力ポートは、フィルタ(1030、1630、1730、1930、2430)の入力ポートと流体連通し、受動吸引装置(300、500、700、800、1300、1500、1600、2100)の入力ポートまたは出力ポートは外科手術用ツールの入力ポート、外科手術用ツールの出力ポート、キャニスタ(860、1660、2560)の入力ポート、キャニスタ(860、1660、2560)の出力ポート、フィルタ(1030、1630、1730、1930、2430)の入力ポートまたはフィルタ(1030、1630、1730、1930、2430)の出力ポートと流体連通し、受動吸引装置(300、500、700、800、1300、1500、1600、2100)は、受動吸引装置(300、500、700、800、1300、1500、1600、2100)から出力される正圧の量を抑制するように構成されたマフラ(2531、2532、2700、2776)をさらに備え、受動吸引装置(300、500、700、800、1300、1500、1600、2100)は、摺動体(2280)及びダイヤフラム(2185、2285)を含み、ガス、液体、又はそれらの混合体の逆流を防止するように構成された逆流防止弁(1316、1516、2100、2116、2200、2416、2421)を備え、摺動体(2280)はダイヤフラム(2185、2285)を介して圧力源から前記摺動体(2280)に伝達される圧力によって作用されると、装置(300、500、700、800、1300、1500、1600、2100)内で移動するように構成され、ダイヤフラム(2185、2285)は一方向の流れを遮断する一方で反対方向の流れを許容するように構成され、
摺動体(2280)は摺動体(2280)をダイヤフラム(2185、2285)に結合するように構成された雄カップリング(2283)と、摺動体(2280)を通る物質の流れを可能にするように構成された開口(2286)と、ダイヤフラム(2185、2285)の一方向の撓み量を制限するように構成された支持要素(2288)とを備え、ダイヤフラム(2185、2285)は、可撓性材料からなり、ダイヤフラム(2185、2285)を摺動体(2280)に結合するように構成された雌カップリング(2284)を含む吸引システム。」
3 本件審決の理由の要旨
以下のとおり、本願発明は、本願出願日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
⑴本願出願日前に頒布された米国特許出願公開第2017/0014559号明細書(甲23。訳文は甲25参照。以下「引用文献1」といい、その段落番号を【】で示す。)には、次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「吸引システム2500であって、
吸引アタッチメント2552に結合された外科器具と、回収キャニスタ2
560と、フィルタ2530を備えた吸引装置2510とからなり、
吸引装置2510は、(i)第1の中空区間2122の内径の狭窄部、(ii)第2の中空区間2125の端部の第2の対向面2132に隣接して配置される第1の中空区間2122の端部の第1の対向面2130によって形成される導管を備え、吸引装置2510への加圧流体の流入は、吸引装置2510内に低圧領域を形成し、吸引装置2510は吸引システム2500の受動吸引源であり、
吸引アタッチメント2552に結合された外科器具の吸引アタッチメン
ト側は、吸引アタッチメント2552の吸引ポート2512と流体連通するポート構造を備え、当該ポート構造は回収キャニスタ2560の吸入側のポート構造と流体連通するとともに、回収キャニスタ2560の排出側のポート構造は、吸引装置2510内部のフィルタ2530の吸入側のポート構造と流体連通し、
吸引装置2510の排出側のポート構造は、吸引装置2510内部のフィ
ルタ2530のフィルタ出口ポートと流体連通し、
吸引装置2510は、正圧出力2521の体積レベルを抑制するように構
成されたマフラ2532をさらに備え、
吸引装置2510は、摺動体2280及びダイヤフラム2285を含み、
液体、ガス及び固形物の逆流を防止するように構成された逆流防止弁2200を備え、摺動体2280はダイヤフラム2285を介して圧力源から摺動体2280に伝達される圧力によって作用されると、吸引装置2510内で移動するように構成され、ダイヤフラム2285は一方向の流れを遮断する一方で、逆方向の流れを許容するように構成され、
摺動体2280は摺動体2280をダイヤフラム2285に連結するよ
うに構成された雄型継手2283と、摺動体2280を通る排出物の流れを可能とするように構成された開口2286と、ダイヤフラム2285の一方向の撓み量を制限するように構成された支持要素2288とを備え、ダイヤフラム2285は、可撓性材料からなり、ダイヤフラム2285を摺動体2280に連結するように構成された雌型継手2284を含む
吸引システム2500。」
⑵本願発明の発明特定事項は、以下のとおり(ただし、後記審決取消事由に関係しない部分は摘示を省略する。)、全て引用文献1に記載されている。
ア 引用発明の「吸引システム2500であって、吸引アタッチメント2552に結合された外科器具と、回収キャニスタ2560と、フィルタ25
30を備えた吸引装置2510とからなり」は、本願発明の「吸引システ
ムであって、外科手術用ツール、キャニスタ (860、1660、2560)、フィル
タ (1030、1630、1730、1930、2430)、および受動吸引装置(300、500、700、800、1300、1500、1600、2100)からなり」に相当する。
イ 引用発明の「吸引装置2510は、(i)第1の中空区間2122の内径の狭窄部、(ii)第2の中空区間2125の端部の第2の対向面2132に隣接して配置される第1の中空区間2122の端部の第1の対向面2130
によって形成される導管を備え、吸引装置2510への加圧流体の流入は、吸引装置2510内に低圧領域を形成し、吸引装置2510は吸引システ
ム2500の受動吸引源であり」は、本願発明の「受動吸引装置(300、500、700、800、1300、1500、1600、2100)は(i)第1の中空区間、第2の中空区間、またはそれらの組み合わせの内径の狭窄部、(ii)第2の中空区間の端部の第2の対向面に隣接して配置されるか、または少なくとも部分的に
重なる前記第1の中空区間の端部の第1の対向面によって形成される導
管、または(iii)それらの組み合わせを備え、受動吸引装置(300、500、700、800、1300、1500、1600、2100)への加圧流体の流入は、受動吸引装置(300、500、700、800、1300、1500、1600、2100)内に低圧領域を形成し、受動吸引装置(300、500、700、800、1300、1500、1600、2100)は吸引システムの受動吸引源を備え」に相当する。
ウ 引用発明の「回収キャニスタ2560の排出側のポート構造は、吸引装置2510内部のフィルタ2530の吸入側のポート構造と流体連通」す
る点は、本願発明の「キャニスタ(860、1660、2560)の出力ポートは、フィルタ(1030、1630、1730、1930、2430)の入力ポートと流体連通」する点に相当する。
第3 原告主張の審決取消事由(引用発明の認定の誤り)
1 「外科手術用ツール」の認定の誤り
本件審決は、引用文献1の【0309】の「吸引アタッチメント2552が外科器具に結合し得る(may be configured to couple)」との記載をもって、本願発明の「外科手術用ツール」に相当すると認定した。しかし、当該記載は結合可能性を示すものにすぎず、装置としての「外科器具」を構成要素として含むことを直接的・一義的に開示するものではないから、この認定は誤りである。
2 フィルタ位置・流体連通関係の認定の誤り
本願発明は、「キャニスタの出力ポートがフィルタの入力ポートと流体連通する」ことを構成要件とする。しかし、引用文献1の【0313】に加え、【00310】、【0312】及び【0315】に記載によれば、液体・固体は分離器2554→キャニスタ2560へ排出され、ガスは吸引装置2510→フィルタ2530→マフラ2532へ排出されるから、キャニスタ出力とフィルタ入力は別系統(液固系とガス系)に属する。本件審決は、引用文献1の図25を「全体流路」と誤認し、系統分離を無視して短絡的に同一連通と判断しており、認定に誤りがある。
3 導管の形成態様の認定の誤り
本願発明は、受動吸引装置は「第2の中空区間の端部の第2の対向面に隣接して配置されるか、または少なくとも部分的に重なる前記第1の中空区間の端部の第1の対向面によって形成される導管」を構成要件とする。引用文献1の【0260】は吸引装置2100の導管構造を説明しているが、本件審決はこれを吸引装置2510に当然に投影した。しかし、図25の吸引システム2500には当該形成態様の明示がなく、単なる“例示的装置”として図21Aを参照するにとどまるから、導管形成に関する認定は直接的開示を欠き、誤りである。
4 異なる実施形態のモザイク認定の誤り
本件審決は、吸引装置2100(導管2129の幾何構造)、逆流防止弁2200(摺動体2280・ダイヤフラム2285構成)及び吸引システム2500(マフラ2532・手術室配管)を全て単一の構成に統合して認定したが、これらは引用文献1中の異なる章における選択的列挙であり、当業者が単一の実施形態として当然に読み取ることはできないから、認定に誤りがある。
第4 被告の反論
1 「外科手術用ツール」の認定の誤りについて
引用文献1には、【0309】の記載から、手術室で使用するための吸引システム2500(図25)において、吸引アタッチメント2552に外科器具が結合される実施形態が明示的に記載されている。また、引用文献1の【0127】の「一実施形態では、装置は、例えば、外科処置中に吸引力を生成するために使用してもよい。」との記載及び引用文献1の発明の名称(正圧ガスを使用する外科的吸引装置)も考慮すると、手術室で使用するための吸引システム2500が、外科処置に使用され、使用時に外科器具が結合されるものであることは当然である。したがって、引用発明において、「吸引アタッチメント2552に結合された外科器具」を認定し、本願発明と引用発明との対比において、引用発明の「吸引システム2500であって、吸引アタッチメント2552に結合された外科器具と、…からなり」を、本願発明の「吸引システムであって、外科手術用ツール、…からなり」に相当するとした本件審決の認定に誤りはない。
2 フィルタ位置・流体連通関係の認定の誤りについて
引用文献1の【0313】の記載によれば、手術室で使用するための吸引システム2500(図25)に含まれる吸引装置2510は、その作動時に、吸引アタッチメント2552から流体分離器2554を経てフィルタ2530に至るガスの流れを生じる吸引力を生成し、その吸引力によって、吸引アタッチメント2552に引き込まれた排出物の流れ(液体、固形物及びガスを含んでもよい。)中のガスは、流体分離器2554から、回収キャニスタ2560へ排出される。そして、図25に示されるように回収キャニスタ2560は流体分離器2554以外と連通していないから、回収キャニスタ2560内へ排出されたガスはその後、吸引装置2510によって吸引され、フィルタ2530に至る。したがって、回収キャニスタ2560の排出側とフィルタ2530の吸入側が、ガスの流通を許容するように流体連通していることは、引用文献1に明示的に記載されている。よって、キャニスタ出力(液固系)とフィルタ入力(ガス系)が別系統に属する旨の原告の主張は、引用文献1の記載に基づいておらず失当であり、本件審決の認定に誤りはない。
3 導管の形成態様の認定の誤りについて
引用文献1は、【0146】~【0304】及び図1~図24で吸引システム又は吸引装置の各実施形態を記載し、【0305】~【0314】及び図25で吸引装置2510を含む「手術室で使用する吸引システム2500」を記載しているから、吸引システム2500は、吸引装置2510の具体的構成として【0146】~【0304】及び図1~図24に記載された吸引システム又は吸引装置のいずれかを採用することが当然に意図されている。さらに、【0251】及び【0260】には、逆流防止弁を備えた吸引装置2100の導管2129の導管構造が記載されているから、吸引装置2510の具体的構成として、【0251】及び【0260】に記載された導管2129の導管構造を有する吸引装置2100を採用した吸引システム2500が記載されていることは明らかである。そして、導管2129の導管構造は、本件審決で認定した「第2の中空区間2125の端部の第2の対向面2132に隣接して配置される第1の中空区間2122の端部の第1の対向面2130によって形成される」という構成のとおりのものであるから、本件審決における引用発明の認定及び本願発明の対比に誤りはなく、原告の主張は失当である。
4 異なる実施形態のモザイク認定の誤りについて
引用文献1には、図25に示される概念図における各構成要素(例えば、吸引装置2510)に採用し得る具体的な構成(例えば、吸引装置2100、吸引装置2300、吸引装置2400)が列挙され、これに組み合わせる構成(例えば、逆流防止弁2200)が記載されている。このように、引用文献1に並列的かつ現実に記載されている選択肢の組合せについては、当業者は、そのうちの特定の選択肢(例えば、吸引装置2100と逆流防止弁2200)に係る具体的な技術的思想を、当該文献に記載されたものとして認識できるものである。よって、吸引装置2510に逆流防止弁2200を含む吸引装置2100の構造を組み合わせた、手術室で使用するための吸引システム2500の実施態様を引用発明として認定することは何ら問題がなく、本件審決に誤りはない。
第5 当裁判所の判断
1 「外科手術用ツール」の認定の誤りについて
原告は、本件審決が、引用文献1の【0309】の「吸引アタッチメント2552が外科器具に結合し得る」との記載をもって、本願発明の「外科手術用ツール」に相当すると認定したことが誤りであると主張する。
しかし、引用文献1の【0309】には、「吸引システム2500は、吸引アタッチメント2552を含む。…いくつかの実施形態では、吸引アタッチメント2552は、外科器具に結合するように構成してもよい。…」と記載されているから、この記載から、実施形態として、吸引システム2500の吸引アタッチメント2552が外科器具に結合する構成が示されていると認められる。そうすると、上記記載をもって上記構成が具体的に開示されているといえるから、引用発明の構成の開示としては十分というべきであって、本件審決が、引用発明において、「吸引アタッチメント2552に結合された外科器具」を認定し、本願発明と引用発明との対比において、引用発明の「吸引システム2500であって、吸引アタッチメント2552に結合された外科器具と、…からなり」を、本願発明の「吸引システムであって、外科手術用ツール、…からなり」に相当すると認定したことに誤りはない。
2 フィルタ位置・流体連通関係の認定の誤りについて
原告は、引用文献1の【0310】、【0312】及び【0315】の記載を指摘して、引用文献1は、流体分離器2554が液体及び固体を回収容器2560へ送る一方、ガスは液体分離器2554から吸引装置2510へ吸引される流れを開示しており、キャニスタ出力とフィルタ入力は別系統(液固系とガス系)に属するから、本件審決が、この系統分離を無視して、キャニスタの出力ポートとフィルタの入力ポートと流体連通すると認定したことは誤りであると主張する。
しかし、引用文献1の【0313】には、「排出物の流れ(液体、固形物及びガスを含んでもよい)は、低圧領域2522によって吸引アタッチメント2552に引き込まれる。排出物の流れは、流体分離器2554で受け取られる。流体分離器2554は、液体、固形物及びガスを排出物の流れから分離する。流体分離器2554は、液体、固形物及びガスを排出物の流れから回収キャニスタ2560へ排出する。排出物の流れからのガスは、吸引装置2510によって流体分離器2554(引用文献1原文の2544との記載は誤記と認める。)から吸引される。ガスからの要素はフィルタ2530によって除去される。」と記載されているから、排出物の流れからのガスは、流体分離器2554から回収キャニスタ2560に排出され、その後、回収キャニスタ2560から流体分離器2554に排出され、更に流体分離器2554から吸引装置2510によって吸引されるものと認められる。
また、証拠(乙1、3、4)及び弁論の全趣旨によれば、医療用の吸引装置に用いられるキャニスタに吸入側のポート構造及び排出側のポート構造を設けた上、吸入側のポート構造からガスを含む排出物の流れを受け取り、その後、排出側のポート構造からガスを排出するものとすることは、技術常識であると認められる。
そうすると、当業者は、【0313】の記載及び上記技術常識から、排出物の流れからの液体、固形物及びガスを回収キャニスタ2560が受け取り、そのうちのガスが、回収キャニスタ2560の排出側のポート構造から流体分離器2554へと排出され、更に流体分離器2554から吸引されると理解するものと解される。したがって、本件審決が、「回収キャニスタ2560の排出側のポート構造は、吸引装置2510内部のフィルタ2530の吸入側のポート構造と流体連通し」と認定したことに誤りがあるとはいえない。原告の主張は、【0313】の記載と整合せず、このことを合理的に説明し得るものではないから、採用することはできない。
3 導管の形成態様の認定の誤りについて
原告は、本件審決が、図25の吸引システム2500には明示がないのに、吸引装置2100の導管構造を吸引装置2510に投影して認定したことが誤りであると主張する。
しかし、引用文献1の【0306】には、吸引システム2500を構成する吸引装置2510は、吸引システム又は吸引装置100、300、1000、1200、1300、1900の一例であり、【0245】には、逆流防止弁を備えた吸引装置2100は、吸引システム又は吸引装置100、300、1200、1300、1900の一例であると記載されている。そうすると、吸引システム2500を構成する吸引装置2510に、少なくとも吸引システム又は吸引装置100、300、1200、1300、1900を用い、更にそれらの一例として逆流防止弁を備えた吸引装置2100を用いることができるのであるから、図25にその明示はなくとも、引用文献1全体から吸引システム2500において逆流防止弁を備えた吸引装置2100を用いるとした構成が抽出できる。したがって、本件審決が吸引システム2500において吸引装置2100に用いられる導管構造を構成要素とする引用発明を認定したことに誤りはない。
4 異なる実施形態のモザイク認定の誤りについて
原告は、本件審決が、吸引装置2100、逆流防止弁2200及び吸引システム2500を全て単一の構成に統合して認定したことが誤りであると主張する。
しかし、吸引システム2500において、吸引装置2510として吸引装置2100を用いるという構成が抽出できることは上記3のとおりである。また、引用文献1の【0273】には、逆流防止弁2200は、逆流防止弁2116の一例であり、【0245】には、逆流防止弁2116は逆流防止弁を備えた吸引装置2100の一部であると記載されているから、吸引装置2100として逆流防止弁2200を用いた構成も引用文献1に記載されたものであると認められる。そうすると、引用文献1から、逆流防止弁2200を備えた吸引装置2100用いた吸引システム2500の構成を抽出できるというべきであって、これらをひとまとまりの構成の引用発明として認定したことに誤りはない。
5 結論
以上によると、原告主張の取消事由には理由がない。
よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
長谷川浩二
裁判官
伊藤清隆
裁判官
諸岡慎介
出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/97028/detail8/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。