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知財高裁判決請求棄却

知財高判 令和8年9月16日

令和8年(行ケ)第10020号 審決取消請求事件

裁判所
知的財産高等裁判所
裁判年月日
令和8年9月16日 (2026-09-16)
事件番号
令和8年(行ケ)第10020号
事件名
審決取消請求事件
裁判の種類・結果
判決 請求棄却
判例集等
—
分野
行政・商標権

令和8年9月16日判決言渡

令和8年(行ケ)第10020号審決取消請求事件

口頭弁論終結日令和8年7月15日

判決

原告行政書士法人相続ワンストップ

同訴訟代理人弁理士黒住裕

被告特

許庁長官

同指定代理人浜岸愛

同大島康浩

同阿曾裕樹

主文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

特許庁が不服2024-9103号事件について令和8年2月12日にした審決を取り消す。

第2 事案の概要

本件は、商標出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟であり、争点は、手続違背の有無、並びに、本願商標の商標法3条1項3号及び同法4条1項16号各該当性に係る判断の当否である。

1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない)

⑴原告は、令和4年8月2日、「相続ワンストップ」の文字を普通に用いられる方法で横書きに表してなり、指定役務を、第45類の区分に属する「官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成及びそれらの手続の代理、相続手続に関する情報の提供及びコンサルティング、遺言の執行、遺言書の管理、相続財産に関する調査、個人のニーズに合わせて手配や情報提供などを行うコンシェルジュの役務」とする本願商標について、商標登録出願(商願2022-89394)をし、令和5年4月6日、手続補正書を提出して、本願商標の指定役務を、第45類の区分に属する「官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成及びそれらの手続の代理」に補正した。

⑵原告は、令和6年2月14日付けで拒絶査定を受けたことから、同年5月31日、拒絶査定不服審判を請求し、特許庁は、これを不服2024-9103号事件として審理した。

⑶原告は、令和6年7月29日、手続補正書を提出して、本願商標の指定役務を、第45類の区分に属する「官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成」に補正し、令和7年10月29日、手続補正書を提出して、上記指定役務を、第45類の区分に属する「行政書士法第1条の2にいう官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成」(以下「本願指定役務」という。)に補正した。

⑷特許庁は、令和8年2月12日、不服2024-9103号事件について、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月26日、原告に送達された。

⑸原告は、令和8年3月25日、当庁に対し、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。

2 本件審決の理由の要旨

⑴本願商標は「相続ワンストップ」の文字を普通に用いられる方法で表してなるところ、その構成中の「相続」の文字は、「死亡した人(被相続人)の財産に属した一切の権利義務を一定の親族(相続人)が包括的に承継すること」の意味を、「ワン」の文字は「ひとつ」の意味を、「ストップ」の文字は「とまること、とめること」の意味を有する語として、いずれも一般に知られた平易な語である。

そして、本願指定役務を含む幅広い業界において、「一度の手続で、必要とする関連作業を完了できるように設計された、利便性を重視したサービス」を称するものとして、「ワンストップサービス」の文字が使用されている実情や、本願指定役務及びこれと関連する役務を取り扱う業界において、紛争対応、税、登記等の、相続に伴い生ずる各種事項につき、本来であれば複数の有資格者に、個別に相談や手続を行わなければならないところを、一つの事務所又は窓口で受け付けたり、他の資格を有する者と連携し、一度に対応したりすることで、相談や手続を一度で完了することができることをうたうサービスが存在し、このようなサービスの内容、特徴等を示す語として「ワンストップ」の文字が使用されている実情がある。

⑵本願商標の各構成文字の意味と前記実情に照らすと、本願商標は、全体として「相続(に関する業務)をワンストップ(一度の手続で、必要とする関連作業を完了できる)で行うこと」ほどの意味合いを容易に認識させるものであるから、本願商標を本願指定役務に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、その役務が、相続に関する業務をワンストップで行うことができる役務であるという、役務の質(内容)を表示したものと認識するにとどまるのであって、本願商標は、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、自他役務の識別力を欠くものというべきである。また、本願商標を、本願指定役務中、前記役務以外の役務(相続に関する業務をワンストップで行うことができる役務以外の役務)に使用するときは、役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標というべきである。

⑶したがって、本願商標は、商標法3条1項3号及び同法4条1項16号に該当する。

3 原告主張の審決取消事由

⑴手続違背(取消事由1)

⑵商標法3条1項3号該当性に係る判断の誤り(取消事由2)

⑶商標法4条1項16号該当性に係る判断の誤り(取消事由3)

第3 当事者の主張

1 取消事由1(手続違背)について

(原告の主張)

⑴本件審決は「請求人(原告)は、令和7年10月29日提出の手続補正書による指定役務の補正によっても、補正後の役務が行政書士の法定独占業務を指定したとはいえない場合は、再度指定役務を補正する用意がある旨述べるが、本願商標が、前記補正後の指定役務との関係において、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当することは、前記⑵のとおりであって、さらなる指定役務の補正によって、その拒絶の理由が解消し得るものではないから、本件の審理において、改めて本願の指定役務の補正の機会を与える必要はないと合議体は判断した」(以下、これを「本件記載部分」という。)とするが、本件記載部分は、「3回目の手続補正によって行政書士の法定独占業務に限定されたと認めるが、拒絶理由は解消しない」という意味なのか、あるいは、「行政書士の法定独占業務を指定したというためにはさらなる補正が必要だが、補正したとしても拒絶理由は解消しないから、これ以上の補正の機会は与えない」という意味なのか、不分明である。そして、商標の識別力の有無は、現に存在する指定役務の範囲を厳格に確定して初めて判断し得るものであるところ、本件審決は、上記のいずれの意味であるかを明らかにしないまま、拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とするのであり、原告は、いかなる指定役務の範囲を前提として拒絶されたのかを客観的に検証できないことから、本件訴訟において適切な攻撃防御の機会が著しく不当に狭められている。

⑵したがって、本件審決に、商標法56条1項の準用する特許法157条2項4号所定の「審決の理由」が記載されているとはいえず、本件審決は、重大な理由不備の違法があるものとして、取り消されるべきである。(被告の主張)

本件審決は、本願指定役務を「行政書士法第1条の2にいう官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成」と明示した上、本願指定役務との関係における拒絶理由該当性を判断している。本件審決において、その判断の前提となる指定役務の範囲が不明確であるとはいえないし、本件審決は、その判断の根拠を証拠による事実認定に基づき具体的に明示しているのであって、本件審決には結論を導くのに十分な理由が記載されている。本件記載部分は、本願指定役務について更なる補正の用意がある旨の原告の主張に対し、仮に更なる補正の機会を与えたとしても、本願商標の構成文字の意味及び相続関連業務における取引の実情に照らすと、商標法3条1項3号及び同法4条1項16号の拒絶理由は解消されないことから、補正を待つことなく審理を進めた旨を伝達しているにすぎず、本件記載部分の存在により、本件審決の手続に瑕疵があることにはならない。

2 取消事由2(商標法3条1項3号該当性に係る判断の誤り)について(原告の主張)

⑴本願商標の構成中の「ワンストップ」の文字は、少なくとも「一度の手続で、複数の作業を一括して行うことができる」、「複数のことを一か所ですませられる」、「他の役務提供者の窓口になり得る」といった複数の意味合いを認識させる語であり、「相続」と、複数の意味合いを認識させる「ワンストップ」の語を結合し、各文字を同書、同大、等間隔で一連一体に表してなる本願商標は、本願指定役務との関係において、漠然とした意味合いを想起させるにとどまり、一義的な意味合いを生じさせるものでないから、役務の特定の質等を認識させることのない、一種の造語と見るべきである。したがって、本願商標は、本願指定役務に使用された際に、その取引者や需要者によって、役務の質等を表示したものと一般に認識されるものではなく、商標法3条1項3号に該当しない。

⑵本件審決は、本願指定役務及びこれと関連する役務を取り扱う業界において、サービスの内容、特徴等を示す語として「ワンストップ」の文字が使用されている実情に照らすと、本願商標は、全体として「相続(に関する業務)をワンストップ(一度の手続で、必要とする関連作業を完了できる)で行うこと」ほどの意味合いを容易に認識させるとするが、本願指定役務の範囲外である「本願指定役務と関連する役務」を取り扱う業界の実情を考慮して、本願商標の識別力の有無を判断するのは不当である(少なくとも他士業による業務が、行政書士の法定独占業務である本願指定役務と関連する役務として本願商標の識別力の有無の判断に影響力を与えることはない。)。被告は、本願指定役務の取引者は公的手続を代行する専門サービス業者であり、その需要者は官公署に対して何らかの手続等を行う必要のある一般の消費者である、本願指定役務の取引者、需要者には、相続関連業務に関与する専門サービス業者や、当該業務をそれら事業者に依頼する一般の消費者が含まれる旨の主張をするが、本願指定役務は、飽くまで行政書士の法定独占業務である「行政書士法第1条の2にいう官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する『書類の作成』」であり、行政書士でない者は法的に行うことができないものであるから、本願指定役務の取引者を、「『公的手続を代行する』専門サービス業者」とするのは失当である。また、本願指定役務の需要者は、飽くまで「行政書士法第1条の2にいう官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する『書類の作成』」の役務の提供を受ける者であるから、これを「相続関連業務を専門サービス業者に依頼する一般の消費者」とするのも失当である。

(被告の主張)

⑴本願商標の構成中、「ワンストップ」の文字部分は、「ひとつ」の意味を有する「ワン」と「とまること。とめること。」の意味を有する「ストップ」の語を組み合わせてなるもので、「1カ所でなんでもそろうこと。企業や行政のサービスで、1回の手続で必要なものが全てそろうこと。」ほどの意味を有する一般的な成語である。

また、近年、行政手続分野、法律関連分野等を含む種々の取引において、複数の場所、担当に分散していた関連する手続やサービスを一か所でまとめて提供することや、行政が関連する手続の窓口を一本化すること、企業が様々なサービスを一体的に提供することを「ワンストップサービス」と称している。

さらに、近年、「相続ワンストップサービス」、「相続ワンストップ体制」、「相続ワンストップ対応」、「相続ワンストップ窓口」、「相続ワンストップ相談」、「ワンストップ相続」などと称して、税理士、司法書士、行政書士、弁護士等の様々な専門家の業務範囲にわたる相続関連業務を「ワンストップ」で請け負う又はサポートするサービスが、種々の事業者により提供されている。

⑵本願指定役務は「行政書士法第1条の2にいう官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成」であるから、その取引者は、公的手続を代行する専門サービス業者であり、その需要者は、官公署に対して何らかの手続等を行う必要のある一般の消費者であるところ(本願指定役務の取引者、需要者には、相続関連業務に関与する専門サービス業者や、当該業務をそれら事業者に依頼する一般の消費者が含まれる。)、上記⑴の本願商標の構成文字の語義及び取引の実情を踏まえると、本願商標「ワンストップ」は、全体として「相続(関連業務)をワンストップで行うこと」程度の意味合いを容易に認識、理解させ、これを本願指定役務に使用するときは、本件審決時において、これに接する取引者、需要者(一般の消費者)をして、当該役務を含む相続関連業務をワンストップで請け負う又はサポートするという役務の質(内容)を表示記述する標章であると一般的に認識されるといえ、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであり、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、自他役務の識別力を欠くというべきである。

⑶したがって、本願商標は、本願指定役務との関係において、役務の質を普通に用いられる方法で表示記述する標章のみからなるものであり、商標法3条1項3号に該当する。

原告は、本願商標「相続ワンストップ」は、役務の特定の質等を認識させることのない一種の造語と見るべきである旨の主張をするが、「ワンストップ」は一般的な成語であり、その意味合いは「1か所でなんでもそろうこと」程度のものとして共通するのであって、前記⑴の取引の実情を踏まえ、本願指定役務の取引者や需要者の認識を基準にすると、本願商標「ワンストップ」は、役務の質を表示記述するものというべきであり、これを役務の特定の質等を認識させることのない一種の造語と見ることはできない。

3 取消事由3(商標法4条1項16号該当性に係る判断の誤り)について(原告の主張)

本願商標は、本願指定役務に使用された際に、その取引者や需要者によって、役務の質等を表示したものと一般に認識されるものとはいえないから、本件審決にいう「相続に関する業務をワンストップで行うことができる役務以外の役務」に使用したとしても、本願指定役務の取引者や需要者によって、役務の質の誤認を生ずるおそれはない。

(被告の主張)

本願商標は、本願指定役務中「相続(関連業務)をワンストップで行うこと」との意味合いに相応する役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生ずるおそれのある商標であるから、商標法4条1項16号に該当する。

第4 当裁判所の判断

1 取消事由1(手続違背)について

本件審決は、法の趣旨、本願商標の構成文字の語義、取引者や需要者の認識、取引の実情等に照らし、本願商標の商標法3条1項3号及び同法4条1項16号各該当性を肯定するのであり、本件審決には、その結論を導き出すのに十分な理由が記載されている。

原告は、本件記載部分の意味が不分明であることにより、本件訴訟において適切な攻撃防御の機会が著しく不当に狭められている旨の主張をするが、本件記載部分は、本願指定役務につき、原告の主張する行政書士の法定独占業務を特定するために更なる補正をすることによって、その拒絶理由は解消し得るものでない旨を指摘するものにすぎず、これをもって、本件審決に理由不備の違法があるということはできない。

2 取消事由2(商標法3条1項3号該当性に係る判断の誤り)について⑴商標法3条1項3号は、「その役務の…質…を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」については、商標登録を受けることができない旨を規定する。これは、このような商標は、役務の質を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合、自他役務の識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解される(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決・裁判集民事126号507頁参照)。したがって、本願商標が、本願指定役務との関係で、商標法3条1項3号に該当するか否かは、本件審決時(令和8年2月12日)において、これが本願指定役務に使用された場合に、取引者や需要者によって、役務の質を表示記述するものとして一般に認識されるものであったか否かにより判断すべきである。

⑵アこれを本件について見るに、本願商標は「相続ワンストップ」の文字を普通に用いられる方法で横書きに表し、いずれも一般に知られた平易な語である、漢字表記の「相続」の文字部分と、片仮名表記の「ワン」と「ストップ」の組合せである「ワンストップ」の文字部分が結合してなるものである。そして、本願構成中、「相続」の文字部分からは、「死亡した人(被相続人)の財産に属した一切の権利義務を一定の親族(相続人)が包括的に承継すること。」(乙1)との観念が生じ、「ワンストップ」の文字部分からは、「一か所。また、複数のことを一か所ですませられること。」(甲18の1、2)、又は「複数の買い物や用件が一か所で済ませられること。」(甲18の3)との観念が生ずる。

イ また、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、遅くとも本件審決時において、行政書士を含む様々な士業や、これらの士業と連携した事業者により、「相続ワンストップサービス」(乙15、乙21~23、乙25、26)、「相続についてのワンストップサービス」(乙16)、「ワン・ストップ・サービス」(乙17)、「相続手続きワンストップサービス」(乙18)、「ワンストップサービス」(乙19、20)、「相続ワンストップ・サービス」(乙24)、「相続ワンストップ体制」(乙28、29)、「相続ワンストップ対応」(乙30、31)、「相続ワンストップ窓口」(乙32、33)、「相続ワンストップ相談」(乙34)、「ワンストップ相続」(乙35~38)などと称して、書類の作成を含む様々な相続関連業務を一か所で請け負い、サポートする役務が提供されていたことが認められる。

ウ そして、本願指定役務は「行政書士法第1条の2(令和7年法律第65号による改正後は1条の3)にいう官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成」であり、その需要者は、一般の消費者であると認められる。

⑶ア本願商標の構成中、「相続」の文字部分からは、「死亡した人(被相続人)の財産に属した一切の権利義務を一定の親族(相続人)が包括的に承継すること。」との観念が生じ、「ワンストップ」の文字部分からは、「一か所。また、複数のことを一か所ですませられること。」、又は「複数の買い物や用件が一か所で済ませられること。」との観念が生ずることは、前記⑵アのとおりであり、遅くとも本件審決時において、行政書士を含む様々な士業や、これらの士業と連携した事業者により、「相続ワンストップサービス」、「相続ワンストップ体制」、「相続ワンストップ対応」、「相続ワンストップ窓口」、「相続ワンストップ相談」、「ワンストップ相続」などと称して、書類の作成を含む様々な相続関連業務を一か所で請け負い、サポートする役務が提供されていたことは、前記⑵イのとおりであって、かかる本願商標中の構成文字の語義及び本願指定役務に係る取引の実情に照らすと、本願商標「相続ワンストップ」は、本件審決時において、これが本願指定役務に使用された場合に、本願指定役務の需要者(一般の消費者)によって、「様々な相続関連業務を一か所で行うことができる」程度の意味合いで、役務の質を表示記述するものとして一般に認識されるものであったと認められる。

そうすると、本願商標は、本願指定役務との関係において、役務の質を普通に用いられる方法で表示記述する標章のみからなるものであって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、自他役務の識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものというべきである。

イ 原告は、本願商標「相続ワンストップ」が役務の特定の質等を認識させることはない旨の主張をするが、本願商標中の構成文字の語義及び本願指定役務に係る取引の実情に照らすと、本願商標「相続ワンストップ」は、これが本願指定役務に使用された場合に、本願指定役務の需要者によって、「様々な相続関連業務を一か所で行うことができる」程度の意味合いで、役務の質を表示記述するものとして一般に認識されるものであることは、前記アのとおりである。

原告は、本願指定役務の範囲外の役務を取り扱う業界の実情を考慮して、本願商標の識別力の有無を判断するのは不当である旨の主張もするが、本願商標が本願指定役務に使用された場合に、その需要者である一般の消費者によって、役務の質を表示記述するものとして一般に認識されるものであったか否かを判断するに当たっては、行政書士が行う相続関連業務に係る取引の実情のみならず、行政書士を含む様々な士業や、これらの士業と連携した事業者が行う相続関連業務に係る取引の実情を考慮するのが相当である。

原告の主張は、縷々主張するところを含め、いずれも採用できない。

3 取消事由3(商標法4条1項16号該当性に係る判断の誤り)について前記2によれば、本願商標「相続ワンストップ」を本願指定役務に使用すると、これに接する需要者は、「様々な相続関連業務を一か所で行うことができる」との役務の質を表示記述したものと認識することになるから、これを上記以外の役務に使用すると、役務の質の誤認を生ずるおそれがあるといえる。したがって、本願商標は商標法4条1項16号にも該当すると認められる。

第5 結論

以上によれば、本件審決に手続違背はなく、また、本件審決の商標法3条1項3号及び同法4条1項16号各該当性に係る判断に誤りはないというべきであって、原告の主張する審決取消事由は認められない。

よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第2部

裁判長裁判官

森冨義明

裁判官

菊池絵理

裁判官

頼晋一

出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/97066/detail8/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。