令和8年9月11日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
令和8年(ワ)第70079号不当利得返還請求事件
口頭弁論終結日令和8年6月26日
判決
原
告クオード株式会社
被
告株式会社NTTデータグループ
(以下「被告NTTデータグループ」
という。)
被
告株式会社NTTデータ
(以下「被告NTTデータ」とい
う。)
被
告株式会社コンストラクション・
イーシー・ドットコム
(以下「被告コンストラクション」
という。)
上記3名訴訟代理人弁護士升永英俊
江口雄一郎
上記3名補佐人弁理士佐藤睦
主文
1 原告の被告NTTデータグループ及び被告コンストラクションに対する訴えをいずれも却下する。
2 原告の被告NTTデータに対する請求を棄却する。
3 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
被告らは、原告に対し、連帯して、1000万円及びこれに対する令和7年8月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要等
1 事案の概要
本件は、発明の名称を「内容証明を行う通信システムおよび内容証明サイト装置」とする特許(特許第3796528号。以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有する原告が、被告らに対し、被告らが、特定の構成を有する装置(以下「イ号物件」という。)を使用することにより、本件特許権を侵害したと主張して、民法703条に基づく不当利得金1000万円(一部請求。対象期間は平成18年4月28日から令和元年12月28日まで。以下「本件対象期間」という。)及び遅延損害金の支払を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。以下、枝番号のある証拠について枝番号を記載しない場合は、全ての枝番号を含む。)
⑴本件特許権
本件特許権は、平成11年12月28日を出願日(特願平11-372997)、平成18年4月28日を登録日とする特許権である。原告は、本件特許権を保有している。(甲1)
⑵特許請求の範囲の記載
本件特許に係る特許請求の範囲の請求項8の記載は、以下のとおりである(以下、請求項8記載の発明を「本件発明」という。また、本件特許に係る明細書及び図面(甲1)を、「本件明細書」という。)。
「発信者の装置から暗号化された状態で送信された伝達情報が、ネットワークを介して受信者の装置に受信されて復号化されたことを証明する内容証明サイト装置であって、
前記発信者装置から、該発信者装置が送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータに該発信者が電子署名した発信者署名データを受け取る第1の受信手段と、
前記受信者装置から、該受信者装置が受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータに該受信者が電子署名した受信者署名データを受け取る第2の受信手段と、
前記発信者装置から受け取った前記発信者署名データと前記受信者装置から受け取った前記受信者署名データとを内容証明を行うために保管する保管手段と、
前記内容証明の一環として、前記発信者署名データのうち、前記発信者装置が送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータと、前記受信者署名データのうち、前記受信者装置が受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータとを照合する手段と、を備え、
前記発信者装置が送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータが、該発信者装置が送信した伝達情報のダイジェスト又は該伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェストに限られ、
前記受信者装置が受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータが、該受信者装置が受け取って復号化した伝達情報のダイジェスト又は該伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェストに限られている、ことを特徴とする内容証明サイト装置。」
⑶構成要件の分説
本件発明は、以下のとおり分説することができる(以下、分説に従い、「構成要件A」などという。)。
A発信者の装置から暗号化された状態で送信された伝達情報が、ネットワークを介して受信者の装置に受信されて復号化されたことを証明する内容証明サイト装置であって、
B前記発信者装置から、該発信者装置が送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータに該発信者が電子署名した発信者署名データを受け取る第1の受信手段と、
C前記受信者装置から、該受信者装置が受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータに該受信者が電子署名した受信者署名データを受け取る第2の受信手段と、
D前記発信者装置から受け取った前記発信者署名データと前記受信者装置から受け取った前記受信者署名データとを内容証明を行うために保管する保管手段と、
E前記内容証明の一環として、前記発信者署名データのうち、前記発信者装置が送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータと、前記受信者署名データのうち、前記受信者装置が受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータとを照合する手段と、を備え、F前記発信者装置が送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータが、該発信者装置が送信した伝達情報のダイジェスト又は該伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェストに限られ、
G前記受信者装置が受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータが、該受信者装置が受け取って復号化した伝達情報のダイジェスト又は該伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェストに限られている、ことを特徴とする内容証明サイト装置。
⑷被告NTTデータグループ及び被告コンストラクションのサービス等被告NTTデータグループ及び被告コンストラクション(以下、一括して「被告NTTデータグループら」という。)は、本件対象期間に、「CECTRUST」と称する電子契約サービス(以下「CECサービス」という。)を提供していた。
⑸被告NTTデータグループらに対する別件訴訟等
ア 原告は、被告NTTデータグループらに対し、被告NTTデータグループらがCECサービスに使用している原本性証明に係る装置(以下「前訴サーバ」という。)は本件発明の技術的範囲に属し本件特許権を侵害するとして、民法709条に基づく損害賠償金(侵害期間は平成20年3月1日から平成23年3月31日まで)の支払を求める訴訟(東京地裁平成24年(ワ)第10734号。以下、同訴訟をその上訴審も含めて「前訴」という。)を提起した。(甲3)
イ 前訴において、平成25年3月13日、前訴サーバが本件発明の技術的範囲に属しないことを理由として、原告の請求をいずれも棄却する旨の一審判決(以下「前訴一審判決」という。)がされ、原告が控訴(知財高裁平成25年(ネ)第10030号)したものの、同年8月22日、同趣旨の理由により控訴を棄却する旨の控訴審判決(以下、前訴一審判決と併せて「前訴各判決」ということがある。)がされた。その後、原告が上告及び上告受理申立て(最高裁平成25年(オ)第2032号、同(受)第2486号)をしたものの、平成26年1月31日、上告棄却及び上告不受理決定がされ、前訴一審判決が確定した。(甲3、4、乙2)
ウ 原告は、前訴以外にも、被告NTTデータグループに対して、本件特許権の侵害を理由とする仮処分命令申立て、訴訟提起及び判定の請求を行った。(甲5、乙3ないし11)
3 争点
(本案前の争点)
⑴本件訴訟の提起が信義則に反するか(争点1)
(本案の争点)
⑵被告らによるイ号物件の使用の有無(争点2)
⑶イ号物件は本件発明の技術的範囲に属するか(争点3)
⑷被告らによる利得の額(争点4)
4 争点に関する当事者の主張
⑴争点1(本件訴訟の提起が信義則に反するか)について
(被告らの主張)
原告が前訴サーバをイ号物件と主張しているのであれば、前訴各判決で認定された前訴サーバの構成を争っているにすぎず、前訴の蒸し返しにほかならないから、本件訴訟の提起は信義則に反する。
(原告の主張)
イ号物件には、前訴各判決(甲3、4)で認定されたCECサービスに係る装置は含まれず、イ号物件は、前訴サーバとは、技術的構成を異にする別個の構成である。すなわち、前訴サーバは、タイムスタンプ付与及び原本データの保管にとどまる構成であるのに対し、イ号物件は、契約当事者双方の電子署名の検証、当該検証結果と原本性との結合を本質的構成として備えるから、両者は、技術思想、技術的課題及び作用効果を異にする。したがって、本件訴訟と前訴は審判対象が異なるものであり、本件訴訟の提起が信義則に反するとはいえない。
⑵争点2(被告らによるイ号物件の使用の有無)について
(原告の主張)
ア イ号物件は、使用されるサービスの名称により特定されるものではなく、装置の有する構成によって特定される。イ号物件の構成は、別紙準備書面1「第2イ号物件の説明」のとおりであり、まとめると、次のとおりの構成(以下「本件構成」という。)を有する電子契約における真正性及び原本性を担保する中核的機能を果たす装置である。
・電子契約に必要な「電子署名」「暗号化配送」「案件署名データの保管」「後日の検証」を行う機能、又はこれらの機能を容易に利用可能とするインターフェースを備えること
・甲が契約事項「D」に対し、公開鍵暗号方式による電子署名(甲印)を施し、「D」と「甲印」を暗号化して送信する構成
・乙が受信・復号した「D」又は「D」と「甲印」に電子署名(乙印)を施し、甲へ返信する構成
・甲が契約完了処理を行うことにより、甲印、乙印並びに認証局のルート証明書及び失効リスト(CRL)を、同一契約案件に対応付けてイ号物件に保管する構成
・後に、ユーザ側に提示される契約事項「K」について検証要求があった場合には「K」そのものをイ号物件が受領・保管することなく、当該契約案件として保管された案件署名データに基づき、署名者の真正性及び契約内容の非改ざん性を検証する構成
このように、イ号物件において、契約事項の同一性を確認できるデータが契約事項のダイジェスト(ハッシュ)に限られ、契約書(原本)を受領、保管しないことは、甲2の「電子契約サービスユーザ事例1」が契約書(原本)を預けない運用を前提としていることから明らかである。
イ 被告らは、本件対象期間において、名称が不明な電子契約に関するサービスを提供するに当たり、イ号物件を使用していた。
(被告らの主張)
ア 原告がCECサービスに使用している原本性証明に係る装置をイ号物件と主張しているのであれば、少なくとも契約書(原本)を受領、保管しない構成を有することは否認する。また、被告NTTデータグループらが前訴サーバを使用していたことは認めるが、本件対象期間後に設立された被告NTTデータは無関係である。
イ 原告がCECサービスとは別個の電子契約サービスに使用された原本性証明に係る装置をイ号物件と主張しているのであれば、本件対象期間に被告らがそのようなサービスを提供したことはないから、イ号物件の構成及び被告らがイ号物件を使用したことをいずれも否認する。
⑶争点3(イ号物件は本件発明の技術的範囲に属するか)について(原告の主張)
ア 別紙準備書面1「第3イ号物件が本件特許発明の技術的範囲に属することの証明」記載のとおり、イ号物件は、構成要件AないしGをいずれも充足し、本件発明の技術的範囲に属する。
イ 被告は、構成要件F及びGの充足性を争うが、特許請求の範囲には、「内容証明サイト装置」が契約書(原本)を受領、保管してはならないとは記載されていないから、本件特許に係る出願経過を参酌してこれを限定すべきでない。
(被告らの主張)
原告が前訴サーバをイ号物件と主張しているとしても、以下のとおり、前訴サーバは、少なくとも構成要件F及びGを充足せず、本件発明の技術的範囲に属するものではない。
すなわち、原告は、本件特許の審査経過において提出された手続補正書において、「伝達情報」が、「発信者装置」又は「受信者装置」から「内容証明サイト装置」に送られることを明確に除外していることからすると、構成要件F及びGの「伝達情報」は、「発信者装置」又は「受信者装置」から「内容証明サイト装置」に送られるものではないと解するのが相当である。CECサービスでは、前訴サーバが伝達情報である契約書(原本)を受領、保管しているから、構成要件F及びGを充足しない。
⑷争点4(被告らによる利得の額)について
(原告の主張)
被告らは、本件対象期間において、原告に無断でイ号物件を使用して電子契約に関するサービスを提供し、利用料収入その他の事業収入(主位的主張)又は本件特許に係る通常実施料相当額(予備的主張)として、1000万円を超える利得を得た。
(被告らの主張)
否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(本件訴訟の提起が信義則に反するか)について
⑴前記前提事実⑸アのとおり、前訴は、原告が被告NTTデータグループらに対し、被告NTTデータグループらがCECサービスに使用した原本性証明に係る装置(前訴サーバ)を対象装置として、前訴サーバの使用が本件特許権を侵害するとして、民法709条に基づく損害賠償金(侵害期間は平成20年3月1日から平成23年3月31日まで)の支払を求めたものである。他方、本件訴訟は、原告が被告らに対し、被告らが、名称が不明の電子契約サービスに使用するイ号物件(本件構成を有する装置として特定される装置)を対象装置として、イ号物件の使用が本件特許権を侵害するとして、民法703条に基づく不当利得金(対象期間は平成18年4月28日から令和元年12月28日まで。本件対象期間)の返還を求めるものである。以上によれば、前訴及び本件訴訟における被告NTTグループらに対する原告の各請求は、対象装置が、CECサービスに使用されていた原本性証明に係る装置か(前訴)、本件構成を有する装置として特定されるイ号物件か(本件訴訟)で異なり、また、侵害期間又は対象期間は、本件訴訟の方が前訴より長期にわたっている。
⑵もっとも、前訴と本件訴訟における被告NTTデータグループらに対する請求は、被告NTTデータグループらが提供していた電子契約サービスに使用されていた原本性の証明ないし担保に係る装置を対象装置として、対象装置の使用が本件特許権を侵害することを理由とする請求であるという点で共通していることから、原告の主張について更に検討する。
原告は、被告らが、本件対象期間中、名称が不明の電子契約サービスを提供するに際してイ号物件を使用したと主張し、被告らは、被告NTTデータグループらがCECサービスの名称で電子契約サービスを提供していたことは認めるものの、被告らが、本件対象期間において、その余の名称で電子契約サービスを提供していたことを否認している。
原告は、被告らの行為として、イ号物件が使用されたとする電子契約サービスの名称を具体的に特定していないし、その主張の裏付けとして提出する甲2(書籍「~企業間電子商取引のための~電子契約導入のすすめ」(2004年4月10日第1刷発行。)の抜粋)にも、被告らが、本件対象期間において、CECサービス以外の名称で電子契約サービスを提供していたことの記載は見当たらない。
そして、原告は、本件対象期間のうち、前訴の侵害期間より前及び後の期間において、CECサービスに使用された原本性証明に係る装置が設計変更されたことなど、前訴の侵害期間より前及び後におけるCECサービスに使用された原本性証明に係る装置が前訴の侵害期間の装置と異なることの具体的な主張をしていない。
以上を総合すると、原告は、本件訴訟において、対象装置を使用されるサービス名ではなくその構成により特定し、被告らの行為におけるサービス名を不特定なものとし、本件対象期間を前訴の侵害期間より長いものとしているものの、前訴において認定された被告NTTデータらの行為と異なる行為を特定して主張したものとはいい難く、結局、被告NTTデータグループらがCECサービスに使用した原本性証明に係る装置(前訴サーバ)が本件発明の技術的範囲に属するか否かについての前訴の判断を争うために、本件訴訟を提起したものにほかならないというべきである。
そうすると、本件訴訟は前訴を実質的に蒸し返すものといわざるを得ず、被告NTTグループらに対する本件訴訟の提起は、信義則に反し、不適法である。
⑶以上によれば、被告NTTデータグループらに対する本件訴訟の提起は不適法であって許されない。
2 争点2(被告らによるイ号物件の使用の有無)について
⑴事案にかんがみ、被告らがイ号物件を使用したかについても検討する。
ア 原告は、被告らが、「後に、ユーザ側に提示される契約事項「K」について検証要求があった場合には「K」そのものをイ号物件が受領・保管することなく、当該契約案件として保管された案件署名データに基づき、署名者の真正性及び契約内容の非改ざん性を検証する構成」を有する装置であるイ号物件を使用したと主張し、被告らは、被告NTTデータグループらが使用していたサーバの構成について、少なくとも「原本そのものを受領・保管しない」との構成を有しないと主張する。
そこで、甲2の記載から、被告らが、原本そのものを受領、保管しない構成を有する装置を使用していたといえるかについて検討する。
イ 甲2の記載
甲2は、上記書籍から、①「4.2CECTRUSTの特徴」中の「4.2.6利用イメージ」の一部、②「4.3電子文書流通プラットフォーム-SecurePod」、③「4.4電子文書証明サービス-SecureSeal」、④「5.1電子契約サービスユーザ事例1」を抜粋したものであり、次のとおりの記載がある。
(ア) CECサービスの特徴・利用イメージ(甲2・88、89、92頁)CECサービスを利用して取引先と請負工事に関する電子契約を行う手順は次のとおりである。(A)発注者が注文書に署名を行い受注者に送付する(発注者の案件登録)。(B)受注者は注文書の内容を確認し、注文請書に署名し発注者へ返す(受注者の受信、返信)。(C)発注者は注文請書の内容を確認し、完了処理を行う(受注者の受信、完了)。(D)それぞれの保管対象文書が原本性証明サービス(SecureSeal)に登録され保管される(原本性証明の登録)。
その後、発注者、受注者共に、完了となった文書のダウンロード、原本性確認を行う。
上記(A)ないし(D)の利用イメージは別紙甲2図面【図4.3】のとおりであり、契約者(甲)及び契約者(乙)は、それぞれの契約書(文書データ)を電子契約サービス(CECサービス)に送信し、これが、電子原本性証明センター(SecureSeal)に登録され保管されることが図示されている。
(イ) 電子文書流通プラットフォーム-SecurePod(甲2・93ないし96頁、別紙甲2図面【図4.8】)
a SecurePod(CECサービスの母体)は、①PDF文書から電子署名データを取り出し、②ユーザの公開鍵証明書が認証局から発行されたものか確認する、③ユーザの公開鍵証明書の有効期間、失効確認を行う、④署名データをユーザの公開鍵証明書で検証し、改ざんをチェックするという機能を簡単に使えるインターフェースを提供するプラットフォームである。
b SecurePodでは、第三者によるタイムスタンプにより有効期限内に署名を行ったことを証明するほか、証明書が署名当時に失効していなかったかどうかを検証するため、認証局のルート証明書と認証局から発行される失効リストをSecureSealに登録後保管しておき、検証時にそのリスト内に証明書のシリアルナンバーがないかを確認する仕組みを導入し、CECTRUSTにも追加される予定となっている。指定時刻に証明書が有効であったかをチェックする機能を指定時刻検証機能といい、SecurePodでは、認証局が発行する失効リストと認証局のルート証明書についても更新のたびにSecureSealに登録・保管して、指定時刻検証の準備をする。指定時刻検証の際には、SecurePod保管サーバが保管するユーザの原本や署名に使用した公開鍵証明書、指定時刻における失効リスト及びルート証明書(以下「公開鍵証明書等」という。)について、各SecureSeal証明書で原本性検証を行い、さらに、公開鍵証明書等及び署名の正当性や有効性のチェックなどを行い、原本に付与された署名をユーザの公開鍵で検証することにより、ユーザが署名したものであることを証明する。
(ウ) 電子文書証明サービス-SecureSeal(甲2・96、97頁)
a SecureSealは非改ざん性と存在時刻を証明する電子文書証明サービスであり、電子文書から必ず一意に計算されるハッシュ値を使用している。ある時点で取得した原本のハッシュ値とその後時間が経過した時点の原本のハッシュ値が同じであれば改ざんされていないと判断する。
b SecureSealにおいては、登録は、ユーザがハッシュ関数を生成し、センターに登録依頼を行うと、センターでは時刻情報を組み合わせ、SecureSeal証明書を発行する。検証は、ユーザが、保管している原本データから再度ハッシュ値を生成し、SecureSeal証明書と共に検証依頼を行うと、センターでは、受け取ったハッシュ値及びSecureSeal証明書とセンターで管理しているデータを照合し、結果を返信する。
(エ) 電子契約サービスユーザ事例1(甲2・99、100頁、別紙甲2図面【図5.1】)
「・・・月間250件程度の処理をすることになる。この件数を1件ずつWebブラウザで処理を行っていては電子化における業務改善には結び付かない。そのため、複数の電子文書へ一括で電子署名を施すAPIと電子契約サービスへ一括で送受信を行うAPIを組み込んだ原本保管システムを構築している。」「国土交通省がガイドラインに示した見読性、原本性の確保を満たした原本保管システムを自社で開発し、電子契約サービスを利用せず自社で原本を保管している。原本性の証明に至っては、第三者機関から証明を受けることが必要であるため、電子契約サービスを利用して原本性証明サービスへ原本を登録し、原本性保証の証明書のみを電子契約サービスへ預けている。そして、原本性証明を受けたいときには、電子契約サービスを利用して原本に対応する原本証明の証明書を検索し、自社で保管している原本の情報を提出することにより改ざんがされていないことを速やかに証明することができるようになっている。」
ウ 甲2は、書籍の部分的な抜粋であって、サービスの全体像が網羅されているものではなく、また、複数の装置が図示されるなどし、イ号物件及び本件構成との対応関係が不明である。
この点を措くとしても、前記イに照らせば、甲2には、CECサービスについて、①サービス利用者から送信された保管対象情報である契約書は、電子契約サービス(CECサービス)からSecureSealに送信されて登録・保管されること(前記イ(ア)、【図4.3】)、②原本はCECサービスの母体であるSecurePod保管サーバに保管され、原本性証明を受ける際には、原本から電子署名データを取り出すなどして署名の真正及びSecureSeal証明書を用いた原本性検証を行うこと(同(イ)、【図4.8】)、③一括署名・一括送受信を行うAPIを組み込んだ原本保管システムを利用する場合には、SecurePod保管サーバではなく原本保管システムに契約書原本を保管するが、原本性証明のために上記①と同様に電子契約サービスを利用して原本性証明サービスに原本が登録され、原本性証明を受ける際には対象の原本の情報の提出を受けて上記②と同様に原本性検証を行うこと(同(エ))が示されているといえる。そうすると、甲2の記載から、被告らが電子契約サービスを提供するために使用する装置が、「原本そのものを受領・保管することなく、・・・署名者の真正性及び契約内容の非改ざん性を検証する」構成を有することを認めることは困難であり、ほかに、被告らが、本件対象期間において、何らかの電子契約サービスを提供するに際し、本件構成を有する装置(イ号物件)を使用したことを認めるに足りる的確な証拠はない。
また、被告NTTデータは、本件対象期間後(令和4年11月1日)に設立された株式会社であるから(甲2、乙1)、このことからも、本件対象期間にイ号物件を使用していなかったことが明らかである。
エ これに対し、原告は、サーバが契約書(原本)を受領・保管しない構成を有することが、甲2の「電子契約サービスユーザ事例1」から明らかであると主張する。
甲2には、SecureSealのセンターがハッシュ値を照合することにより改ざんの有無を検証する構成が記載されているものの(前記ア(ウ))、「電子契約サービスユーザ事例1」(同(エ))において、原本が、電子契約サービスを利用して原本性証明サービスに登録あるいは提出されていると認められるのは前記ウのとおりであり、被告らが電子契約サービスを提供するために使用する装置が、原本を受領・保管しない構成を有していることを認めることはできない。
⑵小括
以上によれば、仮に、被告NTTデータグループらに対する本件訴訟の訴え提起が不適法であるといえないとしても、被告らがイ号物件を使用したことは認められないから、その余の点を判断するまでもなく、原告の請求は理由がないことになる。
第4 結論
以上によれば、原告の被告NTTデータグループらに対する訴えは不適法であるからこれらを却下することとし、原告の被告NTTデータに対する請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官髙
橋彩
裁判官西
山芳樹
裁判官瀧
澤惟子
別紙準備書面1省略
出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/97076/detail7/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。