平成27年労第212号
主文
本件再審査請求を棄却する。
理由
第1 再審査請求の趣旨及び経過
1 趣旨
再審査請求人(以下「請求人」という。)の再審査請求の趣旨は、労働基準監督署長(以下「監督署長」という。)が平成○年○月○日付けで請求人に対してした労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)による療養補償給付を支給しない旨の処分を取り消すとの裁決を求めるというにある。
2 経過
請求人は、平成○年○月、A県B市所在の会社C(以下「会社」という。)に採用され、D所在の会社E支社F工事部に配属され、安全管理業務等に従事していたが、平成○年○月○日、A県B市所在の会社○部○課(以下「本社○課」という。)へ異動となり、安全パトロールの業務等に従事していた。
請求人によれば、本社○課への異動を機に収入が減少し、生活不安が生じたことで、治療中のうつ病が悪化したという。
請求人は、平成○年○月○日、Gクリニックに受診し「抑うつ状態」と診断され、その後、同月○日、H病院に受診し「抑うつ気分」と診断された。請求人は、治療中の精神障害が悪化したのは、平成○年○月○日の本社○課への異動等が原因であるとして、監督署長に療養補償給付の請求をしたところ、監督署長は、請求人に発病した精神障害は業務上の事由により悪化したものとは認められないとして、これを支給しない旨の処分をした。
請求人は、この処分を不服として、労働者災害補償保険審査官(以下「審査官」という。)に審査請求をしたが、審査官は、平成○年○月○日付けでこれを棄却したので、請求人は、更にこの決定を不服として、本件再審査請求に及んだものである。
なお、請求人は、平成○年○月○日、会社E支社F工事部から同支社E○課に異動したことを契機に、同部署の上司から長時間説教をされたことにより治療中の精神障害が悪化したとして、労働基準監督署長に療養補償給付を請求したところ、不支給となり、審査請求、再審査請求に及んだが、当審査会は平成○年○月○日付け裁決書において、これを棄却している。
第2 再審査請求の理由
(略)
第3 原処分庁の意見
(略)
第4 争点
本件の争点は、請求人に発病した精神障害の悪化が業務上の事由によるものであると認められるか否かにある。
第5 審査資料
(略)
第6 事実の認定及び判断
1 当審査会の事実の認定
(略)
2 当審査会の判断
(1)請求人の精神障害の発病の有無及び発病時期について、労働局地方労災医員協議会精神障害専門部会(以下「専門部会」という。)は、平成○年○月○日付け意見書において、「請求人は平成○年○月頃にICD-10診断ガイドラインの『F3気分(感情)障害』を発病し治療中の平成○年○月に悪化し、その後も治療継続中であったが、平成○年○月の本社○課への転勤後の同年○月に更に増悪したものと考えられる」旨を述べている。
当審査会としても、請求人の療養の経過、医証等から、専門部会の意見は妥当であり、平成○年○月頃にICD-10診断ガイドラインのF3の「気分(感情)障害」(以下「本件疾病」という。)を発病し、寛解することなく平成○年○月に悪化し、その後同年○月に更に増悪したものと判断する。
(2)ところで、精神障害の業務起因性の判断については、厚生労働省労働基準局長が「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(平成23年12月26日基発1226第1号。以下「認定基準」という。)を策定しており、当審査会としてもその取扱いを妥当なものと考えることから、以下、認定基準に基づき検討する。
(3)請求人は、本件疾病が悪化したのは本社○課への異動等が原因であると主張する。
上記(1)の判断のとおり、請求人は本社○課への転勤前に本件疾病を発病していたものであるところ、認定基準によれば、精神障害を発病していた場合であっても、認定基準別表1の「特別な出来事」に該当する出来事があり、その後おおむね6か月以内に対象疾病が自然経過を超えて著しく悪化したと医学的に認められる場合については、その「特別な出来事」による心理的負荷が悪化の原因であると推認し、悪化した部分について、労働基準法施行規則別表第1の2第9号に該当する業務上の疾病として取り扱うとされている。
(4)そこで、請求人が主張する本件疾病の増悪の業務起因性について検討すると、増悪時期である平成○年○月頃からおおむね6か月前の期間において、請求人の主張及び本件資料を改めて精査したところ、当審査会としても、決定書理由第2の2の(2)のエに説示するとおり、「特別な出来事」に該当する心理的負荷の強度が「極度」と判断される出来事は認められず、業務によって本件疾病が自然経過を超えて著しく悪化したとは認められないと判断する。
(5)なお、請求人のその他の主張も子細に検討したが、上記判断を左右するものを見いだすことはできなかった。
3 以上のとおりであるので、請求人の本件疾病の悪化は業務上の事由によるものとは認められず、したがって、監督署長が請求人に対してした療養補償給付を支給しない旨の処分は妥当であって、これを取り消すべき理由はない。
よって主文のとおり裁決する。
出典:厚生労働省ホームページ「労働保険審査会 裁決事案一覧」掲載の裁決書(https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/shinsa/roudou/saiketu-youshi/dl/27rou212.pdf)を加工して作成(加工:TaiLexi AI)
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