令和元年労第212号
主文
本件再審査請求を棄却する。
事実及び理由
第1 再審査請求の趣旨
労働基準監督署長(以下「監督署長」という。)が平成30年4月27日付けで再審査請求人(以下「請求人」という。)に対してした労働者災害補償保険法による遺族補償給付及び葬祭料を支給しない旨の処分を取り消すことを求める。
第2 事案の概要
1 請求人の亡家族(以下「被災者」という。)は、昭和15年から平成8年までの約55年間、トンネル坑夫として粉じん作業に従事していた。
2 被災者は、B会社が元請として施工していたC所在のトンネル建設工事を最終粉じん作業場として、平成11年12月7日付けで労働局長からじん肺管理区分「管理3イ、続発性気管支炎合併」と決定され、療養を継続していたが、○年○月○日に死亡した。死亡診断書には、「直接原因:菌血症、直接原因の原因:感染症未確定」と記載されている。
3 本件は、請求人が、被災者の死亡は業務上の事由によるものであるとして遺族補償給付及び葬祭料の請求をしたところ、監督署長はこれを支給しない旨の処分(以下「本件処分」という。)をしたことから、本件処分を不服として同処分の取消しを求める事案である。
4 請求人は、労働者災害補償保険審査官(以下「審査官」という。)に対し審査請求をしたところ、審査官が平成31年3月18日付けでこれを棄却する旨の決定をしたことから、更にこの決定を不服として本件再審査請求をした。
第3 当事者の主張の要旨
1 請求人
(略)
2 原処分庁
(略)
第4 争点
被災者の死亡は業務上の事由によるものと認められるか。
第5 審査資料
(略)
第6 理由
1 当審査会の事実認定
(略)
2 当審査会の判断
(1)請求人は、被災者は肺機能低下や免疫力の低下による肺内感染症より、心不全・肺気腫を引き起こし死に至ったと推察でき、死因とされる「菌血症の疑い」も何らかの肺内感染症により発症したのではないかとも推察できると主張しているので、以下検討する。
(2)被災者は、○年○月○日に死亡し、D医師作成の同日付け死亡診断書によれば、死亡の直接原因は「菌血症」、その原因は「感染源未確定」とされているところ、同医師は、同年12月26日付け意見書において、菌血症と診断した医学的所見について、「抗生剤を開始前、発熱が継続した時に、抗菌剤を変更する際に、末梢血やCVカテーテル逆流血液を複数回血液培養に提出したが、いずれも陰性であった。したがって、流血中に病原微生物である細菌若しくは真菌が直接的に証明されていないので、菌医学的に正確な診断としては、菌血症疑いである。」と述べている。
この点、抗菌剤を投与した場合には細菌等が検出されないことも多く、直接的に細菌等が特定されないことのみをもって、菌血症の発症を否定することは妥当ではなく、被災者の症状の推移、治療内容、検査結果等を踏まえて、直接死因を菌血症としたD医師の判断は是認できるところである。
そうすると、D医師が、「肺炎、胸膜炎ともに各種検査により否定的である。」と述べていることからすると、被災者のじん肺及び続発性気管支炎が原因で菌血症を発症したと認められない。
(3)また、被災者は、平成11年11月17日付けで、じん肺管理区分「管理3イ、続発性気管支炎合併」と決定を受け、療養を継続していたところであるが、平成29年8月2日の検査結果をみても、著しい肺機能障害があったとまでは認めることはできず、被災者の死亡がじん肺及び続発性気管支炎の増悪によるものとも認めることはできない。
(4)したがって、決定書に説示するとおり、被災者の死亡は業務上の事由によるものと認められないところであり、請求人の上記(1)の主張は医学的根拠に基づくものではなく、上記判断を左右するものではない。
(5)なお、請求人のその余の主張についても子細に検討したが、上記判断を左右するものは見いだせなかった。
3 結論
よって、本件処分は妥当であって、これを取り消すべき理由はないことから、請求人の本件再審査請求を棄却することとして、主文のとおり裁決する。
令和2年4月24日
出典:厚生労働省ホームページ「労働保険審査会 裁決事案一覧」掲載の裁決書(https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/shinsa/roudou/saiketu-youshi/dl/R01rou212.pdf)を加工して作成(加工:TaiLexi AI)
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