皇族の身分を離れた者及び皇族となった者の戸籍に関する法律案
衆議院 司法委員会
昭和22年法律第111号
審議経過
右の数字は会議の発言数提案理由
佐竹晴記 政府委員(司法政務次官) 昭和22年8月14日大臣お差支えでございますので、私よりただいま上程されました皇族の身分を離れた者及び皇族となつた者の戸籍に關する法律案について、提案理由を御説明申し上げます。
日本國憲法の施行に伴い、舊皇室典範竝びに皇族親族令及び皇族身位令とともに、明治四十三年法律第三十九號「皇族ヨリ臣籍ニ入リタル者及婚嫁ニ因リ臣籍ヨリ出テ皇族ト為リタル者ノ戸籍ニ關スル法律」が廃止されましたが、これと同時に、現行皇室典範の施行を見るに至りました。そして、現行皇室典範の第二章には皇族がその身分を離れられる場合及び皇族以外の女子が皇族となられる場合について、数箇條にわたつて規定しておるのでありまして、このような場合には、その方の戸籍をいかに処理するかを定める必要があるのであります。すなわち、先に廃止されました前述の明治四十三年法律第三十九號に相當する法律が當然必要となつてまいるわけであります、この要請を滿たさんがため立案されたのが、この法律案でありまして、いわば、本法律案は、皇統譜令と戸籍法との橋渡しともいうべき法律案なのであります。次にこの法律案の内容の要點を申し上げます。第一點は皇族がその身分を離れた場合の戸籍に關する規定であります。まず、皇族が皇室典範第十一條の規定によつて皇族の身分を離れられた場合には、その方について新戸籍を編製することつといたし、さらにこれと同時に、皇室典範第十三條の規定によつて皇族の身分を離れられたその方の妃、直系卑属及びその妃がある場合には、それらの方々もともにその戸籍に入ることといたしました。第一條が、その規定であります。
次に、皇族以外の女子で親王妃又は王妃となられた方が、その夫を失つた後に、皇室典範第十四條第一項または第二項の規定によつて皇族の身分を離れられる場合は、その方が離婚によつて皇族の身分を離れられる場合には、いずれも原則として婚姻前の戸籍に復籍し、また皇族女子で他の皇族の妃となられた方が夫を失いまたは離婚された場合に、それ以前すでにその直系卑属が皇族の身分を離れておられるがため、みずからも皇族の身分を離れられることがあるときには、原則としてその直系卑属の戸籍に入ることといたしました。第二條が、それであります。
第二點は、皇族女子が天皇及び皇族以外の者との婚姻によつて皇族の身分を離れられる場合には、當然戸籍法の適用によつてその夫の戸籍に入られるのでありますから、これにつき特別の規定を設ける必要はありませんが、ただその方がその後離婚される場合には、復籍すべき戸籍がないわけでありますから、その方について原則として新戸籍を編製することといたしました。第三條が、その規定であります。
第三點は、皇族以外の女子が皇后又は妃となられた場合には、その方を從前の戸籍から除籍することといたしました。第四條が、その規定であります。
第四點は、以上のような皇族の身分の得喪があつた場合における戸籍の届出について規定したことであります、すなわち、皇族がその身分を離れられた場合には、その方から、皇族以外の女子が皇族になられた場合には、その四親等内の親族から、それぞれ所定期間内に一定の届出をなさしめることとしました。第五條ないし第七條の規定が、それであります。かかる届出に基いて、市町村長が戸籍法の規定に則り、それぞれ戸籍記載の手続をすることとなるわけであります。
以上が、この法律案の大要であります。何とぞ慎重御審議の上、速やかに可決せられんことを御願い申し上げます。
次いで家事審判法案について提案理由の説明を申し上げます。
日本國憲法の施行に伴いまして、個人の尊厳と両性の本質的平等の大原則に則り、民法中身分法の分野において一大改正を加えることとなり、すでにこれが改正法律案を提案を致したのでありますが、由來身分關係に基く家庭内や親族間の紛争につきましても、訴訟制度のもとにおきましては、夫婦、親子、兄弟、親族がお互いに原告、被告として法定に對立し、黒白を争はねばならず、家庭の平和と健全な親族共同生活の維持をはかるという見地からは、理想に反する遺憾な點があるのでありまして、家庭内や親族間の紛争を理想的に解決いたすためには、裁判官に民間有識者を加えた機關が、訴訟の形式によらないで、親族間の情誼に適合するように紛争を処理することが望ましいのであります。つとに、各方面からかかる要請を充足する制度としてかつまた家庭内や親族間の重大事項について後見指導をする制度として家事審判所制度の設置が要望され、しばしばその趣旨の建議や請願があつたのであります。司法省におきましても、かかる要望にこたえるために、つとにこの家庭内や親族間の紛争と重大事項すなわちいわゆる家庭事件について、審判と調停を行う制度として、家事審判所制度の設置について調査研究を進め、その一環として昭和十四年に家庭事件について調停を行う制度として、人事調停法の制定を見、相當の成果をあげておるのであります。しかしながら、改正民法に從い國民が平和な家庭生活と健全な親族共同生活を営みますためには、この機會に、家事審判所制度を全面的に採用することを必要としますので、ここに本法案を提出して御審議を仰ぐ次第であります。
次に、本法案の内容とする主要な諸點をあげて御説明いたします。
第一は、家事審判所は、家庭事件のみを取扱い、その手続も訴訟手続によらないのでありまして、訴訟事件を取扱う裁判所とは、処理する事件及び処理する手続を異にいたしますので、家事審判所を、家庭事件のみを取扱う地方裁判所の特別の支部といたしました。
第二は家事審判所が取扱う事件でありますが、家庭事件のうち、離婚事件、離縁事件等、その性質上訴訟手続によつて処理することを必要とする事件を除き、それ以外の家庭事件は、すべて審判事件とし、また禁治産事件、失踪事件等、その性質上調停に適さない事件を除き、それ以外の家庭事件はすべて調停事件といたしますとともに、この審判の對象とならない訴訟事件については、調停前置主義をとり、また調停に適する審判事件については、いつでも調停に付し得ることといたしまして、家庭事件はすべて一應家事審判所において処理することといたしますとともに、家庭事件を可及的に關係人の互譲によつて、圓滿にかつ自主的に解決するようにいたしました。
第三は、審判は原則として家事審判官が参與員の参與によつて行い、調停は原則として家事審判官と調停委員をもつて組織する調停委員會が行うことといたしまして、法律専門家である裁判官と世故人情に通じた徳望ある民間人が一體となつて、親族間の情誼を考慮して、家庭事件を具體的妥當に解決するように措置いたしました。
第四は、現行人事調停法に比し、調停を強化いたしました、婚姻または縁組の無效事件、嫡出子の否認事件等の調停におきましても、當事者間に合意が成立した場合には、必要な事實を職権で調査した上で、その合意に相當する審判をなし得ることといたしますとともに、家庭事件について調停が成立しない場合には、強制調停をもなし得る途を開きまして、可及的に家庭事件を訴訟によらず、調停によつて処理するようにいたしました。
第五は、参與員及び、調停員について秘密漏泄の罰則を設けまして、家庭内の秘密が世間に暴露されることを防止して、當事者が安んじてこの家事裁判所制度を利用し得るようにいたしました。
以上諸點のほか、審判及び調停につきましては、非訴事件手続法を準用して、その手続を簡素にいたしまして、事件の迅速な解決と、費用の軽減をはかりました。
ただいま申し上げましたのが本法案の概要でありますが、その他の詳細な點につきましては、御質疑に應じまして御説明申し上げます。何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことを御願い申し上げます。
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第1回国会衆議院司法委員会議録第21号3頁(昭和22年8月14日)〔佐竹晴記政府委員発言・発言番号2〕 会議録 国会会議録検索システム
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=100101026)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。