海上保安庁法案
参議院 決算委員会
参議院 決算・治安及び地方制度・運輸及び交通連合委員会
昭和23年法律第28号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院治安及び地方制度委員会
- S23.4.2趣旨説明・質疑治安及び地方制度委員会 20202
- S23.4.5質疑・討論・採決治安及び地方制度委員会 2187
- S23.4.6委員長報告・採決本会議 4027
- S23.4.15参議院回付案・参議院回付案同意本会議 4221
参議院決算・治安及び地方制度・運輸及び交通連合委員会・決算委員会
- S23.4.5趣旨説明・質疑決算・治安及び地方制度・運輸及び交通連合委員会 199
- S23.4.6質疑決算・治安及び地方制度・運輸及び交通連合委員会 228
- S23.4.6修正案趣旨説明決算委員会 522
- S23.4.14委員長報告・採決(修正)・討論本会議 3224
- S23.4.14採決(修正)決算委員会 630
提案理由
岡田勢一 運輸大臣 昭和23年4月2日ただいまから海上保安廳法案の提案理由について御説明申し上げます。
海上保安廳法案の提案理由を、きわめて要約して申し上げますと、今日のわが國の海上における航海の安全と治安とは、終戰後の諸般の事情から、はなはだしい危險と不安とに暴されておるのでありますが、これに対処し得る実力のある制度組織が存在いたしておりませんので、新たにかかる制度を創設する必要があるということにあるのであります。
すなわちまずこれを航海の安全についてみますと、周囲八千海里に及ぶわが國の沿岸水域は、その特有の氣象、海象から從來世界的に最も海難事故の多い水域とされていたのであります。しかしてこのような自然的惡條件は、船舶自体の構造、設備の堪航性と乘組船員の技倆及び船内紀律と、燈台その他の航路標識、通信施設の整備、水路の測量、氣象の観測等のいわゆる航海補助施設の整備との三要件が備わることにより、初めてよくこれを克服できるのでありますが、これら三要件のうち、航海安全の客体的要件でありまする航海補助施設の整備は、はなはだ不十分でありまして、わが國特有の自然的惡條件と相まつて世界のダーク・シーとして今後の外國通商の上にも暗い影を投げかけているのであります。他方主体的な要件としましては、日本の船舶だけについてみますに、戰時中の要請に基く船舶の急速建造と、船員の速成教育、優秀船舶と優秀船員の壊滅的打撃、終戰後の急激な船價高騰による優秀船建造の困難等等の原因により、船員及び船員の技倆が低下しておりますので、客体的惡條件を克服することができず数多くの海難事故をひき起しているのであります。しかるに海難の発生した場合における救助対策いかんと申しますと、これまた遺憾ながらはなはだ貧弱でありまして、あたら貴い人命財産を失つている現状であります。最少限度の國民生活を維持する上にきわめて重要な使命をもつ船舶の損失を防止し、人命財貨の安全を確保するためには、一面において船賃を改善し、船員の技倆を向上させるとともに、航路標識その他の航海補助施設の整備をはかり、かつ海難に備えて救助艇その他の救助施設を整備充実することは、まことに喫緊の重大事であるのみならず、わが國が國際社会の一員として外國船舶の日本沿海における航海を安全ならしめるためにも、必要かつ重要な國際的義務であると申さなければならないのであります。
次に海上における治安維持についてみますと、海軍の解体した今日、わが國の海上における治安維持力は、皆無と申しても差支えないのでありまして、このような事情のもとに密貿易、不法入國等はいよいよ増加、かつ惡質化する傾向を示しておりますし、一昨年のように不法入國等に伴つて、コレラその他の惡疫の侵入する機会もまた増加するおそれが多くなつております、なおまた海上治安力の薄弱なのに乘じて海賊的行為、あるいは海上における経済事犯も著しく増加しているのでありますが、遺憾ながら現状におきましてはこれが取締は、税関、警察、海運局、檢疫所、水産局等の各機関が、それぞれ貧弱な船をもつて個々的にこれを行つているにすぎず、これの國家社会の秩序を乱し、または占領政策に違反する行為を抑圧し得る決定的な実力機関はい存在していないと言つても過言ではない状態であります。
海上における航海安全及び治安の現状、並びにこの現状を打破しなければならない必要性は、以上申し述べた通りでありまして、ここに特に航海の安全と治安維持に仕えることを目的とする海上保安廳法案の提案理由があるのでありますが、このような航海上の危險と治安上の不安を除くためには、まずもつて船舶通信施設その他の厖大な物的施設の設備を必要とするのであります。しかしこの場合、これらの莫大な経費と資材とを要する設備を、各関係行政職がそれぞれの立場からもつことは、きわめて不経済かつ不合理でありまして、むしろ一箇の行政機関をして、航海の安全と海上治安維持のために必要とされる船艇その他の施設を一元的に管理運用せしめ、その一元的責任のもとに、航海の安全と治安維持とに関する行政事務全般にわたる包括的総合的権限を行使せしめ、税関、檢疫所その他の関係行政廳との関係は、これを一般と特殊の関係において、それぞれの目的につき共助應援連絡の方法により、特殊の立場を尊重しつつ一般的立場において、より経済的合理的能率的に運営することが、経済的にも財政的にも貧弱なわが國においては最も望ましく、かつ有効であろうことは、疑いを容れないところであります。
海上保安廳法案は、このような観点からいたしまして、航海の安全と海上治安の維持という二箇の、最も重大な任務をわが國現下の経済的財政的基盤の上に、最も効果的に達成させようということを目的とするもので、内容的には、海上保安廳という一箇の行政官廳の制度組織に関する官制法、組織法たる面と、海上保安廳及びその職員のうち特定の職員の職務権限に関する制度法たる面との二面の規定を中心とし、あわせて海上保安制度の運用に関する海上保安委員会関係行政廳との共助に関する事項をも、その内容としているものであります。何とぞ愼重御審議下さいまして御可決あらんことをお願いする次第であります。
第2回国会衆議院治安及び地方制度委員会議録第20号3頁(昭和23年4月2日)〔岡田勢一運輸大臣発言・発言番号2〕 会議録 国会会議録検索システム
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=100201029)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。