裁判所法の一部を改正する等の法律案
衆議院 法務委員会
昭和23年法律第260号
審議経過
右の数字は会議の発言数参議院法務委員会
- S23.12.8趣旨説明・質疑法務委員会 230
- S23.12.9質疑法務委員会 332
- S23.12.10修正案趣旨説明・質疑・採決(修正)法務委員会 431
- S23.12.12委員長報告・採決(修正)本会議 1065
衆議院法務委員会
- S23.12.9趣旨説明・質疑法務委員会 115
- S23.12.12委員長報告・採決本会議 10129
- S23.12.12議案(参議院修正部分)・参議院修正部分趣旨説明・採決法務委員会 452
提案理由
殖田俊吉 法務総裁 昭和23年12月8日只今上程になりました裁判所法の一部を改正する等の法律案の提案理由を御説明申上げます。
先ず第一條について御説明申上げまありますが本條による裁判所法の改正の要点は次の三点であります。
即ちその第一点は、最高裁判所の小法廷で裁判することのできる事項の範囲を拡げまして、大法廷の負担の軽減を図つて点であります。現行の裁判所法第十條第一号によれば、当事者の主張に基いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを判断することは、專ら大法廷のなすべきところに属しておりまして、小法廷のなし得なかつたところでありますが、このような憲法問題に関する事件でありましても、すでに一度大法廷が憲法違反ではないとの判断を下しております以上、同様の判断を大法廷において繰返して行う必要はないものと認められますのみならず、かかる事件が最高裁判所に山積いたしております現状におきまして、一々大法廷を開く煩を避け、小法廷をしてすでに定まりました大法廷の判例に從つて、裁判をなさしめても差支ないものと考えられるのであります。又かようにして大法廷の負担をして軽からしめることは、大法廷をしてますますその本來の任務を効果的に遂行せしむるゆえんであろうと思われます。この故に今度裁判所法第十條第一号を改正いたしまして、小法廷が裁判することのできる事件の範囲を拡張いたしました次第であります。
次に改正の第三点は、今度現行の家事裁判所と少年審判所を統合して、家庭裁判所という新らしい裁所を創設することにいたしましたので、裁判所法第三篇中に新たな一章を設けて、第三十一條の二乃至五の規定を置き、家庭裁判所の組織及び権限を規定いたした点であります。即ち第三十一條の二におきましては、家庭裁判所は判事及び判事補を以てこれを構成すべきものとし、第三十一條の三におきまして、家庭裁判所の行う裁判権及びその他の権限を規定し、又第三十一條の四におきまして、これらの裁判官は家事審判法第四條の規定によつて、除斥、忌避の裁判を行う場合等を除いては、原則として單独で裁判を行うこととし、第三十一條の五におきましては、第三篇第二章地方、裁判所の章下における判事補の職権の制限、裁判官の職務の代行、司法行政事務、事務局及び支部出張所等に関する規定を準用いたしておるのであります。尚裁判所法の他の章下の條文で家庭裁判所の創設に伴い当然に訂正を要することとなりました規定の改正をいたしました。即ち裁判所法第二條、第十九條、第二十八條、第三十三條、第四十一條第二項、第四十二條第一項、第四十四條第一項、第五十條、第五十九條、第六十條第一項、第六十四條、第六十五條及び第八十條の改正がこれに該当いたします。又家庭裁判所には少年保護司という新らしい裁判所職員を置くことといたし、これに関して第六十一條の二という新らしい條文を置きました。
次に改正の第三点は、刑事訴訟法の改正によりまして、刑事訴訟におきまして、控訴及び抗告の審理が極めて重大となりましたので、從來地方裁判所に提起されておりました簡易裁判所の刑事の第一審の判決に対する控訴及び簡易裁判所の刑事に関する決定、命令に対する抗告を直接高等裁判所に提起すべきものといたしました。これが第十六條及び第二十四條に規定された高等裁判所及び地方裁判所の管轄を改正いたしました理由であります。
以上の三点が第一條による裁判所法改正の重要点でありますが、この外にも尚次の諸点につき裁判所法の改正をいたしました。即ち最高裁判所事務局の事務の輻湊に伴い、最高裁判所事務局の機構を拡充する必要がありますので、第十三條の規定を改め、最高裁判所事務局の名称を最高裁判所事務総局と称することにいたし、又最高裁判所に図書館を設けることにいたしまして、これに関して新たに、第十四條の二、第五十六條の二、及び第六十條の二等の規定を置き図書館、図書館長及び裁判所司書官等に関する事項を規定いたしました。次に從來最高裁判所長官にのみ付されておりました祕書官を最高裁判所の各判事及び各高等裁判所長官にも付することといたし、これに関して、最南裁判所長祕書官に関する第五十四條の規定を改正いたしますと共に、高等裁判所長官祕書官について第五十六條の三という新らしい規定を設けました。更に第六十三條第一項の改正は、現在傭員である廷吏のうち若干のものは廷吏の優遇上三級の職員といたす必要がありますので、法律で定める員数に限り三級とすることができることにいたすための改正であり、最後に第六十四條の規定は、裁判官以外の裁判所の職員の任免及び敍級に関する規定でありますが、この規定によりまして、裁判官以外の裁判所の職員の任免及び敍級を内閣と関係なく、最高裁判所以下各高等裁判所並びに各地方裁判所がこれを行うことに改めたのでありますが、これは成るべく司法行政の独立を保障することが司法権の独立を確保するゆえんであり、又國家公務員法第五十五條の主旨にも副うゆえんかと考えた次第であります。
続いて第二條について御説明申上げます。第二條は裁判官及びその他の裁判所職員の分限に関する法律第三條及び第十四條の改正に関する規定であります。同法第三條によれば各高等裁判所はその管轄区域内の地方裁判所及び簡易裁判所の裁判官の免官及び懲戒に関する件について裁判権を有するのでありますが、今回これを改正いたしまして、各高等裁判所はその管轄区域内の家庭裁判所の裁判官の免官及び懲戒についても裁判権を有するものといたしました。又同法第十四條によれば同條第一項に掲げた裁判所職員の中三級のものについては、懲戒による減俸並びに懲戒による譴責は、最高裁判所の定めるところにより最高裁判所、各高等裁判所及び各地方裁判所がこれを行うことになつておりますが、今回これを改正いたしまして、家庭裁判所にも右に述べました裁判所職員についての懲戒を行い得ることにいたしますと共に、裁判所法第六十四條の改正によりまして、裁判官以外の裁判所職員の任免及び敍級は内閣と関係なく、最高裁判所の定めるところにより最高裁判所以下各高等裁判所、各地方裁判所及び各家庭裁判所がこれを行うことになりましたのに軌を一にいたしまして、懲戒による免官につきましても、内閣に関係なく裁判所職員懲戒委員会の議決により、最高裁判所以下各高等裁判所、各地方裁判所及び各家庭裁判所がこれを行うことといたし、又裁判所法の改正によりまして、最高裁判所長官の外にも最高裁判所各判事及び各高等裁判所長官にそれぞれ祕書官を附することになりましたので、本條について必要な改正を施した次第であります。
第三條は判事補の職権の特例等に関する法律の改正でありますが、同法第一條の改正は家庭裁判所が新たに設けられましたことに基くものであり、第二條の二の規定を新たに設けましたのは、この法律の第二條で判事又は檢事たる資格を有する満洲國の推事又は檢察官の在職年数を、判事、判事補又は檢察官の在職年数とみなしておるのでありますが、この度この法規の適用範囲を拡げ、判事又は檢事の資格は有しなかつたものでも、司法官試補たる資格を有し三年以上満洲國の一定の官職にあつたものは、その三年後の在職年数は、これは判事、判事補又は檢察官の在職年数にみなすことといたしました。
第四條は裁判所職員の定員に関する法律の改正でありますが、同法第四條を改正いたしましたのは、裁判所法第六十三條の改正によりまして、廷吏のうち若干名を三級となし得ることとなりますので、從來三級の裁判所事務官のうち同数の定員を本條から削りますと共に、新たに第六條を設けまして三級の廷吏の定員を規定した次第であります。
第五條の檢察廳法第二條の改正は、新たに家庭裁判所が設けられることに対應するものであり、同法第十九條及び第三十八條の改正は、少年審判所が消滅することに基くものであります。
第六條は法務廳設置法におきまして、將來少年裁判所として発足することを予定されておりました少年審判所が、家庭裁判所に統合されることになりましたので、法務廳設置法第十條及び第十五條中の「少年裁判所」を「家庭裁判所」と改めるための改正規定であります。
第七條は刑事訴訟法第四百六十三條を改正する規定でありますが、簡易裁判所が略式裁判を不相当と認める場合に、事件の地方裁判所に移送することに関する規定である同條の但書を削除いたしましたのは、新刑事訴訟法立案当時は裁判所法第三十三條の簡易裁判所の管轄の規定を改めまして、簡易裁判所は刑事に何しては選択刑として、罰金の定められている罪については略式裁判しかなし得ず、略式裁判を不相当と認めるときは、これを地方裁判所に移送することになつていたのでありますが、今度裁判所法第三十三條の規定の改正は、前述いたしました程度に止めることにいたしましたので、この刑事訴訟法第四百六十三條但書の規定は不必要となりました。これが同條を改正いたしました理由であります。
第八條は家事審判法の改正に関する規定であります。今回同法中の「家事審判所」を「家庭裁判所」に改めますと共に、從來地方裁判所の支部でありました家事審判所が家庭裁判所に統合されましたので、家事審判所を地方裁判所の支部といたしております同法第二條を改め、又家庭裁判所の組織及び権限に関する規定が裁判所法の中に取入れられることになりましたので、從來これらの事項について規定いたしておりました家事審判法第三條の規定を改正いたしました次第であります。尚同法第十條及び第二十二條によれば、家事審判所が地方裁判所の支部であります関係上、家事審判所の参與員及び調停委員は地方裁判所が毎年選任することになつておりましたが、今度これを改正いたしまして家庭裁判所が参與員及び調停委員を選任することにいたしました。
第九條は家事審判所が家庭裁判所に変ります関係上、民法その他の法律中「家事裁判所」を「家庭裁判所」に改めた規定であります。
終りに附則について御説明申上げます。
第十條におきまして、本法中新たに設けました規定のうち裁判所図書館に関する裁判所法第十四條の二、第五十六條の二、及び第六十條の二の規定、一定の満洲國の官吏の在職を判事補、又は檢察官の在職とみなす判事補の職権の特例等に関する法律第二條の規定、及び廷吏の定員を定めました裁判所職員の定員に関する法律第六條の規定並びに最高裁判所の小法廷の取扱う事件の範図を拡げた裁判所法第十條の改正規定、裁判所廷吏の若干を三級となし得るものとした同法第六十三條第一項の改正規定及び三級の裁判所事務官の定員を改めました裁判所職員の定員に関する規行の施行期日はこれを本法公布の日と定め、その他の規定の施行期日を昭和二十四年一月一日といたしましたのは、前者の規行はこれを即刻施行する必要があるのでありますが、その他の規定は主として新刑事訴訟法の改正及び家庭裁判所の発足に伴う必要な改正規定でありますので、改正刑事訴訟法の施行期日であり、且つ又家庭裁判所の発足いたします昭和二十四年一月一日を以て、その施行期日と定めた次第であります。
第十一條は裁判所法第十六條、第二十四條及び第三十三條の改正により高等裁判所、地方裁判所及び簡易裁判所の刑事事件の管轄が変更されましたのに関連いたしまして、昭和二十三年十二月三十一日当時これらの裁判所に係属いたしております刑事事件の取扱についての経過規定を、第十二條は少年審判所が家庭裁判所に統合され、從つて少年審判官という官名が消滅いたしましたのに伴い、裁判官の任命資格に関する経過規定を、第十三條は同じく少年審判所が家庭裁判所に統合されるのに伴い、昭和二十三年十二月三十一日当時少年審判所に係属中の事件を引継ぎ取扱うべき管轄家庭裁判所を定めるべき経過的規定を、第十四條乃至第十八條は家事審判所が家庭裁判所に切替えられますに際して、家事審判所に係属している事件の措置等に関する経過的規定を、又第十九條は本年一月一日改正民法施行に際して経過的に家事審判所をして行わしめた事項を、今度家事審判所が家庭裁判所に切替えられるに当つて、これを家庭裁判所に行わしめるべきことにいたしました経過的規定を、それぞれ定めたものであります。
以上がこの法律案を提出いたしました理由であります。何とぞ愼重御審議法上速かに御可決あらんことをお願いいたします。
第4回国会参議院法務委員会会議録第2号1頁(昭和23年12月8日)〔殖田俊吉法務総裁発言・発言番号2〕 会議録 国会会議録検索システム
立法資料のある条文
この法律案の審議で取り上げられた条(政府答弁の件数順)出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=100401010)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。