商法の一部を改正する法律案
参議院 法務委員会
昭和25年法律第167号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院法務委員会・法務委員会通商産業委員会連合審査会
- S25.2.28趣旨説明法務委員会 1057
- S25.4.6質疑法務委員会 2171
- S25.4.7質疑法務委員会 2237
- S25.4.8趣旨説明・質疑法務委員会通商産業委員会連合審査会 142
- S25.4.8質疑法務委員会 2331
- S25.4.11質疑法務委員会通商産業委員会連合審査会 260
- S25.4.14参考人招致法務委員会 2827
- S25.4.26質疑法務委員会 3425
- S25.4.29修正案・委員長報告・討論・採決(修正)本会議 4496
- S25.4.29修正案趣旨説明・討論・採決(修正)法務委員会 3719
- S25.5.2参議院回付案・参議院回付案同意本会議 47123
参議院法務委員会
- S25.2.28趣旨説明法務委員会 322
- S25.3.2補足説明法務委員会 412
- S25.3.3補足説明法務委員会 513
- S25.3.7質疑法務委員会 669
- S25.3.8質疑法務委員会 734
- S25.3.9質疑法務委員会 837
- S25.3.10質疑法務委員会 931
- S25.3.11質疑法務委員会 1036
- S25.3.14質疑法務委員会 12140
- S25.3.16公聴会法務委員会 1469
- S25.3.17公聴会法務委員会 1583
- S25.4.20質疑法務委員会 2826
- S25.4.26質疑法務委員会 3220
- S25.5.2委員長報告・採決(修正)本会議 50212
- S25.5.2修正案趣旨説明・採決(修正)法務委員会 37223
提案理由
殖田俊吉 法務総裁 昭和25年2月28日ただいま議題になりました商法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。
現行商法は、明治三十二年に制定せられ、昭和十三年の大改正を経て、現在に至つたものでありますが、終戰後わが国の政治、社会、経済の各般にわたりまして、着々その民主化が実現せられつつありますことは御承知の通りでありまして、国民の経済生活、ことに企業に密接なる関係を持つ商法の分野におきましても、経済の民主化に対応いたしまして、その改正が考慮せられなければならないことは当然の趨勢であります。一昨年七月まずその一端といたしまして、法律第百四十八号をもつて株式会社について、株金分割拂込制度が廃止せられました。これは経営者の恣意的な支配の制限と投資大衆の保護とを目的といたしましたものでありますが、反面、これによつて会社は自己資本のプールを失い、その限度におきまして、資本調達の便宜を失うに至りましたことも、またいなみがたいところであります。政府といたしましては、すでに当時からこの欠点を補い、会社の資金調達の便宜をはかるための法的措置の必要を認めていたのであります。
企業資金ことに自己資本の調達を容易ならしめるということは、現下のわが国の産業復興にとりまして、不可欠の要請とされるところでありますが、財閥解体以後は、企業資本は広くこれを大衆の投資に仰ぐこととなりますので、この資金調達の便宜の問題は、同時にこれらの投資大衆、株式会社について申しますれば、株主の保護のための配慮を必要とするのであります。政府はこの資金調達の便宜と株主の保護との観点から、この際株式会社を中心とする現行商法の規定に全面的検討を加える必要ありと考えまして、英米に行われてをります資本調達に便宜なオーソライズド・キヤピタル・システムいわゆる授権資本制度及びノン・パー・ストツク、すなわち無額面株式の制度並びに一般株主保護の方策を考究することといたし、一昨年五月当時の法務庁に商法改正準備調査会を設けまして、学界、実業界、官界の学識経験者を委員にお願いし、調査を進め、検討を重ねました末、法律案要綱作成の運びに至りましたので、昨年八月十三日、これを公表いたしますとともに、朝野の権威者を委員として、同年六月新たに発足いたしました法制審議会にこれを諮問いたしました次第であります。
法制審議会におかれましては、特に審議の愼重を期せられるため、商法部会を設け、部会はさらに小委員会を設置の上、要綱発表以後広く学界、実業界等より寄せられました多数の御意見を十分参酌しつつ、愼重審議されました結果、原要網に若干の重要なる修正を加え、昨年十二月二十三日商法の一部を改正する法律案修正要綱を答申されたのであります。よつて政府は、この修正要綱に基き、法務府におきまして、鋭意審議立案いたしまして、本年一月下旬立案の完了を見、過日商法の一部を改正する法律案として国会に提出し、本日ここにその御審議を願うことと相なつた次第であります。
以上がこの法案の立案の趣旨及び経過の大要でありますが、次にその内容の要点を御説明申し上げたいと存じます。この改正案は株式会社につきまして、いわゆる授権資本制度及び無額面株式の制度を採用いたしまして、会社の資本調達の便宜をはかるとともに、株式の讓渡性、新株引受権、株主の議決権、株主の書類閲覽権、取締役の責任、少数株主の保護、外国会社及び罰則等に関する現行商法の規定に改正を加えたものであります。この法案におきまして採用いたしました授権資本制度は、大陸法系の株式会社法の基本原則の一であります資本確定の原則に修正を加え、会社の設立に際しては、必ずしも資本総額に当る株式の引受けを要するものとせず、総株式数の四分の一以上の引受け拂込みによつて会社は成立するものとし、その余の株式につきましては、会社成立後、そのときどきの資金の需要と経済情勢に応じて、原則として、取締役がその権限におきまして、必要とする数の株式を発行し得る制度であり、無額面株式の制度は、株式が企業に対する均等な比例的持分であるという性質に着眼いたしまして、従来の額面株式のほかに、券面額の定めのない株式、すなわち発行価額が券面額に拘束されることのない株式を、市況に応じ公正な価額で発行し得るものとする制度でありまして、ともに会社資本の調達にきわめて大なる利便を提供するものであります。このように授権資本制度のもとにおきましては、会社は現行法における複雑な増資手続によることなく、取締役の裁量により、随時株式を発行して資金を獲得し得るという利便がありますが、他面におきまして、取締役の権限はすこぶる大となり、企業の興廃は一に取締役の良識と材幹とにかかることとなりますので、改正案は新たに合議体たる取締役会の制度を採用して、企業の経営方針は原則として取締役会の專決するところとし、この決定に基き代表取締役が業務の執行を担当することといたし、これに伴つて、監査役制度を廃止して、監査役による業務監査をやめ、ただ会計の監査のために、新たに会計監査役を設けることといたしたのであります。また、取締役の職責のきわめて重要なるにかんがみまして、その選任及び解任につきましては、その要件を嚴重にし、かつ取締役の責任を明確にいたしますとともに、株主に対しまして、直接取締役の越権行為を阻止し、その責任を追求する道を開くことといたしました。
改正案は、さらに前に申し上げました一般の投資大衆保護の要請に応ずるため、一般に株式会社機構の民主化、株主の権利の強化をその重要な改正点といたしておりますが、そのうち特に重要な点を申し上げますと、
一、投資の回收を容易ならしめるため、定款による株式讓渡の制限を禁止し、かつ讓渡の方式を明確にするとともに、株式の名義書かえを容易ならしめましたこと。
一、定款による議決権の制限を認めないものといたしましたこと。
一、株主の会社企業に対する関與の機会を確保するため、通常総会の定足数につき、規定を設けますとともに、特別決議を愼重にいたし、その決議要件を嚴格にいたしましたこと。
一、少数株主の資格を緩和いたしましたこと。
一、少数株主の希望する者の中からも取締役を選出し得るようにするため、取締役の選任について、株主の請求により、いわゆる累積投票の方法によるべきことといたし、定款をもつて累積投票制度をとらない旨を定めることはさしつかえありませんが、この場合におきましても、発行済み株式数の四分の一以上にあたる株式を有する株主から請求がありますれば、累積投票によらなければならないことといたしております。
一、取締役は、決算期ごとに、会社の業務及び財産に関する明細書を本店及び支店に備え置くことを要し、株主はいつでもその書類の閲覽謄写をなし得ることといたしますとともに、発行済み株式数の十分の一以上にあたる株式を有する株主は、いつでも、会社の会計帳簿及び書類を閲覽謄写できることといたし、取締役は、株主の請求が権利の濫用にわたるような特定の場合においては、その請求を拒絶できるものといたしましたこと。
一、取締役が会社の目的の範囲外の行為または法令定款違反の行為をいたし、これによつて会社に回復すべからざる損害を及ぼすおそれのある場合及び取締役が不公正な株式発行によつて、株主に不利益を與える場合には、株主は、その行為の差止めを請求することができるものといたしましたこと。
一、従来の少数株主の請求による訴えの制度を廃止し、株主が会社のため、みずから取締役の責任を追究する訴えを提起することができるものといたしましたこと。
一、合併、営業讓渡等の場合において、これに反対する株主は、一定の手続に従い、会社に対して自己の持株の買取りを請求することができるものといたしましたこと。
一、株主間の対立抗争あるいは会社財産の管理処分の著しい失当等のため、会社の運営が停頓状態に陥り、その続行が不能または不適当な場合に、発行済み株式数の十分の一以上に当る株式を有する株主は、会社の解散を裁判所に請求することができるものといたしましたこと。
等でありますが、以上のほか、改正案は、外国会社に関する現行商法の規定の整備をはかつておりまして、外国会社は、他の法律、たとえば税法、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律その他の法律の適用につきましては、原則として内国会社と同一の地位を有する旨の一般的規定を設け、その法律上の待遇を明らかにいたしますとともに、日本において外国会社が継続的に取引を行うには、必ず営業所及び代表者等の登記をしなければならないことといたしております。
以上申し述べましたところから見られますように、このたびの商法改正におきましては、授権資本制度及び無額面株式の制度の採用といい、株主の書類閲覽権その他の規定といい、従来の大陸法系の会社法から英米法系の会社法への転換が企図せられているのでありますが、異なる法制的地盤におい立ちましたこれらの制度の採用にあたりましては、いかにすれば社会事情、経済状態に差異のあるわが国の実情に最もよく適合するかは、特に愼重な配慮を要する点でありまして、政府といたしましても、要綱原案につきまして、広く一般の批判を求め、また法制審議会の御審議にあたりましても、特にこの点に意を用いられ、実業界その他の御意見を十分しんしやくされましたことは、さきに申し上げた通りでありまして、改正案はこの点におきまして、よくわが国情に合致するものと存ずるのであります。
なお本改正案の施行につきましては、政令をもつて、明年七月一日以前の日を施行の日として定めることといたしておりますが、本改正案は、現行会社法に根本的な改正を加えておりますので、幸い御可決を得られますれば、一日も早く改正法律の周知徹底をはかる必要がありますとともに、その施行のためには、別に改正法律の施行に関する法律、非訟事件手続法、有限会社法及び関係法令の整備に関する法律等を立案いたさねばなりませんので、これらの事情もお含みいただきまして、何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたす次第であります。
第7回国会衆議院法務委員会議録第10号10頁(昭和25年2月28日)〔殖田俊吉法務総裁発言・発言番号7〕 会議録 国会会議録検索システム
立法資料のある条文
この法律案の審議で取り上げられた条(政府答弁の件数順)出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=100701064)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。