裁判所職員定員法案
衆議院 法務委員会
昭和26年法律第53号
審議経過
右の数字は会議の発言数提案理由
大橋武夫 法務総裁 昭和26年3月13日ただいま議題となりました裁判所職員定員法案の提案理由を説明いたします。この法律案は、裁判所の職員の定員に関する法律の全部を改正するものでありまするが、実質的の改正の要点は次の二点でありまして、第一は、事件の増加等に伴つて裁判所職員の定員を増加することであり、第二は、家事調査官等の定員を定めることであります。
以下改正の要点について順次御説明申し上げます。
第一点の定員の増加のうちで、まず申し上げなければならないのは、判事、判事補、裁判所書記官及び裁判所書記官補の増員でありますが、その大部分は家庭裁判所関係の職員であります。家庭裁判所において取扱いまする家庭に関する事件及び少年に関する事件は、現下の社会情勢を反映いたしまして、ますます増加の一途をたどり、昨年中に受理した事件は、一昨年に比較して約八%を増加し、家庭事件は三十六万余件、少年事件は九万五千余件の多きに上つておるのであります。
さらにこれに加えまして、本年一月一日から少年法の適用されます限界が満二十歳未満まで引上げられることに相なりましたる結果、少年事件につき約一一〇%の増加が予想されまするほか、この新たに加わりました十八歳以上二十歳未満の年齢層の事件は、その取扱いが特に困難なことが予想されておるのであります。しかるに家庭裁判所の職員は、現在すでに相当の負担過重の状態にありまするから、このような負担の増大に対処いたしまして、その職員を増員いたそうとするのであります。
その他、地方裁判所における各職員の増員も含まれておりますが、これは、主として民事事件の増加に対処するためのものであります。
次に、少年調査官、少年調査官補及び技官の増員でありますが、これも家庭裁判所の関係のものでありまして、事件の増加等に対処して、その取扱いの遺憾なきを期するためであります。
次に、裁判所書記官研修所教官の若干名の増員がありますが、これは現在不十分な同研修所の機能を一層充実するためのものであります。
次に第二点は、家事調査官及び家事調査官補の定員を定めることであります。これらの職員は、最近増加しておりまする家庭に関する事件の審判及び調停に必要な調査に関する事務をつかさどらせる等のため、別途提案中の裁判所法の一部を改正する法律案により、新たに家庭裁判所に置かれることになつておるのでありますが、本案はその所要定員を定めんとするものであります。
以上この法律案の内容について大略御説明いたしました。何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
次に同じく議題となつております裁判所法等の一部を改正する法律案の提案理由を説明いたします。
この法律案の要点は、次の四項目に大別することができます。その第一は、家庭裁判所に家事調査官及び家事調査官補を置くこと、第二は、家庭裁判所の成人の刑事事件に関する裁判権を拡張すること、第三は、裁判所職員の官の級別を廃止すること、第四は、裁判官以外の裁判所職員に関する事項について規定を整備することであります。
以下各項目について順次その趣旨を説明いたします。
まず第一は、家事調査官及び家事調査官補の制度の新設であります。家事審判及び家事調停の制度は、新民法の理念としておりますところの、個人の尊厳と両性の本質的平等とを基本として、家庭の平和と健全な親族の共同生活の維持促進をはかるべき重大な使命をになつているのでありまして、この制度の発足以来、家庭に関する事件は年々増加の一途をたどり、統計の示すところによれば、その増加の率は毎年前年度の約六割に達している実情であります。しかも、このような現象は、決して終戰後におけるわが国の特殊な社会事情のみに基く一時的なものではないのでありまして、今後国民の日常生活の中に新民法の精神が徹底普及されるにつれて、この種の事件はさらにその数を増加することが予想されるのであります。家事調査官及び家事調査官補の制度は、これら家庭に関する事件の調査を一層十分にし、その処理を一層懇切適正に、しかも迅速にいたすことを期するものであります。家事調査官は、裁判官の命を受けて家庭に関する事件の審判及び調停に必要な調査をつかさどり、家事調査官補は、家事調査官の事務を補助することをその職務といたすのであります。この制度は現在の裁判所調査官並びに少年調査官の制度が収めております成果にかんがみまして、その将来に大きな期待と希望とが寄せられるのであります。
第二は、家庭裁判所の成人の刑事事件に関する裁判権の拡張であります。現行制度のもとにおきましては、家庭裁判所は、その取扱う成人の刑事事件について罰金刑を科することはできまするが、禁錮以上の刑を科することができず、禁錮以上の刑を科するのを相当と認めるときは、その事件を管轄地方裁判所に移送しなければならないものとされております。しかし禁錮以上の刑を科するのが適当かいなかをきめるためには、家庭裁判所でも相当詳細に調査しなければなりませんが、そのようにして調査した結果、約三割強の事件が地方裁判所に移送されておる実情であります。これがため、この種の事件は、家庭裁判所と地方裁判所とにおいて再度にわたつて審理されることともなり、ために訴訟の遅延を来す結果を招来しておりますので、これが改善をはかり、家庭裁判所は、この種の事件について禁錮以上の刑をも科することができるものとするための改正を行うことにいたしたのであります。
第三は、裁判所職員の官の級別の廃止であります。これは一般公務員については、すでに先般その官の級別が廃止されましたので、これに歩調を合せるためのものであります。
第四は、裁判官以外の裁判所職員に関する事項に関する規定の整備であります。裁判官以外の裁判所職員は、国家公務員法によりまして、昭和二十六年十二月末日まで一般職に属する職員とされているのでありますが、明年一月一日からは特別職となります関係上、現在同法において一般国家公務員について定められているような種類の事項は、別に法律をもつて規定する必要があるわけであります。そのため、その趣旨の規定を裁判所法の中に設けることにいたしたのでありまして、この点についての特別法は、成案を得次第御審議をお願いいたしたいと考えております。
以上この法律案の内容の概略を御説明いたしました。何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げる次第でございます。
第10回国会衆議院法務委員会議録第8号2頁(昭和26年3月13日)〔大橋武夫法務総裁発言・発言番号3〕 会議録 国会会議録検索システム
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=101001061)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。