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国会審議›第12回国会›閣法第28号
閣法第12回国会 第28号成立

旅券法案

昭和26年法律第267号 旅券法
提出昭和26年11月10日 内閣
付託衆議院 外務委員会
参議院 外務委員会
成立昭和26年11月17日
昭和26年法律第267号
審議会議 6回・発言 384(政府答弁等 137)

審議経過

右の数字は会議の発言数

衆議院外務委員会

  1. S26.11.13趣旨説明・質疑外務委員会 7102
  2. S26.11.15質疑外務委員会 8105
  3. S26.11.16質疑・討論・採決外務委員会 9124
  4. S26.11.17採決・委員長報告本会議 1775

参議院外務委員会

  1. S26.11.17委員長報告・採決本会議 1946
  2. S26.11.17趣旨説明・採決外務委員会 438

提案理由

島津久大 政府委員(外務事務官(政務局長)) 昭和26年11月13日

旅券法案の提案理由を御説明いたします。

 すでに御承知の通り、本年九月八日にサンフランシスコにおいて、大多数の連合国とわが国との間に平和條約が調印されましたが、この平和條約の発効に先だち、最近連合国最高司令部は、従来最高司令部が保持していた日本人の国外渡航に関する許可権を、日本側に返還する意向のあることが明らかとなりました。

 このことは、わが方といたしましては非常な朗報でありますので、占領下に適合するよう制定されました旅券に関する現行二政令を廃し、至急日本政府が自主的に渡航行政を行い得る新旅券法を制定する必要が生じた次第であります。

 次に旅券法案の内容について御説明申し上げます。本法案は現在施行されております二つのポツダム政令、すなわち連合国最高司令官の許可を得て海外に渡航する者に対して発給する旅券に関する政令、昭和二十五年政令第十一号、並びに日本政府在外事務所の発給する旅券及びその取り扱う旅券事務に関する政令、昭和二十六年政令第二百八十五号を廃止しまして、日本政府が、日本国の主権に基いて旅券を発給すること、及び国際的に認められた旅券制度を基調としまして、これに日本固有の特殊性を適度に加味して、旅券の種類、効力、発給方式等を新たに制定しようとするものであります。

 この法案の主たる点をあげますと、第一に旅券の自主的発給、第二に旅券の種類、第三に旅券の発給その他の手続、第四に旅券発給の制限、第五に旅券の効力、第六に手数料、第七としまして旅券にかわる身分証明書等に帰するのでありますが、以下この法案を逐條的に御説明をいたします。

 第一條におきましては、旅券法を制定する目的を規定し、第二條におきましては、この法律に用いられる用語の定義を規定しております。この定義によりまして、日本政府が発給する旅券を、公用旅券と一般旅券に分類することを明らかにいたしております。

 第三條におきましては、一般旅券の発給申請の手続方法と、これを受ける官庁と、申請に必要な書類を明示いたしております。またこの発給申請を受ける官庁が、国内と国外とで異なつていることをも明らかにいたしております。また申請を受ける官庁につきましては、国内においては原則として都道府県知事でありますが、急を要する場合は外務大臣が受理できることになつております。

 第二項におきましては、これら必要な書類も、その申請人の身元いかんによりまして、ある程度省略してさしつかえありませんので、これを省略し得ること、並びに省略してさしつかえない場合を規定いたしております。また省略し得る場合は、国内事情や国際情勢の変化により異なつて行く性質のものでありますので、具体的な場合を特に外務大臣が指定することといたしております。

 第四條におきましては、公用旅券の発給請求を行うものと、その方法と、これを受ける官庁と、申請に必要な書類を明示いたしております。発給請求をするものと、これを受ける官庁とが、国内と国外で異なつていることも明示いたしております。以下これを受ける官庁が国内と国外で異なつておりますが、これを一々反復することを省略させていただきます。第五條につきましては、旅券の発行権の所在を明らかにいたしております。旅券は国外に通用することを主要な目的とする公文書でありますから、外務大臣が発行いたすことになつております。言いかえますと、この発行権は外務大臣固有の権限でありまして、どこの国でも外務大臣が発行いたすことになつております。また国外においては領事官が発行することとなつておりますが、これは外務大臣の委任によるものであります。

 旅券の発行には事前にまず申請書を審査の上、その申請が妥当と認められる場合に、備えつけの旅券冊子に必要事項を記載し、または具備せしめて、旅券を作成することを必要といたします。そのあとで発行原簿に登録して、その当該旅券に日付と番号を与えます。この発行原簿に登録して当該旅券に日付と番号を与える行為を発行と申すのであります。旅券の日付と番号は旅券の基本となるので、人間にたとえますと、出生年月日と氏名に当り、査証、出国、通過、入国、滞在及び旅行に、常にその当該官憲によつて記録され、検察される記標となります。従つて発行原簿は戸籍簿に該当することとなり、一旦登録を行えば、みだりにこれを抹消、修正することのできない性質を持つものであります。

 第六條におきましては、申請に基いて発行されました旅券は、いかなる官庁がこれを申請人に交付するものであるかを明らかにいたしております。すなわち一般旅券については第一項で、公用旅券については第二項で、国内の場合と国外の場合にわけて明示いたしております。また一般旅券の交付につきまして、国内においては都道府県知事が交付官庁でありますが、急を要する場合は外務大臣が都道府県知事の名義で申請人に直接交付できることになつております。

 以下一般旅券と公用旅券ではその都度項をわけて明示いたす建前をとつておりますので、特に区別して説明申し上げることを省略いたしたいと存じます。

 ここでちよつとお断りいたしておきたいことは、発給と発行と交付の用語であります。発行とは先ほども申し上げます通り、外務大臣または領事官が発行原簿に登録して当該旅券の日付と番号を決定付与する行為であり、交付とは申請人にこの旅券を引渡す行為であります。この発行と交付を含めたものが発給ということになつております。

 第七條におきましては、発給申請をいたしましたあとで、申請人が先に申請いたしました渡航目的または渡航先の変更を受けようとする場合の手続を定めるためのものであります。渡航目的や、渡航先の変更は、発給申請の審査目標を全的に変更させるものであります。すなわち甲の渡航目的または渡航先においては旅券の発給がさしつかえなくても、乙の渡航目的または渡航先においてはその渡航先国の国内法がその入国を認めないことがあります。ここにおきまして、渡航目的または渡航先の変更を受けようとする者は、新たに旅券発給申請をしなければならないことを明示するものであります。書きかえ発行及び再発行の場合も含まれることはもちろんであります。またこの問題は日本出国前にのみ起きる問題でありますので、国外の場合を包含いたしておりません。

 第八條におきましては、渡航先の追加を受ける場合の申請の方法、出願先並びに申請に必要な書類を明示いたしますとともに、第三條の場合と同様申請に必要な書類で省略し得るもの及びその場合を規定いたしております。渡航先の追加は渡航先の変更とは性質が異なつておりますので、第七條とは区別いたしましてその手続を明示いたした次第でございます。

 第九條におきましては、旅券の発行後第七條または第八條に規定いたします渡航目的及び渡航先のことを除きましたその他の事項で、しかも旅券に記載してある事項に変更を生じた場合、すなわち氏名または本籍地等が変更となりましたとき、その旅券の書きかえ発給を受けようとする場合の手続方法、出願先並びに申請に必要な書類を明示いたすものでございます。また旧旅券の返納を必要とする理由につきましては、同一人が二つ以上の有効旅券を所持することにより生ずる弊害を防止するがためのものであります。

 第十條におきましては、旅券の交付を受けました者が、旅券を紛失し、焼失し、もしくは著しく毀損したこと等によりまして、旅券の再発給を受けようとする場合の手続方法、出願先並びに申請に必要な書類を明示いたすものでございます。旧旅券の返納につきましては、第九條で説明いたしましたと同様の理由に基くものでございます。

 第十一條におきましては、旅券の発給を受けようとする者が、十五才未満の子を同伴いたす場合、申請人がその子を自分の旅券に併記を希望するときの手続方法を明示いたしたものでございます。併記される子の限度を三人といたしました理由は、旅券面に併記し得る箇所が三人分しか余白を持たないがためであります。年齢を十五才に限定いたしましたのは、併記される子の年齢を規定した各国の移民法に抵触することを避けることもに、実際上併記を必要とする年齢として、妥当と考えられる年齢を選んだがためであります。

 第十二條におきましては、数次往復用の旅券につきまして規定いたしております。日本の旅券は第十八條の効力のところで規定しておりますように、原則として、帰国とともに無効となることとなつております。しかし申請人によりましてはたびたび国外に渡航を必要とする場合があり、帰国の都度旅券の申請をすることがきわめて不便に感じられる場合があります。こうした申請人のために二年間は何回でも国外に渡航のできる旅券を発給できる例外的措置を講じたものであります。しかしその性質からいたしまして、この旅券は、でき得る限り確実な身元の者に対して発給を必要とするばかりでなく、その用務が数次往復用の旅券を必要とするものであることを前提といたします。この数次往復を必要とする用務であるかいなかは、将来いろいろ変動を見るここと考えられますので、外務大臣におきまして、その都度その用務の種類を指定いたすことが最も適正を期することができるからでございます。

 第十三條におきましては、一般旅券の発給または渡航先の追加を制限する場合を、第十四條におきましては、第十三條によりまして発給または追加をしない場合の申請人に対する通知につきまして、また第十五條におきましては、第十三條及び第十四條に基く決定通知に対し、異議のある場合の異議の申立て方法並びに異議申立てに対する裁決及びその裁決の結果、外務大臣または領事官のとるべき措置等を規定しでおります。

 第十六條におきましては、旅券の所持人が旅券面に行う署名のことを規定いたしております。旅券は本人の署名を記入いたすことにより、不正旅券の行使を防止するごとに役立てております。

 第十七條におきましては、旅券の不正使用を防止するため、旅券を紛失または焼失いたしましたときの名義人の届出義務等を規定いたしております。

 第十八條におきましては、旅券の効力につきまして規定いたしております。

 第十九條におきましては、旅券を返納する場合を規定いたしております。

 第一項におきましては、現に有効な旅券の返納を命ずる場合でございます。現に有効な旅券といえども、制限規定の第一項に掲げてある事項に該当することがあとで判明し、またはそういう事態にあとで立ち入つたとき、これを回収する必要があります。また錯誤、過失による発給等の場合を救済するとともに、本人保護の見地からもこれが発給を取消すことを必要とする場合もございます。

 第四項及び第五項におきましては、失効または無効となつた旅券の返納並びにその返納先を規定いたしたものでございます。

 第六項におきましては返納した旅券のうち、その保存を希望する名義人に対し、これを還付し得る旅券の範囲と、還付手続を規定いたしております。

 第二十條におきましては、旅券の手数料につきまして規定いたしております。

 第一項及び第二項は国内において徴収する場合を、第三項は国外において徴収する場合を規定いたしております。国外における場合は外貨で徴収いたしますが、国別によつてことごとく異なつておりますので、他の法令に譲ることといたしております。

 第四項は関係官庁の過失により書きかえ発給を行つた場合の手数料免除を明示しております。

 第五項におきましては、現段階では明示困難でありますが、将来渡航を想定されます移民等に備えたものでありまして、終戦前移民一般旅券手数料が、非移民一般旅券手数料に比し三分の一だりた事実をも勘考、これが減額をはかりたい意向のもとに、政令によつてその減額のでき得ることを規定いたしたものでございます。

 第二十一條におきましては、査証の必要性を明示いたしております。旅券は発行によつて旅券そのものの効力は発生しますが、渡航先国に通用するためには、渡航先国出先官憲発給の査証を必要といたします。往々旅券さえあれば国外渡航が可能であるとする一般の誤解を防止するに必要な規定でございます。第二十二條におきましては、申請者等の様式を規定いたしております。、

 第二項におきましては、支払い能力を立証する書類や渡航先及び渡航目的によつて特に必要とされる書類について規定いたしております。これを外務大臣の告示に譲りました理由は、この種書類は国内においては為替管理の方式により、国外においては外国の国内法によりときどき変更がありますので、本法案のような恒久法に織り込むことができないがためであります。

 第二十三條におきましては、旅券そのものに関する違反行為を処罰することを目的といたす罰則を規定いたしたのであります。

 第二十四條におきましては、第二十三條の違反行為は国外でも行われる次第でありますから、これに備えて国外犯罪の処罰を規定いたすものでございます。

 第二十五條におきましては、第二十三條の各号に定められた違反行為を行つた者の国外逃亡を防止するため、行政処分により外務大臣が当該旅券を没取できることを規定いたしたものでございます。

 附則の第一項におきましては、連合国最高司令官から自主的旅券発給権の委譲される目が確定いたしておりませんので、別に政令をもつて施行期日を定めることの必要があるからでございます。

 附則の第二項におきましては、本法案の実施により廃止されるべき政令をあげております。

 附則第三項から第六項までは、本法案の実施に伴い、従前の法令との間に生ずる過渡的ギャップに対処する方針を明らかにいたしたものであります。

 附則第七項及び第八項におきましては、ある特定の地域への渡航に対しては、旅券にかわる身分証明書を発給し得ること、並びにその手数料を徴収し得ることを規定いたしております。

 これを政令に譲りました理由は、自主権委譲の際までその地域その他を明確にすることができないからでございます。

 以上がこの法律案を提案いたします理由及びその内容の説明であります。何とぞ慎重御審議の上、御可決あらんことをお願いいたします。

 次に議題となりました国際連合食糧農業機関への加盟の件につきまして、提案理由の説明をいたします。

 国際連合食糧農業機関(略称FAO)は、今次大戦後の世界の食糧問題の重要性にかんがみ設立されたものであり、その後国際連合と協定しで、その専門機関となつているものであります。

 国際連合食糧農業機関には現在六十六箇国が参加しております。食糧及び農業の問題は、世界の平和及び繁栄に関係するところが大であるという立場から、各国民の栄養及び生活水準を向上し、食糧及び農産物の生産及び分配の能率を改善し、並びに農村住民の状態を改善することを目的としております。そのために、同機関は第一に栄養、食糧及び農業に関する情報を収集、分析、頒布し、第二に栄養、食糧及び農業に関する各種の研究及び知識の普及、並びに天然資源の保全、食糧及び農業生産物の加工、販売、分配等の改善について加盟国の行動を促進し及び勧告し、第三に、加盟国に技術的援助を与えることをおもな任務としております。

 わが国のこの機関への加盟が実現しますれば、これによつて、わが国は、栄養、食糧及び農業に関する各種の資料、報告等を受けること並びに世界の栄養、食糧及び農業の現状を把握することができ、わが国の食糧及び農業政策の立案に資すること多大なるものありと存じます。また、FAOが主催する諸会議に参加し、わが方の希望ないし意見を述べる機会を得、さらに、わが国と加盟国間、特にアジア地域の諸国との間で食糧及び農業の技術の相互交換を行う上に資する次第であります。

 わが国の加盟に伴う負担としましては、FAOべの報告の義務、分担金の支払い及びFAOの提案した條約を受諾した場合の当該條約の規定を履行する義務等であります。分担金は、FAOの分担金比率等を参考にしますと、日本の場合は、二%程度で、来年度は十一万ドル、今年度は十一月から加盟するとしまして第四・四半期分二万五千ドルと推定されます。

 政府は、この機関に加盟することの利益にかんがみまして、十月二日FAOの事務局長にわが国の加盟を申請しましたところ、事務局長から、わが国の加盟申請は、来る十一月十九日からローマで開かれる総会の審議にかけられること、及びわが国によるFAO憲章の受諾書は、総会の開会前に事務局長に寄託するよう要望される旨の通報がありました。

 以上の次第でありますから、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御承認あらんことをお願いいたします。

第12回国会衆議院外務委員会議録第7号10頁(昭和26年11月13日)〔島津久大政府委員発言・発言番号2〕 会議録 国会会議録検索システム

出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=101201028)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。