ユネスコ活動に関する法律案
衆議院 文部委員会
参議院 文部・外務連合委員会
昭和27年法律第207号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院文部委員会
- S27.3.19趣旨説明・補足説明文部委員会 1164
- S27.3.26質疑文部委員会 1382
- S27.3.28質疑文部委員会 1488
- S27.4.2質疑文部委員会 15140
- S27.4.3質疑・修正案趣旨弁明・討論・採決(修正)文部委員会 1667
- S27.4.3修正案・委員長報告・採決(修正)本会議 2961
提案理由
天野貞祐 文部大臣 昭和27年3月19日ただいま上程になりましたユネスコ活動に関する法律案について、その提案の理由及びその内容の大要を御説明申し上げます。
国際連合教育科学文化機関、すなわちユネスコは、第二次世界大戰が終りを告げ、平和を希望する人類の気持が最高潮に達したとき、一九四六年十一月、人の心の中に平和のとりでを築き、人類の知的、精神的連帯の上に、教育、科学及び文化を通じて恒久平和を確立しようとする崇高な理想のもとに創設された国際機関であります。このユネスコの理想に共鳴し、それを普及しようとするユネスコ運動は、いち早くわが国民の間にも芽ばえ、年とともに次第に根を張り、ユネスコに加盟する以前、すでに力強く展開されたのでありました。そしてわが国民の年来の宿望でありましたユネスコ加盟は遂に達せられ、国会の承認を得、昨年七月、わが国は正式にユネスコの加盟国になつたのであります。平和條約の締結前に、しかも、国際連合に加盟していない日本が、ユネスコの加盟国となりましたことは、わが国にとりまして特に深い意義のあることと信ずるのであります。
わが国のユネスコ加盟を機といたしまして、国内におけるユネスコ活動も一段と活発となつて参りました。
さて、ユネスコ活動の進展をはかるため、ユネスコ憲章第七條によりますと、各加盟国が広く政府及び教育、科学及び文化の事項に携わつている主要な団体を代表する国内委員会を設立することが望ましいとされております。そして現在ユネスコ加盟国六十四箇国中、国内委員会を設けている国は五十八箇国に上つております。わが国におきましても、この国内委員会の問題はもとより、その他ユネスコ活動の進展方策につきましては、つとに各方面から深い関心が寄せられておりましたことは周知の通りであります。政府といたしましても、この問題は広く国民各層の意向を十分取入れて処置すべきものと考え、昨年秋各界の有識者よりなるユネスコ国内委員会設置準備会を設置し、その審議を煩わした次第であります。同準備会では愼重審議の結果、本年一月きわめて有益な答申を寄せられました。政府は、この準備会の答申を骨子として、この法律案を作成したわけであります。
次に、本法律案の内容の大要を申し上げます。まずユネスコ活動の有する国際的意義にかんがみ、また、ユネスコ活動が全国民的な基盤の上に官民一体となつて、強力に展開されるものである点を重視しまして、本法律案に異例の前文を付していることに御留意願います。前文においては、ユネスコが世界平和の確立と人類の福祉の増進に貢献しつつあることの意義を高く評価し、政府及び国民の活動により、その事業に積極的に協力するかたい決意を宣明しているのであります。
次に、本法律案は二章から成り、第一章はユネスコ活動に関するもの、第二章は日本ユネスコ国内委員会に関するものとなつております。
まず、第一章におきましては、ユネスコ活動の目標その他ユネスコ活動の基本的なあり方を規定し、政府も国民も、ともどもに力を合せ、国の内外にわたり、ユネスコ活動の健全な発展に努力することを期しているのであります。そしてまた、ユネスコが国際連合の専門機関であり、ユネスコ活動も当然に国際連合の精神に基くべきものであることにかんがみまして、第一條は、わが国におけるユネスコ活動が、国際連合の精神にのつとつて行われるべきことを特に規定しているのであります。また、ユネスコの精神や活動は、国際連盟当時の知的協力国際委員会とは異なり、少数の知識階級に限られることなく、国民大衆の間に広く根を張り成長してこそ、初めてその目的とする世界平和に対する力強い支柱ともなり得るのであります。その意味において第一條に「わが国民の間に広く国際的理解を深める」云々という規定を置いたのであります。
次いで第二章は、日本ユネスコ国内委員会に関する規定であります。ユネスコとわが国民とを結びつけ、国民の間にユネスコ精神を普及し、ユネスコ活動を刺戟する原動力ともなるべきものは、ユネスコ国内委員会であります。このユネスコ国内委員会は、国際條約であるユネスコ憲章第七條の規定の趣旨に従つて設けられる点におきまして、国内の諸機関と異なる特徴を持つております。それは、各ユネスコ加盟国の国内委員会に共通した性格や機能を持ちますとともに、日本の特殊事情に即応するものでなければならないのであります。この法律案におきましては、この両方の要求が満たされるように留意してあるのであります。
国内委員会の性格、わが国におけるユネスコ活動に関する助言、企画、連絡及び調査のために設けられる文部省の機関であり、国家行政組織法上は、同法第八條の機関であります。しかし、單なる審議ないしは諮問機関たるにとどまらず、広く企画、連絡、調査、普及等の機能をも持つことにいたしました。これは国内委員会に対する内外の期待に沿うため、国内委員会の所掌事務をできるだけ広くしようとするためであります。
国内委員会の構成につきましては、ユネスコ憲章第七條の趣旨にのつとり、広く教育、科学及び文化の領域を代表する人物の参加を得るとともに、また国会の代表者、政府職員等の参加を得、真に民主的な基盤の上に、しかもわが国情に即して組織されますよう留意いたしました。すなわち同委員会は六十名以内の委員をもつて構成することとし、選出分野とその人員とは法律をもつて明記いたしました。またユネスコ活動の特殊性にかんがみ、委員二人については国会議員の中から出ていただくことにいたしてあります。さらにまた委員の地位の重要性にかんがみ、両院から指名される国会議員以外の委員については、国内委員会から推薦された者について内閣の承認を経て任命するものとしたのであります。これは、委員の選考についても、あくまで民主的であることを期するためであります。
国内委員会は文部大臣が所轄するのでありますが、ユネスコ関係の事務は、国の対外施策の遂行と緊密な関係を保つ必要がありますので、これにつきましては外務大臣と緊密に連絡して行う旨規定し、外務省の対外的機能との調整に留意いたしました。
なお、国内委員会の広汎な所掌事務を遂行し、所期の成果を收めるには、充実した事務機構が必要でありますので、国内委員会に事務局を置き、事務総長およびその他の職員を置くことといたしました。
最後に一言申し添えますが、近くわが国に設けらるべき国内委員会の組織や活動に対しましては、国内はいうまでもなく、ユネスコ本部その他の加盟国におきましても、多大の関心と期待を寄せているのであります。この内外の期待に沿うためにも、ぜひとも、わが国にりつぱな国内委員会を設けたいものであります。そして、わが国の教育、科学、文化の向上に努めるとともに、その成果を広く世界各国に伝え、国際交流を盛んにし、諸外国との理解と協力の関係を進めることにより、世界平和と人類の福祉に対し、積極的な貢献をなし得るようになりますことを、私は衷心より切望するものであります。そこにこそ日本民族の明日の名誉と光栄も期し得られると思うのであります。この法律案は、以上の目標の達成にとり大きな原動力となることを、私は確信するものであります。
以上、本法律案提出の理由及びその大要を述べました。何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御可決下さるようお願いいたします。
第13回国会衆議院文部委員会議録第11号5頁(昭和27年3月19日)〔天野貞祐文部大臣発言・発言番号7〕 会議録 国会会議録検索システム
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=101301062)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。