人権擁護委員法の一部を改正する法律案
衆議院 法務委員会
昭和28年法律第71号
審議経過
右の数字は会議の発言数提案理由
犬養健 法務大臣 昭和28年6月26日ただいま議題となりました人権擁護委員法の一部を改正する法律案の提案理由の説明を申し上げます。
憲法に保障された国民の基本的人権擁護の重要性にかんがみ、人権擁護委員法は、全国の市町村の区域に人権擁護委員を設け、人権侵犯の予防とその救済並びに基本的人権思想の普及高揚に当らしめて参りましたことはすでに御承知の通りでありますが、同法の施行後今日までの実績にかんがみまして、この法律の本来の目的を達成するため必要な改正をなすことが本法律案の趣旨であります、次にその主たる要点を御説明申し上げます。
まず第一点は、人権擁護委員の推薦手続におきまして、現行法第六条において市町村長が定員の倍数の人権擁護委員の候補者を推薦しなければならないとなつておりますが、市町村長において、その市町村の議会の意見を聞いて推薦したものが法務大臣の委嘱に際し常にその半数が委嘱より落されるということは、運用上支障が多いので、この欠点を取除きまして、市町村長は単に人権擁護委員の候補者を推薦すればよいという規定に改めたわけであります。従いまして市町村長の推薦がほとんど人権擁護委員を決定することになりますので、もし市町村長の推薦が誤つた場合、たとえば法第七条の欠格条項に該当するものとか、法第十五条に規定する解嘱条項に当てはまるものが推薦された場合には再推薦をさせる救済規定を設けたのであります。
第二点は、市町村と人権擁護委員との関係の繋密化をはかつた点であります。人権擁護委員は、その推薦せられた市町村の区域において、その職務を行うのでありまして、その市町村の協力なくしては、その目的を達成することが容易でないのであります。従いまして本案におきましては、第六条におきまして人権擁護委員の委嘱があつた場合は市町村長は、法務大臣が人権擁護委員の氏名、職務等を関係住民に周知せしめるため適当な措置をとることに協力しなければならないという規定を設けることといたしております。
第三点は、人権擁護委員の任期の延長であります。従来二年の任期でありましたが、人権擁護委員が、この仕事を習熟したころは任期が到来して十分に人権擁護委員としての活動を期待し得ない実情にありますので、その任期を一年延期いたしまして、人権擁護委員の能力発揮を十分ならしめようとするものであります。
第四点は、全国人権擁護委員連合会の規定を設けて人権擁護委員の全国的団結の基礎を置こうとするものであります。現行規定におきましては、都道府県ごとに人権擁護委員連合会を組織いたしまして、人権擁護委員の職務の自治的な連絡調整及び研究をいたしているのでありますが、人権擁護活動の普及化に伴い人権擁護委員の自主的全国的統一がぜひとも必要となりましたので、第十八条の二として全国人権擁護委員連合会の組織及び任務に関する規定を設けたのであります。以上が本法律案を提案する理由であります。何とぞ慎重御審議くださいますよう願います。
ただいま上程に相なりました刑法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
この法律案は、刑法、刑事訴訟法、犯罪者予防更生法及び更生緊急保護法の一部を改正し、犯罪対策に寄与せんとするものであります。終戦後犯罪の激増に伴い受刑者の増加とともに、執行猶予の言渡しを受ける者も激増し、同時に執行猶予の取消しも激増しましたが、現行の執行猶予制度においては、何ら本人に心要な保護と指導を加えることができないし、一方執行猶予の要件が厳格で、前科のない者か、前科のあるものは執行終了後七年を経なければ執行猶予をつけることができないこととなつているのであります。従つて執行猶予中の者は、例えば軽微な窃盗を犯しその事情酌量すべきものであつても、必ず実刑を科し、前の執行猶予を取消さなければならないこととなつているのであります。以上のような点にかんがみ、本法案は執行猶予の要件を適当に緩和すると同時に、執行猶予中必要のある者に対しては裁判の言渡しにより保護観察に付することといたしまして、これに必要な手続を定めるものであります。
すなわち、刑法の改正案におきましては、まず刑法第二十五条で執行猶予に付し得る条件として規定された「前に禁錮以上の刑に処せられたことがあつても其執行を終り又は執行の免除を得た日より七年以内に禁錮以上の刑に処せられたることなき者」という制限を「五年以内」に短縮し、また執行猶予中の者であつても、軽微な犯罪により刑期「一年以下の懲役又は禁錮」に処すべき場合であつて「情状特に憫諒すべきものあるとき」は再度の執行猶予を与え得を視定を設けて、執行猶予に付し得る場合の幅を拡張緩和し、同時にその裏づけとして、再度の執行猶予に付された者はその猶予期間中は必ず保護観察に付することにいたし、その他の執行猶予者については、必要ありと認める場合、保護観察に付し得ることにしているのであります。
刑事訴訟法の改正案は、右の刑法の改正に伴いまして、刑の執行猶予に加えて保護観察に付することにする場合は、刑の言渡しと、同時に判決で言渡すことにいたしまするとともに、保護観察中の遵守事項違反を理由として執行猶予の言渡しを取消すことができることとし、その手続として、検察官はその者の保護観察を担当した保護観察所の長の申出に基き裁判所に請求することにいたし、なお、裁判所の審理についても本人の請求があれば口頭弁論を経ることにし、かつ、その場合は弁護人の選任を許すことにし、また執行猶予の取消決定に対しては即時抗告を許して、その者に不測の不利益を帰せしめないようにするものであります。
犯罪者予防更生法の改正案は、以上の改正により執行猶予保護観察に付された者をこの法律によつて保護観察に付することを明らかにいたし、次に保護観察に付された者が、保護観察中守らなければならない遵守事項に違背した場合には、他の種類の保護観察対象者と同じように、裁判官のあらかじめ発する引致状により引致し得ることにし、さらに、現行法の仮退院少年の再収容を審理するときと同じように、執行猶予取消しの要否を審理するため引致後十日以内これを留置の得ることにし、検察官から執行猶予の取消し請求があつたときは、裁判所は、その請求について決定をするまで留置を継続することができるものとし、但し、その留置の期間は、引致後通じて二十日を越えることができないものといたし、また、本人の請求により口頭弁論を経て決定すべき場合には、裁判所は、決定でさらに十日間に限り、留置の期間を延長することができるものとし、なお、右の期間内に刑の執行猶予の取消し決定があつたときは、その決定が確定するまで留置を継続することができるものとし、これらの留置期間は、すべてこれを刑期に算入するものとするものであります。
更生緊急保護法の改正案は、執行猶予者で保護観察に付されない者が身体の拘束を解かれた後、あるいは帰住先がなくあるいは就職口がなく再犯に陥る危険がある場合に、本人の申出に基き、一定期間に限り、これを保護し得ることにするものであります。
なお、附則においては、この法律を施行する日を規定するほか、この法律の施行前に罪を犯した者及びすでに少年で刑の執行猶予に付せられ現行法で保護観察に付されている者に対しては、この法律の施行により不利益を帰せしめないようにする経過規定を設けているのであります。
以上申し述べましたように、犯罪をした者の改善更生には、できる限り刑の執行を避けてこれを保護観察に付し、その成績に応じて刑の執行を考慮することが最も必要であると考慮して、この法律案を提出いたした次第であります。何とぞ、慎重御審議の上、御可決あらんことを切望する次第であります。
第16回国会衆議院法務委員会議録第4号6頁(昭和28年6月26日)〔犬養健法務大臣発言・発言番号5〕 会議録 国会会議録検索システム
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=101601082)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。