刑事訴訟法第百九十四条に基く懲戒処分に関する法律案
参議院 法務委員会
昭和29年法律第64号
審議経過
右の数字は会議の発言数提案理由
三浦寅之助 政府委員(法務政務次官) 昭和29年3月3日ただいま議題に上りました刑事訴訟法第百九十四条に基く懲戒処分に関する法律案の提案理由を御説明申し上げます。
犯罪捜査を担当する各種機関、ことに警察官の権限をどう調整するかという問題は、世界各国の為政者が古くからその解決に苦慮している問題であり、現在もなお真剣に検討を続けている問題であります。昨秋ローマに開かれました国際刑法会議におきましても、公判前の手続における被疑者被告人の保護の見地から、警察官と検察官との関係をどうすべきかについて、熱心に討議せられたのであります。
しかして、この点に関するわが現行刑事訴訟法の建前は、御承知の通り、司法警察関係の諸機関と検察官とは犯罪捜査に関しては互いに協力すべきものとしつつ、検察官の任務及び地位すなわち公訴官であるとともに、裁判官に準ずる身分保障を有するという検察官の特殊の立場を考え、検察官に司法警察職員の捜査に対する一定の指示、指揮の権限を与え、その裏づけとして、司法警察職員が正当な理由がなく検察官の指示または指揮に従わない場合には、一般の警察職員については公安委員会が、その他の司法警察職員についてはそれぞれの懲戒罷免権者が別に法律の定めるところにより検察庁の長の訴追に基いて懲戒または罷免すべきものとし、もつて公訴の遂行と人権の保障に遺憾のないよう配慮しているのであります。
ところが、公安委員会その他の機関が懲戒または罷免の処分をいたします場合の手続等に関し、刑事訴訟法が予定しているところの別の法律が今日まで制定がされておりませんため、重要な法の不備になつているのであります。しかしながら、司法警察職員と検察官との関係について現行刑事訴訟法のとつている建前は、ただいま国会の御審議を煩わしております警察制度の改正のいかんにかかわらず、なおこれを維持すべきものと考えますので、懲戒罷免に関する規定も当然これを整備すべきものと考え、ここに警察法案と切り離して、本法律案の御審議を煩わすこととなつたのであります。
本法律案の内容は、わずか二箇条であります。第一条は、訴追の形式及び相手方につき、刑事訴訟法第百九十四条第一項を補足する規定であり、第二条においては、右の請求を受けた公安委員会その他の者が刑事訟訴法第百九十四条第二項に基いて行う懲戒罷免の処分の種類、手続、効果等を当該司法警察職員に対する通常の懲戒処分の例によらしめることといたしているのであります。
元来、犯罪の捜査は、各捜査機関の協力によつて初めてその効果を上げることができるのであります。従つて、検察官が司法警察職員の懲戒罷免の請求をするについても、きわめて慎重でなければならないのは言うまでもありません。しかしながら、それだからといつて、司法警察職員は検察官の正当な指示、指揮に従わなくてもよいということにはならないのはもちろん、万が一検察官の正当な指示または指揮に理由なく従わない司法警察職員があつた場合には、その者に対し現実に懲戒を行い得るという法律上の建前を明らかにしておくことによつて、全体としての協力を全うするように配慮することが適当であると考えられます。以上の次第でありますので、実際問題としてこの法律の適用を見るのは、よほどの事情がある場合に限るということになると思うのであります。
何とぞ、慎重御審議を賜わりたいのであります。
第19回国会衆議院法務委員会議録第14号7頁(昭和29年3月3日)〔三浦寅之助政府委員発言・発言番号38〕 会議録 国会会議録検索システム
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=101901070)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。