万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律案
衆議院 文教委員会
昭和31年法律第86号
審議経過
右の数字は会議の発言数提案理由
清瀬一郎 文部大臣 昭和31年2月28日まず先に万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律案、この方から提案の理由及び内容について御説明申し上げたいと存じます。
まず、この法律案の提案理由を御説明いたします前に、万国著作権条約について若干御説明いたします。
従来、著作権に関する多数国間条約としては、ベルヌ条約と米州関係の条約とが併存対立しておりました。
前者すなわちベルヌ条約は、著作権の保護に関して無方式主義を原則とする条約であり、後者は、すなわち米州関係の諸条約は方式主義を原則とする条約であり、この両条約の統合は戦前から試みられましたが実現をみなかったのであります。戦後ユネスコが設けられるにおよびこの両条約の橋渡しを実現することを目的として万国著作権条約が創設せられました。
この条約は、ベルヌ条約と米州条約の両系統の条約を統合するものではなく、これらの条約の併存を認めた上で橋渡しの役割を目的とするものであります。
わが国はすでに明治三十二年ベルヌ条約に加入するとともに著作権法を制定いたしまして今日に至っておるのでございます。
万国著作権条約につきましては、第二十三回国会で前の臨時国会で批准の承認を得ましたりで、本甲一月二十八日批准書を寄託いたしました。この条約によって新しい関係を生じますのはおもに米州諸国であり、これらの諸国のうち著作権について特に深い関係を生ずるのは主としてアメリカ合衆国でございます。
次に、万国著作権条約の内容といたしましては、第一に、この条約は内国民待遇の原則をとっているのであります。すなわち、締約国は他の締約国の著作物について自国民の著作物に与えている保護と同一の保護を与えればよいこととしておるのでございます。
第二に、著作物にCの記号と第一発行の年と著作権者の名前を表示すれば方式国で自動的に保護を受けるという日本にとって有利な規定を有しているのでございます。
第三に、著作物の保護期間について締約国間に長短がある場合には相互主義を援用することができる旨の規定がございます。
第四に、翻訳権については法定許諾制を採用することができる旨を規定いたしております。
以上が万国著作権条約のおもな内容でございます。この条約は本年四月二十八日からわが国について発効いたしますが、この条約は、国内法の定めるところにより、わが国にとって有利な保護期間の相互主義と翻訳権に関する法定実施権の制度を採用することができることとしております。そこで、これらの事項について著作権法の特例を定めるとともにこの法律の適用を受ける著作物の範囲等についても法律で明らかに定める必要が認められたわけでございます。これがこの法律案を提出する理由でございます。
次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。
第一は、万国著作権条約に基いて著作権法の保護を受ける著作物の保護期間について特例を設けたことでございます。すなわち、その一つには、著作権法に規定する保護期間が著作物の本国の法令で定められている保護期間より長い場合には、その超過する部分は保護を与えないことといたしました。その二つには、著作権法によれば保護の対象となっている著作物でありましても、著作物の本国の法令では著作権の保護を受ける種類に属していないものについては保護を与えない旨を明確にしたのでございます。
第二は、翻訳権に関する特例を定めたことであります。すなわち、原著作物が最初に発行された年の翌年から起算して七年以内に適法な日本語の翻訳物が発行されていない場合に、この期間の経過後、日本国民は、文部大臣の許可を得て補償金を支払い、または、供託してその日本語の翻訳物を発行することがございます。
第三は、ベルヌ条約による保護と万国著作権条約による保護との併存から生ずる紛争を避けるために、ベルヌ同盟の加盟国の一を著作物の本国とする著作物については、ベルヌ条約のみが適用せられますので、かような著作物についてはこの特例法の適用がない旨を明らかにしたことでございます。
第四は、日本国との平和条約第十二条の規定に基いて同条約の最初の効力発生の日から四年間、内国民待遇の保護を受けている著作物については、この法律の施行の日以後もなお従前どおり著作権法による保護と同一の保護を受ける旨の規定を設けたことでございます。
第五は、この法律はこの法律の施行の日以後に著作され、または発行された著作物についてのみ適用する旨を規定したことでございます。すなわち、遡及効のないことを宣言いたしました。
以上がこの法律案の提案理由および内容の概要でございます。なにとぞよろしく御審議の上、すみやかに御賛成下さるようお願いいたします。
次に学校給食法の一部を改正する法律案の提案理由の説明をさせていただきます。
このたび政府から提出いたしました学校給食法の一部を改正する法律案の提案の理由及び改正の内容はおおむね次のごとくでございます。
まず本法提案の理由の第一は、学校給食法の適用を中学校等義務教育諸学校に及ぼすことでございます。すなわち現在は小学校等について行われている学校給食は、昭和二十九年第十九回国会において、成立いたしました学校給食法に基いて実施されているのでございます。この法律が、施行されて以来、小学校等における学校給食は、教育の一環として実施されるべきであるという教育的な認識が深まり、これが普及の状況もきわめて順調な進展を示しているのでございます。
しかしながら、この現行法の適用は、ただいまのところ小学校等に限定されておりますので、小学校における教育に引き続いて実行さるべき中学校等の生徒に対し、現行法を適用することができないことになっております。本法の適用をすみやかに中学校等の生徒にも及ぼして、ひろく義務教育諸学校において、学校給食の実施を容易ならしめることは、強い世論でございます。かつまた、現行法成立の際の附帯決議の御趣旨にも添う所以と存ずる次第でございます。
提案理由の第二は、準要保護児童の学校給食に要する経費の一部を国において補助しようとすることであります。すなわち現行の学校給食の実施上、一つの支障となっているものに、いわゆる準要保護児童の給食費の問題があるのであります。これら準要保護児童の給食費について教育的見地から何らかの援助の方途を講ずべきことが、かねがね強く要望されていたのでございます。申すまでもなく学校給食を実施する学校におきましては、その学校に在学する全児童の参加のもとに実施することを建前といたしているのでありますが、児童のうち、その家庭が経済的に困窮いたしているために、給食を受ける児童の保護者が負担すべき学校給食費を、学校に持参することができない児童が若干認められるのであります。従ってこれらの児童のために何らかの措置を講じない限り、学校給食に全児童が参加するという建前は、崩さざるを得ないことになるのでございます。
学校給食の実施上、このような事態が生ずることは、まことに遺憾であると申さなければなりません。もとより国としては、このような困窮家庭の児童に対しましては、その貧困程度に応じまして生活保護法による教育扶助の制度を通じて、学校給食費を給与しておるのでございますが、この教育扶助の対象となる児童以外に、なお、その家庭の貧困度が生活保護法の適用を受ける者と同等又はこれに準ずると認められるいわゆる準要保護児童が、その学校給食費の負担に堪えかねている実情であります。
国といたしましては、さし当り公立小学校におけるこれら準要保護児童の学校給食費の一部を補助するために必要な経費を昭和三十一年度の予算に計上いたして、この法律案に基いて、補助制度を発足させようとするものでございます。
次にこの法律案の内容の概要を御説明いたします。この法律案の内容といたしますところは、まず第一に、現行法の適用を義務教育諸学校に及ぼすための改正であります。すなわち現行法各条の中に文字において「小学校」若しくは「小学校等」と規定されてありますのを、すべて「義務教育諸学校」に改め、第三条に新たに一項を加えまして、この法律でいう「義務教育諸学校」の範囲を定義し、また現行法各条中に「児童」と規定されてあるのを、それぞれ「児童及び生徒」または「児童又は生徒」のいずれかに改めたのであります。
次に、さきに説明いたしました準要保護児童にかかる学校給食費に関する国の補助につきましては、第七条に新たに一項を設けて、これを規定いたしました。すなわち、公立の小学校の設置者が、給食を受ける準要保護児童の保護者の負担すべき学校給食費の全部又は一部を補助する場合には、国は、その設置者に対し、当分の間、政令で定めるところにより、予算の範囲内において、これに要する経費の一部を補助することができることといたしたのであります。
以上この法律案を提出いたしました理由及びその改正の内容の概略を御説明申し上げました。何とぞ十分御審議の上、御賛成下さるようお願い申し上げます。
第24回国会参議院文教委員会会議録第5号1頁(昭和31年2月28日)〔清瀬一郎文部大臣発言・発言番号6〕 会議録 国会会議録検索システム
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=102401077)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。