海岸法案
参議院 建設委員会
昭和31年法律第101号
審議経過
右の数字は会議の発言数提案理由
堀川恭平 政府委員(建設政務次官) 昭和31年3月28日ただいま議題となりました海岸法案の提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。
御承知の通り、わが国はきわめて長大な海岸線を有しているのでありますが、海津が鉱工業、農業、漁業等各種産業の発展及び民生の安定と密接な関係を有するものでありますため、国土保全上その防護の必要性はきわめて大なるものがあります。しかしながら、現状におきましては、海岸の管理責任が明らかでなく、海岸の管理に十分な措置が講じられていないため、連年、高潮、波浪、侵食、地盤の変動等により災害をこうむり、特に最近においては管理の不徹底による大災害が続発しているのでありまして、これが抜本的対策を急速に確立する必要があるのであります。海岸法案は、右の趣旨によりまして海岸の管理の責任を明らかにするとともに、海岸保全施設の整備、海岸の保全に支障のある行為の制限等について規定し、海岸の防護に万全を期し国土の保全に資するものであります。
以上がこの法律案の提案理由でありますが、次に海岸法案の要旨について御説明申し上げます。
まず第一に、都道府県知事が防護する必要のある区域を海岸保全区域として指定し、その区域について海岸管理者を定め、海岸の責任を明らかにしたことであります。すなわち都道府県知事、市町村長、港湾管理者の長または漁港管理者の長を海岸管理者として定めることによって管理の徹底を期し、災害の防除をはかることとしたのであります。
なお、この場合におきまして、海岸管理の事務は国の事務であり、海岸管理者は国の機関として事務を処理いたすこととし、海岸に関する国の責任を明らかにいたしたのであります。
第二に、海岸行政における各省大臣の所管を明確にし、その責任の明確化と海岸行政の円滑を執行をはかったことであります。現在海岸行政は、建設、農林、運輸三省がそれぞれの立場から個別に執行しているのでありますが、基本的な海岸法制がないため、その所掌事務の範囲が必ずしも明らかでなく、国庫負担となるべき災害復旧工事の採択等に関し相当の不便があったのでありますが、この際その所管を明確にすることによって、海岸行政の統一的かつ円滑な執行を確保し、その進展に寄与せんとするものであります。
第三に、国の直轄工事に関する規定を設けたことであります。現在海岸に関する工事は、地方公共団体が国の補助を受けて施行しているのでありますが、先般の愛知、三重の大災害の発生に際し、国が県の委託に基き工事を施行した例に徴し、国土保全上特に重要であり、かつ大規模な工事等については、国がみずから工事を行うことにより海岸保全施設の整備の促進を期することといたしたのであります。
第四に、海岸保全施設の築造基準を定め、海岸管理者以外の者の行う工事につき承認の制度をとり、海岸保全施設の統一をはかったことであります。現在海岸保全施設については、その築造が統一的基準に基いて行われないため、脆弱な個所があり、これが全般的な災害を誘発する原因となる場合が多いのでありますが、これにより海岸保全施設の統一的整備が確保され、災害防除の効果が一そう上げられることと信ずるものであります。
第五に、海岸の保全に支障のある諸行為を制限し、海岸保全の効果を上げることといたしたことであります。現在海岸に関する行為制限の法的規制がないため、土砂の採取、土地の掘さく等が放任され、これらの行為が海岸の災害を激増させる誘因となっている場合が多いのであります。海岸の保全は、海岸保全施設の整備と相待ってこれに支障のある行為を規制することによって、はじめてその目的が達せられるものであり、この見地より今後海岸の災害の防止の効果が上ることを期待するものであります。
第六に、海岸保全施設の新設または改良に要する費用につき国の負担責任を明らかにし、海岸保全施設の整備の促進をはかったことであります。従来地方公共団体の行う工事に要する費用につきましては、国は予算措置で補助を行い、その助成措置を講じているのでありますが、海岸法案におきましては、海岸の管理に関する事務は国の事務とし、国の責任を明らかにしたことにかんがみ、これに要する費用につきましても国の負担責任を明確にし、海岸行政の強力な推進を期したものであります。
以上が海岸法案の提案理由及びその要旨でございます。
何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを切望する次第であります。
第24回国会衆議院建設委員会議録第19号18頁(昭和31年3月28日)〔堀川恭平政府委員発言・発言番号69〕 会議録 国会会議録検索システム
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=102401152)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。