滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律案
参議院 法務委員会
昭和32年法律第94号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院法務委員会
提案理由
中村梅吉 法務大臣 昭和32年2月22日滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律案について提案の理由を御説明いたします。
現行制度のもとにおきましては、同一の財産に対しては滞納処分と強制執行または競売との手続を重複して行うことは許されないというのが従来の一般の解釈とされておりまして、そういう取扱いになっておりますが、しかしながら、一方の手続が開始されるとその財産について他方の手続が行い得ないということは、いろいろな不合理な結果を生ずる場合があるのであります。すなわち、従来は、滞納処分が先に行われた場合には一般の債権者は滞納処分による差し押えの解除を待って強制執行を始めるほかはないのでありますが、目的たる財産が滞納処分により差し押えられたまま長期にわたり放置されるときは、その間強制執行または競売による権利の実行ができないばかりでなく、差し押え解除後目的財産が直ちに他に譲渡されると、もはやその財産を差し押えることができなくなるのであります。また、強制執行または競売の手続が先に行われました場合には、租税その他の公課は、競売の売得金から交付を受けることができまして、しかも原則として私債権に優先して満足を得られますから、この点では私債権に比して有利な地位にあるのでありますが、強制執行等の手続が財産の換価を見ないで終了した場合には、直ちに滞納処分による差し押えをしないと、目的財産の譲渡によって、その効を奏しないおそれもあるわけであります。従いまして、右に述べましたような不都合を除くため、動産、不動産、船舶等に対し滞納処分と強制執行等との手続を重複して行うことができることといたしますとともに、両者が競合した場合の手続の調整をはかるため、何らかの立法措置を講ずることが、かねて各方面から強く要望されてきたのであります。政府におきましても、その具体的方策につきまして法制審議会の意見を徴しましたほか、租税徴収制度調査会に諮問して調査研究して参りましたが、このほど成案を得るに至りましたので、ここにこの法律案を提出いたした次第であります。
この法律案の要点は次に述べる四つの点にございます。
第一は、民事訴訟法により強制執行をすることができる有体動産、不動産または登記される船舶に対しては、先に滞納処分が行われていても、さらに強制執行または仮差し押えの執行をすることができることといたしまして、強制執行等が重ねて行われた場合の手続の調整措置を次のように定めたことであります。まず、後に行われた強制執行による財産の売却のための手続は、原則として滞納処分による差し押えが解除された場合に限り行うことができることといたしました。次に、滞納処分による差し押えを解除すべき場合には、収税官吏等は、その占有する有体動産を後に強制執行等をした執行更に引き渡さなければならないこととし、さらに、滞納処分による売却代金について滞納者に交付すべき残余は、これを後に強制執行等をした裁判所または執行吏に交付し、裁判所または執行吏は、その交付を受けた金銭について競売による売得金の処置と同じ取扱いをすることといたしたのであります。
第二は、すでに強制執行が行われております有体動産、不動産または登記される船舶に対しても、さらに滞納処分を行うことができることとし、滞納処分が先行する場合の措置と対応して、後に行われた滞納処分による売却手続を制限するとともに、強制執行による差し押えを解除すべき場合には、執行吏は有体動産を収税官吏等に引き渡すべき義務を負うことを定めたことであります。なお、仮差し押えの執行後に滞納処分が行われた場合につきましても、仮差し押えの性質に反しない限り、滞納処分後に強制執行が行われた場合と同様の取扱いをすることといたしました。
第三は、滞納処分と強制執行とが競合した場合に、換価手続の促進をはかる措置を講じたことであります。すなわち、執行裁判所は、先に行われた滞納処分の手続が法令の規定またはこれに基く処分によって進行しない場合等において、相当と認めるときは、差し押え債権者等の申請によりまして強制執行を続行する旨の裁判をすることといたしました。また、これに対応して、執行裁判所は、先に行われた強制執行の手続が中止または停止された場合にも、相当と認めるときは、収税官吏等の請求によって滞納処分の続行を承認する旨の裁判をすることといたしました。
第四は、滞納処分と競売法による不動産または船舶の競売との競合及びこれらの手続の促進につきましても、滞納処分と強制執行との手続の調整措置に準じてこれを取り扱うことといたしたことであります。
以上がこの法律案の提案理由の大要でございます。
なお、御質疑等に応じまして逐次必要な御説明を申し上げて参りたいと思いますが、何とぞすみやかに御審議の上議決を願いたいと思います。よろしくどうぞお願いいたします。
第26回国会衆議院法務委員会議録第7号3頁(昭和32年2月22日)〔中村梅吉法務大臣発言・発言番号2〕 会議録 国会会議録検索システム
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=102601035)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。