遺失物法等の一部を改正する法律案
参議院 地方行政委員会
昭和33年法律第5号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院地方行政委員会
提案理由
正力松太郎 国家公安委員会委員長・科学技術庁長官 昭和33年2月7日次に、今回提出いたしました遺失物法等の一部を改正する法律案について、提案理由及びその内容の概要を説明いたします。
遺失物は、遺失物法その他の関係法律に準処して警察署長が取り扱っているのでありますが、その根拠法たる遺失物法は明治三十二年に制定され、その後実質的な改正をほとんど見るところなく今日に至っているのであります。物件を拾得した者が、その物件の遺失主に返還できないときは警察署長に差し出し、警察署長において公告後法定期間内に遺失主が判明しないときは、拾得者が所有権を取得するのが現行法の骨子であります。わが国においては、多年にわたりこの原則により遺
失物を取り扱ってきておりますので、この建前を変更することは適当でないと考えるのであります。しかしながら、遺失物法制定当時と今日とを比較いたしまするに、物件の交流移動も著しく多数に上り、従って遺失される機会も非常に増大しておりますし、他面遺失主がその遺失物を探し求める手段も通信及び交通機関のめざましい発達により著しく便利になっておりますので、現行遺失物法の骨子を根本的に変更することなく、文明の発達に伴う所要の改正を行うことが、遺失物の取扱いの適正を期するゆえんと考えるのであります。
右の趣旨に基き提出いたしました遺失物法等の一部を改正する法律案の内容について説明いたします。
その第一は、拾得者において遺失主を発見できないため警察署長に差し出した物件については、現行法のもとでは、警察署長において公告の後一年を経過しなければ拾得者がその所有権を取得できないのでありますが、今日の実情について調査いたしまするに、公告後遺失主の判明する総件数に対し、一カ月内にすでに九一%強、三カ月内には九九%弱、六カ月内に一〇〇%弱が判明している状況であります。すなわち、通信及び交通機関の発達した今日においては、遺失主の判明すべきものの大部分は公告後三カ月内に判明しているのであります。この実情にかんがみ、公告後六カ月内に遺失主の判明しない場合は、拾得者が所有権を取得することとしたのであります。
なお、かかる趣旨に基き拾得者が所有権を取得してから引き取ることのできる期間をニカ月内と改めるとともに、犯罪者の置き去つたと認められる物件についても同趣旨の改正を行なったのであります。また、水難救護法の規定により市町村長の保管する漂流物等についても、所有者は、公告または告知後六カ月以内に限り市町村長から引き渡しを受けることができることとしたのであります。
第二は、管守者のある船車建築物等において他人の物件を拾得した者は、現行法上拾得者としての権利が認められず、その船車建築物等の占有者が拾得者としての権利を取得することになっておるのでありますが、この規定は、船車建築物等において多数の客が来集している現状にかんがみ社会常識に合致しないので、かかる場合は現実の拾得者に拾得者としての権利を付与し、船車建築物等の占有者が拾得物に関する権利を取得するのは、現実の拾得者がその権利を放棄した場合と、その者が二十四時間内に当該船車建築物等の管守者に拾得物を交付しない場合とに限ることとしたのであります。
第三は、船車建築物等の占有者であって、拾得物の保管能力があると認められたる特定の法人は、当該船車建築物等において物件を拾得した者から物件の交付を受けた場合及び当該船車建築物等を管守する者が物件を拾得した場合においては、その物件をわざわざ警察署長に差し出さないこととし、これを警察署長に届け出て、みずから当該遺失物を保管すべきこととしたのであります。この改正規定は、当該船車建築物等における保管施設整備の状況等とも十分にらみ合せて実情に即するよう円滑に実施したい考えであります。
その他、法令の規定により私に所有所持することを禁じた物件の帰属関係の規定、保管物件の廃棄に関する規定等を整備したのであります。
以上がこの法律案の提案理由及び内容の概要であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
次に今回提出いたしました銃砲刀剣類等所持取締法案につきまして、提案の理由及びその内容の概要を説明いたします。
銃砲刀剣類等は、その利用目的も種々あり、中には、社会生活上欠くことのできないものもあるのでありますが、いずれも、人畜を殺傷する機能があり、その意味においては危険でありますので、わが国におきましては、古くからこの所持等について規制してきたのであります。しかも、終戦直後におきましては、連合国の占領行政のもとにおいて、一時は、これを相当広く禁止しておった時期もあったのでありますが、その後わが国の実情に即するように改正を加え、さらに独立後も当国会の審議を経て、事態に即して改正を加えて参ったのであります。
ところが、いわゆる町の暴力団等において、この現行の規制の間隙に乗じて、銃砲刀剣類を乱用するものも見受けられますので、暴力を排除して自由にして平穏な社会を実現するに必要な法的措置としてこの規制の不備を補いたいと存ずるのであります。また、近く本邦において国際競技が開催される運びにもなっており、これに備えて現行の規定に改正を加える必要も生じてきたのでありまして、今日施行されております銃砲刀剣類等所持取締令を廃止し、その内容とするところに右申し述べました趣旨に基く改正を加え、この機会において、銃砲刀剣類等所持取締法の題名のもとに、今日の事態に即して関係規定を整備し、ここに銃砲刀剣類等所持取締法案として提出した次第であります。
すなわち、この法律案の内容とするところを現行規定を改めた点を中心として申し述べますと、その第一は、許可または登録を受けた銃砲または刀剣類は、狩猟、有害鳥獣駆除、屠殺、人命救助、漁業、建設業等の用途に供するかその他正当な理由がある場合を除いては、これを携帯し、または運搬してはならないこととし、いわゆる暴力団等による銃砲刀剣類の悪用を防止することとしたのであります。
第二は、現行規定のもとにおいては、国際競技の拳銃競技種目に、外国人が適法にこれを所持して参加することができないのでありますが、かくては、国際競技を本邦において開催する趣旨にも沿わないこととなりますので、この国際競技に参加する外国人が都道府県公安委員会の許可を受けることによってその拳銃の所持を合理化することといたしたのであります。なお、祭礼等の年中行事に用いる刀剣類その他の刀剣類で所持することが一般の風俗慣習上やむを得ないと認められるもの及び特殊の試験または研究の用途に供するため必要な銃砲または刀剣類につきましても、都道府県公安委員会の許可を受けることによって所持することができることといたしたのであります。
第三は、所持を禁止されている銃砲または、刀剣類を所持して本邦に上陸しようとする者の当該銃砲または刀剣類の取扱いにつきまして、必要な場合に仮領置することができることとする等所要の規定を整備いたしたのであります。
第四は、捕鯨用標識銃等販売事業者及びその使用人並びに文化財保護委員会の承認を受けて刀剣類の製作をする者、捕鯨用標識銃等製造事業者及び輸出のための刀剣類の製作を業とする者等の使用人が、業務のために銃砲または刀剣類を所持する場合は武器製造事業者等の使用人の場合と同様にあらかじめ都道府県公安委員会に届け出ることによって、これらの者の業務のための所持を認めることとする等、今日の実情に即するよう関係規定の整備をはかるとともに、関係条文を総則、銃砲又は刀剣類の所持の許可、火なわ式銃砲又は刀剣類の登録、雑則及び罰則の五章に類別して、必要な整理を行なったのであります。
以上がこの法律案の提案の理由及びその内容の概要であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
第28回国会衆議院地方行政委員会議録第2号10頁(昭和33年2月7日)〔正力松太郎国家公安委員会委員長発言・発言番号4〕 会議録 国会会議録検索システム
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=102801028)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。